せかいをみにいったアヒル
2009/03/29 Sun 08:14
![]() | せかいをみにいったアヒル (2009/02) マーガレット・ワイズ ブラウン 商品詳細を見る |
50年以上前の写真絵本、古典的価値は充分ありますが
この写真絵本が最初に出たのは1953年。
その頃は写真が非常に先進的で高価な表現手段だったでしょう。
ましてや勝手に動き回る動物を相手に、ここまで表情豊かな
写真を撮るのは大変なことだったと思います。
しかし、今ではデジカメの普及で、誰もが気軽に写真を撮ったり加工したり
できるようになりました。そんな現代からみると、本書の白黒写真が
非常に素朴で古くみえるのは否めないです。
とはいっても動物たちの見せるユーモラスな姿は昔も今も普遍ですね。
世界を見るために旅に出かけたアヒル。ときには海を泳ぎ、
ときにはカメに乗って、めざしたところが動物園。
ん~、いろいろな動物たちに会うためとはいえ、この展開、ちょっと
作為的ですね。リアルな写真であるが故に、かえってワザとらしさが
気になってしましました。
こんなことを書くとマーガレット・ワイズ・ブラウンのファンに
怒られてしまうかもしれませんが、説明的な文章は不要に感じました。
写真だけでも、読者それぞれに出会いの物語を想起させる力があるのですから。
The Odd Egg
2009/03/25 Wed 07:48
![]() | The Odd Egg (2009/01/27) Emily Gravett 商品詳細を見る |
【注意】心臓の弱い鳥にみせないでください
この作品は絵本のかたちをしたビックリ箱ですね。
表紙でアヒルが大切そうにかかえているのは大きなまだらの卵。
そこから何がでてくるかがみもの。
本にはちょっとした仕掛けがあり、アヒルの卵がかえるまで、
徐々に盛り上がっていくような演出がされています。
ニワトリやオウム、フラミンゴなど他の鳥たちの卵から
次々にかわいい子どもたちが生まれてくる中、アヒルの卵だけは
なかなかかえらない。さんざん気を持たせた後で・・・
この本は自分でよむだけでなく、誰かにみせて反応を楽しむ
のもいいでしょう。
オオカミ
2009/03/22 Sun 07:49
![]() | オオカミ (世界の絵本コレクション) (2007/12) エミリー グラヴェット 商品詳細を見る |
【注意】気の弱いウサギにみせないでください
ウサギのもとへ図書館から届いた新刊案内に紹介されている本の
タイトルは「オオカミ」! 絵本の中でウサギが借りる絵本が
実は読者の手にしているものと同じという実験的二重構造の作品です。
本書には、ご丁寧に図書館の貸し出しカード付き!
ちょっとした仕掛けですが、読者もウサギと同じ目線で
読書体験ができるというニクい演出です。
さて、その絵本に描かれているのは、狼の恐ろしさについて。
ウサギは夢中になってよみ続けます。自分に危険が忍び寄っていることも気づかずに…
このあたりのスリリングな展開はみごと!思わずドキッとして後ろを振り返ってしまいました。
ショッキングな結末にあぜんとしましたが、オマケで用意された結末も意味深ですね。
遊び心あるれる作者のデザイン的センスもみどころです。
他にもユニークな絵本を出しているので、興味をもたれた方は
ぜひ翻訳を待たずに英語版を手にする事をおすすめします。
The Night Life of Trees
2009/03/11 Wed 07:51
![]() | The Night Life of Trees (2006/06) Gita Wolf-SampathSirish Rao 商品詳細を見る |
インドの魂が見た夜の木々たち
インドの大きなお祭りのひとつにホーリーがある。
街中みんなが色水や色粉をかけあって春の到来を祝う特別な日だ。
祭日は年によってかわり、2009年は3月11日の今日となる。
いたるところに溢れるカラフルに染まった人たちはインドならでは
の光景だが、外出時は色水を降りかけられる覚悟がいる。
さて、そんな日にはやっぱり特別なインドの絵本をとりあげたい。
本書は2008年ボローニャ国際絵本原画展でニューホライズン最優秀賞を
獲得しただけのことはあり、かなりの風格がある絵本です。
中央インドで村落を成すゴンド族にとって木々は生命のシンボルでもある。
彼らの言い伝えによると、昼間の木々は他のものの為に尽くし、夜になると
本来の姿を現すとのことだ。本書ではそんな夜の木々がゴンド民族画法の
名手3人によって、明らかにされていきます。深みのある黒を基調にした
画面からは、生命の輝きが静かに伝わり神聖な気持ちになってきました。
樹皮を彷彿させる紙の質感といい、シルクスクリーンによる手作業といい
本というよりアート作品ですね。巻末にはシリアルナンバー付きです。
Tyrannosaurus Drip
2009/03/08 Sun 07:53
![]() | Tyrannosaurus Drip (2008/07/04) Julia Donaldson 商品詳細を見る |
ティラノサウルスのもとに 生まれた恐竜はベジタリアン!
