むしプロ
2006/07/31 Mon 01:33
![]() | むしプロ (2006/07) 山本 孝 商品詳細を見る |
うぉーっ、これは熱いぞ!
表紙をみれば一目瞭然。もう説明の必要はないですね。
そう! これはカブトムシ組vsクワガタ組のプロレス大会なのです。
5対5の代表戦。勝ったほうが、甘い樹液を独占できるというわけです。
手慣れた実況中継と、リングサイドから観る画面は臨場感いっぱいで、
思わず観客のひとりになって声援を送りたくなってしまいました。
カブトムシやクワガタムシは言うまでもなく子供達の人気者。
ゲームや漫画、おもちゃ売り場でも、昆虫バトル物が人気を
集めているだけに、絵本界としても甘い蜜を吸いたいところでしょう。
そんな中、ここまで正面切って堂々と描ききった、作者に拍手を送りたい。
梶原一騎の漫画や、猪木・馬場世代のプロレスに熱くなった
大人達も夢中になれる作品です。
みつけたよ、ぼくだけのほし (にいるぶっくす) みつけたよ、ぼくだけのほし (にいるぶっくす)
2006/07/26 Wed 21:27
![]() | みつけたよ、ぼくだけのほし (にいるぶっくす) (2004/12) オリヴァー ジェファーズ 商品詳細を見る |
みつけたものは本物の星なのか?
男の子が星と友達になろうとする話し。
幼い子が、星や月へあこがれる絵本は、国内でも海外でも割とみかけますね。
もちろん、空にあるモノですから、そう簡単には手がとどきません。
それを絵本という魔法の力で、いかに実現させるかが、作者の腕のみせどころ
ともいえるでしょう。
そんな期待を持って本書をみると、物足りなさを感じました。
あっと驚くような、想像力の飛躍はありませんでしたね。
ボクには最後に手にしたものが、ヒトデのように見えるのですが…
男の子は星と友達になりたいと願っているのですから、
文章のなかで「捕まえる」という表現を多用するのは不適切。
【参考:星へ行ける絵本】
「つきにでかけたおんなのこ」ジェラール・フランカン
「月と少年」エリック・ピュイバレ
真昼の夢 (ほるぷ海外秀作絵本) 真昼の夢 (ほるぷ海外秀作絵本)
2006/07/25 Tue 21:31
![]() | 真昼の夢 (ほるぷ海外秀作絵本) (2006/07) セーラ・L. トムソン 商品詳細を見る |
21世紀のエッシャーに出会える
ネガとポジの反転、矛盾する遠近法、平面と立体の交錯などなど。
騙し絵の手法を駆使しつつも、リアルな描写によって、ありえない現実へと
導いてくれる絵本「終わらない夜」は今でも強烈な印象が残っている。
その第二弾とくれば、もう迷わず手に取るしかないですね。
騙し絵と聞いて、まずエッシャーを思い浮かべる方も多いと思います。
モノクロを主体としたエッシャーは、パズルのような知的描写が特徴的。
それに対し、色鮮やかなロブ・ゴンサルヴェス場合は、絵の中に
人間が多く登場することもあって感情移入しやすく、物語的と言えるでしょう。
描かれた人間の表情は、何かにとり憑かれたように虚ろだ。
異次元の迷宮を永遠にさまよう彼らの姿は、我々現代人の心の不安を
投影しているかのようでもある。
どうしてかわかる? (世界のなぞかけ昔話 1)
2006/07/24 Mon 21:31
![]() | どうしてかわかる? (世界のなぞかけ昔話 1) (2005/11/01) ジョージ シャノン 商品詳細を見る |
昔話から集めた人間の智恵
最近、TVではどのチャンネルでもクイズバラエティーがあるし、
脳力を測定したり、脳年齢を若くするというゲームも次々に登場している。
それらに特徴的なのは、単に知識を問うのではなく、頭の回転や機転、
ひらめきを要するところ。
人間って問いかけに答えたがる動物なんだなあと思いますが、それをあらためて
