コウモリとしょかんへいく
2011/09/30 Fri 04:10
![]() | コウモリとしょかんへいく (2011/08/26) ブライアン・リーズ 商品詳細を見る |
おっ、日本にも羽ばたいてきたぞ。
以下は原書「Bats at the Library」のほうで書いたレビューです。
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「コウモリうみへいく/ブライアンリーズ作」では、夜中に海水浴にでかけたコウモリたち。
実は図書館にも出没していたのですね。誰もいない夜の図書館は彼らのワンダーランド。
夢中になって読書する者もいれば、コピー機やプロジェクターやパソコンで遊んだり
する者もいる。実に楽しそうだ。みんな集まっての読み聞かせで、本の世界へ没頭する
幼いコウモリが微笑ましい。読書という至福の時が、コウモリの視点を通すことで、より
いっそう特別なものに感じられる。知的好奇心が興奮して羽ばたきだしちゃう絵本です。
本書もぜひ翻訳版を出して欲しい。
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以上となります。
新ためて翻訳版をながめましたが、いいですね。次はどこへ出没するのかな?
なんて思っていたら、実は3作めが出てました。「Bats at the Ballgame」
野球に興じるコウモリたち。早速amazonにオーダーしちゃいました。
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昨日、最新の中学校の美術の教科書をながめる。好きな絵本が紹介されてて、
嬉しくなった。ちょっと驚いたのは少年漫画も取り上げられていたところ。
教科書でテニスの王子様やキャプテン翼らに出会うとは。
ラーメンちゃん
2011/09/29 Thu 04:46
![]() | ラーメンちゃん (2011/09/15) 長谷川 義史 商品詳細を見る |
ラーメンの出前一冊
6月に「情熱大陸」で放映された作品なので、ご存知の方も多いでしょう。
当初は被災地の石巻小学校介児童に向けた手作り絵本だったのですが、
結果的に、これが大きなプロモーションとなり、出版へ至ったようです。
被災といっても重々しさはなく、終始一貫しているのは明るいトーン。
問題提起や文明批判をするでもなく、寂しさや悲しみの原因にも触れていない。
シンプルに未来をみつめ、しっかり進んでいこうと後押ししてくれる内容です。
その意味で普遍性の高い作品となってますが、なんと言っても印象深いのは
ラーメンちゃんのキャラクターと こどもたちGO(ゴー)というフレーズ。
笑いあり駄洒落あり、ちゃんと長谷川絵本として味わえるところがすごい。
たしかに体の空腹という切実な問題は絵本で満たせません。
でもラーメンちゃんは、明日へ一歩ふみだすエネルギーをくれる。
子供たちという未来へ向けた一杯です。
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ラーメンが食べたくなってきた。なると、しなちく、ほうれんそうの入りの。
ようかいガマとの
2011/09/28 Wed 03:37
![]() | ようかいガマとの―おイケにカエる (2011/08) よしなが こうたく 商品詳細を見る |
妖怪 満開 愉快 豪快
日常世界に妖怪が大噴出。家のトイレ、風呂、台所、商店街、公園などなど、
妖怪達に埋め尽くされて、異様な状態に。といっても怖さより楽しさをが
先にくるのは、妖怪達の生活臭が伝わってくるから。実に生き生きと
描かれてるところに、作者の妖怪にたいする想い入れの強さが感じられます。
一応、ガマとのをガマ池に返すというストーリーはありますが、それは
様々な妖怪達を盛りつける為の器のようなもの。読後は妖怪フルコースで
満腹状態になりました。妖怪は元々、自然界や動物たちが起こす所業を
キャラクターに置き換えたものと言えます。その意味では何もかも明らかに
されている現代より、謎に満ちた昔のほうが、妖怪達も住みやすかったでしょう。
工事で池が埋められていくラストシーンには、祭りの後の寂しさと共に、
現代文明によって、心の中から想像力が働く余地も埋め尽くされていく
空しさも感じました。
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原子力を妖怪化するとどうなるか。アトムでもありゴジラでもある。
気がつけば寒くなってきた。足元のヒーターが心地よい。
ホルンくんとトランくん
2011/09/25 Sun 03:17
![]() | ホルンくんとトランくん (2011/07) セバスチャン ブラウン 商品詳細を見る |
自分の力も掘り出す
小さな働く乗り物の絵本とくれば、どうも似たような展開パターンに
なってしまうのでしょうか。仕事場でうまくいかないことがあって
落ち込むものの、何かのきっかけで自分が活躍できる場を見いだし
自信をとりもどす。本書も基本的にそんな流れ。それでも見入ってしまう
のは、ホルンくんと仲間達の姿が愛らしいから。機械でありながらも
