おふろや
2008/10/28 Tue 22:59
![]() | おふろや (2008/09) 黒田 愛 商品詳細を見る |
再び黒田さんの作品に浸かる
前作のレビューでもかきましたが、
ギャラリーで黒田さんの絵本コンペ最優秀作原画を目にしたのは2005年の夏でした。
それは彼女が若くして亡くなったことを知ったあとだったので、非常に複雑な想いでした。
その想いは作品の魅力に比例して大きくなるし、彼女の絵本を手にするときは
避けがたい事実として のしかかってきます。しかし同情的な視点で作品をみるのは
どうかという想いも同時にあります。少なくとも絵本を手にしているあいだは
絵本の世界を純粋に楽しむべきでしょう。
ということを考えながら、この「おふろや」を3年ぶりに目にしたわけですが、
印刷された状態になっても、絵から伝わるパワーは健在! 上記の心配は
余計なものでした。特に女の子の顔は印象的。吸い込まれるように大きな眼と
実のつまった果物のようにぷっくりしたほっぺ。言葉よりも先に思念が
溢れ出し、いつの間にか画面の主導権をにぎっているという不思議な存在感。
そんな女の子といっしょに、色とりどりの植物で囲まれた お風呂を
のんびりと堪能しましょう。ゆめゆめお風呂の栓をかってに抜かぬよう…
くじらのバース
2008/10/27 Mon 23:02
![]() | くじらのバース (2008/02) 村上 康成 商品詳細を見る |
ついた傷は成長の証
ザトウクジラののバースは、毎年、冬になると南の海へもどってきます。
南の海にはちいさな島があって、そこにはナリンという男の子がいます。
そして彼らは同い年。
海を泳ぎ回る大きなクジラと、陸にいる野球好きの少年。
姿形は違えど、お互い地球に住む者どおし。この星の公転周期である一年ごとに
お互いの成長を認め合うような関係が、雄大なスケールでさわやかに描かれています。
地球にいるもの皆が、どこかで繋がりながら生き続けているという
奇蹟をさりげなく実感させられました。
そういえば、ボクもインドにやってきて今月で一年が過ぎました。
去年はできなかったけど、今ならできること…ちょっとは増えたかな
ボイジャーくん
2008/10/26 Sun 23:03
![]() | ボイジャーくん (2008/09) 遠藤 賢司 商品詳細を見る |
宇宙からとどく声に耳を澄まそう
宇宙の旅を続ける惑星探査機ボイジャー君から 読者へのメッセージを
伝えるという構成の絵本です。地球を飛び出し、いろいろなものに
遭遇してきたボイジャー君ならではの言葉は、心に染入るものがありました。
メッセージは読む人や、読むときの気持ちによって、様々な受け止めかた
ができるでしょう。
ほら! そっと目を閉じてレーダーのように耳を澄ますと、
心の中の宇宙にボイジャー君からの声がとどいてきませんか?
レコードジャケットのように大きな絵本なので、
ページを開くたびに、荒井さんの描く宇宙が目の前いっぱいに広がります。
画面の中を気ままに飛び回ったり、迫力あるシーンに圧倒されたりと
まるで自分も宇宙にいるかのような気持ちになりました。
絵本の元になっているのは、音楽家、遠藤賢司による1993年録音の「ボイジャー君」。
付録のCDで音楽や肉声を通し、この優しさに満ちた世界を感じることもできます。
視覚、聴覚ともに楽しめる作品です。
うさぎのさとうくん つきよ
2008/10/19 Sun 23:04
![]() | うさぎのさとうくん つきよ (おひさまのほん) (2008/09/19) 相野谷 由起 商品詳細を見る |
ところで月ってどんな味?
前作でうさぎのさとうくんならではの、独特の世界を知らされてしまった
ボクにとって、本書は待ちに待った登場です。
タイトルにもあるとおり、今回は月の魅力が充分に堪能できます。
月といっても、さとうくんの世界の月はちょっと風変わり。
夜空へ漕ぎだしたり、デザートにしたり、寝室へ持ち込んだりと
魔法のようなことが当たり前のようにできてしまうのです!
月にかぎらず、みずたまり、雨、海、落ち葉、花、といった
自然の風物を生かすことにかけては、彼ほど天才的うさぎは
いないでしょう。
都会の喧噪を忘れ、心地よい気持ちに浸れる絵本です。
100かいだてのいえ
2008/10/14 Tue 23:06
![]() | 100かいだてのいえ (2008/05) 岩井 俊雄 商品詳細を見る |
ほのぼのタッチのお宅訪問絵本
縦にページをめくり、下から上へ読むという、まるで本当に
階段やはしごを登っているような気分で楽しめる絵本。
めざすは100階だての家の最上階。男の子を招待してくれたのは
いったい誰で、そこには何があるのか?
100階だての家は断面図状態で描かれ中の様子がわかりやすく
なっています。10階ごとに住んでいる動物たちが変り、かれらが
生活している様子や出会いも楽しみつつマイペースで読み進めら
れるのがいいですね。
見開きで約60cm。全階分では約7mにもなります。
もう一冊買って、ページを全部をつなげて見るのも面白いのでは。
なんて思いました。
おうじょさまとなかまたち―おうじょさまとゾウとウマとイヌとネコとハリネズミとトリとハチとイモムシのおはなし
2008/10/13 Mon 23:07
![]() | おうじょさまとなかまたち―おうじょさまとゾウとウマとイヌとネコとハリネズミとトリとハチとイモムシのおはなし (2008/06) アローナ フランケル 商品詳細を見る |
イスラエルの作家が描いた平和の心
王女さまと仲間たちの国へやってきたイモムシの設定そのものが、
すでに大きな物語性をはらんでいます。
はらぺこにして、くいしんぼう 誰かにいじめられると
おなかいっぱいになって 大きくなるというのです。
つまり成長するためには他者からの暴力をうけなければならず、
そのためには誰かをからかったり脅かしたりし続けなければならない。
なんとも因果な宿命を背負ったものです。
実はイモムシの中に別のものが羽ばたく可能性も
秘めているという点がポイントですね。
もっともそんなことは誰も知らないわけですから、
からかわれたりしたら仕返しをしたくなるのが人の常。
はたしてこのイモムシが救われる道はあるのか?
