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Little Mouse's Big Book of Fears

2009/02/27 Fri 11:52

Little Mouse's Big Book of FearsLittle Mouse's Big Book of Fears
(2007/08/03)
Emily Gravett

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絵本ファンは要チェック!

何だ?何だ? 表紙にはネズミがかじった跡が!
これって絵じゃなく、本当に穴が開けられているんですよ。
しかも作者名が LITTLE MOUSE に書き換えられているゾ。
さらに、英国の有名な絵本賞である、ケイト・グリーナウェイ賞を
獲得している、ということで199ルピーにて即購入しました。

ペーバーバック版は数ミリの厚さですが、中身は非常に濃い!
怖いものをテーマにしたスクラップブックの形式になっていて、
それをネズミが作成したとういう二重の趣向になっているのです。

自分の恐れるものを、書き出したり、絵にしたり、コラージュしたり
といった創作のモチーフにするスクラップブックが実際にあるのでしょう。
その方面の専門家ではありませんが、ある種の芸術的行為は、恐怖を
克服するのに有効かもしれませんから。

さて、ネズミはいったどんなものを集めたのか?
写真、地図、絵はがき、スケッチ、新聞記事などなど…
絵ではなく本物としてスクラップされているので、
グラフィックデザイナー的観点でみても注目に値する内容です。
ページをめくるたびにワクワクの連続でした。

ここでいちいち説明しているのが非常にもどかしいですネ。
これは実際に手に取ってみて欲しい。
いままで800冊以上の絵本をレビューしましたが、
いちばん最初に紹介できるのをこんなに誇らしく思った
作品はひさしぶりです。

作者のEmily Gravettは他にも魅力的な作品を作っています。
いずれ翻訳版が出ることでしょうが、絵本ファンは原書で購入する
ことを強くお勧めします。
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ヘンリー・ブラウンの誕生日ヘンリー・ブラウンの誕生日
(2008/12)
エレン レヴァイン

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1849年3月30日はヘンリー・ブラウンの誕生日

ヘンリー・ブラウンを知っていますか?

生まれながらに道具として扱われ、売買によって家族関係が無惨に
引き裂かれていく。自分の未来は全て持ち主次第。
しかし、そんな奴隷の運命から脱出しようと勇気ある決意をし、
大胆な方法で成し遂げたひとりの黒人男性がいました。
彼の名がヘンリー・ブラウンなのです。

奴隷といっても主人の許しがあれば、結婚できるし子どもを授かることも
できたようで、その点ヘンリーは恵まれていたかもしれません。
とはいえ、主人にとっては、経済的余裕がなくなると、ヘンリーの
妻や子どもたちを彼に断りなく売りだす、という程度の認識にすぎませんでした。

ヘンリーの悲痛な心の叫びは、絵として直接描かれていません。
しかし感情を押し殺したかのような表現からは、事実の生々しさが
無言の圧力として迫ってきました。

クローズアップを効果的に生かした臨場感あふれる構図や
ページとページの関連性をもたせた構成など、造形的な演出も
みのがしてはならないポイントです。

ちなみに本作は2008年コールデコット・オナー賞を獲得しています。
関連したテーマで「ローザ」「キング牧師の力づよいことば」もそれぞれ
2006年、2002年にコールデコット・オナー賞をとっていることを参考まで
に挙げておきます。

かつて奴隷制度がはびこっていた国に黒人大統領が誕生した
今だからこそ、大きな話題性を持つ絵本ではないでしょうか。
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Wolves

2009/02/24 Tue 11:55

WolvesWolves
(2006/05/18)
Emily Gravett

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【注意】気の弱いウサギにみせないでください

絵本の中にもう一冊の絵本が登場するという、実験的趣向をこらした
二重構造の作品です。「WOLVES」はこの本のタイトルであると同時に、
ウサギが図書館から借りた絵本のタイトルでもあります。

ページをめくると、赤い表紙をしたもうひとつの絵本が登場。
ご丁寧に図書館の貸し出しカードまで付いているので、
読者もウサギになったかのような気持ちになります。

その絵本に紹介されているのは、狼の恐ろしさについて。
ウサギは夢中になってよみ続けます。自分に危険が忍び寄っている
ことも気づかずに…

ショッキングな結末にあぜんとしましたが、オマケでもうひとつの
結末も用意されていました。

遊び心とブラックユーモアにあふれた、
2005年のケイト・グリーナウェイ賞受賞作。
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London Jungle Book

2009/02/22 Sun 11:57

London Jungle BookLondon Jungle Book
(2005/10)
Bhajju Shyam

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ロンドンは近代文明のジャングルだった!

