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むらさきふうせん

2008/12/31 Wed 12:30

むらさきふうせんむらさきふうせん
(2008/06)
クリス ラシュカ

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軽い風船に込められた重み

冒頭にある作者の解説によれば、
自分の死を意識するようになった子どもたちは、今の気持ちを
絵にあらわすとき、ふわふわ漂う青や紫の風船を描くそうだ。

天に向かう覚悟が風船となりつつも、しだいに広がる仲間との
距離感が孤独を暗示する色を選ばせるのだろうか。
タイトルにもなっている紫の風船には、そんな複雑な想いが
同居しているように感じられました。

この作品では人を風船にみたて、死という運命にどう向き合えば
よいかをやさしく語りかけてくれます。死を迎える者と
残さていく者たちが力を合わせることの大きな意味が込められています。

最近よく伝えられるようになった孤独死のニュースを思い返すと
本書のメッセージがよりいっそう響いてきました。

2008年も残すところあとわずか。今年の絵本を振り返ると
死をあつかった作品が多くみられたように思います。
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ニューヨークのタカ ペールメール―ほんとうにあったおはなしニューヨークのタカ ペールメール―ほんとうにあったおはなし
(2008/04)
ジャネット ウィンター

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都会に生きる仲間に出会える

「とんでとんでサンフランシスコ/ドン フリーマン作」
これはサンフランシスコを舞台に、鳩と人間の交流を描いた心温まる絵本。
レビューの中で、こんなドラマが世界のどこかで起こっていると信じたい
と書いたのですが、似たような話が実際にあったのですね。

本作の舞台はニューヨーク。高層ビルに巣をつくったタカ夫婦と
それを温かく見守る市民を描いたドキュメンタリー絵本です。

ボクが予備校に電車通学していた頃、駅の構内にツバメの巣がありました。
毎日それを観るのを楽しみにしていたものです。日々成長する小鳥たち
を応援しつつ、実は自分自身を励ましていたのかもしれません。

ニューヨークの人たちも、タカの家族を見守りつつ、都会のビルに巣を
作ることを許容する人間の温かさを、そこに見いだしているのでは。

図案化された絵はやや現実味に欠けますが、下記のサイトで
ペールメールの写真をみることができます。彼は今でも健在です!
http://www.palemale.com/
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ぼくとおとうさんのテッド

2008/12/29 Mon 12:35

ぼくとおとうさんのテッドぼくとおとうさんのテッド
(2008/05)
トニー ディテルリッジ

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遊び方の極意が描かれています

この絵本はいったい誰の為のものか?
子ども向けというよりは、毎日毎日、仕事に明け暮れて、
遊び心を忘れたパパに向けての作品と言えます。

誰しも子どもの頃は遊びの天才。
身の回りの全てをキャンパスにできるアーティストになったり、
オモチャの光線銃ひとつで宇宙へ飛び出せるヒーローになったり、
ドロンコや石ころでお菓子を作れるコックになったりする方法を
知っていたのでは。

そんな事もう忘れた? ならば本書を開いてください。
遊びの専門家が登場し、もう一度楽しい世界へ導いてくれますよ。
会社の壁に落書きするのは、さすがに難易度が高いですが、
無理ではないことに気づくと思います。

裏表紙に書かれた警告におもわずニンマリ!
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ぼくとハコイヌ―ハコイヌのたんじょうぼくとハコイヌ―ハコイヌのたんじょう
(2008/10)
さとう えいめい

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イラストによるハコイヌ絵本ですが

前々から気になっていたのが、ハコイヌなるものの存在。
ハコイヌとは不要になったダンボール箱を子犬の形に
組み合わせたキャラクター。

ロボットのような四角い形ながら、ダンボールという素材を
用いたところがポイントで、生活感や親しみやすさが伝わり、
存在そのものに、おもわず共感してしまいます。
廃材が生まれ変わるという今の時代にマッチしたコンセプトも
見逃せないでしょう。

ボクはまだ読んでいませんが、同作者の写真絵本「ハコイヌ」に
ひとめ惚れしてしまった方も少なくないのでは。

そんなハコイヌの誕生をイラストで描いたのが本書。
犬を飼いたい男の子が作ったハコイヌが、引っ越しで
ゴミとまちがえられ、おいてけぼりになってしまう。

まあ、展開としてはありがちなので、できれば本作も
写真で構成するとか、ダンボールで装丁をするとか
もうひと工夫が欲しかった。
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ジョンがきょうりゅうになったひジョンがきょうりゅうになったひ
(2008/03)
つばた みつひろ

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2回目には違った読み方ができます

男の子の視点で飼い犬のジョンを描いたユニークな作品。
猫からさえも逃げ回るほどの弱虫で散歩ぎらいと思っていた
ジョンが、ある日突然 恐竜トリケラトプスになってしまう。

