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【絵本セレクション2011】

2011/12/31 Sat 12:44

今年はずっと日本に居たせいか多くの作品に出会えました。2011年でどうしても無視できないのが3.11の大震災。絵本の受止め方が通常と変わってしまったので。また、震災がなければ生まれなかった絵本も多くありました。絵本作家が今の時代にどう向かい合うかという意味では興味深いですが、それは置いておいても、いい作品は時を越えて訴える力があると思います。そんな観点もふまえつつ自分のレビューした作品の中から10冊を選ばせていただきました。今年出た全ての作品に目を通したわけではないので、個人的なものです。詳細はamazonのサイトでどうぞ。

1 満月の美しい奇蹟!皆既月食の今年は特別なものに

うきわねこうきわねこ
(2011/07)
蜂飼 耳

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2 絵だけで語る重厚な物語 翻訳(?)物では文句無く1位

アライバルアライバル
(2011/03/23)
ショーン・タン

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3 犬の笑顔に込められた深い物語を無視できようか

まちのいぬといなかのかえる (大型絵本)まちのいぬといなかのかえる (大型絵本)
(2011/02/16)
モー・ウィレムズ

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4 パワフルなナンセンスぶりに圧倒されます

でんせつの きょだいあんまんを はこべ (講談社の創作絵本)でんせつの きょだいあんまんを はこべ (講談社の創作絵本)
(2011/10/01)
サトシン、よしなが こうたく 他

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5 好きなんですよね。こういうムフフな作品

サウスポーサウスポー
(2011/09)
ジュディス・ヴィオースト

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6 フランス的なオタクぶりがおしゃれに炸裂

だれも知らなかった お姫さま図鑑だれも知らなかった お姫さま図鑑
(2011/09/15)
フィリップ・ルシェルメイエル、レベッカ・ドートゥルメール 他

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7 ほげちゃんも悪くないけど個人的にはSF的非日常感に軍配

くらげのりょかんくらげのりょかん
(2011/11)
やぎ たみこ

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8 朝日とともに差し込んでくる新境地という光

あさになったのでまどをあけますよあさになったのでまどをあけますよ
(2011/12/02)
荒井 良二

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9 例え震災がなかったとしても2011の注目作といえます

新幹線のたび ~はやぶさ・のぞみ・さくらで日本縦断~ (講談社の創作絵本)新幹線のたび ~はやぶさ・のぞみ・さくらで日本縦断~ (講談社の創作絵本)
(2011/03/19)
コマヤス カン

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10 時を越えたメッセージが現代をもポカポカに照らす

はるがきた (主婦の友はじめてブック―おはなしシリーズ)はるがきた (主婦の友はじめてブック―おはなしシリーズ)
(2011/02/19)
ジーン・ジオン

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あけるな

2011/12/31 Sat 07:25

あけるなあけるな
(2006/12)
谷川 俊太郎

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あいた

さてと、今年最後の絵本レビュー。本来なら2011年出版作の中から選ぶところ
ですが、1976年のもので気になった作品があり、それを取り上げたい。
と言っても、2006年に復刻されたとき一度レビューしているんですけどね。

その絵本は「あけるな:谷川俊太郎/安野光雄」です。
見直すきっかけは、古本屋で先日みつけた廃刊雑誌「月刊絵本」の中の記事。
一般公募した絵本評論の優秀賞に「あけるな」について書かれたものがあり、
受賞者の千代原さんが、自分のよく利用する図書館にかつて勤めていたこと。
さらに、その内容がとてもユニークな視点で、なるほどと感激したので。

この絵本はクセがあり、読者それぞれに解釈を要求するところがあります。
次々とドアを開けていく展開のシンプルさとは裏腹に、ハッキリ判るような
結末を描いていないので。 ボクとの受止め方の違いで一番大きかったのも
ラストシーン。ボクは心が絵本の中に閉込められるかのような危険な空気を
感じたのに対して、夢から現実へもどるという出口を見いだしているのが、
千代原さんの見方でした。また全体の構成が背を向けた男の登場を境にして、
その前後で対称性を成しているという読み方も説得力がありました。

ということで、絵本の中を徘徊していた自分の心が、数年ぶりに解放されたか
のような気持ちを味わえたのです。しかも30年以上も前に書かれた文章で。
その偶然の出会いが素直にうれしかった。

気持ちも新たに再読してみると、やっぱり気になるのは最後の見開き。
とうてい完成しているようには見えない不可解な絵です。この不可解さが実は
すべての出発点だったのでは?よくみると画面の中央付近にANNOと
書かれているし、古めかしい鍵までもが思わせぶりに描かれている。
この安野さんの絵をきっかけに男、つまり谷川さんの心がトリップし、
その過程を安野さんが絵本として視覚化したとか?
となると背を向けた男の中に見いだされた、夕焼けを内包しているかのような
一粒のビー玉は詩作の原点なのかも。なんて思えて来ました。

--------------------【Review for Review】--------------------
本当のところは作者当人に聞かないとわからないですけどね。
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いれて いれて

2011/12/30 Fri 09:50

いれて いれていれて いれて
(2011/09)
かとう まふみ

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どこまで入れるか?

