人魚姫
2007/06/30 Sat 10:50
![]() | 人魚姫 (2007/06/26) アンデルセン 商品詳細を見る |
名作を華麗なアートワークで味わえる贅沢な絵本
人魚姫といえば、知らないひとはいないくらい有名な作品。
子どもの頃に童話として読んだ方が多いと思いますが、この作品は
大人になって再び読んでみると、違った感じを受けると思います。
悲しみ、憧れ、苦しみ、やさしさ、もどかしさ、叶わぬ想い…
話しの中でたどる人魚姫の心の動きひとつひとつが、自分自身の人生で
直面した様々なシーンとオーバーラップしてきました。
大人として読んで、最も切実に感じた事。それは
何かを獲得するには何かを犠牲にしなければならない ということだ。
ナイフを手にした人魚姫の最後の決断。現代の女性は共感できないひとも
少なくないかもね… しかし、それもまた良しと思います。
本書を特別なものにしているのは、清川さんによる物語に添えられた絵の美しさ。
前作「幸せな王子」でも魅せてくれた、糸や布やビーズから魔法のように紡ぎだす
芸術的画面は一見の価値あり。ぜひご覧いただきたい。華やかな海底での舞踏会から、
不気味な魔女の森へと移るシーンは見どころです。
そんなわけで、今、人魚姫をよむならこの作品しかありません。
もりでうまれたおんなのこ
2007/06/30 Sat 10:49
![]() | もりでうまれたおんなのこ (絵本のおもちゃばこ) (2007/04) 礒 みゆき 商品詳細を見る |
心の鎖を解き放つ出会い
「あなたは いいこ だから わたしは あなたが すき」
親に言われ続けてきたこの言葉が 女の子にとって心の鎖になっている。
誰からも「いいこ」であろうとするあまり、自分を押し殺してしまう姿が
たまらなく痛々しい。
絵本でよく描かれる仲のよい親子関係は本書には無い。
女の子は「いいこ」という呪縛の犠牲になって心が破綻していくのだ。
しかし、親がそのことを知る機会は永遠に無いのです… なんともむなしい。
世の中には、一方的に自分の価値観を押し付けてくる者も多いですが、
それが子どものように立場に弱い者に対して行われると、無性に腹が立つ。
押し殺された気持ちは、心の底に積もり積もって、いつかどこかで噴き出す
ことを覚えていて欲しい。
物語ならば救いもある。
女の子はクマとの出会いによって、本来の自分と出会えたのが幸いだ。
あかちゃんおばけおつかいできるよ
2007/06/28 Thu 10:52
![]() | あかちゃんおばけおつかいできるよ (あかちゃんおばけシリーズ) (2007/06/01) しらかた みお 商品詳細を見る |
台所に飾りたくなる
あかちゃんおばけが、おばあちゃんの誕生日にケーキを
とどけるという、ほのぼのとした作品。
見どころは、クレイ(粘土)でつくった半立体の絵。
話しにでてくる、ケーキやお菓子が実においしそうにできている。
絵がそのまま食べられるんじゃないかと思ってしまうくらいだ。
絵には時間も手間もかかっているでしょうが、完成するまでの
プロセスはきっと楽しいものがあると想像します。
クレイをこねて、形をつくって、盛りつけて、色味を加えて と
考えると、まるで料理といっしょですからね。
そんなアトリエの空気まで味わってみたい絵本。
もくもくやかん (講談社の創作絵本)
2007/06/27 Wed 10:53
![]() | もくもくやかん (講談社の創作絵本) (2007/05/18) かがくい ひろし 商品詳細を見る |
暑い日にどうぞ
表紙の手足の生えた「やかん」がいい。妙に生々しさがあって、
不気味になる一歩手前でちょうどいい味をだしている。
一仕事終えて、プシューッ と一息いれているところかな。
やかんには ポット、赤やかん、じょうろ、きゅうす と4人の仲間が
いまして、彼らが力をあわせて あることに挑んだという、
実はかなりスケールの大きい話し。
物に生命感をあたえる かがくいさんの絵が最高に生きた
ナンセンス土砂降り警報100%の絵本。
いつだって長さんがいて…
2007/06/25 Mon 10:55
![]() | いつだって長さんがいて… (2006/11) 今江 祥智 商品詳細を見る |
こちょこちょが飛んでくる
さて…
長さんなら なんと言うだろうか?
答えをしっているのだろうか?
いったいどうしたらいいんだろう?
それは求めれば絵本の中にみつかるだろうか?
どこかに描かれているのだろうか?
いったい何処にいけばいいんだろう?
指でさわると全て隠れてしまうくらい小さな絵が載っている。
そこには小さなクジラを抱く長さんが描いてある。
添えられた今江さんの文も味があって一番好きだ。
心をくすぐられるような快感。
確かに長さんがいた。
ライオンのおとしもの
2007/06/25 Mon 10:54
![]() | ライオンのおとしもの (2007/05) いとう みき 商品詳細を見る |
表紙は2回楽しめる
なさけない姿であるく表紙のライオン。実は王様らしい。
先祖代々受け継いできた王冠をなくしてしまって
探しまわっているところなのである。
そんなライオンに出会った女の子とカラス(?)が 彼につきあって
いっしょにあちこちを探しまわるという話しです。
みどころは透明感と色彩にあふれた絵ですね。
草原、川、岩山、森 と次々にあらわれるシーンがどれも美しい。
ライオンには悪いけど、王冠探しが終わらないで、ずーっと続けば
いろいろな所へ行けていいな なんて気持ちになりました。
中でも花畑のシーンにはうっとり。誰もが夢見心地になることでしょう。
で、王冠はみつかったのか? ここでは言えませんね。
ボクの想像ですが、翌日も3人は王冠探しに出かけたのでは
ないでしょうか。表紙のライオンをもう一度みると、わざとらしい眼が
それを示しているような気がしてならない。
いぬかって!
2007/06/24 Sun 10:57
![]() | いぬかって! (レインボーえほん) (2006/11) のぶみ 商品詳細を見る |
命を飼うということは
犬を飼いたい男の子を描いた絵本。でも本作はひねりが効いている。
というのは、小鳥好きにとっては、涙なくしてよめない内容なので。
物語のなかである事件が起ります。
離れた視点でみれば、運命のいたずらといえます。
ところが当事者の男の子にとっては、衝撃的な大事件が。
よくもまあこんな切ない設定を生み出せるものですね。
失ってみて初めてわかることって確かにあります。
それを絵本の中で仮想体験できる異色作。
終盤の男の子のセリフは少々説明っぽいかな。
僕への小さな旅
2007/06/23 Sat 10:58
![]() | 僕への小さな旅 (2006/09) 伊藤 正道 商品詳細を見る |
心でたどる思い出の旅へ
自分がかつて過ごした懐かしい場所を、ふと訪ねてみたくなることってありますよね。
通ったところ、遊んだところ、旅したところ、働いたところ、住んだところ などなど…
実際に行ってみると、いろいろな想いが溢れ出てくるし、いろいろな発見があったりもする。
そこに行くと、空想の中で今の自分が昔の自分へと心のタイムスリップをする。
かつて悩んでいたこと、出来なかったことも、今の自分だったら難なくやれる。
そこに自分自身の成長を見いだす事が出来る。
あるいは、時間とともに消えて行ったものに気づいたりもする。
将来への夢、純粋なひたむきさ、周りで自分を支えてくれたもの などなど…
そして今という時の大切さを実感する。
海水浴とか森林浴になぞらえて「時間浴」とでも言おうか。
それらにきわめて近い体験を得られたのがこの作品。
都会で生活する「僕」が、ふと少年時代に夏を過ごした海辺の家を訪ねる。
その家の屋根裏に残っていた自分のおもちゃ箱がきっかけで、
長年にわたって忘れていたものを取り戻すのだ。
おそらく作者の個人的体験がもとになっていると思いますが、
共感できる人は多いのではないでしょうか。
夏休みという無限の時間や 果てしない青空と雲と海に自分の夢を投影した
ことのある人には 特におすすめの大人の絵本。
つばさをもらったライオン
2007/06/22 Fri 10:59
![]() | つばさをもらったライオン (2007/04) クリス コノヴァー 商品詳細を見る |
あなたは翼をもってますか?
鬼に金棒といいますが、本書の場合はライオンに翼ですね。
しかも可愛いライオンの王子様ときたらたまらない。
豪華な宮殿で贅沢三昧の暮らしを送っています。
そんな王子様がよちよち歩きならぬ、よちよち飛行で
迷いこんでしまったのが、ライバル国のオットー王のところ。
傷ついた王子をみつけたオットー王がおこなったことは?
実は翼の意味するところは、もうひとつあって、
体に生えたものではなく、心あるいは知性を飛翔させる翼も
あるのですね。それを白熊のオットー王から得るという味な話しです。
ここからはボクの空想ですが、体に生えた翼は王子が成長するに
つれて無くなっていくような気がします。そのかわり王子の得た心の翼は
王国のみんなに広がっていくはずです。そして異文化を理解し合い
真の意味で豊かな国が実現している と確信します。
ちなみに「としょかんライオン」という絵本もあるので
併せて読んでみれば、後日談として楽しめますよ。
がまの油
2007/06/21 Thu 11:00
![]() | がまの油 (声にだすことばえほん) (2005/01) 斎藤 孝 商品詳細を見る |
ご用とお急ぎのないかたは 声にだして読んでおいで
あははははっ これは愉快!
がまの油は、小さい頃、おやじが戯れにやっていたの聞いたことがある。
なんとなく知っている人も多いとおもいますが、本書ではこの有名な物売り口上を
隅から隅までフルコースで堪能できます。しかも絵は長谷川さんだ。
絵に込められたユーモアもなかなかの饒舌ぶりで、まさにエンターテイメント
極まれりといった感だ。
リズミカルな口上がそのまま文章になっているので、
声に出して読めば、きっと快感に酔いしれること間違いなし。
読んで 見て 聞かせて 楽しめる絵本といえます。
ボクは今も大声で読みたい気分なんだけど夜中なので…
まずは誰もいないところで(こっそり)大声で読むことにしよう。
ああ早く読みたくてたまらない!
このパフォーマンスを英語でやったら外国人にも受けるだろうな。
英訳版はどっかにないんだろうか?
もしインドにいったらコブラ使いに対抗してひと口上やってやるぞ。