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アンデスの少女ミア―希望や夢のスケッチブックアンデスの少女ミア―希望や夢のスケッチブック
(2009/03)
マイケル フォアマン

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どこにでも夢は見つけられる

アンデスのふもとの小さな集落にある家々は 廃材を寄せ集めて
作られており、人々は街が放出したガラクタを修理して売ることで
生活をたてている。

この絵本は、旅の途中でバスが故障し、そんな場所に停泊すること
になった作者の経験がもとになっています。
そこで暮らす少女ミアは、別れた子犬ポコを探しに出かけたことが
きっかけで白い花を見つけ、集落で育て始めます。彼女にとって
その花は、ポコとの思い出を象徴する存在。
やがて彼女は街で花を売り始め、得たお金で父と共にレンガの家を
建てたいと願うようになります。

子どもは生まれる環境を選べません。それでも夢をもつことは等しく
可能なんですね。未来に向かって今を生きることが、人が人である
所以なのだと思いました。

この文章を読んだり書いたりしている状況からは、かなりかけ
離れた世界が舞台なので、ある程度の年齢でないと共感するのは
むずかしいかもしれません。細切れのスケッチを寄せ集めた画面が、
さりげなく集落の暮らしを彷彿させます。
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おとうじゃ、ないって

2009/05/24 Sun 18:47

おとうじゃ、ないって (どんぐりえほんシリーズ)おとうじゃ、ないって (どんぐりえほんシリーズ)
(2009/04)
中村 文人

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こども好きなオジさん向けの作品か

本書は、2005年度キッズエキスプレス21「創作童話・絵本コンテスト」で
厚生労働大臣奨励賞を受賞した『じゃ、ないって』の原稿を元にした絵本。
「創作童話・絵本コンテスト」はNPO法人キッズエクスプレス21が行っている
読み聞かせ運動の一環で、自分たちですばらしい絵本や童話を社会に
提供していこうという思いからスタートした活動とのこと。

強面のウツボが、子育てに奮闘する姿を描いた本書は、まさにその趣旨を
体現していると言えましょう。子育てといっても、自分の子どもではない。
ウツボが食べようとしたキンセンイシモチが産み落とした卵から
かえった1000匹の子どもたちが相手である。

本来の親はどうなってんだ? とか 子どもたちがウツボのもとを
去っていくが早すぎないか? なんて深く考えはじめると内容的に
淡白な感じもしました。食べる者と食べられる者という関係での
子育てを扱った絵本は既にあるので、それらを超えたものを
期待していたのですが…

この話を聞かされた子どもたちが、実際どう思うかは興味あるところ。
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チョキチョキおじさんきょうりゅう王国 (えほんのぼうけん1)チョキチョキおじさんきょうりゅう王国 (えほんのぼうけん1)
(2009/03/24)
まつおか たつひで

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臨場感いっぱいの恐竜劇場

切り絵による恐竜の絵本ですが、ただそれだけではない。
恐竜たちを紙から切り出したチョキチョキおじさんまで描かれているのだ。
  
「これを切ったら恐竜劇場のはじまりだ。ふふふ…」

これは恐竜図鑑や工具類、照明機材に囲まれた書斎での、おじさんの一言。
机の上には、大きな紙の真ん中をくり抜いて作ったステージまである!
そんな冒頭のワンシーンに、いやがおうでも期待が高まってきました。

画面には実際に紙を切って作った恐竜たちが登場するので、
まるで紙が本当に生きているかのように感じられました。
合間に交わされる、恐竜の子とおじさんの会話が笑いをさそいます。
最後に見せた、おじさんのおトボケぶりが最高ですね。

太古の世界と現代が紙技でつながるユニークな切り絵絵本。
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まくらのせんにん さんぽみちの巻 (クローバーえほんシリーズ)まくらのせんにん さんぽみちの巻 (クローバーえほんシリーズ)
(2009/01)
かがくい ひろし

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神出鬼没ならぬ 寝室奇抜な3人組登場

布団を擬人化するなんて、かがくいさんでなければできないでしょうな。
しかも名前が しきさん かけさん。そして彼らを従えるのが、
枕の仙人とくれば、日本人なら納得の布陣と言えましょう。

散歩の道すがら出会った困っている者たちを、
布団ならではの力で、ふんわかぬっくりと助けていく様は
なかなか心地よいものがあります。

布団のぬくもりが恋しい時期によむのが一番いいと思いますが、
40~50度という暑さ真っ盛りのボクのいるインドでも
充分たのしめまたした。早くも次回作が楽しみです。
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たこやきようちえん

2009/05/19 Tue 18:51

たこやきようちえん (絵本・いつでもいっしょ)たこやきようちえん (絵本・いつでもいっしょ)
(2009/02)
さいとう しのぶ

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先生と園児のための作品

たこやきようちえんはたこ焼きたちが通う幼稚園。
お店のおじさんの計らいで、売られる前のたこ焼きたちが
幼稚園へ行けることになり、その道中を中心に描いたユニークな作品です。

子どもの大好きなたこ焼きと幼稚園を結びつけたところがポイントですね。
じゃあ、お寿司でもタイ焼きでもいいか、と思いましたが、コロッと丸い
たこ焼きたちが、きれいに並んでいる姿は、園児を彷彿させるものがあります。
何よりタコの「たこやきよこ」先生の活躍を描くためにも
たこ焼きであることが重要なのだなと、あとがきを読んで納得しました。

