東海道〈其の1〉日本橋~興津
2010/11/29 Mon 05:10
![]() | 東海道〈其の1〉日本橋~興津 (2009/02) おちあい けいこ 商品詳細を見る |
好みのペースで旅を楽しもう
表紙を一見すると江戸時代の宿場町を俯瞰した絵にみえますが、
さらによく見ると意外なものが描かれていることに気づきます。
海にはウィンドサーファー、飛脚に混じって箱根駅伝のランナーや
サイクリストがいたり、裏表紙には新幹線がさりげなく登場。
かつての各宿場町をベースにしながらも、巧みに現代との関連性を
描いているわけです。日本橋を起点に興津まで、東海道五十三次の三分の一
の行程を紹介。新幹線で一気に通過するもよし、自転車で行くもよし。
ウォーリーのごとく各見開きに登場する、弥次さん喜多さん、松尾芭蕉、
安藤広重の気分で歩くのもいいでしょう。
「旅の絵本/安野 光雅」と共通点が多い作品ですが、単なる二番煎じ
でなく楽しめる作品となっています。終点の三条大橋までが楽しみ。
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昨日のレビューは進化という生命の旅で、今日は時空をまたいだ東海道の旅。
人生もよく旅に例えられます。人は常に旅をしつづけるもんなんですね。
進化という生命の旅へ
2010/11/28 Sun 04:27
![]() | かしこいさかなはかんがえた (2010/09/16) クリス・ウォーメル 商品詳細を見る |
進化という生命の旅へ
地球上の生命はある一つの生命から分岐したと考えられています。
また最初の生命は海に現れたとされていますが、そうなると
進化の課程で海から陸へと生活の場を変える生命がいたわけですね。
本書では魚が陸上生物へと変わっていくところにスポットをあて、
好奇心旺盛な魚の視点から進化を描いた点が秀逸です。
宇宙と同じく、生命の進化は想像力を刺激するテーマ。
いま我々が存在しているのも、遥か昔に、とある魚がいたおかげって
考えると、心が不思議な感慨で満たされてきます。
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進化について調べていたら「地球大進化 46億年・人類への旅」という
NHKスペシャルを知りました。かなり面白そう!DVDを探してみようっと。
ココロのヒカリ
2010/11/26 Fri 04:44
![]() | ココロのヒカリ (みるみる絵本) (2010/09) 谷川 俊太郎 商品詳細を見る |
ヒカリが生まれる
人の行為は、元をたどるとココロに行き着くものだと思う。
同じように、人の行為のたどり着く先もココロということに。
「ココロも満タンに」という某石油会社のキャッチフレーズがありましたね。
目には見えないココロですが、人の行為となって姿を現すわけです。
本書では、ココロそのものがヒカリとして描かれています。
元永さんの絵は、非常シンプルな表現ながら暖かみがあり、谷川さんの
文章と一体になって、色々なココロの表情が伝わってきました。
みんなのココロの世界をやさしく照らし出してくれる絵本です。
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最近ハマってる漫画が「華麗なる食卓」。カレーをテーマにした料理バトルが
文字通り華麗に繰り広げられます。料理のウンチクやレシピ、お色気ありの
盛りだくさんの内容は具沢山のカレー的。インド駐在中に読みたかったと
思いつつ楽しんでます。
いたちのイジワリッチ・イタッチ
2010/11/22 Mon 03:55
![]() | いたちのイジワリッチ・イタッチ (2010/08/24) ハンナ ショー 商品詳細を見る |
いたずらもほどほどに
意地悪でいたずら好きなイタチの社長が改心するまでを描いた絵本。
最初の見開きで、どんな悪事をしているか広告風に一通り紹介。
後の展開で、それらがどんな被害を及ぼしているか判るようになってます。
人によっては不快な内容かもしれませんが、作品として成り立っている
のは絵のセンスが大きいですね。漫画チックな中にも線のひとつひとつに
品格が感じられるし、細部まで気がいきとどいているのもいい。
イタチが後でどう変わったか、前と対比できるように描くという心遣いは
絵探し的な面白さも生み出しています。そして、最後の見開き広告に納得。
他の作品もぜひ見たくなりました。
ところで、絵の中に書かれている細かい文字を全部訳すのは
たいへんだったでしょうね。
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いたずらがユーモアになる場合はいいですが、詐欺になるのは良くない。
「詐欺とペテンの大百科」には古今東西の様々な事例が紹介されています。
中には笑えるものもあり。自分の目玉を噛むという引っかけはニヤリとなりました。
![]() | 詐欺とペテンの大百科 (2001/09) カール シファキス 商品詳細を見る |
かげ
2010/11/21 Sun 04:26
![]() | かげ (講談社の翻訳絵本) (2010/09/17) スージー・リー 商品詳細を見る |
影と遊ぼう
前作の「なみ」と好対照を成すスージーリーの新作です。
両作品を比較すると
・横開き と 縦開き
・青と白と黒 と 黒と黄と白
・海岸 と 小屋の中
という違いがあると共に
・横長の版形
・女の子が主人公
・絵だけで展開
・ノド(見開きのつなぎ目)を生かしている
という共通点があり、表現にこだわりが感じられました。
具体的には縦開きの上側が現実の世界で、下側はその影が映り込んだ世界。
影の形は女の子の空想で変化し、物語が生まれていく展開と
ノドを生かした表現は絵本ならでは。最後のひとヒネリも効いてます。
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昨日は実家の移転工事のため、帰省して旧家に残る自分の荷物を整理しました。
いつか読むだろうと思って取ってた本のほとんどは結局、古本屋へ。
今はネットで簡単に情報が手に入るし、読書も簡単にできるようになったので
本そのものに価値がある場合を除いて、持っている必要性がなくなってきた
せいもあります。カセットテープ、ビデオテープもそうですね。
時代の変化をまざまざと実感しました。
