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ちいさなへいたい

2009/10/31 Sat 08:02

ちいさなへいたいちいさなへいたい
(2009/08)
パウル ヴェルレプト

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軽いタッチに秘められた重いテーマ

ソフトタッチのイラストが特徴的な戦争テーマの絵本です。
冒頭で食卓の上にちょこんと現れた小さな戦車と、それを興味深げに
のぞき込む男の子は静かなインパクトがありました。
彼はそれが何を意味するのかわからず、時代に流されるまま戦地におもむく。

あまりにも淡々と自然に展開される画面からは、ただならぬ違和感が
伝わってきました。軽くふっとんでいく命、勝利に酔う人々の薄っぺらさ。
これでは、まるで戦争ごっこ?! しかしながら、現実の世界でも何気に
起こっている真実の一面と見て取るべきでしょう。

兵士が最後まで離さないぬいぐるみが意味深です。

-----------------【Review for Review】------------------
戦争テーマの絵本をレビューするときは悩みますね。取り扱いに気を使うし、
(本作は別ですが)作品として否定的な見方になる時などは特に。
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Pigs Make Me Sneeze!

2009/10/30 Fri 06:57

Pigs Make Me Sneeze! (An Elephant and Piggie Book)Pigs Make Me Sneeze! (An Elephant and Piggie Book)
(2009/10/06)
Mo Willems

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aaaaa-CHOOOO!!!

くしゃみが止まらなくなってしまったゾウ君。
たぶん今までそんな経験はなかったのでしょうね。

そのときたまたま、ピギーちゃんが近くにいたことで、
ブタに近づくことがくしゃみの原因と勝手に思い込んでしまいます。
しかし。だとすると彼女にはもう会えないと悲しむゾウ君ですが・・・

今回は猫のお医者さんの見せ場があります。
英文もシンプルで表情豊かな吹き出しの表現も楽しめます。
ラストシーンでの二人の対比が痛烈!

---------------【Review for Review】----------------
この時期インドでは、デング熱が流行ってます。蚊が媒介している
ので、昨日は全職場に虫除けがスプレーされました。
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あかちゃんにあえる日

2009/10/25 Sun 09:41

あかちゃんにあえる日 (わくわく世界の絵本)あかちゃんにあえる日 (わくわく世界の絵本)
(2009/09)
キンバリー・ウィリス ホルト

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ラストの男の子も印象的です

生まれてくる赤ちゃんを楽しみに待つ女の子の心境を、
ギャビ・スヴャトコフスカの美しいイラストでつづった作品。

とにかく絵の印象が鮮烈でした。彼女ならではの独特のタッチは
表紙の女の子を見るだけでも充分に伝わってくるでしょう?
でも、中身はもっとすごかったです。
赤ちゃんがいつ生まれてくるか、という女の子の質問への、
家族や友人の答えは千差万別なのですが、答えを聞いて色々と想像する
女の子の心理描写がまた図解的でカッコいいのです。
太陽が地球の周りを動いていると信じていた頃の時代的香りがしました。
加えて、画面に描かれたポロポロポロロンとした大きな点描からは
ピアノの音色にも似た、リズミカルで知的な心地よさも感じ取れました。

ギャビ・スヴャトコフスカ(Gabi Swiatkowska)の絵本は他にも
出ているので、ぜひみてみようと思います。

---------------【Review for Review】----------------
この作品を知ったのは、メルマガの「児童文学評論 140号」より。
絵がすごいと紹介されていたのですが、全くその通りでした。
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みみかきめいじん

2009/10/22 Thu 08:04

みみかきめいじん (講談社の創作絵本)みみかきめいじん (講談社の創作絵本)
(2009/09/16)
かがくい ひろし

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名人の技でいい気持ちに

様々なお客さんがやってきて、独自のサービスや商品を提供するという
絵本としては、馴染みやすい、そして判りやすい構成。
ただし、提供するものが「みみかきの技」というところがユニークですね。
耳をかいてもらい、満足したお客さんのリアクションも楽しめます。

