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くるくるくるよ おすしがくるよくるくるくるよ おすしがくるよ
(2011/03)
川北 亮司

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頭の中もくるくる回る怪作

〈回転寿司の味わいや楽しさを演劇的に表現せよ〉

という課題(そんなのあるかどうか知らないけど)があったとしたら、
本書はかなり的を得た回答になっていると保証します。

回転台の上から次々に登場するお寿司たちのなんと個性的なことか!
相撲をとったり、パンクロックをしたり、酔っぱらってたり。
皿の上は彼らの晴れ舞台、注文した家族まで巻き込みんでの盛り上がり
をみせてくれます。頼んだものが登場したときのワクワク感、
口にいれたときの感動、お腹いっぱいで幸せな気持ち。
なんて要素が、キャラター化された寿司によって増幅され、リズミカルな
文章によって違和感なく伝わってきました。

--------------------【Review for Review】--------------------
仕事が回転台に乗って次々にやってくる状況はまだまだ続きそう。
昨晩は疲れてぐったりと寝てしまった。それはさておき、今日は貴重な平日休み。
今日しかできないことを着々と進めていこう。
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いいからいいから〈4〉

2011/06/28 Tue 02:46

いいからいいから〈4〉いいからいいから〈4〉
(2010/05/25)
長谷川 義史

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例えダメ忍者がやってきても

一昨日の「情熱大陸」で作者の長谷川さんが、自ら朗読していた作品のひとつ。
おじいちゃんのセリフ「いいから いいから」の言い回しに味わいがありました。
山本リンダの熱唱もよかった。これは「いっきょくいきまぁす」からですね。

さて、毎回珍客が登場するこのシリーズ。雷様、お化け、貧乏神、ときて今回は忍者。
しかもつれてきたのは、おじいちゃんの息子であるお父さんです。
「みちで ないてたんだ、かわいそうだから つれてきたんだ」と・・・
捨て猫や犬をつれてくるようなかんじで忍者をつれてきてしまうのです(笑)

おじいちゃんの家で飼う、いや、家に同居することになった忍者は、家族に
見守られながら、じっくりと修行。だんだんと腕をあげていく様子に
こちらも嬉しくなって来ます。そう、もともと力はあったんだよね。

あせってみたところで、どうにもならないものはしょうがない。
のんびり、ゆっくり と受止める、心の強さを持っていたいものです。

--------------------【Review for Review】--------------------
訳あって今週から木金が休みになるため、仕事は明日までしかない。
行動は迅速に、でも心は落ち着いていこう。
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あたまをなくしたおとこ

2011/06/26 Sun 06:14

あたまをなくしたおとこあたまをなくしたおとこ
(2011/05/03)
クレール・H・ビショップ

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怖い? いいえユーモラスな話です

虫眼鏡を手に、なくした頭をさがす男の表紙はかなりのインパクト!
ことの始まりは、冒頭のページの一文にあるとおり、

「あるあさ、おとこが おきたら、あたまが なかった。」 

のである。そこで男は昨日の行動を振り返り、祭り広場へ出かける。
家の中を探しても見つからなかったので、外へ探しに行くのです。
ある意味ナンセンスな展開ですが、マックロスキーのリアルな絵からは、
男の困惑ぶりがひしひしと伝わってきました。身体から離れた頭は
どうなってんの???

大胆な展開のこの絵本、生まれたのは約70年も前のアメリカ。
当時の祭りの催し物がいろいろと出てくるところも興味を引き
最後まで一気によませます。

でもラストのオチはどうなんでしょう?
今ならもうひとひねりが求められるところですね。
マジシャンに話題がふられたので、もっとその方向でまとめるの
かなと期待しましたが・・・

たぶん男は、祭りで酒を飲み過ぎて記憶をなくしたのだと推察します。
それと、自分のことにさえ無関心になると、頭が途中でなくなっても
気付かないのかも。最近仕事に忙殺されているあなたもご用心を。 

--------------------【Review for Review】--------------------
昨日は詩のボクシング:神奈川本大会と前期全国大会を観戦。
デブ捨て山、雑菌の多い料理店、死者を生き返させる出っ歯の男、
を朗読したオオタニさんの作品はストーリー性豊かで楽しかった。

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ながいながい すべりだい

2011/06/25 Sat 04:35

ながいながい すべりだいながいながい すべりだい
(1987/07)
長 新太

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巨大で不思議な滑り台

長さんの絵本では、イメージの生成装置としての舞台がいろいろ出てくる。
ながいながいすべりだいもそのひとつと言えます。

滑り台といっても、巨大な山をまるごと使ったスケールの大きさ!
真っ直ぐではなく、ぐるぐるまわりながら滑り降りるので、周回するたびに
様々なモノと出会う仕掛けになってます。