おかのうえのギリス
2010/11/18 Thu 03:14
![]() | おかのうえのギリス (大型絵本) (2010/10/15) マンロー・リーフ 商品詳細を見る |
昔はこんな絵本があったんですね
1938年の生まれの絵本。年号の記憶でいえば第二次世界大戦が始まる前。
お爺ちゃん、お婆ちゃん世代の作品ですね。この作品が当時、どのように
受け止められたかはわかりませんが、仮に翻訳されてたとしても、理解される
のは難しかったと思います。舞台はスコットランド。男の子がなんで
スカートをはいているの?とか、バグパイプって何?とか。男の子の父と母が
山と谷間にそれぞれ別々に暮らしている状況と、男の子が大きくなったら
山と谷のどちらに住むかを決めねばならないという設定など、疑問が色々出て
くるでしょうから。それらを素直に受け入れられれば、話そのものは
シンプルな構成なので楽しめるのではないでしょうか。
絵は全部白黒ですが、余白を活かした描写は芸術的な力強さに満ちてます。
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昨日、職場でSF映画の話になり「ブレードランナー」を持ち出したところ
若い人は誰も知らなかったことに強烈なショックを受けました。
There Was an Old Lady Who Swallowed a fly
2010/11/15 Mon 04:39
![]() | There Was an Old Lady (2009/08/26) Jeremy Holmes 商品詳細を見る |
胃袋の中が劇場に
ボローニャ絵本原画展で紹介されていた絵本中ひときわ異質な作品です。
文章、絵、装釘、全てを1つのテーマで融合させたところに感激しました。
老婆の形を模した縦長の絵本は、ちょうどお腹のところが本になっていて、
ページをめくると体内で何が起こっているか判るという趣向。
ハエを飲み込んだ老婆はそれを退治するために、クモを飲み込む。
次はクモを退治するために鳥を飲み込む。という調子で次々に新たな
動物を飲み込んでいくのですが、老婆の最後はいかに。
実はこれ、アメリカでは有名な詩のようです。同名の絵本も出てますが、
内容を知っている人も充分楽しめます。ブラックユーモアの効いた絵といい
ラストの仕掛けといい、サービス満点の怪作です。
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旅行中は「6人の容疑者」を持参し、上下巻とも読破しました。
社会的立場の異なる6人の視点で、今のインドが描かれているところが
興味深かったです。馴染みのある場所や名前が次々に出てきたので、
かなり楽しめました。
Do!
2010/11/14 Sun 03:31
![]() | Do! (2009/10) Gita WolfRamesh Hengadi 商品詳細を見る |
民族の魂が躍動する
こちらの絵本も昨日、七尾美術館で購入。
表紙を見た瞬間、駐在してたインドに関連したものと分かったので。
三角と線と丸で表現された人間をはじめ、幾何学的に単純化された
絵は、ワルリー画というインドの民族的画法。祭事などで家々の壁を
装飾するときに描かれるもので、インドを表現するときのデザイン的
モチーフとして現地でもよく見かけました。単純ながらも人々や
動物の営みが生き生きと描かれてて、物語性があるのも特徴です。
本書は様々な動詞と、それを表現する絵で構成されています。
RUN , EAT , PLAY , WORK などなど、生命の躍動が素朴なリズム
で伝わってきました。再生紙を用い、印刷から装丁まで手作業という
こだわりは特筆もの。臨場感たっぷりにインド文化を堪能できます。
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インド主催のスポーツイベントで使われたシンボルマーク。
走ってますね!

Stargazers, Skyscrapers and Extraordinary Sausages
2010/11/13 Sat 13:19
![]() | Stargazers, Skyscrapers and Extraordinary Sausages (Child's Play Library) (2010/04/01) Claudia Boldt 商品詳細を見る |
ソーセージが食べたくなる
今日は七尾美術館で開催中のボローニャ絵本原画展へ行ってきました。
入賞作品の絵本も販売されていたので、数冊購入。その一つが本作です。
軽やかなタッチの絵が気に入りました。で、表紙になっているのは、
ソーセージ好きの犬:フランク君。彼に、アイスクリーム好きな女の子が
将来の夢を語りかけます。天文学者や整備士、女王蜂にもなりたい等々。
でもフランクはソーセージ以外のことがイメージできず、話がかみ合いません。
ふたりとも満足できる夢は、はたして見つかるのでしょうか?
見どころは、シルクスクリーンによるオレンジ色のソーセージ。
淡いグリーンとの対比を効かせ、ウマそうに描かれてます。
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昼飯は読書の友にソーセージの入ったパンをガブりと。
キンコンカンせんそう
2010/11/12 Fri 03:32
![]() | キンコンカンせんそう (講談社の翻訳絵本) (2010/08/07) ジャンニ・ロダーリペフ 商品詳細を見る |
30年前に鳴らされた未来への警告
1980年イタリア生まれの反戦絵本ですが、今年できたと言われても
全く違和感ない作品です。いつの時代にも戦争の影がつきまとうせいでしょう。
キンコンカンというのは鐘の音。例え形が恐ろしいものに変わっても、
鐘に込められた平和への願いは鳴り続けるというわけですね。
兵隊達の姿は卵のようにコロコロしています。コミカルなタッチは
争いを客観的に風刺していると言えましょう。
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今日から3連休をとって金沢へ。この時期は七尾美術館で開催中のボローニャ
絵本原画展を観ることが恒例になってます。一時帰国の日程に合わせていた
せいもありますが、帰任したので今回が最後になるかもしれません。