最後のお客さんの正体には、一瞬びっくりしましたが・・・
描く側としては楽だったでしょうねぇ(笑)
ヒョウタンの容貌をした名人は、まだまだすごい技をもっていそう。
今回は3つの依頼を受けましたが、他にも仕事ぶりを見てみたくなりました。

---------------【Review for Review】----------------
気持ちよくなるサービスは色々考えられますね。年齢制限をはずせば
売れる売れないは別として、もっと大胆な絵本も作れそうです(ムフフ)
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水おとこのいるところ

2009/10/19 Mon 09:38

水おとこのいるところ水おとこのいるところ
(2009/08/26)
イーヴォ・ロザーティ

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心の乾きも潤される一滴

すばらしい! もしも「青」または「水」というテーマで絵本を
セレクトするならば、必ず上位に選ばれる作品と断言できます。

青を基調にした水おとこ、モノトーン調の街並 という色の対比。
水おとこの存在をさりげなく浮き上がらせる じょうろ、折り紙の船、
など小物類の扱い方。猫、犬、金魚は、水おとこの心情を写し出すか
のように登場。といった様々な要素が画面に深みをもたらし、
どのページも美術的な観賞に浸れるものとなっています。

街の中で居場所を求め続ける彼は、環境汚染への問題提起と
受け取れなくもないですが、それは理性を納得させるものというより
感性にひびく波紋のようなものといえます。

最近、心が乾き気味だなと思っている方におすすめ。
冷えたおいしい水など用意して読むといいのではないでしょうか。

ちなみに、いたばし国際絵本翻訳大賞作とのこと。
原題をみると「L’uomo d’acqua e la sua fontana」
直訳すれば、水の男と彼の泉 ということか。
なるほど! 訳名だけでもセンスに溢れてますね。

---------------【Review for Review】----------------
浮き上がらせる 写し出す 浸れる 波紋 溢れる・・・
水にちなんで、意識的に関連した表現を使ってみました。
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旅の絵本 VII

2009/10/17 Sat 08:03

旅の絵本 VII旅の絵本 VII
(2009/09/09)
安野光雅

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広大な大陸を小舟で上る旅

前作から5年ぶりとなる旅の絵本シリーズ第7作目は中国が舞台。
今までの旅先は西欧が中心だったので、初のアジアとなる本作は
期待するものがありました。また、このシリーズの楽しみのひとつが
画面の隅々に隠された、その国ならではの風物探し。
中国ならば、きっとあの名所やあの食べ物やあの有名人などが登場する
かもしれないなぁ と勝手に想像をめぐらしました。

というような想いが強すぎたせいか、ちょっと物足りない感じがしました。
表紙は、前作までの国旗を彷彿させる大胆さはなく、地味な街並。
中身に入っても おーっ出た! これぞ中国だ! という驚きも少なめでした。

まあ、これは作品に何を期待するかによるものですから、
単体の絵本として見れば、別の評価もできるでしょう。
水墨画風の描写や、「清明上河図」という古来の絵巻物にならった、
河をさかのぼる旅は、本書ならではの見所といえるかもしれません。
環境問題の一端を描いた画面があるのも、現代的です。
実はボクが知らないだけで、見る人が見れば判る中国的要素も
奥深く隠されているものと察します。

中国本土には、まだ行ったことがないので、その機会があったら
また、この絵本を開けてみようと思います。

---------------【Review for Review】----------------
中国に来たんだったら、ヒマラヤを超えて、ここインドまで踏み込んで
欲しいものですね。仰天ネタの宝庫なんで、いつも淡々と移動する旅人が
思わず驚いてズッコけたりして。インド人もビックリならぬ旅人もビックリ。
馬が逃げ出して、それをオートリクシャーで追いかける なんて展開を
好き勝手に想像してますが・・・
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Watch Me Throw the Ball!