インドの本屋では、イギリスの絵本がよく出回ってます。
もと植民地だったので、文化的にも深い関係があるせいでしょう。
まだ日本語に訳されていない魅力的な作品も多くみつかります。
本書はその中のひとつで、コミカルなタッチで描かれた表紙の
恐竜に惹かれて購入しました。
登場するのは対照的な2種類の恐竜。一方は肉食竜のティラノサウルス。
もう一方は水辺に住み、ダックビルというカモのような口の草食竜。
ダックビルの卵のひとつが卵泥棒の恐竜によって、ティラノサウルスの
卵の中にまぎれこんでしまい、そのまま生まれてしまったのが、
表紙の真ん中で歌を歌っているDRIPというわけです。
からを割って生まれ出てくるまで姿が分からないところが
卵のおもしろさ。いざ卵をかえしてみたら、親と血のつながりのない
子が出てきた、なんて話は絵本でよくみかけますね。
逆境の中での親子の愛情をテーマにしたものが多いように思います。
しかし、本作は別な展開をみせます。
食べ物も合わず、狩りにもついていけないDRIPは、とっとと
自分の本来いるべきところへ戻ってしまうのですから。
結局、ダックビルたちとティラノサウルスたちは最後まで
相容れない関係のままだったのは、ちょっと残念かな。
と言いつつも、DAVID ROVERTSの描くデフォルメの効いた恐竜たちは
イラストとして充分に楽しめました。
Spells
2009/03/07 Sat 07:56
![]() | Spells (2009/10/02) Emily Gravett 商品詳細を見る |
カエルを変える! 呪文の絵本
ページが上下に別れていて、別々にめくれるという仕掛けあり。
それぞれに各動物の上半身と下半身が描かれているので、
組合せ次第で奇妙な動物が誕生するというわけ。
同じような仕掛けの絵本はありますが、ストーリーの一部として
効果的に機能しているのが、本書のひと味違うところですね。
魔女の持つ呪文の本をみつけたカエルは、勘違いからページを
破いてしまいます。ページの断片から王子様になれる呪文が
あることに気づいたカエルは、それを再現しようと四苦八苦。
そのプロセスを、仕掛けによって読者も味わえるという趣向
になっているわけです。
カエルは王子様になって、お姫様とキスをできたでしょうか?
カバーをはずすと現れるシャレた装丁もみどころ。
Monkey and Me
2009/03/04 Wed 07:57
![]() | Monkey and Me (2008/01/04) Emily Gravett 商品詳細を見る |
軽快な2人の変身ごっこ
見開きには、着替えをする女の子。いったい何が始まるのか?
赤いストライプのシャツに赤いタイツ、白いスニーカーを
はいたら準備OKのようです。相棒は手足の長いサルのぬいぐるみ。
手をつないでよたよた歩きをしていたら、次のページには。。。
手をつないでよたよた行進するペンギンたちが登場します。
なるほど。そうきたか! という展開におもわずニッコリ。
飛び跳ねたり、逆さにぶらさがったり、のしのし歩いたりと
二人の動物変身ごっこは軽やかに続きます。
心も弾むシャレた作品。
Orange Pear Apple Bear
2009/03/02 Mon 07:58
![]() | Orange Pear Apple Bear (2007/01/05) Emily Gravett 商品詳細を見る |
お見事!(拍手)
作中に出てくる文字は、タイトルにある4つの単語のみ
という、シンプルでシャレた言葉遊びの絵本。
はじまりのシーンから笑いをさそいます。
ORANGE、PEAR、APPLE ときて BEAR が登場。
果物とクマがなぜか同列に扱われているのです。
その後の展開で、絵と言葉がみごとなデュエットを見せてくれます。
ORANGEが名詞ではなく、形容詞にもなることがポイント。
あとは、みてのお楽しみです。
とどめは、ラストに一回だけ出た5番めの単語。
英語ならではの妙技、ぜひ原書で味わってください。
Meerkat Mail
2009/03/01 Sun 11:51
![]() | Meerkat Mail (2006/08/04) Emily Gravett 商品詳細を見る |
完璧な手紙絵本、よくぞここまで作ってくれました!
ミーアキャットはアフリカ南部の砂漠地帯に分布。
数家族の群れで助けあって生きているのが特徴です。
サニーはその群れの中の一匹ですが、いつも同じメンバーで同じ
場所に住んでいることに嫌気がさします。そこで、他にもっと
自分にふさわしい場所はないかと、旅に出かけてしまうのです。
この作品は、彼が家族宛に旅先から送った絵ハガキで構成されています。
絵ハガキや切手は本物のごとくデザインされており、各ページにスクラップ
されているのがポイント。サニーの筆跡が変化したり、紙の一部が湿ったり
破れていたりという凝りようで、旅先の様子が臨場感たっぷりに味わえました。
絵本を楽しみながら、ミーアキャットの生態をはじめ、仲間であるマングース
たちについての理解が広がるのもいいですね。
ミーアキャット好きな方、手紙を書くのが好きな方は
ぜったいに手放せなくなる絵本です。
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