滑り始めは、きのこが登場。次にかえる、そして蝶々 と静かに展開。
だんだんと変なものが出て来て、期待と不安が高まってくる。
いったいこの先どうなるのか? といっても長さんの作品の中では、
割と起伏をおさえた感じですね。かわいい○○にドキッとした以外は。

あなたも重力に身をまかせて、滑ってみてはいかがでしょう。
どうしてこんなものが山に? なんて想像したりして、読者ごとに
様々な物語を楽しめる作品です。

--------------------【Review for Review】--------------------
一週間ぶりの絵本レビュー。今週は仕事でずーっと目が廻ってた。
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じっちょりんのあるくみち

2011/06/19 Sun 05:06

じっちょりんのあるくみちじっちょりんのあるくみち
(2011/05)
かとう あじゅ

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コンクリートの隙間に咲くメッセージ

アスファルトやコンクリートのわずかな隙間にも育つ草花。
よくぞまあ、こんな場所に咲いたものだ!なんて驚かされるほど
自然の生命力は逞しい。それを陰ながら支えているのがじっちょりん
なのですね。じっちょりんの行動は不思議が多い。
家族ぐるみで植物の種を街中にまいていくんですが、これはちょっとした
冒険でもあります。彼らはとても小さいので、猫や犬の存在は脅威。
横断歩道を渡るのはとてつもない大仕事。それでも彼らは種をまく。

じっちょりんを通して、ふだん見過ごしがちな小さな自然に目を向けさせ、
優しい気持ちに導いてくれる絵本。 なんでしょうけど・・・

本当にそうなのか?
本来、植物の側からみれば、固い石やコンクリートの隙間なんかより
ちゃんとした公園や森や緑地に根付いたいと思うのでは。
だって、ひび割れの原因として引き抜かれることもあるでしょう。
となると、都市化の波に対する植物側の小さな抵抗として、
コンクリートの中であえて生存権を主張しているってことになるのでは。
育つ場所に意思が込められているとすればね。

というのは考えすぎかなぁ。
各ページに隠された小さなハートから察するに、都会の草花への
小さな愛情がまかれているとみるようにしましょう。問題はそれが
我々読者の心の中でどう育っていくかということ。

--------------------【Review for Review】--------------------
実は先だっても家の前の駐車場の草を抜いたばかり。複雑な気分。
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さよならペンギン

2011/06/18 Sat 03:04

さよならペンギンさよならペンギン
(2011/04/08)
湯村 輝彦、糸井 重里 他

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時代を越えた場外ホームラン

ときどき古い絵本をよむこともありますが、ここにレビューする絵本は、
出たばかりのものが中心。そのときそのときの時代の雰囲気を感じとれ
たらいいなと思っているので。でも復刻版となると別です。

というわけで「さよならペンギン」。なんと35年ぶりの登場です。
ボクは初めてよんだのですが、ちょっと期待はずれでした。
古き懐かしい昭和の空気にひたれるかなと思いきや、そして、現在活躍中の
作家も昔はこんなの作ってたんだなと、未来人視点で味わおうと思いきや、
今みても全く新鮮で挑発的な内容だったので。

まずはペンギン。さよならとくると「さよなライオン」なんて
即、出てくるほどCMで刷り込まれていますが、ここはペンギン。
ペンギンでなければならないのです。ライオンだと全てをなぎ倒して
一直線にゴールへたどりつくというもったいないことをしそう。
かといってカメでは時間が足りない。イヌも悪くないけど器用すぎ。

そこでペンギン。空を飛べない鳥だけど絵本の中ではあっちこっちへ
飛躍しちゃいます。飛行機の中、海、砂漠、ジャングル、野球場!
いちおう海水パンツを買うという目的はあるものの道草が多いのなんの。
まあそこが人間、いやペンギンというものなんだよね。

購入するなら「ほぼ日ストア」版がおすすめ。カバー裏にも印刷が
あって、若かりし頃の作者の写真がみれるので。
http://www.1101.com/penguin/shop/index.html

--------------------【Review for Review】--------------------
とりあえず週末休みだぁ。でも来週もまた例の仕事に引きずられそう。
早いとこ、さよならしたいのだが、そうもいかず・・・
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たかこ

2011/06/15 Wed 18:00

たかこ (絵本・こどものひろば)たかこ (絵本・こどものひろば)
(2011/05/01)
清水 真裕

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日本人が日本人と出会う

たかこは平安時代の女の子。古語を話し、十二単をまとい、筆記用具は筆。
そんな彼女が、なぜか現代の小学校へ転校してくる。ありえないことだけど、
先生や生徒は、普通にちょっと変わった女の子として受け入れる。
そこがこの絵本のスゴイとこなんだよね!

