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おおきなけやき

2011/03/30 Wed 04:01

おおきなけやき (ひまわりえほんシリーズ)おおきなけやき (ひまわりえほんシリーズ)
(2011/01)
林 木林

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立ち続けてきた者からの言葉

林木林さんて「詩のボクシング」でチャンピオンになった方ですよね。
絵本も書かれていたとは、最近知りました。これは一通りよまねば。
というわけで、まずは最新作からいきます。

始まりは、森でいちばん高く年長のけやきが大きな音をたてて倒れるシーン。
それは、きびしい冬がようやく終えかかったときのこと。
周りの樹からかけられる言葉。寄って来た虫やそばに芽生えた草花からの言葉。
かつて枝に止まったり、木登りした動物たちからの言葉がさりげなく
けやきの存在感を物語っています。けやきは横たわったまま何度かの四季を
過ごし、立っていたときに気づかなかった大地のすばらしさを実感し、
自身も次の生命を育む土となっていく。

・・・・・余計な解説は不要ですね。

震災で寿命をまたずして倒れた木々も多くありますが、
今も立ち続けているものたちに本書を贈りたいです。
声には出さねど今回の困難に立ち向かっているはずですから。

--------------------【Review for Review】--------------------
昨晩のサッカーチャリティーマッチ。カズのゴールに震えました。
最年長44才となってもグランドに立ち続ける偉大さ。
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プルガサリ

2011/03/28 Mon 04:02

プルガサリプルガサリ
(2011/02/15)
キム ジュンチョル

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伝説の怪獣、遂に現る

同名の怪獣映画、確かにありますね。北朝鮮生まれで、ゴジラのスタッフまで
招聘されてできた作品ということで、前から気になってました。そのうちDVDを
観ようと思っていたら、絵本が出たのでこちらを先にみることに。

元になっているのは映画ではなく韓国に伝わる民話で、けっこうユーモラスな
内容でした。火を吹き、鉄を食らいつくしながら巨大化して、村人を混乱させる
凶暴なプルガサリ。実は、生まれが おばあさんの身体の垢だったり、
えっ? というやりかたで退治されてしまったり。
食事中には口に出来ないもの(しかも燃えている)を撒き散らしながら
暴れまくる4ページ大の見開きは圧巻です。

調べてみると、プルガサリは漢字で「不可殺」と書くらしい。ということは・・・
ラストでは退治されたようにみえて、実はまだ健在というわけですね。

--------------------【Review for Review】--------------------
今、日本にはゴジラ級の怪物が出現。姿は見えないけど、被害は誰にでも
見える・・・どっかのCMみたいだ。
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まるまるまるのほん

2011/03/27 Sun 04:03

まるまるまるのほんまるまるまるのほん
(2010/11/19)
谷川俊太郎

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むしろipad用の絵コンテ

読者の行為を絵本の展開にむすびつけようとする試みは確かにユニーク。
描かれているのは丸だけなんですが、それを押したりこすったりすると
次のページで丸が増えたり並び方が変わったりするという展開が用意され
ている。ただ、一度よめば飽きてしまうのでは? どんな行為をしようが
次のページで起こることは決まっているのですから。
これを素直に何度も楽しめる方はうらやましい。
これこそ触れたり傾けたり声をだしたのを検知できるipadなどのメディアで
やってこそ意味のあるアイデアだと思いました。

かがくいさんの「まくらのせんにん そこのあなたの巻」では同様の
試みが、物語の中でうまく使われていました。ご参考まで。

--------------------【Review for Review】--------------------
丸、特に赤い丸。今、世界中で最もシンボリックな形ではないでしょうか。
手にもって空へ掲げられたり、背負われたり、ひび割れたり、文字の一部に
なったり、新聞の第1面に載ったり。絵本の中で整列した丸たちを前にして、
本をゆすってみようという誘いに、素直に従えなかった自分はヘンですか?
震災が本書のテーマと無関係なことは承知してますが・・・
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ゆきやまたんけん

2011/03/26 Sat 04:02

ゆきやまたんけん (福音館の科学シリーズ)ゆきやまたんけん (福音館の科学シリーズ)
(2011/01/19)
松岡たつひで

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探検車がカッコいい!

