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くじらのうた

2007/04/17 Tue 00:52

くじらのうたくじらのうた
(2007/03)
デイヴィッド ルーカス

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天災とクジラは忘れたころにやってくる?

のっけから大変なことが起こります。巨大なクジラが海辺の街に乗り上げてしまい
家々がめちゃくちゃになってしまうのですから。
ただし、ほのぼのしたマンガちっくな絵柄のせいか、それほど切実感はないですね。

街の人々はクジラをなんとかしようとしますが いい知恵が浮かびません。
そこで相談したのがフクロウ。するとフクロウは風にたずねてみるという。
ところが風もわからなかったらしく太陽に相談しにいくという。
そんなふうに、相談が大きなスケールで宇宙にまで駆けめぐっていく。
めぐりめぐって遂に出てた答えが 歌 というわけです。

それがなんで解決策になるのかとお思いでしょうが、大自然が出した答えですからね。
大自然の力であることが起こりクジラは救われます。しかし、壊れた街はどうなるのか。
こんどはクジラが歌をうたうと 海の仲間がやってきて…

奇跡的なできごとが連続する神話的な作品。

最近は地球的規模の自然災害が各地で発生している。
それだけに本作のクジラを自然環境の象徴と受け止めると
何か大きなメッセージが浮かび上がってくるのではないでしょうか。
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けっしてそうではありませんけっしてそうではありません
(2007/02)
五味 太郎

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午前6時のボクがおもったこと

画面にたいして読者の視点は遠くにおかれているようですね。
背景にくらべると登場する動物たちは とても小さく描かれています。

たとえば、「2月のねこ」は屋根の上にちょこんと乗っている。
いったい何をしているのでしょう? きっと陽なたぼっこだろう。
なんて安直に決めつけようとすると、けっしてそうではないとくる。
ちゃんとそこに居たい理由があることを教えてくれるのだ。

ものごとを見た目で勝手に判断してはいけない。
その猫は猫なりに思う所があって、そこにいるわけである。

この傍観者の視点と当事者の視点とのズレが心地よい。
ちょっとだけ心が広がった気になれる。

こんな画面と文が1月から12月まである。
ご丁寧に目次までついているけど、これも絵の一部と見なしたい。

けっしてうそではありません。
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おとうさん

2007/04/15 Sun 00:54

おとうさんおとうさん
(2000)
長島 正和

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未来の「おとうさん」へ託したメッセージ

「おとうさん」という言葉の使い方に特徴がある作品ですね。
本書にでてくる「おとうさん」が意味しているものは、かなり深いです。

ぼくのおとうさんの おとうさんの おとうさんの…と何度も繰り返すことで 
人間の命を基準とした大きな時間の流れがしっかりと伝わってきます。
また、その時々のおとうさんの職業が、その時代の文明を象徴しています。
さらに、父と子という関係の連続は、人類の存続をも表していると言えましょう。

始まりのおとうさんは猟師、鉄砲をかついで獲物をとっていたとのこと。
そして、木こり、農業・・・ときて やがては宇宙飛行士へと変遷していく。
途中で「ぼくのおとうさんが~」 から 「ぼくがおとうさんになったら、こどもが~」と
仮定の話しになるのがミソ。遂には未開の星に踏み込み、そこでも猟師になって
獲物をとるのかな で終わる。めぐりめぐって元にもどる構成だ。ウマイ!
読者は人類の営みを時空を超えた視点で俯瞰できるというわけです。

絵は暗示的で必要最小限のものしか描かれていません。
しかし定点観測風の描き方をしているので、人類の繁栄と引き換えに
失われているものも ちゃんと判るようになっています。

振り出しに戻るかのようなラストは、同じ犠牲は繰り返さないで欲しいという、
メッセージでしょう。これから「おとうさん」になる者へのね。
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トリッポンと王様