われわれには恐怖や脅しに勝る手段があることを
暗につたえてくれる秀作。
I Am Invited to a Party!
2008/10/12 Sun 23:10
![]() | I Am Invited to a Party! (Elephant & Piggie Book) (2008/06/02) Mo Willems 商品詳細を見る |
初めてのパーティでワクワクドキドキ
生まれて初めてパーティに招待されたブタさんは、
うれしい反面、何を準備すればいいのかちょっと心配。
そこで仲良しのゾウくんが、俺にまかせろとばかりに次々と
アドバイスをはじめるのですが、本当のところ彼もわかって
いるのかどうか、だんだん怪しくなってきて…
シンプルな英語と、繰り返しパターンをつかったコント風の展開で、
肩の力を抜いて楽しめる作品です。
でも実際初めてのパーティって緊張しますよね。
ボク自身も先週、インドの結婚パーティに招かれたのですが、
日本とは全く段取りや雰囲気が異なっていて、かなりとまどいました。
厳かなお祈りが行われている傍らで、ポップミュージックにのって
勝手にステージで踊りまくる人たちはいるし、親戚の子どもたちは
大きな風船をかかえながら追いかけっこをしているしで状況把握不能状態に。
ボクの頭の中では?マークと!マークが踊りながら追いかけっこを
していました(笑)
ぴいすけのそら
2008/10/12 Sun 23:09
![]() | ぴいすけのそら (2008/09) さえぐさ ひろこ 商品詳細を見る |
タイトルの意味はわかりますが…
ぴいすけは男の子の誕生日に、おじいちゃんからプレゼント
されたオカメインコだ。本当は子犬がほしかったと思いつつも
いつの間にか ぴいすけと仲良くなっていく様子は
個人的にはかなり共感できた。
実は、ボクの(日本の)家にもオカメインコがいるので、
本作のような設定だと、無意識に自分ちのインコの姿を
投影してしまうせいもあるのですが。
ただ一歩引いて、みてみると何かが足りないような
気がしてならない。ペットとの友情を描いた作品はたくさん
ありますが、それらと比較すると絵本だからこそできることが、
もっと深いところにあるように思います。
どちらかというと、男の子の一方的な想いのほうが
優先されていて、ぴいすけ側の視点が伝わりきれてない
せいかもしれません。
ワニばあちゃん
2008/10/12 Sun 23:08
![]() | ワニばあちゃん (2008/05) おくはら ゆめ 商品詳細を見る |
仲良しとはいったい
「顔はみえないけれど、ふたりはこれからもなかよしだ!」
これは、本の帯にある紹介文。
二人というのは、ワニばあちゃんとアリじいちゃん。
ワニばあちゃんの鼻の穴にアリじいちゃんが住んでいるという
摩訶不思議な関係なのである。
鼻の穴の中に住まわれたら、ムズムズしてたまらないだろうとか、
ワニには鼻毛があったっけ? なんて現実的なことはひとまず
忘れてください。これは絵本ならではの特別な状況設定なのである。
二人の関係という点でみると、どうもアリじいちゃんの方が
得しているようにみえる。安全な住みかはあるし、働かなくても
食べ物は手に入るんですから。ワニばあちゃんにとっては、
いつでも そばに話し相手がいるという精神的な満足感の
ほうが大きいようですが、バランス的にはどうなんでしょう?
このユニークな作品を世に出すならば、作者はいかにして
彼らの関係が築かれてきたかも描く義務があるのではと思います。
というか単純に知りたいですね。
それがわかるまで星ひとつは保留とさせてください。
たぶん、ワニばあちゃんのピンチをアリじいちゃんが
救ったというエピソードになるのだと想像しますが。
ブラッキンダー
2008/10/02 Thu 23:12
![]() | ブラッキンダー (こどもプレス) (こどもプレス) (2008/08/17) スズキ コージ 商品詳細を見る |
透明感あふれる黒い世界へ
つぼやビンの中というのは、魔物が潜むのに好都合なのだろうか。
昔話では魔人や化け物が、よくとじこめられていたりしますが、
本書で活躍するブラッキンはかなりクセの強いやつです。
潜んでいるのは机の上の黒いインクビンの中。
主人の寝ている間に、ビンのふたを開けて登場したかとおもうと、
机の上を歩き回って芸術的な?痕跡を残していく。
そればかりか、出来立ての船の模型を乗っ取り、勝手に家の外へ
飛び出してしまうのです。旅に同行するのは鉢植えサボテンのキンダーちゃん。
二人あわせて、タイトルのブラッキンダーというわけです。
空飛ぶ船での航海は、かなりぶっとんだもので、スズキコージさんで
なければ描けないような、とんでもない出来事が当たり前のように
繰り広げられます。最後はきちんと家にもどってくるので、ひと安心。
最近家の中にこもりがちな方、非日常的な気分を味わいたい方に
おすすめ。
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