実感させてくれるのが、この「世界のなぞかけ昔話シリーズ」。
原書は、なんと約20年以上も前に出版されている。
本書では、世界中から選りすぐられた、14もの謎解きを含んだ昔話を、
問題編、解答編といった形式で再構成している。
さらにはピーター・シスのイラストがミステリアスな雰囲気を演出する
とう贅沢な絵本だ。
絵を楽しみつつ、自分のペースで考えられるのがいいですね。
すべての問題に共通したメッセージが込められている。
人は智恵を働かせることで、権力や悪に立ち向かったり、
人生の困難を切り抜けられるのだ。
Feel the Summer
2006/07/23 Sun 21:33
![]() | Feel the Summer (2006/04/15) Sarah L. Thomson 商品詳細を見る |
心地よい夏気分になれます
夏をテーマに描いた山田花菜さんの絵をもとに Sarah L. Thomsonが短文を付けた作品。
どちらかというと画集的なつくりの絵本ですが、ほとんどの絵に
小さな男の子と女の子(たぶん兄妹)が共通して登場するので、全体を通してみると
物語性が感じられる構成になっています。
作者の2人は、それぞれ絵本の世界で活躍しており、日本でも作品を見る事ができます。
たとえば、画集的な絵本「終わらない夜」では、Sarahの加えた一文一文によって、
ミステリアスな絵が、より印象深いものとなっていました。
「ボリーとポリー」のシリーズでは、山田花菜さんが仲良しの子豚と
仲間達の楽しい世界を描いています。
既に彼女たちの作品をみている人からすれば、意外な組み合わせにみえますが、
山田さんの描く夏のワンシーンは、日本を舞台としつつもスタイリッシュな
タッチのせいで、Sarahの英文と非常にマッチしているのではないでしょうか。
アイスクリームバー片手に木陰で読みたい作品。
ヨンイのビニールがさ (海外秀作絵本) ヨンイのビニールがさ (海外秀作絵本)
2006/07/21 Fri 21:34
![]() | ヨンイのビニールがさ (海外秀作絵本) (2006/05/31) ユン ドンジェ 商品詳細を見る |
雨音を聞きながらじっくりと読んでほしい作品
7月に入って雨の日が続き、ついつい外に出るのがめんどうになってしまう。
そんなときに、ゆっくり家で絵本をよむなら、この作品はおすすめだ。
1980年に書かれた韓国の詩が元になっているとのこと。
単純に言ってしまえば、雨の日に道端にたたずむ物乞いへ、女の子が傘を
差し出すという話しだが、詩に絵がついたことで作品の完成度が100%に
なったと言ってもいいのではないでしょうか。
まず、表紙をみるだけでも画家の繊細さを伺い知ることができます。
一見すると大きな緑のビニール傘だけのようだが、
かすかに透けてみえる女の子の面影や、傘の先端から滴り落ちる雨、
ビニールの破れ目からのぞく黄色い服など、実に神経が細かい。
その繊細さは、絵の展開にも生かされており、絵本のカメラワークとも
いえる視点の変化が絶妙だ。第三者の視点から、女の子の視点へ、
そして、物乞いの視点へと変わっていく。
対象そのものを描くのではなく、雨水の映り込みを生かした暗示的な
描写が、かえって多くのことを伝えてくれる。
女の子や物乞いの表情も描かれていないが、読者は彼らの視点を共有すること
で、気持ちそのものを、見るのではなく感じ取れるようになっているのだ。
ボクはラストシーンで、物乞いの感謝の気持ちを感じとれました。
いいないいなこのおうち (おひさまのほん)
2006/07/20 Thu 21:36
![]() | いいないいなこのおうち (おひさまのほん) (2005/10) 軽部 武宏 商品詳細を見る |
やっぱり我が家が一番?
家の着ぐるみ(?)をつけた、かるべくんがマイク片手に変な家を紹介するという絵本。
紹介される家は、カレーライスの家 ボールの家 シーソーの家 などなど。
全部で14件もあります。正直言ってどれも あ り え な い !
こんな家に住めるわけないだろうと思うのですが、しっかりと、トイレ、寝室、浴室などの
設備まで気を配っているあたりは、一級建築士でもある作者の成せる仕事といえます。
ただ、ありえない家で真面目に生活しようとする住人の姿が描かれているのには、
可笑しくも悲しいものを感じざるをえませんでした。
建築雑誌などで、ときどき建築家の自己満足にしか見えないような
住みにくい家が紹介されてたりします。
作者の意図かどうかはわかりませんが、住処としての機能を犠牲にしてまで
家に個性や独自性を求める人達を暗に風刺しているように感じられました。
【あわせて読むなら】
●建築家による絵本では
『くうねるところにすむところ―子どもたちに伝えたい家の本』シリーズ
●へんてこりんな物件が登場する絵本では
『ヤドカシ不動産』
●これなら住みたい!かぼちゃ風の建築いろいろ
『かぼちゃごよみ』
タルトくんとケーキのたね
2006/07/19 Wed 21:38
![]() | タルトくんとケーキのたね (2006/06) おだ しんいちろう 商品詳細を見る |
アイデアはまだ種のまま
「ぐりとぐら」は40年ちかく前の絵本でありながらも、いまだ読む人が多いし、
影響を受けているとみられる作品もよくみかける。
下記の要素を含んでいる絵本は、「ぐりぐらの呪縛」に捕われていると言えよう。
【主役】姿の似ているコンビが登場………一場面で2コマ的表現ができる
【文章】リズミカルに繰り返される言葉………TVのCMのように耳に残る
【展開】2人と誰かの出会いがある………新たな世界が広がる
【結末】仲間が集まり楽しく食事する………心も満腹感でみたされる
【連作】イベントをちょっと変えてシリーズ化………季節ものにアレンジされる
今回レビューする作品は、これらをことごとくはずしている。
作者の2人は「ドドとヒー こぶねのぼうけん」で、絵本ずれしていない
独特の世界を作り出しているところが魅力ではあったが…
今回については、定番ストーリの中で、定石から外れたところが
マイナスに働いてしまったようだ。
【主役】姿の異なる兄妹が登場するが、それぞれの役づくりがあいまい
【文章】呪文のような言葉は出るが、覚えにくいし意図が不明
【展開】2人と誰かが出会うものの、話しに関連してこない
【結末】せっかくケーキを作るものの、出会った者たちは集まらない
【連作】キャラが弱いのでシリーズ化は難しいかも
最後に一言。 これはケーキの種ではなくケーキの実ですよね。
やあ!出会えたね ダンゴムシ (やあ!出会えたね (1))
2006/07/18 Tue 21:39
![]() | やあ!出会えたね ダンゴムシ (やあ!出会えたね (1)) (2002/05/01) 今森 光彦 商品詳細を見る |
ダンゴムシと新たに出会える本
最近ダンゴムシの絵本をよく見かけるようになりました。
なかでもおすすめは、松岡達英さんのシリーズ。
海や空、はたまた恐竜の世界まで出かけていってしまう冒険好きな
ダンゴムシくんが登場し、毎回楽しませてくれます。
本物のダンゴムシに出会いたくなったら。
ネイチャーフォトグラファーの今森さんによる本書がおすすめ。
ダンゴムシを飼いながら撮影したというだけあって、普段なかなか
見る事ができない小さなダンゴムシをじっくり見ることができます。
顔のドアップ! 脱皮の瞬間 真っ白な赤ちゃん などなど
彼らの意外な一面や生活の様子が、臨場感いっぱいに伝わってきます。
自分もダンゴムシになったような気持ちになりました。
そらとぶクレヨン
2006/07/17 Mon 21:41