最初はアリでした。雨宿りに小さな赤いキノコの下へやってきたのは。
つづいてテントウムシ。さらにチョウ。さらに、さらに・・・
入りきれないんじゃないの? と心配するなかれ。キノコも負けじとグングン大きく
なっているのです。とはいえ、やってくる森の生き物たちのサイズも大きくなるし、
いったいどうなっちゃうんだ? 

というシンプルな展開で思い浮かべたのは、
ジョン・ロウがイラストを手がけた「The Elf's Hat」。
こちらはエルフが置き忘れた赤い三角帽子の中へ、動物たちが次々に
やってきて入り込もうとする絵本です。

高さ、広さ、深さ、など大きさの変化は誰にでも判りやすい比較項目。
はっきりと目に見えるので絵としても表現しやすい。
ストーリーとしては最後をどうみせるかが腕の見せ所でしょうか。

あくまでも量の変化で押し通したのは「The Elf's Hat」。
量から質の転換をみせた本書。どちらも収まるとこに収まってます。

--------------------【Review for Review】--------------------
もう10時になろうとしている。つかれて4時半までうたた寝したせい。
時間も伸び縮みできるといいんだけどな。

The Elf's HatThe Elf's Hat
(2002/05)
Brigitte Weninger、 他

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バートルのこころのはな

2011/12/29 Thu 07:55

バートルのこころのはなバートルのこころのはな
(2011/10/31)
イチンノロブ ガンバートル

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思いやりがお茶の中を駆け抜ける

初めて出会うモンゴルの絵本なので、とても興味を引かれました。
オープニングから移動式住宅のゲルが登場! そうそうこれこれ という
感慨で心も包み込まれていきます。ゲルの中ではおじいさんのお話会。
心の花の朝露を集めてお茶にすると長生きできるという話しなんですが、
それを聞いた男の子のバートルは、母親の為にそれを実行しようとします。

早速、その夜に愛馬を駆るという行動力はさすが遊牧民ですね。
マンガスやショルマスといったモンゴル伝わる化け物を、思わせぶりに
登場させるところは見所のひとつ。バートルの不安感や緊張感に
こちらも手に汗握りますが、これがその後の朝日のシーンを際立たせる。

バートルの行動を通し、モンゴルにひろがる草原の雄大さと共に、
家族を思いやる心の広さも伝わってくる作品でした。

モンゴル人作家コンビによる絵本ですが、活動拠点は日本なので、
日本語版の本書がオリジナルということになるのでしょうか。
彼らの視点からみた日本を描いた絵本も見てみたいです。

--------------------【Review for Review】--------------------
さて、今日から年末休み。仕事は片付けきれなかったけど、自分の能力とは
離れた理由だったので仕様がない。家のことは着々と片付けてやるぞ。
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やきいもするぞ

2011/12/26 Mon 06:11

やきいもするぞやきいもするぞ
(2011/10)
おくはら ゆめ

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焼き芋へ突進だ!

リスの絶妙な発案!イノシシの力強い賛同!森の仲間も一致団結!
焼き芋をするのに、ここまで気合いが入ると、こちらも身が引き締まる。
食べたあとは、当然ながらオナラがでる。するとリスがオナラ大会を発案。
イノシシの力強い賛同!森の仲間も一致団結!ブイブイと突き進む。
はたして一番になったのは誰か?

モチーフが芋だけに鼻息のみならず尻息も荒いですね。
この勢いのよさが最後のページにいっても止まらない。
こうなったら、こっちも焼き芋しかないなと思わせられる作品です。

--------------------【Review for Review】--------------------
上にレモンを突き刺すのがインド風。結局食べる事はなかったけど。
焼き芋
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サウスポー

2011/12/25 Sun 08:14

サウスポーサウスポー
(2011/09)
ジュディス・ヴィオースト

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変化球に想いをのせて

いいなあ、こいつらのひねくれぶり! 野球好きの男の子と女の子が
ケンカして、口もきかず手紙のやりとりをするんですが、その文面がいい。
貸したものを返せとか、ペットの名前を変えるとか、バスの席をとっとくのを
やめるとか、プレゼントをいらないと書いたりとか・・・

手紙をよめば読むほど、実はいかに仲がいいかが解明されてくる。
お互いにののしり合うことが、どれだけ相手を気にしているかを
競い合う形になっているので、外野からみているとムフフとなるのだ。
しかし、女の子の涙をきっかけに男の子の心境が微妙に揺れ動く。
相変わらず、ひねくれた手紙のやりとりは続くんですけどね。

男の子が最後に投げた一文は、ストライク!