前作では紙飛行機で空に飛び立ったアマガエル旅行社、
今回はペットボトルを改造した探検車で雪の野山に出かけます。
本来、雪の季節には冬眠しているはずのカエルや虫たちが、
前人未到の世界へ乗り出す勇気と好奇心に拍手喝采です。
彼らの視点だからこそ気づける雪の世界ならではの感動は、
人間のボクにも存分に伝わってきました。

探検車の細密な図解や乗組員それぞれの体形にあわせた防寒着など
小道具にまでしっかりと気をつかうというこだわりが、自然科学絵本と
してのリアリティを出すのに一役買ってます。
その意味で、松岡さんの絵本は、地底や海底や月世界へ人類の意識を
導いたSF作家ジュール ヴェルヌの域へ到達したと言えましょう。

彼らならば、被災地の生物救助隊としても活躍できそう。

--------------------【Review for Review】--------------------
次回はどこへ出かけるのでしょうか? 被爆後の自然界を探検する
なんていったらシャレにならないですが、科学物語としては興味ある。
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ノアの箱舟

2011/03/25 Fri 04:53

ノアの箱舟ノアの箱舟
(2011/01)
ハインツ ヤーニッシュ

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真っ赤な箱舟が印象的な聖書絵本

3.11の震災を意識すると、この本をどう受け止めるか悩むところです。
津波でビルの上に巨大な船が乗ってしまった光景から、アララト山の
頂上に乗り上げた箱舟を連想した方も少なくないでしょう。
しかし、神話の世界を凌駕する出来事が進行中の今、ボクはどうしても
気になって、この絵本を手にとらざるを得ませんでした。

描き手がツヴェルガーであったことで、心理的な負担は少なかったです。
彼女の繊細で慈愛に満ちたまなざしは、天変地異を前にしても健在。
神のお告げに従って淡々と災厄に立ち向かうノアと生き物たちの
力強さが静かにゆっくりと語られています。

ひとつ気になった生々しいシーンが。それは雨の中で逃げ惑う人々の傘。
太古の時代にこんな折りたたみ傘は存在しなかったのでは?
一瞬、現代人の姿を見いだしてドキッとしてしまいました。

この物語では、長いがまんの時はやがて終わりを迎えます。
震災とのつきあいも長期戦になりそうですが、いつかは終わるはず。
その時は神話を凌駕する世界が生まれていると信じたいです。

--------------------【Review for Review】--------------------
バスを利用するようになってから乗り換え時に通る駅でおもしろい食堂を発見。
24時間営業で、奥に長いカウンターが印象的な庶民的店なんですが、
メニューがすごい。朝食の卵ぶっけごはんやら、昔なつかしナポリタンやら
和、洋、中華なんでも揃ってる。客層も色々、味もちゃんとしてて、
この規模でよくここまでできるなあと感心。ここは定食の箱舟か・・・
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ぱぱごはん

2011/03/24 Thu 03:13

ぱぱごはんぱぱごはん
(2010/07)
はまぐち さくらこ

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絵本より作者の頭の中をのぞいてみたい

プロフィールによると、作者のはまぐちさんはGEISAIでの金賞をはじめ
各方面で作家として評価されている方。たしかに一度みれば目に焼き付く
ほどのインパクトある絵です。絵本はこれが初めてとのことですが、
正直言ってどうみればいいのかとまどってしまいました。

この絵にたいしては、こどものように自由奔放なタッチという褒め言葉は、
ちょっと違う気がします。こどもという枠からはみ出してるので。
生理的にスキキライが分かれるでしょうね。食べ物の扱いなど特に。

パパというけど、パンツのままで、叱るママの留守中に遊びまくる姿は
当人が子どもそのもの。生活感がまるでない とここまで書いたけど
なんだかマトモにレビューするのが無意味な気持ちになってきたなあ。

要するに、ぱぱごはんで大事なのは、創造への挑戦なんだ。食えるか
どうかは二の次三の次。そんなの気にしてたら料理なんてできない。
ぱぱが提供したものを、キミたちは身体全体で食えってことさ。

--------------------【Review for Review】--------------------
作者はインドにも短期留学してたんですね。ボクの滞在と重なってるな。
インド人もさぞかしびっくりしたことでしょう。インドでは色々なものを
食べたり飲んだりしたけど、こりゃあダメだというのがありました。
マサラコーラってやつ。これはありえない!どんな味かって?
可能な方はグルガオンのメトロポリタンモールの隅っこにある怪しげな
インド料理店へ行って試してみなさい。
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串かつやよしこさん

2011/03/23 Wed 04:17

串かつやよしこさん串かつやよしこさん
(2011/02)
長谷川 義史

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駄洒落を駆使した名人芸

串カツやのよしこさんは串カツ名人と呼ばれてます。なんでもあげて、
食べたひとを幸せにするから。例えばプリプリおこった親父さんに
イカの串カツをあげてやると、客は満足し「ま、いっか」と怒りを
おさめる。そうです。食材にちなんだ駄洒落を誘発するのです。

芸人風の男や結婚前のカップル、なんと泥棒までやってくる。
そしてみんなが、よしこさんの串カツに感激して思わず駄洒落を。
串カツをあげることで、お客さんの運気もあげてしまうわけですね。

絵本としては、もっと見たいと思ったとこで終わっちゃうのが残念。

--------------------【Review for Review】--------------------
昨日、空想した絵本の続き。
何を期待しているかというと、ひとりの作家という枠を越えて、とある
モチーフが広がっていくのを見てみたい、ってことになる。
その意味では、一筆描きで線をつなげてもいいし、文字通りバトンとか
聖火をリレーしてもいい。丸だったら転がるという動きを、世界の
誰もがわかるし、単純なのでアレンジしやすいと思った次第。
シルヴァスタインの「ぼくを探しに」的なことが、時空を越えて
広がっていくイメージかな。今日の本でいえば、よしこさんの店へ
やってきて、何かをして去っていくかんじ。
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りんごが コロコロ コロリンコ (講談社の創作絵本)りんごが コロコロ コロリンコ (講談社の創作絵本)
(2011/01/19)
三浦 太郎

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流れが音楽的

ゾウさんが鼻をのばして樹からとろうとしたリンゴ。
でも、すべってゾウの背中をコロコロころげて行く。
その後は色々な動物の上をころがってくんですが、
ゾウの次はあの動物かなと思ったら、やっぱり登場。
あの動物もはずせないし、最後は○○の元へ行くんだ
ろうなと想像したら、ほとんどその通りの展開。
で、今回はそれがいいわけです。

ひとつの旋律が次の旋律を生み出し、サビへとつな
がっていく必然性が音楽のように心地よかったので。
色面を大胆に生かした切絵風の動物たちや、リズミ
カルな文に気持ちもコロコロとなりました。

----------【Review for Review】----------
何かが転がっていく絵本は色々ありますね。
おむすび、どんぐり、ボール などなど。
転がるのは赤い丸というルールを決めて各作家らが
リレーのごとく絵本化し続けたら面白いかも。
国境や文化をまたいで、ずーと先の未来まで転がり
続けられたらいいなあ。なんて妄想しました。
なんで赤い丸かって? そりゃあ日本人ですから。
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ぼくがいちばん!

2011/03/21 Mon 02:21

ぼくがいちばん!ぼくがいちばん!
(2011/01/21)
ルーシー・カズンズ

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ぼくがじゃなくて、ぼくもだね。

えっ 自分が一番だって? そんなこと言ってるのはイヌくんか。
どうしてそうなの? なになに、友達のモグラより速く走れるし、
ロバよりうまく泳げるし、ガチョウよりも穴掘りがじょうずで、
テントウムシよりぐーんと大きいし。

あーはいはい、わかったわかった。でもそれは比べる相手が
ちがうんじゃないの、イヌくん。穴掘りだったらモグラくんと、
泳ぐのだったらガチョウさんより速くないと一番とは言えないよ。
ほーら、みんなも同じこと考えてるじゃない。

あっ、べつにおちこむことはないよ。ボクはきみの良い所をわかって
るから。それにイヌくんにしかできないことだってちゃんとあるし。

えっ それは何かって? ほら、友達の声をきいてごらん。

--------------------【Review for Review】--------------------
イヌはやっぱり嗅覚でしょ。救助犬のみんな、今日もごくろうさま。
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どうぶつどのみちいっぽんみちどうぶつどのみちいっぽんみち
(2011/01)
中村 牧江

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つながってるよ

一筆書きによる絵本です。といえば最近では「せんをたどって」の
シリーズが有名ですね。じゃあ二番煎じか、なんてあなどるなかれ!
作品としての完成度はこちらのほうが、ずっと高いです。

1 色ベタの画面に白い線のみという単純さがテーマを際立たせている。
2 自転車で道をたどるという見せ方は、読者の心を誘導するうまい演出。
3 太さや速度に変化をつけるなど線に表情があり、気持ちが伝わってくる。
4 全体の流れをさまたげないようシンプルかつ的確に添えられた言葉。

などなど、思いついた点を書き出してみましたが、コピーライターと
グラフィックデザイナーのコンビだけあってさすがの仕事ぶりです。
なにより自転車の旅からもどると世界がひとつにつながるという
エンディングは、3.11を経た今の気持ちに響いてきました。

--------------------【Review for Review】--------------------
街で多くの自転車をみかけるようになった。移動手段や道順を変えると
新しいものが見えてくる。気づかなかった店、気づかなかった地名、
気づかなかった自然の変化、気づかなかった人の温かみ。
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