絵本のテーマ的には、転校生が外国人の子だったり、宇宙人だったり、
動物だったりしても成り立つ内容。それをあえて平安時代の女の子を
登場させた意味はなんだろう? たかこの存在は妙にリアリティがある。
それは、時間をさかのぼって、おばあちゃんの~おばあちゃんの~
おばあちゃんの~~~子ども時代として確かにあったからでしょう。
平成と平安。時代は違えども、悔しがったり、けんかしたり、助け合ったり。
今を懸命に生きることはいっしょ。

ちょっと違う存在を通し、人の普遍的な暖かみに気づかせてくれる良書です。

--------------------【Review for Review】--------------------
いつもは起きがけにする絵本のレビューだけど、今日は帰宅後の夜中に
やってます。ここんとこ気疲れが多いので、気分転換に。
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おばけときょうりゅうのたまごおばけときょうりゅうのたまご
(2011/05)
ジャック デュケノワ

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おばけのパコームのファンになりました

こういう絵本があるとほんとうにホッとしますね。このシリーズを手に
したのは本書が初めてですが、ロングランとなっているもの納得です。

おばけなのに、足がある。だから、ちゃんと生きているわけで、こども心を
体現するキャラクターとして存在しているところは、ウサギやイヌやサルと
いった有名キャラと同列です。今回はみられませんでしたが、おばけならでは
の特別な能力も持っているのかな? それは他の作品でみるとして。

本書では、おばけのパコームが原始時代を舞台に恐竜たちと出会います。
壁画のある洞窟がタイムトンネルの役割をはたしているところはうまい。
左から右へ移動することで、無理なく時間を遡るようにみせています。
途中、ご先祖様が登場し案内役になっているところもわかりやすい。

危険なエピソードはないけど、冒険ファンタジーとして充分たのしめました。
単純にみえて、実は奥が深いです。洞窟だけに・・・いや失礼。

--------------------【Review for Review】--------------------
この手の絵本をレビューするときは、あんまりむずかしいことを
考えたくないときが多いです。
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パパのしごとはわるものです (えほんのぼうけん27)パパのしごとはわるものです (えほんのぼうけん27)
(2011/04/23)
板橋 雅弘

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男の子が知った悪役の美学

ドキッとするタイトルですが、悪者といっても犯罪者ではない。
悪役プロレスラーという、ヒーロー役を引き立てるための仕事である。
もう、この設定でテーマと内容は判ったようなもので、よむ前から満足。
もちろん、じゅうぶん期待に応えてくれました。

パパの働いている姿をみたことがない男の子。パパの仕事を調べるという
宿題のために、こっそりパパの車に乗込んで着いたところが試合会場。
そこでハンサムなレスラーにやっつけられる悪のマスクマンが、自分の
パパであることを、初めて知るわけです。

試合後に会った親子の間にながれる気まずい雰囲気。
それを氷解させたのが、帰路につくお客を見ながらボソッと発した
パパのひとこと。いやぁ、なかなか味わいがあります。
それを受けた男の子のセリフもいい。ちょっと出来過ぎだけどね。
ふたりともカッコいいぜ! 熱の込もった筆運びもいい。

ああ、もしもこの作品が昭和時代に登場してたらな。

--------------------【Review for Review】--------------------
まあ現実は善や悪がはっきり分かれるわけではない。善人にみえて
蓋を開けてみたら実は悪者だったということもあるし。
昨日はやっとブラックスワンを観た。白と黒の対比が見事で、芸術にささげる
心の葛藤が心に突き刺さってきました。
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ちいさな死神くん

2011/06/11 Sat 04:36

ちいさな死神くん (講談社の翻訳絵本)ちいさな死神くん (講談社の翻訳絵本)
(2011/04/26)
キティ・クローザー

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死と仲良くなることは命を尊重すること

死神と聞いて想像するのは、黒装束で大きな鎌を持った恐ろしい姿。
しかし、正統的な死神ならば、人に直接手をくだすことはない。
あくまでも死を視覚的に象徴化した存在なのです。そして人々を死の
世界へ導く案内役を果たす。少なくとも、ボクがいままでの絵本で
出会った死神はそうでしたし、本書の死神くんもしかりです。

そうなると、誰もが人生の中で必ず死神に出会うことになるわけで、
必要以上に彼の存在を恐れることはないのでは?
という意識の持ち方が、死神くんと仲良くなった女の子を通して
描かれています。いや、逆か・・・ 死を受け入れる覚悟のできた
女の子に出会った死神くんを通し、生きる喜びが描かれている。

読者が死神に感情移入してしまうところが、絵本の構成として秀逸!
人と出会うことにネガティブになってしまった死神くん。彼が女の子と
遊びながら前向きになっていく姿をみせることで、より良く生きるという
メッセージが伝わってくる。そんな離れ業を、さりげなくやってのけてます。

関連したテーマの絵本では「死神さんとアヒルさん」もおすすめ。
昔から身近にいた死神に、アヒルのほうで気づくという出会い方が、
死の本質をついた傑作です。

--------------------【Review for Review】--------------------
ひさびさのレビューです。先週は本業のほうで、毎朝、必死になってたもので。
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