はたこうしろうさんの絵も冴えている。鉛筆でサラサラと描いた画面が、片隅に
添えられている英文の手紙と自然に結びつき、臨場感を生み出している。
「がんばれ!ベアーズ」に夢中になった頃の気持ちを思い出しました。

--------------------【Review for Review】--------------------
うちの職場にも左利きのボーイッシュな女性がいる。
野球は・・・やんないだろうけど。
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ふくろうのダルトリー

2011/12/24 Sat 07:00

ふくろうのダルトリーふくろうのダルトリー
(2011/10)
乾 栄里子

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素敵な贈り物

ある意味、ふくろうダルトリーの一人芝居といってもいいのですが、
思い違いっぷりが、なかなか素敵なんです。幼い子も同じようなことを
考えそうですね。何をしたかというと、欠けていく月をみてお腹がすいている
と心配し、高い塔の上にリンゴを置いておく。やがて満ちていく月をみて
リンゴを食べたのだなと思い込むのです。

リンゴはどうなった? これは偶然も作用し、毎回 別の者のところへ転がり
込んでいきます。月ではなくて。それが巡り巡って彼のもとへ出会いという
形で羽ばたいてくるのですが、これぞ運命の妙技という感じ。

発信したものを、誰がどう受け取ったか不確かなところにツイッター上で
のつぶやきを連想してしまいました。その意味では自分も色々なリンゴを
受け取っているし、誰かに向けてネット上の片隅にちょこんと置いたりもしてます。
直接に見えること聞こえることが全てではない。大丈夫、心配しなくても、
お月さまは天からちゃんと見ている と思い込むことにします。

--------------------【Review for Review】--------------------
来年早々に手術をする事に。筋肉痛と思っていたのは別のものだったのか。
検査をちゃんとうけて良かった。
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えんまのはいしゃ

2011/12/21 Wed 06:46

えんまのはいしゃえんまのはいしゃ
(2011/11/02)
くすのき しげのり

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痛いぞ!

歯医者から、歯磨きをおろそかにした末路の写真を見せられギョっとなった
ことがあります。口の中をクローズアップした写真は地獄絵図のような光景。
これは毎日ちゃんと歯を磨かねばと思いました。

似たような意味で、子どもが本書をみたら歯医者に行きたくなくなるだろうなあ。
だって、地獄の鬼や閻魔までも震え上らせるほどの歯医者が登場するんですから。

この歯医者が食わせ者で、生前は自分の腕を棚に上げて天下一を名乗っていた。
それを閻魔に追求され、嘘つきでないことを証明するため鬼の治療をすることに。
しかし彼の腕が腕だけに、鬼のほうはギリギリとした苦痛を味わうのですが、
終わったあとで全然痛くなかったと歯医者をほめるのです。

いったいどうしてか?
実は治療の前に歯医者のいった一言が効いているのです。
口八丁手八丁の歯医者のお手並みをごらんあれ。歯の痛みさえ忘れるほどの
すっとぼけたユーモアあふれる作品です。

--------------------【Review for Review】--------------------
いや、でも、歯医者には行かないに超した事無いな。
今日は有休。これから二次検診で医者に行かねば。ふぅ~っ。
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あさになったのでまどをあけますよあさになったのでまどをあけますよ
(2011/12/02)
荒井 良二

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今朝はこれからの人生最初の朝

最近かわってきましたね、荒井さんの作風が。いままでだったらタイトルが
「ぼくのアーサー」とかになって、アーサー君という笑顔の太陽が
全国各地にやってくる。というような展開を妄想しちゃうんだけど、
もうそうはならないんだろうな。

「空の絵本」でもそうだったけど、空想で矯正された自分眼鏡をはずして、
裸眼で生の世界と向かい合っている感じを受けます。でも心の立ち位置は
いままでと変わらず、より太く大きなものになっている。
とかなんとか素人の立場で偉そうに書いてますが、要するに言いたいのは
素直にいいなあってこと。

朝っていいな。晴れてるっていいな。雨でもいいな。
ここに居られるっていいな。今を生きてるっていいな。
と素直に思えることがいいな。なんて世界をみせてくれる絵本です。

「スースーとネルネル」の後によむと、より劇的な変化を味わえます。

--------------------【Review for Review】--------------------
眼鏡を久しぶりに新調しました。普段はコンタクトなのですが、
学生のときから使っている眼鏡はさすがに傷んできたので。
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まなちゃん

2011/12/17 Sat 07:40

まなちゃんまなちゃん
(2011/09)
森田 雪香

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ステキなかくれんぼ

現実的に考えると、人形が自分で勝手に隠れるなんてありえない。
とはいえ、小さな人形が見当たらなくなって、探すことはありうる。
こまごまとした遊び道具が散乱した部屋では特にありうる。
さらに空想力がフル回転するとありうる。こどもの意識の中でね。
という世界がいままで絵本に描かれてきて、本書もそうなんだけど
技術が進歩すると、もう現実のこととしてありえそうだ。

小さなかくれんぼロボットとか登場しちゃったりしてね。
子ども対ロボットのかくれんぼという競技会があっても
おかしくないところまで技術は進歩しているし。

話しが横道にそれたけど、探すこと自体はけっこう楽しかったりする。
まなちゃんが探したのは人形でしたが、立場変われば、それが
お店だったり、情報だったり、謎だったり、ウォーリーだったりと
様々だ。人は常に何かを探し続けるものなんですね。
なんてことを改めて見つけた絵本でした。

--------------------【Review for Review】--------------------
この時期は人恋しくなる。どっかにかくれている愛よ、出て来なさい。
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