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エロイーサと虫たち

2011/11/06 Sun 04:52

エロイーサと虫たちエロイーサと虫たち
(2011/09)
ハイロ ブイトラゴ

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リアルな虫達は心の鏡か

絵本ならではの形式を活かした、というか逆手にとった表現が効いている。
父と娘が引越した先の住民たち全てが虫なのです。まあ絵本では子どもが
生き物と出会う話しは珍しくないですけど、本書の場合はかなりシリアス。
虫が人間サイズでリアルに描写されているので恐い。顔から表情が読めない。
これはカフカの「変身」の逆パターンですね。

これは人と虫という距離感によって、新たな環境になかなか馴染めない難民の
心細さや不安を伝えようとした心理的表現。それを補足情報なしに、一読して
理解するのは難しかったですが、本書の生まれた南米コロンビアでは、
難民問題を伝える作品としてラテンアメリカ各地に配布されているとのこと。
このような絵本が生まれていること自体が衝撃でした。

心理的描写といえば、最近の絵本で印象に残っているのが、
「名前をうばわれたなかまたち:タシエス作」これもかなりシリアスです。
人間の顔を無表情なリンゴ頭に変換し、無視される人格を表現してました。
また、移民者の苦労を描いた絵本「アライバル:ショーン・タン作」では
とりまく文化そのものが完全に別物へ変換されています。
どちらも傑作、併せてよむことをお勧めします。

--------------------【Review for Review】--------------------
今日は絵本作家のサトシン氏が意外な場所で講演。行ってみようかな。
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