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あなたをずっとずっとあいしてる (絵本の時間)あなたをずっとずっとあいしてる (絵本の時間)
(2006/01)
宮西 達也

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食う者と食われる者の出会いは悲劇しかないのか (その2)

ボクは、このティラノサウルスシリーズは、映画化された
「あらしのよるに」に匹敵するものとして毎回楽しみにしています。

「あらしのよるに」では『食う者と食われる者の間で友情は成立するか』
というテーマが、巻を追うごとに深化していきました。

こちらは、それを親子という縦の関係を通して描いたところが特徴です。

同作者の「おまえうまそうだな」では、ティラノサウルスを自分の親と
思い込んだ赤ちゃん恐竜が登場しました。本作ではそれが逆転。
つまり、母親恐竜が、ちいさな卵を孵してみたら、赤ん坊は
凶悪とされるティラノサウルスだったという展開。

母親はやむをえず、赤ん坊を林に捨てようとするが…

今の世の中、親子間の殺伐とした事件が増え続けているだけに、
子供の純粋さ、親の暖かさがいっそう輝いてみえる作品でした。
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うさぎのルーピースー

2006/02/27 Mon 20:16

うさぎのルーピースーうさぎのルーピースー
(2006/01)
どい かや

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魅力的な絵ではありますが…

死について語るのはむずかしい。経験者はこの世に存在しないから。

朝、野うさぎの子供が女の子の机の下で死んでいた。
いったい何がおこったのか? どうして家の中に入ってきたのか?
それを知る手がかりは、作中に何も描かれていない。

不自然な状況の死 という事実だけが我々に突きつけられる。

それにしても、なんと可愛らしい死体だろう。
これは、作品の魅力であると同時に欠点でもある。

女の子によるうさぎの扱いは、あたかも野山で見つけた珍しい木の実や、
きれいな花を扱うのと同じだ。これは死を特別視せずに、自然に存在するものの
一部として扱っているのだろうと好意的に解釈したい。

ただ、意地悪な見方をすると、もっと醜い死体でも同様に扱われたのかどうか?
あくまでも作者の世界観の範囲で用意された死であると感じました。
その意味では新境地と言うよりも、今までの延長上の作品と言えるでしょう。
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金曜日の砂糖ちゃん

2006/02/26 Sun 20:18

金曜日の砂糖ちゃん (Luna Park Books)金曜日の砂糖ちゃん (Luna Park Books)
(2003/10)
酒井 駒子

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誘惑する黒

不思議なタイトルですね。

金曜日という言葉は特別な響きを感じる。
一週間の中では、onとoffの切り替わりを伝える鐘の音的な曜日だ。
それに続くのは砂糖ちゃんという甘い誘い。
眼を閉じた少女の絵とあわせて、読む前から色々と想像が膨らみました。

これから読まれる方、心してページをめくってください。
いつの間にか、幼い頃の無意識の世界へと足を踏み入れ、
眼を開けたまま、夢をみることになるからです。

ボクは酒井さんの使う黒が好きです。
世の中の喧噪を全て塗りつぶし静かな時を作り出してくれる。
そして、その中でしか聞こえない小さく美しい音に、気付かせてくれるから。

表題作を含め3編の構成になっているのも、ちょうどいいですね。
これ以上続いたら、本の世界からもどって来れなくなるかもしれない…

これは、大人にとっては罪な絵本です。
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うしさんおっぱいしぼりましょ (絵本のおもちゃばこ)うしさんおっぱいしぼりましょ (絵本のおもちゃばこ)
(2006/02)
穂高 順也

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クセの強い作品です

ふつうの牛は、乳をしぼると牛乳がでるものですが、
食べるものによって出すものも変わるという不思議な牛が登場。

イチゴを食べたら何が出る? コーヒー豆では?
はじめは読者の期待と想像通りに話しが進んでいきます。

ところが、途中から食べる物と出すものとの関係がくずれ
ハチャメチャな方向へ向かっていきます。

関係がくずれると言うのは、あくまでもボクの判断基準において
ですが、これを素直に楽しめるかどうかは、読者によって
見方が分かれるところでしょう。

野菜を食べてクリームシチューを出そうとするのは、
理性的にも生理的にも受け入れられませんでした。
なんて、考えるボクは頭が堅いかもしれません。

でも穂高さんなら、一定のルールを守った上で、あっと驚く
展開が出来ると思うだけに、ちょっと残念です。
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おれはティラノサウルスだ (絵本の時間)おれはティラノサウルスだ (絵本の時間)
(2004/01)
宮西 達也

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食う者と食われる者の出会いは悲劇しかないのか

これは恐竜版 ごんぎつね といってもいいですネ。

本来なら出会うはずのない2人の間に、生まれかけた心のつながり。
しかし、お互いに理解することのないまま、悲しい結末を迎える点で
相通ずるものを感じ、目頭がジーンとなりました。

本書で出会うのは、ティラノサウルスとプテラノドンの子供。
目が見えなくなったティラノサウルスは、なんとかしてプテラノドンに
助けられたお礼をしようとするのですが…

ヒーローや怪獣をコミカルに描かせたら右に出る者のいない宮西さん
ならでのキャラ設定で、重くなりがちなテーマも軽やかに描かれています。

ボクの推測ですが、ラストでティラノサウルスが子供を食べるか否かは、
ひとつの悩みどころだったと思います。

ごんぎつね のラストでは、銃口が火を噴きました。
さて、本作では? 