するといつもとちがって、町中を堂々と歩くし、公園でも
元気に追いかけっこを楽しむようになった。男の子は大得意。
しかし、真実はそうではなかった。

同じ物事でも、ネガティブにみるかポジティブにみるかで
受け止め方も変わってくるもの。
本当に変わったのジョンではなかったのですね…
ん~深いものがあります。

後半のジョンと男の子の会話がやや説明的かな。
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えんぴつくん

2008/12/26 Fri 12:38

えんぴつくんえんぴつくん
(2008/12)
アラン アルバーグ

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創造力が試されるとき

自分が紙に描いたキャラクターが、本当に現れるとしたら何を描きますか?
美味しい料理、かっこいい自動車、お城のような家・・・

本書に登場するえんぴつくんは、そんな夢のような力があります。
そして彼が最初に描いたのが男の子。すると男の子は犬を描いて欲しい
言ってきます。犬を描くと、今度は犬が猫が欲しいと言ってきます。

そんな調子で人や物が増えて世界がどんどん広がるのですが、
えんぴつくんへの要求も増えていくばかり。
さて、そこで彼は何を描いたか?

世界を築くという作業はたいへんなものですね。
それに比べれば壊すのは簡単かもしれません… 
なんて考えると、今の世の中の混乱も見えざる神の力が
働いて壊しにかかっているのではないだろうか。
失礼、ちょっと発想が飛躍し過ぎました。

この作品は素直に楽しんでください。
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ことばのくにのマジックショーことばのくにのマジックショー
(2008/07)
中川 ひろたか大友 剛

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これはいったい何の本

軽やかな響きの言葉、カラフルで空想的な絵、簡単に楽しめる手品
の三位一体となった絵本。手品は全部で9つ紹介されています。

手品そのものは、割と良く知られたものが大半でしたが、
本書のような呪文や物語仕立てで演じてみたら、不思議さや
楽しさが倍増すること請け合いです。

そんな意味では 読み聞かせならぬ、演じ聞かせ絵本と
いったところか。

お正月の演芸ネタにひとついかが?
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ヘラジカのオーラフが、サンタクロースと友だちになったわけヘラジカのオーラフが、サンタクロースと友だちになったわけ
(2008/10)
フォルカー クリーゲル

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異色コンビのクリスマス絵本

サンタクロースといえば、りっばな白いひげと威風堂々とした姿、
相棒のトナカイと共に夜空をソリで飛び回る姿を思い浮かべるのでは。

しかし、この作品に登場するサンタクロースはひと味違う。
そのへんにいる、気のいいおじいちゃんといった風体で、
乗っているのはポンコツ車。しかも海賊のように片目なのだ。
自慢の大きな角を失ったヘラジカのオーラフはそんなサンタと
出会って意気投合する。

描かれているのは魔法ではけっして手に入らない人情味。
買い物で値切るサンタなんて、他では見れませんよ。

作者の誕生日はクリスマスイブとのこと。
絵本の中には奇蹟めいたことは起こりませんが、
この作品の背景には作者のたどってきた人生の一端が
垣間見えるように思います。
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DEVI ART FOUNDATION(GURGAON)

2008/12/24 Wed 00:16

インド現代アートのアジトが出現

赤錆をおびた鉄の壁が特徴的な怪しい雰囲気の建物。実はアートギャラリーなのです。
絵画、彫刻、写真、オブジェ、ビデオアート等、充実した内容ながら、入場は無料。
ここを知ったのは「pen No.235」にて。近所の情報を日本からの雑誌でつかむとは(苦笑)

devi art

devi art2devi art3
 
WHERE IN THE WORLD

今回の展示作品に多くに共通して感じられたのは、肉体をモチーフにした
グロさと皮膚感覚に訴えかけてくる生々しさ。倉庫のような薄暗い明りと相まって
自分も何か悪いことに加担しているような気分にさえなってきます。

これらを芸術的に解釈しようとするなら、急激な近代化の波を受け入れよう
とするインド人の精神と、それに追いついていけない肉体の葛藤が具現化されたものと
いえるかもしれません。作品だけでなく、建物自体とそれが存在するシチュエーション
まで含め、今という時代の空気を多いに堪能できるギャラリーです。
(at SECTOR44, GURGAON)
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2008/12/23 Tue 12:41

あ (こどものとも絵本)あ (こどものとも絵本)
(2008/11/15)
大槻 あかね

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おっ

いいですねぇ、この小さなキャラクター!
表紙の通り、針金をクルクル巻いて人の形にしただけなのですが、
なんと豊かな表現力をもっているのでしょう。

構成はいたってシンプル。コップや綿棒、テープ、本などの、
日用品と、それらに出会ったときの彼のリアクションが、
2コマ/4コマ漫画調に撮影されているのです。

「あ」「は」「ひょ」といったみじかい言葉からは、
彼の感情の動きがストレートに伝わってきました。

何気ない日用品の中に潜む不思議さを、彼の好奇心を
通して再発見させてくれるシャレた絵本。
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