彼らの初登園を引率するタコの先生は 全員と手をつないだり、
遊具になってあげたり、危険から守ったりと大活躍。
これは8本の手足を生かせるタコでなければできません。

通園を控え、不安と好奇心の入り交じった子どもの気持ちを、
たこ焼きに投影させ、すんなりと幼稚園へ導いてくれる内容です。

そういえば、ボクの今住んでいるインドの神様も手が何本もありますが、
それぞれの手は、神のもつ様々な能力をわかりやすく示しています。
その意味では、頼りになる先生は園児からみると、何本も手を
もっているように感じられるかもしれません。
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おふろだいすき!ぷっぺ

2009/05/18 Mon 18:52

おふろだいすき!ぷっぺおふろだいすき!ぷっぺ
(2009/04/22)
よしなが こうたく

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【効能】凝り固まった頭がほぐせます

いやーぁ、これは熱い!
銭湯の魅力が、どの画面からもドドドーッとあふれ出てきます。
ページを開いたままにしておくと、部屋の中までお湯浸しに
なってしまうのではと感じてしまうくらいの迫力でした。

ぷっぺは鉄砲魚のこども、お父さんにつれられて初めて銭湯へ
行きます。湯船の広さや色々な風呂にであって大興奮します。
お客たちがまた様々で濃いキャラばかり!
だいたい魚が熱湯に入るくらいですから。4本足の者を始め
8本足や、羽のある者、南極にいる者からサバンナにいる者まで
いたって全然OK。来るものは誰もこばまずという懐の深さです。

が、実際に子ども視点から初めての銭湯を描写すると
この印象に近いかもしれませんね。細部にわたって描き込まれた
架空の広告や案内、小道具などが、突拍子もない世界に
みごとなリアリティを加えています。 

疲れがたまったときに、どっぶりと浸かりたい作品。
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オルガ ストロングボーイTシャツのはなし (講談社の翻訳絵本)オルガ ストロングボーイTシャツのはなし (講談社の翻訳絵本)
(2009/03/26)
イリヤ・グリーン

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シンボルマークの魔力

太陽のような赤い円に白いイニシャル「S」はストロングボーイの証し。
このマークの入ったTシャツを着ればパワーアップ、誰も命令に逆らえない
...ことになっているらしい。

なんだか子どもの頃を思い出しますね。誰も持っていないものを所有している
だけで、ものすごい力を手に入れたと純粋に思ったものでした。

この本の世界ではストロングボーイという、ブランド的価値が子供たちへの
支配力を持っているのでしょう。このシャツを着たオルガの命令にみんな
渋々ながら従ってしまうのですから。子どものみならず、アリや変な猫顔の人
にまで効力を発揮するのですが、実はこのシャツ、簡単に手にはいること
がわかって、みんなが身につけてしまうという皮肉な展開に。

子どもらしさが感じられる微笑ましい結末にホッとすると同時に、
商業的戦略に乗せられる怖さ、本来の力とは何かを考えさせる作品でした。
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へんてこマンション

2009/05/16 Sat 18:54

へんてこマンション (クローバーえほんシリーズ)へんてこマンション (クローバーえほんシリーズ)
(2009/04)
深見 春夫

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へんてこであることに価値あり

へんてこな部屋ばかりのへんてこマンションは、変な人大歓迎。
どれくらいへんてこかというと、お菓子好きの王様が住む部屋の家具が
全部お菓子できてていたり、部屋の中に小さなマンションが住んでいたり、
階段が竜になって空を飛んだりといった感じ。これでは確かに普通の人は住めない!

そんなマンションを見にきたのはサーカスのライオンくん。自分の技をみがくため
新しい部屋を探しているとの事ですが、その発想ちょっとへんじゃない?
もちろん彼は入居OKとなりました。
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うさこちゃんときゃらめる

2009/05/14 Thu 18:56

うさこちゃんときゃらめるうさこちゃんときゃらめる
(2009/04)
ディック ブルーナ

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中身は重いです

うさこちゃんシリーズは、単なる幼児向けの絵本ではない。
単純な描写の中にも奥行きを持った世界が存在している。
例えば、家族の死という、心の痛みが取り上げられていたり
することも最近になって知り、ちょっと衝撃を受けた。

実は本書も、ある意味ショッキングな内容といえる。
お菓子をめぐって罪を犯したうさこちゃんが登場するのだ。
出来心でやってしまったことなのですが、そのことで
悩むうさこちゃん。下手をするとパロディにもみえる内容
ですが、母親によるケアまで描くことで道徳的な帰結へと
もっていってます。

彼女の精神的成長も見守りたくなる絵本ですね。
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サカサかぞくの だんながなんだ (ほるぷ創作絵本)サカサかぞくの だんながなんだ (ほるぷ創作絵本)
(2009/03/28)
宮西達也

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まさか!さかさま 文全部

原始時代を舞台に、とある家族の喜悲あふれる暮らしぶりを
回文のみでつづるというウルトラC級の言葉遊び絵本。
タイトルの回文「だんながなんだ」はケンカした妻が家を
出るときの言葉。それを受けてだんなは「つまをまつ」とくる。

会話をはじめ、擬音、解説、すべて回文という徹底ぶりなので、
彼らが深刻になればなるほど、可笑しくみえてしまいます。
言葉を持ち始めたばかりであろう原始時代の人々が
高度な回文を使いこなすという対比が絶妙ですね!

回文、怪文、快文、の連続で「ありゃりぁ」となる作品。
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