インドの民族画法ゴンド画の名手:Bhajju Shyamが故郷の村から
いきなりロンドンへ渡ることになり、生まれて初めて出会った異国の様子を
描き残した異色的な紀行絵本。

まずは表紙に注目! いったいこれは何を表していると思いますか?
大きな時計の目をもつニワトリ。顔は柱のようなものに支えられています。
実はこれ、ビックベンなんですね。
ロンドンの人々に時刻を知らせる時計台の姿が、彼の故郷の村で同じく時を
知らせるニワトリの姿とダブってみえたことから、こんなユニークな
絵が生まれたというわけです。

そんな独創的な絵が次から次へと登場します。
飛行機、地下鉄、二階建バス、パブの人たち、若者のファッション、
などなど、初めて目にした彼はどのように解釈したのか?
今インドに住んでいるボクの関心も画面に釘付けとなりました。

ちなみに本書のタイトル、するどい方はピンときたかもしれませんが、
有名な児童文学「ジャングル・ブック」からの引用とのことです。
これは英国人の作家キップリングがインドで過ごした経験から誕生した作品で、
この絵本が生まれたプロセスと対を成しているわけです。

英訳された彼へのインタビューは、素直な表現で分かりやすかったです。
巻末には編集者の苦労話なども紹介されており、インド好き、ロンドン好き
にはたまらない絵本です。
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なぜ戦争はよくないか

2009/02/18 Wed 11:58

なぜ戦争はよくないかなぜ戦争はよくないか
(2008/12)
アリス ウォーカー

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感覚的に戦争を描いた黒い絵本

戦争をものを見たり考えたりするひとつの存在ととらえ、擬人化した
アリス・ウォーカーの視点はユニークですが、それよりも、
絵を描いたステファーノ・ヴィタールの想いのほうが気になりました。
戦争のおそろしさを伝えるためとはいえ、制作中はかなり
辛かったのではないでしょうか。

 豊かな大地でのどかに暮らす村落の人々…
 母親にだかれて幸せそうな子ども…
 さまざまな動物たちが生きる美しい自然…

いづれも本書に登場する印象的なシーンです。
木目を生かし丁寧に描かれた画面は、どれも心温まる絵本から、
みどころのワンシーンを抜き出してきたかのごとく味わい深いものです。

ところが! その画面を破壊してしまうのです!
ページをめくると、突如画面に侵入してくる異物によって。
鉄の大車輪、金属の破片、打ち付けられた釘 などなど。
圧巻は汚物の固まりで描かれた怪物がむくむくと首をもたげるシーン。

食事中によむと、吐き気をもよおすかもしれません。
感性のするどい子どもは絵だけで泣き出してしまうでしょう。

しかしこれらは絵の中だけのことではなく、現実の世界という
キャンパスでも起こっている事実なのです。
一枚一枚のページをこれほど重く感じたことはありませんでした。
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ゴリオとヒメちゃん

2009/02/15 Sun 11:59

ゴリオとヒメちゃん (児童図書館・絵本の部屋)ゴリオとヒメちゃん (児童図書館・絵本の部屋)
(2009/01)
アンソニー ブラウン

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手話がポイント

似た者同士という言葉があるけど、似ない者同士という言葉が
あるとすれば、ゴリラと子猫という関係は、けっこうハマるのでは。

動物園で一人さびしがっていたゴリラのゴリオのもとへ
飼育係がつれてきたのが、子猫のヒメちゃん。
はたして彼らのあいだで友情はなりたつのでしょうか?

