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ガラスのジゼル

2011/04/30 Sat 05:28

ガラスのジゼル (くうの絵本箱)ガラスのジゼル (くうの絵本箱)
(2005/11)
ベアトリーチェ・アレマーニャ

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可憐に描かれた真実

本書の内容を真正面から受け止めるとかなり生々しいものがありますね。
もしも、あなたの考えていることが、他人に筒抜けになってしまう
としたら、ただごとじゃないでしょ。

ガラスのように透明な身体をもって生まれたジゼルがそうなのです。
頭の中まで透けてしまい、彼女が思っていることはディスプレーの
ごとく他人に見えてしまうのですから。

幼かった頃はいいです。可愛いと、みんな素直に受け止めてくれるから。
でも大人に近づくとそうはいきません。知られたくないことまで
見透かされ「そんなことを考えるとはけしからん」と非難されます。

誰しも立派なことばかり考えるわけじゃないのに。でも人々はそれを棚に
あげて彼女を批判の矛先にしてしまうのです。裏をかえせば、心の裏側に
ある真実を受け止める勇気があるかどうか試されているということ。

本書ではトレーシングペーパーが効果的に使われてます。特にシルエットを
オーバーラップさせたラストページは、目をそむけずしっかりと
見届けてください。あなた自身に直面するはずです。

--------------------【Review for Review】--------------------
透明感というのは美しさの原点だと思う。特に透き通った水はそうだ。
見ているだけで心が洗われていく。ボクは美しいと感じるものの中に、
純粋な水のごとき透明感を見いだしてしまうのです・・・
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いしのスープ

2011/04/29 Fri 04:18

いしのスープいしのスープ
(1990/05)
トニー ロス

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石の料理を召し上がれ

本書を召し上がる前に、メインディッシュとして、マーシャ・ブラウン作の
「せかいいち おいしいスープ」をおすすめします。原材料はポルトガル産の
昔話なのですが、旨さの元になる頓知が良く煮込まれており、コク深く、かつ
後味もさわやか。誰もが満足できる一品に仕上がっています。
その余韻を楽しみたいときに、デザートとして「いしのスープ」をどうぞ。

共通の素材を使っているのでメインとの相性もよく、パロディというスパイスが
効いてて最後まで飽きさせません。特にお腹のすいたオオカミと智慧のある
めんどり という組合せは絶妙。オオカミのアクの強さを めんどり が
作り出す石のスープで、物語という生地に馴染ませていくさまは見事です。
シェフは世界的絵本作家のトニー・ロス。ユーモアの味付けは手慣れてますね。
(いったい何のレビューじゃ?)

--------------------【Review for Review】--------------------
さっきからお腹がグルグル吠えている。朝飯にするとしよう。
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カール・イブー

2011/04/28 Thu 04:11

カール・イブーカール・イブー
(2007/07/01)
ベアトリーチェ・アレマーニャ

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重い気持ちを脱ぎ捨て羽ばたこう

人生につかれはてた男:カール・イブーの一大転機。
長年、人を避けて生活し、否定的な考え方がクセになった彼が
孤独に耐えきれず、出会いを求めて、いざ街へ。

しかし、勇気をふりしぼって女性に声をかけれども、
断られ続けてますます落ち込む。それは彼にまとわりついて
しまった近寄りがたい雰囲気のせい。

彼を救ったのは小さな男の子。重苦しい帽子を脱いだ時に
彼の視界に希望がはいってくるようになったのです。
気分一転、春を迎えて羽ばたきたい気持ちにふさわしい一冊。

この絵本はでかい。普通の倍はある。見開きの半分が絵で半分が
文という贅沢さ。クライマックスでは白紙のページが効いてます。
手作り感あるコラージュの絵が、重い気持ちをサクサク語る。

--------------------【Review for Review】--------------------
文体をいつもと変えてみた。単なる気分転換です。
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もじゃらんこ