2009/10/13 Tue 11:58

Watch Me Throw the Ball! (An Elephant and Piggie Book)Watch Me Throw the Ball! (An Elephant and Piggie Book)
(2009/03/17)
Mo Willems

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打ちっぱなしならぬ投げっぱなし

ゾウ君が投げたボールをひろった、コブタちゃん。
自分も投げてみようとするところで、待ったがかかります。

ボール投げといえども単純ではないとレクチャーするゾウ君。
案の定、コブタちゃんの放ったボールは手元がすべってゾウ君の足もとへ。
しかし、遠くへ飛んでいったと大満足の彼女は調子にのって・・・

ボールを投げるだけの話で、よくもまあ、こんなに引っ張るもんですね。
いつものユーモアが楽しめるものの、パターン化した感もあります。
買うならリーズナブルなペーパーバック版をすすめます。

---------------【Review for Review】----------------
かく言うボクのレビューもパターン化しています。楽ですから。
このシリーズの事を書いている時は、疲れ気味と察してください。
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The Wolves in the Walls

2009/10/11 Sun 22:57

The Wolves in the WallsThe Wolves in the Walls
(2005/08/01)
Neil Gaiman

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ビジュアル志向の絵本ファンは買いだ!

とにかくこの絵は一見の価値がありますね。
絵本好きにかぎらず、グラフィックデザインやイラストレーションに
関わる方は、かなりのインスピレーションが得られるのではないでしょうか。

手描きの絵や、写真をCGでコラージュして構築した独特の世界。
ページをめくる度に、ほぉーっ そうくるか!と見入ってしまいました。
うつろな眼とした彫刻的な造形の人間とダイナミックなペン画による
狼達のコントラストが特に秀逸。ジャムや楽器やビデオゲーム
などの小物類の描写も程よく五感を刺激してくれます。

話は壁の中から狼が登場するという空想的でコミカルな展開なので
恐怖感を期待すると、ちょっと物足りないかもしれません。

「The Day I Swapped My Dad for 2 Goldfish」という、
本書と同じ作者コンビの絵本もあるようなので、ぜひ見ようと思います。

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あっぱれ! てるてる王子

2009/10/09 Fri 22:59

あっぱれ! てるてる王子 (講談社の創作絵本)あっぱれ! てるてる王子 (講談社の創作絵本)
(2009/04/21)
コマヤス カン

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空想大活劇

久々に心地よい空想にひたれましたね。空想というのは「から」では
なく、空を想うという意味で言ってます。

てるてる王子vs台風殿下。明日の天気を決する戦いが大空せましと
繰り広げられ、まるで「スターウォーズ」や「宇宙戦艦ヤマト」を
見たときのワクワク感がよみがえってきました。

戦うといっても、血なまぐさいものでなく、スポーツの清々しさ
に近いものなので、誰がみても楽しめると想います。
ちょっと脱力的なキャラクター達と、妙に力の入った乗り物の
描写のバランスが絶妙だからこそ、楽しめる戦いといえます。
(今、日本では台風18号が北上中ですが、現実にこんな戦いが
 勃発したら、たまったものではありません)

空という自由なキャンバスに想像力の絵筆が舞う壮快な絵本。
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ラストリゾート

2009/10/04 Sun 12:45

ラストリゾートラストリゾート
(2009/09)
J.パトリック ルイス

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謎多き空想旅行

辺境のリゾートホテルを舞台に、画家が喪失した自らの想像力を
探し求めるという絵本。ミステリアスな展開に奥行きを与えているのは、
ホテルの宿泊客が、様々な古今東西の物語の登場人物であることだ。
童話、推理小説、冒険物、名作、などなど多枝にわたる。

読者がそれらに馴染んでいれば、この作品により入り込みやすくなるし、
楽しみも倍増するだろう。しかしながら日本人の読者の中には、絵を見ても
誰だかピンと来ない方も少なからずいるのでは?
実際ボクもそうで、あとがきの解説を読んで、ああっ、彼だったのか!
気づかされた人物もけっこういる。名手ロベルト・インノチェンティの
絵筆をもってしても、読者の知識までは補えない。

もっとも、あとがきの最後の一文で、なるほどと納得。
読者にとっては空想的にみえても、画家にとっては実体験だったのだ。
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