2007/04/14 Sat 00:56

トリッポンと王様トリッポンと王様
(2007/03)
萩尾 望都

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8人いる

へぇー あの少女漫画家の萩尾望都さんが絵本を出したんですね。
といっても絵はこみねさんですが、少女漫画的な空気の絵は相性ピッタリ。

主人公はトリッポンという男の子。こびとの王様との出会いから始まる不思議な話しです。
この不思議さは夢をみて目覚めた直後の感覚にきわめて近い。
つまり他人からみると唐突に思える展開なのですが、夢をみた当人にはちゃんと流れとして
つながっているという、極めて主観的な世界が描かれている印象なのです。

誰の主観かといえば、この場合はトリッポンとなるでしょう。
わがまま言い放題でありながらも、こびとであるが故に力のおよぶ範囲が
限られている王様は、トリッポンの別の姿と解釈していいのでは。
家来が8人いるのも何か意味がありそう。彼の年齢かもしれない。

ラストで明らかになるのは、家来の中の1人が特別な存在であること。
この辺りもトリッポンの潜在意識における欲求が表出しているように思えてならない。

しかしながら、他人のみた夢を聞いても当人ほどは共感しがたいように、
この作品も話しに入っていける人と行けない人とに別れるかもしれません。

入って行けなかった人は夢分析的に解釈を楽しむのも手ですね。
ひょっとしてトンでもない事が明らかになるかも(笑)
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たまごのおうさま

2007/04/13 Fri 00:57

たまごのおうさまたまごのおうさま
(2007/02)
かとう まふみ

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たまごの王様 より

よくきたな。 
わしは たまごの王様じゃ。
この場をかりて、きみに おねがいしたいことがあるのじゃ。

わしの【世界つるつる大作戦】に協力してもらえんだろうか。
えっ それはどんな作戦かって?

えっへん! つまりじゃな。世界中のすべての人間の頭をわしのように
つるつるにしてしまうという すばらしい計画じゃよ。

実は先日の夜 わしらは作戦を実行しようとしたんじゃが、
途中でユカちゃんという女の子に中止させられてのう。
今でもそれが心残りでたまらんのじゃよ。

そこでおねがいじゃ。
今日にでも床屋にいって 頭をつるつるにしてもらえんか。

つるつるは本当にいいもんじゃぞ。
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シモンのおとしもの

2007/04/12 Thu 00:58

シモンのおとしものシモンのおとしもの
(2007/03)
バーバラ マクリントック

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昔のパリをゆったりと散策

まるでアールヌーボーの時代を彷彿させる昔懐かしいタッチの絵なので、
かなり古い作品かとおもいきや最近の出版なんですね。
舞台は19世紀末のパリ。馬車が石畳の街頭を走り回わり女性は派手な帽子をかぶっている。

そんな中をシモンという男の子が学校から帰宅するまでを追い続けるという構成。
ところが彼は、寄り道しまくりで、さらに色々な落とし物をして行きます。
本やマフラーといった小物に始まり、上着やセータまでエスカレート。

いったいどこに落したのか? 読者もいっしょに探すはめになります。
絵探し絵本ともいえますが、さほど難しくはないのでストーリの流れも楽しめます。
しかもパリの名所めぐりまでできてしまいます。
見返しの地図に彼の通ったルートが示してあるので、パリに行ったときに
絵本を片手におなじ道を歩いてみるのも一興かもしれません(笑)

よく見ると当時の有名人もさりげなく登場しているようですね。
巻末には丁寧な解説があり、歴史的な理解を深めることもできます。
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紙しばい屋さん

2007/04/11 Wed 00:59

紙しばい屋さん紙しばい屋さん
(2007/03)
アレン セイ

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時空を超えて届く紙芝居屋さんの声

最後に紙芝居をみたのは、いつだったかなあ。
確か保育園の頃だったような気がするが、はっきりと覚えていない。
かつては街頭で子供たちの人気を集めていたといっても
なかなか実感がわかない人も多いと思います。

本書の紙芝居屋さんも今では、すっかりおじいさんになって昔を
懐かしみます。ある日ふと思い立って、ひと仕事しようと数十年ぶりに
街へ出かけますが、そこにはかつての公園が姿を消しビルや車だらけの世界。
それでもおじいさんは拍子木を叩いて呼び込みをします。すると…