2011/04/27 Wed 03:15

もじゃらんこ (0.1.2.えほん)もじゃらんこ (0.1.2.えほん)
(2011/01/05)
きしだえりこ

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キミたちはどこへもいける

amazonの内容紹介がすばらしい。思わずホオーッと感心してしまった。
特に作者である岸田さんの言葉は、そうだったんだ!と納得。
3匹のけむしが、ただただ這っていく絵本にみえて実は奥が深いんですね。
地面を這う毛虫は、ハイハイする赤ちゃんの喜び、無心に生きる命の讃歌。
参りました。

--------------------【Review for Review】--------------------
今朝は手軽に済まそうと選んだ幼児絵本でしたが、実は手強かった。
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どうぶつぴったんことば

2011/04/26 Tue 03:25

どうぶつぴったんことばどうぶつぴったんことば
(2010/11)
林 木林

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ぽぽぽぽーん?

ことばの終わりと始めが同じものをくっつけて新語をつくっちゃう遊びの絵本。
タイトルのごとく「ぴったんこ+ことば=ぴったんことば」というわけです。
例えば、はじめに登場するのが「かばれりーな」という絶妙な取り合わせ。
いったいどんなヤツだ? 他にも色々な動物たちがぴったんこしてます。

そういえば、これってACのCMに似てますね。ありがとウサギ、こんばんワニ。
某アイドルの いただきマンモス なんて言葉もあったし、ことば遊びとしては
ポピュラーなものなんでしょう。

いずれにせよ一部に動物の名前をつかうところがポイントですね。
面白さに味とコクが加わって想像もふくらんできます。
そんなゆかいな言葉のひびきを、ひとつひとつ絵に着地させた西村さん。
とぼけたタッチが冴えてます。

--------------------【Review for Review】--------------------
仮面ライダーの怪人を思い出す。武器+動物 動物+動物 人+動物。
マシンガンスネークとか ネコヤモリとか カブト虫ルパンとか。
合体言葉の宝庫、しかも全てキャラター化している。
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うみぼうず

2011/04/25 Mon 03:41

うみぼうず (杉山亮のおばけ話絵本)うみぼうず (杉山亮のおばけ話絵本)
(2011/02/02)
杉山亮

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大迫力の妖怪絵本

前作「のっぺらぼう」の怖さが衝撃的だったので、本作を見つけた瞬間、
迷わず手に取りました。こちらも負けず劣らずの出来映えで大満足。

禁を破ることによって妖怪と遭遇するところや、高まった恐怖を
ラストで静めてくれるところなどは、前作と共通しています。
そもそも「うみぼうず」とは何者なのか? 調べてみると、
漁師の間に昔から伝承される妖怪らしく、海での怪異や異常気象が
海坊主という姿をとっているとのこと。

大自然の脅威としてみると、震災の記憶も覚めやらない今は、
生々しすぎる内容かもしれません。まるで生き物のような波の描写や、
巨大な海坊主は、本来とは別の意味で恐怖を呼び覚ましますから。
それぐらいの迫力がある絵です。

心に強い防波堤と耐震性を持っていると思われる方はどうぞ。

--------------------【Review for Review】--------------------
磯の香りを感じさせる浜辺、たき火の暖かさ、朝日の輝き、青空の壮快さなど、
魅力的な描写も多いので、本書は素直に楽しむのが正解かもしれません。
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わたしのネコが小さかったころわたしのネコが小さかったころ
(2009/11)
ジル バシュレ

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ひねりの効いた絵本

「世界一ばかなネコ」は、長い鼻に大きな耳のネコとの暮らしを、飼い主の
画家が描いた絵本。ボクの感覚もばかになりそうなくらい強烈でした。
先日「世界一ばかなネコの初恋」をよんだときに、2作目の存在を知り
すぐに本書を手に取った次第。

気になっていたことがやっと判明しました。
それは、このネコが異様に愛着をもっているニンジンの玩具のことです。
ネコは寂しさをまぎらわすものが欲しかった。でもそれは作者の用意した
小さな“ネコ”のぬいぐるみというありきたりのものではなかった。
そこに、このネコの価値観が見いだせる。とりわけ押すと音が出るところ
が気に入っているようです。ぬいぐるみはこんなリアクションをしない。

ものごとは、ただ単にあるだけで、それを解釈する側によって
勝手に価値が決められているにすぎない。灰色を黒っぽい白とみるか、
白っぽい黒とみるかは、それぞれなのである。

