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【絵本セレクション2012】

2012/12/31 Mon 11:43

今年でた絵本全体を見渡してみると大きな2
つの傾向が気になりました。1つは過去から
積み上げて来たものの意味を振り返ろうとし
た作品。もう1つは心や物事の本質的なとこ
ろを考えようとした作品です。歴史と共に変
わっていくものと変わらずに残り続けるもの。
それらを改めて浮き彫りにしようとする時代
の意識が働いたのでしょうか。これには昨年
の大震災がもたらした消失感と、これから
どう未来に向き合うかという課題が大きく
影響しているせいかもしれません。

というわけで今年も自分のレビューした作品
の中から2012年の締めくくりとして10冊を
選ばせていただきました。もちろん全てに目
を通したわけではないので個人的なものです。
詳細はamazonのサイトでどうぞ。

01 植木として残り続けるおじいちゃんの人生

グランパ・グリーンの庭グランパ・グリーンの庭
(2012/05)
レイン スミス

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02 芸術の域に達した怪談絵本 怖いぞ

いるの いないの (怪談えほん3)いるの いないの (怪談えほん3)
(2012/01/28)
京極 夏彦/町田 尚子

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03 女の子の初の演奏会を臨場感いっぱいに

ピアノはっぴょうかいピアノはっぴょうかい
(2012/04)
みやこし あきこ

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04 有名な物語を劇場風に構成

イソップ物語―13のおはなしイソップ物語―13のおはなし
(2012/07)
いまい あやの

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05 女の子とクマの絶妙な関係にニヤリ

モーディとくまモーディとくま
(2012/05/26)
ジャン オーメロッド/フレヤ ブラックウッド

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06 様々な考え方をオシャレに視覚化

哲学してみる (はじめての哲学)哲学してみる (はじめての哲学)
(2012/05/11)
オスカー・ブルニフィエ/ジャック・デプレ

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07 論理を越えた存在を受け入れられるか?

ロスト・シングロスト・シング
(2012/06/23)
ショーン タン

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08 聴覚を研ぎすます演出がみごと

きこえる? (日本傑作絵本シリーズ)きこえる? (日本傑作絵本シリーズ)
(2012/03/14)
はいじま のぶひこ

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09 変わりゆく町と人を定点観測的に細密描写

ふるさと60年 (日本傑作絵本シリーズ)ふるさと60年 (日本傑作絵本シリーズ)
(2012/02/15)
道浦 母都子/金 斗鉉

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10 収集マニアの丸太キャラが印象的

キュッパのはくぶつかん (福音館の単行本)キュッパのはくぶつかん (福音館の単行本)
(2012/04/11)
オーシル・カンスタ・ヨンセン

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ふるさと60年

2012/12/31 Mon 06:15

ふるさと60年 (日本傑作絵本シリーズ)ふるさと60年 (日本傑作絵本シリーズ)
(2012/02/15)
道浦 母都子/金 斗鉉

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今がある幸せを実感

これもある意味、旅の絵本といえますね。
移動するのは空間ではなく時間の中。出発点
は戦後間もない1946年頃の空襲をまぬがれた
とある田舎の町だ。

はるか遠くには富士山が見え、大きな樹があ
る神社のそばには川が流れてる。やがては、
新幹線が通過することになるこの場所が実在
するのか特定できないですが、日本人なら誰
しも懐かしさを感じるような、そんな所です。

そこに生活する人々、当時の遊びや商売など
が、まるでその場を見て来たかのように緻密
に描かれている。もう最初の見開きから眼が
釘付けになりました。そして次のページでは
その町で暮らしていたおじいちゃんとおばあ
ちゃんの語りと共に、トピックとなるシーン
が取り上げられ解説が加えられている。

という構成で現代まで至る約60年間を、定点
観測的に時代の節目ごとに描写しています。
あの映画、あの店、あの遊び、あの流行・・
ひょとしてあなたも画面のどこかにいるかも。

-------【Review for Review】-------
今日は一年を振り返る日。いろいろあったけ
ど、無事に過ごせた事に感謝。
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ふしