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のにっき―野日記

2006/08/31 Thu 00:58

のにっき―野日記のにっき―野日記
(1998/06)
近藤 薫美子

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命が命をつないでいく自然界のドラマ

この絵本のことを知ったのは、最近の新聞の書評欄にて。
8年近く前に出版されていたのですが、不覚にもみすごしていました。
よけいな演出を加えることなく「生と死」をリアルに描いたこの作品は、
今もっと注目されていいのではないでしょうか。

この作品の主人公は、いたちの死体です。

野ざらしの死体には、やがて虫が集まりウジがわいて、次第に朽ち果てていきます。
骨まであらわになっても、目をそらすことなく冷徹に見つめ続けます。
絵に添えられた日付からすると、晩秋から春までの半年間の出来事。
その間に、死体の周囲でも様々な「生と死」のドラマが起こっていること
まで描ききったところに感銘を受けました。かなり細かい描写ですが、ところどころに
小さなふきだしで虫達のセリフが付いているので、しっかりと内容を追いきれます。

作者の実体験をもとにしているだけのことがありますね。
最後はすこしホロッとなりました。
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マシュマロのおいしいたべかたマシュマロのおいしいたべかた
(2006/05)
市川 宣子

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気持ちが ふわりふわり となる作品

(( マシュマロ )) っていう音の響きがいいですね。
どこの言葉か、どんな意味があるのか、知りませんが、感覚的にこの
お菓子の優しい食感が伝わってくる。

もしも、きょうのおやつがマシュマロなら…

で始まるこの絵本は、絵もストーリーもそんなお菓子にピッタリ。
マシュマロをもった男の子のところへ、リス、ウサギ、クマ、
そして雲までやってきて、食べかたが色々とひろがっていきます。

ゆるやかに空想的な世界へ入っていく流れが、とても心地いい。
実はしかけ絵本でもあるのですが、しかけを前面に出だすことなく、
あくまでも話しをサポートする役割として効果的に使われています。

読み終えると、きっとマシュマロを食べたくなるでしょう。
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ねたふり

2006/08/28 Mon 01:03

ねたふり (絵本のおもちゃばこ)ねたふり (絵本のおもちゃばこ)
(2006/07)
小泉 るみ子

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ズル休みの味がよくわかる

舞台は夏休みの農村。まだ蚊帳が使われていることから、
作者の子ども時代の体験がもとになっているんでしょうね。
ボクも懐かしさがこみ上げてきました。

野菜の収穫期となる夏の農村は大忙し。
夏休みといえど、子ども達も家の手伝いにかりだされます。
末っ子の女の子は、ついついサボりたくなって二度寝してしまう。

「仕事に行かなきゃならないのは分っているけど、少しだけなら
 自分ひとりいなくても大丈夫だろう」と。

始めは軽い気持ちだったのが、畑へ出ていくタイミングを失ってしまい
女の子がとった方法が、ねたふり。

はっきりと言葉で書いてありませんが、後ろめたさ、疎外感、の先に
あるなんとも言えない気持ちが、手に取るように伝わってきました。

女の子にたいする、父親や姉のちょっとした言葉や行動に
家族の温かみが感じられ、さいごはホッとさせられました。
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とらはえらい

2006/08/26 Sat 01:05

とらはえらい (五味太郎さんの干支セトラ絵本)とらはえらい (五味太郎さんの干支セトラ絵本)
(2006/07)
五味 太郎

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トリからはじまる干支シリーズ(その6 寅)

干支セトラ絵本もようやく12分の6冊目が刊行されました。
前半戦の最後をかざるのはトラ。 干支の動物たちの中ではリーダー格と
いえるでしょう。頼りにしたくなる存在です。しかも「えらい」のですから。
このシリーズ、ここまできてそれなりにわかったことは、

1:動物ごとにひとつのキーワードがついている
2:キーワードのくり返しで話しがすすんでいく

キーワードは動物の鳴き声や特徴をもとに生まれている。
トリではココココ、ウシはモー、ネズミはガシガシかじる音
というように。トラはなぜか「えらい」ときた。

くり返されるキーワードによって、次は何がでるのか、どこに行くのか、
だれが現れるのか、いつまで続くのか、という期待感が高まっていく。
そして、いったい最後はどうなるのか? と気になってくる。

そんなあなたは、まんまと作者のペースにはまっていると
いえるでしょう。もちろんそれでいいのです。
なぜなら、

3:五味さんも「えらい」

トラを「えらい」と言ってるんですから。 次はウサギの出番ね。
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わらっちゃった

2006/08/25 Fri 01:06

わらっちゃった (おひさまのほん)わらっちゃった (おひさまのほん)
(2006/07)
大島 妙子

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内容盛りだくさんの絵本

ギクッ。本がにらみつけている! 表紙は迫力ある怒り顔のアップ。
しかもタイトルは「わらっちゃった」ときた。
読者は混乱したままページをめくることになる。

読み進むとわかるのですが、本書はおばけの本とも言える。絵本では夏の風物詩ですね。
しかも、おばけ寄席という人間ばなれした楽しい笑いの世界がまっているのです。
これだけでも、一冊の絵本としてアピールする力がある。
むしろ、そうして欲しいくらい魅力ある世界だ。

読み終えてわかるのは、非日常的な笑いの世界を通して、女の子どうしの
けんかと仲直りを描いているということだ。

にらみ合う2人の女の子が登場する冒頭シーン。
けんかで生まれた怒りは家に帰ってもおさまらず、眠れなくなるまでつづく。
怒りが怒りを生み、なんでもかんでも友達のせいにしたくなる気持ちは
うまく描かれている。これだけでも、また一冊の絵本になるでしょう。

そんなわけで、読後は同時に2冊の絵本を読んだかの印象が残った。
意外な展開が魅力とも言えますが、どちらかに比重をおいたほうが
良かったのではないでしょうか。

通常絵本では、15の見開きが一般的。本書ではひとつ多い16になっている。
内容を盛り込みすぎたせいで、最後は見返しの提灯、出版情報、ラストシーン等が
いっしょになって雑多な感になってしまったのが惜しい。

裏表紙の出版社のレイアウトは笑えた。
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アブアアとアブブブ

2006/08/24 Thu 01:07

アブアアとアブブブアブアアとアブブブ
(2006/07)
長 新太

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崇高なるヒマつぶしの為の絵本

長さんの新刊? いえ、約30年前に出版された絵本の復刻版とのこと。
こんな作品があったんですね。
初めてみる人は、長さんのならではのナンセンスな世界を味わえて
感激することでしょう。

何をもってナンセンスとするのか と問われたら説明するのはむずかしい。
理屈で説明できない面白さや感覚を評しているのだから。
話しに明解な結論やオチもなく、読後に達成感や何かが解決されたという
スッキリ感があるわけでもない。そもそも何の為の話しか という目標の
ようなものが存在してない。

我々は、巻き紙を運ぶ2匹のあぶが、誰かの顔面に紙をパラリと
下げるという行為につきあうしかないのだ。
ただ、よくよく考えてみると、日常生活で起こることも簡単に説明できない。
知らない間に、あぶのようなモノが飛んできて、顔面に紙を下げられる
というようなコトは割と起こっているような気がする。

だから、話しを理解はできずとも、受容することはできるんだろうナ。

反対色のピンク・黄色・オレンジで描かれた 空、木、山、草原が 
さりげなく幻覚作用をもたらしている。
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みんながいこつ

2006/08/21 Mon 01:10

みんながいこつみんながいこつ
(2006/03)
たなか ひろこ

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裸ならぬ骨のつきあい
ガハハハと笑ったあとで、ドキッとさせられる作品。

がいこつ1人描くのに数十秒くらいしかかかってないのでは、
と思わせるくらいラフなタッチ。実はこれが効いている。

パステルなどでじっくりと時間をかけて描くような内容ではないからだ。
かといって中身がないわけではない。骨でありながら身も心もある話し。

それにしてもジャングルジムは可笑しい。もう一度見てみようっと。
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モカシン靴のシンデレラ

2006/08/21 Mon 01:09

モカシン靴のシンデレラモカシン靴のシンデレラ
(2005/03/17)
中沢 新一

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インディアン達のシンデレラストーリー

とある雑誌で牧野さんのイラストが紹介され、ついつい見入ってしまった。
パステルを何層にも重ねることで生まれる彼女の絵は、独特の深みが魅力だ。
微妙に変化する色の中には、ゆっくりとした時間の流れがある。

そんな彼女の作品をもっと見たくなって、この本にたどりついた。
空、湖、草原、壁など、広い空間を描いたときにパステルの効果が
最大限に発揮されている。

とくに月明かりの湖面のシーンは最高にいい。いつまでもながめていたくなる。
それだけでも充分に満足できたが、絵本なので話しについても触れておこう。

シンデレラ物語にはペローによるものだけだと思っていたが、実は北米インディアンにも
独自の語り伝えがあり、それをもとに物語化したとのことだ。
両者を比較することによって、よりいっそう味わい深いものになる。

お菓子に例えると、フランス版がカラフルで甘ーいデコレーションケーキだとすれば、
本書のほうは見た目は地味だが口に含むと甘みがゆっくり伝わる和菓子のようだ。

映像的というより、精神的な話しなので、文章だけだとやや退屈かもしれない。
牧野さんのイラストありきの作品ともいえる。
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カラス

2006/08/19 Sat 01:12

カラス (桂三枝の落語絵本シリーズ)カラス (桂三枝の落語絵本シリーズ)
(2006/06)
桂 三枝

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桂三枝の落語絵本第6弾。

第1作目の登場から1年間で、もう6冊目がでるとは、おどろきのペースだ!
(1年間でも6冊だせるような内容 という受け止め方もできますが)

いままでの作品を振り返ると、動物を語り手に人間社会をおもしろ可笑しく
風刺していたのは、道頓堀川の亀、料亭の鯛、ヤクザな野良犬がでる1・2・3作。
4作目:養豚場のブタでは、その勢いが弱まり、5作目:動物園のワニでちょっと
方向転換し人間が語り手となった。

本作では、語り手が人間であったりカラスだったりするが、絵が文に関連して
いないので、読み始めはカラスの話しなのか人間の話しなのか判りにくかった。

内容は、家出息子を心配する親の気持ちを、人間とカラスの双方の立場から語るという構成。
ドラマでよくあるシチュエーションだが、人間とカラスが途中で出会うところがミソ。

タイトルのつけ方をみると、最近は安直に動物の名前だけになっている。
シリーズとしてのこだわりは特に無いようだ。
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ワニ (

2006/08/18 Fri 01:13

ワニ (桂三枝の落語絵本シリーズ)ワニ (桂三枝の落語絵本シリーズ)
(2006/04)
桂 三枝

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これって実話

絵本にしては文字数が多いし、使われている言葉や内容からみて、
大人に向けた作品といえる。特別好きというわけではないが、
新刊がでるとついつい読んでしまうシリーズだ。

いままでの4作品を振り返ると、動物を語り手に人間社会を
おもしろ可笑しく風刺するのが 特徴になっている。
道頓堀川の亀、料亭の鯛、 ヤクザの野良犬と続き、
養豚場のブタでやや勢いがトーンダウンしたので本作には期待した。

飼育係の腕を誤って噛んでしまい、やむなく薬殺されることに
なったワニが登場。いままでの作品と違うのは、動物による語りが
いっさいないことだ。ずーっと人間側=飼育係の語りで展開される。

これがどうも解せない。同じ内容でもワニの立場で語るようにすれば
もっと味わいがでたのに残念だ。結末も落語らしい落ちがない。

第6弾に期待しよう。
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