メカメカしさがなく、玩具箱から出て来たような温かみのある容貌がいい。
自分の力が頼りにされ、役に立って喜んでもらえたときに、自信を得る
のは皆いっしょ。誰しもその人ならでは力があるし、それを尊重できるよう
になりたいなんて考えました。
※「ショベルカーダーチャ」で書いたレビューを読み返したら、
本書にもあてまったので、一部を直し、あえてそのまま載せてみた。
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ホルンとトランで翻訳がシンガーソングライターでもある
中川ひろたかさんとくれば、吹奏楽器の話しかなと思った。
わたしはあかねこ
2011/09/23 Fri 05:52
![]() | わたしはあかねこ (2011/08) サトシン 商品詳細を見る |
自分らしさは白黒で割り切れない
最近観たイラン映画「ペルシャ猫を誰も知らない」を連想してしまった。
バンド活動を取り締まる自国に反抗し、海外に自由な表現を求める
若者ミュージシャンらをゲリラ撮影した熱い作品でした。
タイトルは家から外に出してもらえないペルシャ猫に彼らを例えたもの。
さて、本書では体の色が違うため、親や兄弟から同情される猫が登場。
両親は白と黒、兄弟も白や黒の色を受け継いでる。でも一人だけ赤。
通常は他と違うことで当人が色々と悩むものですが、今回は違うことを
最初から気に入っている。むしろ、それを良しとしない両親や他の兄弟の
ほうに問題がある。そこで、たまりかねた赤猫が家を飛び出してしまうのです。
そんなところが、たまたま観た映画とオーバーラップしたわけですが、
読者それぞれに思い当たる体験があるのでは。自分の進路を親から
認めてもらえなかったりとか、あるいは単純にランドセルの色を男の子は黒、
女の子は赤と決めつけられ、好きな色を選べなかったりとか。
あるいは無意識に特定の価値観を子どもに押し付けてたりして。
家を出た赤猫がすぐもどるかと思いきや、ずーっと出たままというのは、
真面目に考えると深刻ですね。ほのぼのした絵でうまく緩和されてるけど・・・
本来は親兄弟が考えを改め、赤猫を受け入れる場面が欲しいところ。
他の方も書かれているように、そこは読者の想像にゆだねられてます。
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わたしはわたし、あなたはあなた というのが共通点。といきたい。
みず ちゃぽん
2011/09/22 Thu 02:34
![]() | みず ちゃぽん (単行本絵本) (2011/06/14) 新井 洋行 商品詳細を見る |
水とは何か
水の特性を表現したとてもシンプルな絵本です。
一滴の水からはじまって、ページをめくるごとに、だんだん数や量が
増えていく。それだけなんですが、ちゃんと魅せる構成になっているのは
姉妹作の「ひ ぼうぼう」と同様。
画面の下端を底に見立て、下から上へと水の占める割合が増えていく。
形の変化や、大きさの対比、動と静のスピード感、文字の入れ方など、
グラフィカルな処理が活きています。余分な物をいっさい描いていないので、
自由に想像を働かせ、落下する水から色々な状況へと想像を広げられる。
例えば、台所、お風呂、プール、川、海 などなど。
昨日の大雨による浸水は想像したくないですが・・・これも水の特性。
台風は別として、風をテーマにした作品もできそうですね。
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今日は静かな幕開け。朝焼けがきれいです。
まんまるいけのおつきみ
2011/09/21 Wed 02:41
![]() | まんまるいけのおつきみ (講談社の創作絵本) (2011/08/02) かとう まふみ 商品詳細を見る |
初めて月と出会う感動絵本
満月と出会う瞬間にポイントを定め、そこに至るまでの
ワクワク、ドキドキ感を高めていく演出がみごと。
それは生まれて初めての月見に挑む魚たちの気持ちを描写することで
成功しています。挑むというとおおげさですが、まんまる池に
住む魚たちには、外の空気を吸うと死んでしまうという言い伝えがあり、
水中から出た事がないのです。実際は空気を吸って死ぬことはないものの、
魚たちにとっては、人類が空気のない宇宙へ行くくらいの勇気が要るのです。
しかし、かめのおじいさんの話しを聞いて、どうしても月をみたくなり
呼吸をコントロールする練習までして、当日に挑むというわけです。
外界ではカエルやヤモリたちが、団子を作ったりしてお月見の準備。
かたや水中では、魚たちが水の外へ顔をだす練習。ふたつの流れが
交差する瞬間にクライマックスを迎えます。
我々が普段なにげにながめている月の美しさを、再発見させて
くれる作品です。
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きのうの夕食はラーメン二郎。うまい!特に野菜と肉の量が半端でない。
いつも通るひばりケ丘駅の近くにあるとtwitterで知り、早速行った次第。
近場での初めて体験がけっこう嬉しかった。
おつきさま、こんばんは!