ラストページの星空が思わず霞んで見えました。
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しぜんとあそぼう はっぱ

2006/02/22 Wed 20:22

しぜんとあそぼう はっぱしぜんとあそぼう はっぱ
(2005/09)
水野 政雄

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葉っぱって、こんなにもたくさんの色や形があるんですねエ

タイトルの通り、葉っぱを主役にした造形作品の絵本です。
表紙は地味ですが、中身はこの10倍くらい華やかですヨ。

葉っぱだけで作られた、海や山の動物達、乗り物などが次々に登場。
写真集的構成で、見開きごとに完結していますが、案内役の木の人形を
配したことで、全体に統一感のある見応えある作品となってます。

これは正に自然が生み出したレゴブロックとも言えるでしょう。
積み木さがしに、野山へ出かけたくなりました。
巻末には作り方のコツも解説されています。
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まてまてー!

2006/02/21 Tue 20:24

まてまてー! (こどものくに傑作絵本)まてまてー! (こどものくに傑作絵本)
(2005/08)
宮西 達也

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逃がした魚は大きい? その2

釣というのは、宝くじにも似ている。糸を引き上げてみるまでは
何が釣れたかはわからない。だからこそ、釣り上げる側、釣られる側で
それぞれのドラマが生まれるんですネ。

同作者の「ペンちゃんギンちゃんおおきいのをつりたいね!」という
作品では、釣り上げる側のドタバタがユーモラスに描かれていました。
それに対し本作は、釣られる側のドタバタを描いているので
併せて読むと、さらに楽しめることを保証します。

話しはいたって単純。描かれているのは、釣り人のたらした小さなエサを
めぐる魚たちの抗争。誰かが食べようとすると「まて まてー!」と
さらに大きくて強い魚が現れる。この繰り返し。

いったい全体どこまで続くのか? まずは見てのお楽しみ。
無言のラストシーンには笑った。
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ホームランを打ったことのない君にホームランを打ったことのない君に
(2006/01)
長谷川 集平

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夢に向かって走り続ける君の為の絵本

なんと魅力的なタイトルでしょう。もちろん本書は野球の入門書ではないし、
ホームランを打つことだけが野球の目的でもない。
ただ、ホームランは、他のスポーツにはない特別な達成感があることは確か。

もし、あなたが何かに向かって努力しているなら、自身の夢をホームランに
置き換えて、本書を読んでみてください。

ホームランはおろかヒットさえ打てない少年。
少年を見守りながら自分も夢を追い続ける青年。
ホームランを打つために努力を怠らないプロ選手。

野球にかかわる様々な視点を通し、夢に向かって前進する人へ
熱いエールを送る そんな絵本なのだ。
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ジス・イズ・ケープケネディジス・イズ・ケープケネディ
(2006/01)
ミロスラフ・サセック

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宇宙の玄関口へようこそ

絵本を通して世界旅行を満喫できるのが、ジス・イズ シリーズの魅力。

ボクは2005年12月からこのシリーズにハマり パリ、ニューヨーク、ロンドン、
ヴェニス、サンフランシスコ、アイルランドの順に読み継いで、今回の
ケープケネディへ至りました。

まずはロケットの立ち並ぶ表紙に注目。これだけで他のシリーズより
興奮してしまう方も多いのではないでしょうか。
表紙の次は見返し。ここで満天の星空を登場させる演出も見事!

中身はロケット発射時に観客でいっぱいになるココアビーチの紹介から
始まり、ケネディ宇宙センター内へと続いていきます。
そしてクライマックスはマーキュリー計画での、アトラスロケットの発射から
帰還までの様子が描かれている後半部。

これは初版とほぼ同じ時期である1962年の歴史的出来事。
当時の熱狂がロケットの轟音と共に、21世紀のボクの書斎まで届きました。

ちなみに、絵によく登場する看板や案内標識は、あえて英語標記のままに
してあるので、子どもには補足説明が必要かもしれません。
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銅版画家の仕事場

2006/02/18 Sat 20:28

銅版画家の仕事場銅版画家の仕事場
(2004/10)
アーサー ガイサート

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銅版画家の銅版画による銅版画の為の絵本

ボクが銅版画と出会ったのは高校生の時。美術の授業でだ。
銅の輝き、針で引っ掻く音、インクの匂いなど、当時の記憶が
本書を通して甦ってきました。

この作品は、祖父、父 から引き継いで銅版画を仕事とする
アーサー・ガイサートによる、少年時代の自伝的要素を含んだ、
銅版画の解説書となっています。

趣味ではなく家業として営んでいるだけあって、工房はさながら
小さな工場のよう。販売用の展示スペースまであるくらいです。

そんな環境の中、祖父の仕事を手伝う少年を通し、銅版画の作業手順
が物語仕立てで描かれており、まるで自分も作業に参加している
ような気持ちになってきます。

もちろん絵はすべて銅版画。サービスカット的な絵も盛り込まれ、
単なる技術の解説だけでなく、表現の魅力や完成したときの満足感まで
伝わってきます。この本がきっかけで銅版画を始める方は、本当に
幸せですネ。
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