幼少時代を日本で過ごしたアラン・セイが、失われていく日本の文化に想いを
寄せて絵本化した、心温まるファンタジー。
途中で絵柄が紙芝居調にかわるところが見ものです。
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ふねにのったねこのヘンリーふねにのったねこのヘンリー
(2007/02)
メリー カルホーン

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映画のように臨場感あふれる猫の冒険談

好奇心旺盛な猫のヘンリー。ヨットへ潜入し、男の子やパパといっしょに海へ出かけます。
エッ、水をきらう猫が船にのる!? という疑問も魚の匂いという一文で納得。

注目は、まるで本当に実在しているかのように生き生きとしたヘンリーの描写。
表情や動き、毛並みに至るまで 本当にリアルに描かれているのです。
変にデフォルメしたりキャラクター化してないので、これは実際に起った話しでは
と錯覚してしまう読者も多いのでは。

そう! ヘンリーはヨットに乗るだけでなく、パパのピンチを救うべく大活躍をするのです。
猫にこんなことできるのか? いやいやボクは信じますヨ。ヘンリーだったら可能です。
よくやった!と思わず大拍手のラスト。

ねこのヘンリーはシリーズとして、他にも出ているんですね。
早速、よんでみようかな。
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ふってきました

2007/04/08 Sun 01:01

ふってきました (講談社の創作絵本)ふってきました (講談社の創作絵本)
(2007/02/01)
もとした いづみ

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大自然の変換ミスにほんろうされて

絵本の中では物理法則を無視した現象がよく起るので困ってしまう。
本作の冒頭では、怪しい雲行きの絵に「いまにもふってきそうなそらです」の一文。
いきなり、とんでもないものがふってくる。こんなことが実際に起ったら大変だ。
といっても、地球環境の乱れをするどく風刺しているというわけではないんですね。
要するにナンセンス物なのです。

雨男、雨女ということばがあるが、この場合の女の子は○○女と言えばいいのか。

絵本の中ではナンセンスな現象がよく起るので楽しくなってしまう。
ただし、それは読者の期待や想像を超えたものでなければならない。
という意味で言えば、このラストは賛否がわかれるかもしれないですね。
話しとしては納まりがいいのですが、意外性がもっと欲しかった。

たとえば女の子自身が○○の所へ落下していくとか。
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桃太郎

2007/04/07 Sat 01:02

桃太郎桃太郎
(2005/06/30)
芥川 龍之介

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この桃太郎は我々の中にいる

さすが希代の文豪と画家の手にかかると昔話のパロディもここまで
格調高くなるものなんですね。しかも一度みたら夢にでてきそうなほど
強烈なインパクトがある絵本です。

ここで子供心に感じていた「ももたろう」への疑問を思い出してください。
たとえば
【Q1】大きな桃はどこから流れてきたのか?
【Q2】なぜ桃の中に人間が入っているのか?
【Q3】犬、猿、雉のお供は頼りになるのか?
【Q4】鬼から宝物を略奪するのは悪事では?

芥川さんがしっかりとした世界観を構築していることに加え、
寺門さんの絵が加わることで、昔話が実にリアルな物語として迫ってきました。

本作の桃太郎は髪も服も(頭の中も)ピンクオンリー。まるで渋原にいる若者のよう。
黒を基調とした背景とあいまって、画面からは毒々しいオーラが放射されまくってます。
しかし、この桃太郎に共感してしまう人も少なくないのではと思います。
なぜなら話しに一貫して流れているのが、ある意味 現代人的本音だから。
損得計算・自分本位・無目的な行動・弱い者いじめ etc.

登場人物や動物の内面に現代人のゆかんだ価値観をあてはめていくと、
勧善懲悪ヒーロ物語が月面宙返り3回転半ひっくり返り、まったく別な物語に
なってしまうのです。

読者は素朴な疑問から恐怖の解答を得ることでしょう。
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