2011/09/20 Tue 03:14
![]() | おつきさま、こんばんは! (講談社の創作絵本) (2011/08/03) 市川 里美 商品詳細を見る |
月と人形を通して人を語る
いやぁ、すばらしい! 月をテーマにした絵本では2011年のベスト1だ!
(といっても全ての作品をよんだわけではないですが・・・)
月は世界でただひとつ。でも様々な表情がある。だから同じものを
見ていても、国や文化によって受け止め方も様々なんですね。
なんてことが、説明的な要素なしにちゃんと伝わってくる。
各国を象徴する人形を通して、月にまつわる想いを語らせたところが秀逸。
月の光は間接的なもの。その意味では、人の心を間接的に人形を通して
見せているところは絵本的マリアージュと言えるでしょう。
お月見、日食、潮の満ち引き、月面探査など、月への関心を
引くようなトピックも、そつなく散りばめられています。
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最近はまっているコミック「神の雫」のせいか、マリアージュという
言葉がつい出てしまった。お酒はあまり飲まないんだけどね。
つみきくんとつみきちゃん
2011/09/17 Sat 02:36
![]() | つみきくんとつみきちゃん (絵本のおもちゃばこ) (2011/08/05) いしかわこうじ 商品詳細を見る |
組合せによって無限にひろがる可能性(その2)
体の構成が自由に変えられる「つみきくん」の続編は、ともだちの
つみきちゃんが登場。前作に比べると世界がグーンと広がりました。
2体なので合体変形もよりダイナミックになる分は当然として。
読者の意識を、積み木という商品から遊ぶ側の心へと誘い込むことで
共感度もパワーアップしているとこがいい。実際に子供たちが遊具などで
遊んでいる公園が舞台であったり、犬が絡んでくるのも効いています。
そこから伝わってくるのは、積み木のクリエイティブな面白さでもあり、
コミュニケーションツールとしての姿でもある。
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空間的な構成が積み木とすれば、物語は時間的な積み木か。
などと朝からむずかしいことを考えそうになる。
![]() | ガンジーさん (こどもプレス) (2011/09) 長谷川 義史 商品詳細を見る |
今も人間はカトリセンコウなのか?
インドに関心のある方、そして長谷川さんの絵本が好きな方なら迷わず
手に取ってしまいそうな作品ですが、一言だけ忠告を。
タイトルになっているのは、インド建国の父:マハトマ・ガンジーではなく、
ガンジー石原さんのことです。ボクはすっかり期待違いして、読了後に
ガーンとなりました。買う前に気づけよって(笑) うぅぅぅ残念・・・
まあそれはそれで置いといて、普通に絵本としてどうかというと、
これまた微妙。ガンジー石原さんのキャラクターを知っている人でないと
伝わりにくい内容なので。(ちなみにボクは知りませんでした)
テーマは、彼が歌にもしている「人間はカトリセンコウ」というフレーズに
込められていそう。この歌をネットで視聴してみると、同じところをぐるぐる
回りながら燃え尽きるという、人間の性を切なく歌ったものですが、
こどもには解釈がむずかしいかもね。実際、作中に登場する男の子も
意味がわからないと言ってるし。
絵のタッチは近刊の「8月6日のこと」に通じてます。毛先の跡を荒々しく
残し、もくもくと立ち登り続けるカトリセンコウの煙は、人間の愚かな営みが
排出されたものでもあるのか。なんて勝手に結びつけたりして。
という、ちょっと困った絵本でした。
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そういえばインドに持っていった蚊取り線香は一度も使わなかったなあ。
住んでたアパートには、あまり蚊が出ず、出ても手でパチンとやっつけたし。