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オオカミくんはピアニスト

2006/03/27 Mon 23:05

オオカミくんはピアニストオオカミくんはピアニスト
(2005/10)
石田 真理

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格調高い絵に秘められた力強さ

細長い手足と繊細な指、坂本龍一を彷彿させる長いまつげとサラサラした髪の毛。
うんっ、オオカミくんの外見は正にピアニストですね。

そんな彼は、ひとりで重いピアノを引いては、演奏する場所へ出かけます。
その姿は、まるで屋台を引く石焼き芋屋ですね。

ただし、「音楽はいらんかね~ ピアノをきかせるよ~」なんて呼び込みはしない。
小鳥が配達する手紙に応じて出かけていくのです。

リクエストのためには、砂の道だろうと、険しい山だろうと、幾日もかけて進んでいくのです。
もちろんオオカミくんにとっては、そうするだけの価値があり、それが何なのか次第に
気付いていくのですが。

それにしても、なぜピアノなのか? バイオリンとかフルートとか、もっと持ち運び
しやすい楽器でもいいのでは。 と考えたとき、はたと気付いた事があります。
大きなピアノを引きずる姿の中に、オオカミくんの陰の努力や、孤独のつらさ、
人生を歩んでいく力強さというものを、いつの間にか感じ取っていたことに。

軽い楽器だと、それは伝わりません。
他の楽器をもった動物といっしょになって演奏し、音楽最高!イエーィで終わったり、
きれいなオオカミの女性と出会って、ラブラブハッピーな結末になってしまったかもしれない。
しかし、そうはならない。そういうテーマではないのだ。

オオカミくんの旅は軽やかな歩みとともに続くのですから。
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