「たべちゃだめだよ」という係の一言にクスッとなりつつも、
ちょっと心配になりましたが、いい関係が築かれていき一安心。

しかし、ゴリオの起こしたある事件がきっかけで別れさせられそうに。
そのピンチを救ったのがヒメちゃんのすばらしい機転というわけで、
ゴリラのかわいさと子猫のたくましさというキャラの逆転に
思わずニッコリしました。
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だまし絵サーカス

2009/02/12 Thu 12:00

だまし絵サーカス (講談社の翻訳絵本)だまし絵サーカス (講談社の翻訳絵本)
(2009/01/16)
ウォーレス・エドワーズ

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芝居小屋的なうさん臭さがいい!

サーカスの演目というかたちで、さまざまなだまし絵を
紹介していく、凝った趣向の絵本。

隠し絵、錯視、逆さ絵など全部で22ものだまし絵が楽しめます。
仕掛けそのものは、よくあるもので特に目新しくはないです。
しかし、細かく描き込まれた怪しげな絵が、見慣れたトリックさえも
特別なものにしているところが本書の大きな魅力といえるでしょう。

とくに、逆さ絵が切り替わるあざやかさは注目に値します。
だまされる快感を久々に味わえました。
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Busy Busy Grand-ant

2009/02/08 Sun 12:02

Busy Busy Grand-antBusy Busy Grand-ant
(2007/04)
Kanchan Mitra

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世界へ向かうアリたち

インドの書店でこの絵本をみつけたとき、すぐに思い浮かべたのは
たむらしげる:作「ありとすいか」でした。どちらの表紙も、
スイカの上で楽しそうに遊ぶアリたちの姿が描かれているからです。

では、共通したモチーフをインドの作家はどのように料理したのか。。。

というボクの興味は、あざやかに裏切られました。
本編の中にスイカは一度も出てきません。そのかわりアリが旅行
しながら世界各国を紹介していきます。ニュージーランド、
オーストラリア、中国、ネパール、インド。うれしいことに日本も登場!

近隣諸国と並列させることでインドの特徴を浮かび上がらせた、
という観点で楽しめました。

アリだからこそできる意外なラストには、おもわずニヤリ。
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しりとりあそび「あか・みどり・き」 (しゃしんであそぼ 2)しりとりあそび「あか・みどり・き」 (しゃしんであそぼ 2)
(2008/11/26)
星川 ひろ子星川 治雄

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色つながりで楽しくしりとり

「赤・緑・黄」という3色から何をイメージしますか?

しんごうき、はっぱ、くだもの etc.

この絵本のすごいところは、3色のものを集めて
それらの名前をしりとり形式でつなげているところ。
きれいな写真だけでも、充分に魅力的ですが、
次のページに出てくるのは何か?考えるという、
ちょっとした頭の体操にもなりました。

3色いっしょにもっているもの、時間とともに色が変化するもの、
カラーバリエーションで3色 などなど探してみると 
けっこう色々とあるものですね。

遊び心のある写真やシャレた構成もみどころ。
他のシリーズもみたくなりました。
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オデュッセウスの旅―ギリシア神話よりオデュッセウスの旅―ギリシア神話より
(2008/12)
ビンバ ランドマン

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ギリシア神話の世界を描いた芸術的絵本

古代ギリシアの詩人ホメロスによる叙事詩「オデュッセウス」を絵本化した作品。
もとになった内容自体が、10年間にわたる長い漂流記であり、絵本といっても
コマ割りが多用され中身はかなり濃い。

ボクは叙事詩を読んだことはないのですが、トロイアの木馬や1つ目の巨人、
雄牛の頭をもつミノタウロス、ゼウス、ポセイドンなど、どこかで聞いて
なじみのある名前が出てくるので、断片的な知識や記憶を統合するという
意味で取っ付きやすかったです。

そうは言っても、この叙事詩を読むための解説書まででている
くらい変化に富んだ内容ですから、絵本といえども読み通すには
それなりの労力と時間が要りました。

本書を入門用として手にするのもいいですが、あらかじめ全体のストーリーを
知っていたほうが、個性的な絵も含めて楽しめるかもしれません。

もとの叙事詩と照らし合わせながら、この本を再読したくなりました。
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