作者の親ばかぶりが、このネコをしっかりと存在させているのです。

--------------------【Review for Review】--------------------
ルール:本書をレビューする際は絶対に使っちゃいけない言葉がある。
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ある朝ジジ・ジャン・ボウはおったまげたある朝ジジ・ジャン・ボウはおったまげた
(1981)
ひらい たかこ

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これぞ珍騒動

おったまげたよ!ほんとに。男の子のおちんちんが寝ている間にのびて
いっちゃうんですから!のびた先はトイレかな、だったら寝たまま済ませ
られるし、と思ったら、そんな程度じゃない。部屋を出るのみならず、
家からも出て、街中まで飛び出しちゃってる。

もちろん男の子は大慌て、のびた先をたどっていきます。
途中で切られたり、かみつかれたり、踏みつぶされたりしたら大変ですから。
人ごととは言え、こっちもハラハラドキドキです。早くどうにかしてくれよ!
なんて気持ちが盛上がったところで、なんとか収束。ふぅ~っとためいき。

のびたおちんちんは何だったんだろう?自分でコントロールできない
オトコノコの性衝動を描いた・・・・ いやちょっと違うな。
ともすれば下品な方向にいきがちなところを、街や人々を
オシャレに描くことでうまくバランスが取れています。
さすが海外の作家はやることが違う、と思ったら、なんと作者は日本人。
しかも(当時)20代の女性ですぞ。これにもおったまげた!

ひとつ気になったのは、息子の一大事に全く関心を示さない母親の存在。
男の子は寂しかったのかなぁ、おちんちんをのばしてまで皆の関心を
ひきたかったとすれば。

--------------------【Review for Review】--------------------
切ない気持ちになってきたのは、朝から降ってる雨のせい。
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くるまかします

2011/04/22 Fri 03:20

くるまかしますくるまかします
(2011/03)
鈴木 まもる

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くるまかしますまかせなさい

くるま大好きな男の子がレンタカー屋さんを始める話です。子どもだから
実際は車を扱えないだろうって? いえいえ空想力という免許証があれば
だいじょうぶ。高所作業車や消防車、クレーン車やパトカーなどなど、
困っている動物たちを助けるために、いろいろな車が大活躍しちゃいます。

これまでも、働く車の魅力を描いた絵本が多い鈴木さんですが、
単独の車ではなくて、これだけの種類が登場するのは初めてでは。
カバーの折り返しに、ミニカー遊びをする男の子が描かれているので、
そこから空想遊びの世界へ入り込んだのでしょうね、たぶん。
だとすると、気になるのがラストへの運びかた。現実的な話と直接からませた
ままになっているので・・・ 空想をちゃんと着地させて欲しかったです。

--------------------【Review for Review】--------------------
昆虫の能力と合体させたら、色々とおもしろい車が出来そう。
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かくれんぼする文字みぃ~つけたかくれんぼする文字みぃ~つけた
(2010/08/05)
小林 真澄

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四季の風物に隠れた文字

えっ普通の絵じゃないの? みかん、カブト虫、だるま、さんま、鯛、
などなど筆書きによる和風の絵。なにも知らずに表紙の絵をみたら
そう思う方が多いのでは。それくらい自然に名前が隠されています。

例えば、げたの絵をよくみると「げた」と書いてあるんです。
いちど気づくと、あなたも文字探しにハマってしまいますよ。
探すといっても、ウォーリーのように目を虫眼鏡にする必要はありません。
黒い線ではっきりと書いてあるので、探す側のセンスが問われる内容です。

一読して感じたのは、ひらがなの形の魅力。もともと漢字が筆書きに
適した形に洗練されたものだけあって、その柔軟性がみごとに
発揮されている。線がのびたりちぢんだり、太くなったり細くなったり、
優しかったり力強かったりと、色々と変化して絵に同化する様は見事!

どうしても分からない絵が一つあったけど、巻末に袋とじの答えが
あったので助かりました。

--------------------【Review for Review】--------------------
隠されているものを探したがるのは人間の本能なんだろうか。
そういえば子どもの頃はおやつの隠し場所を探すのに夢中になった。
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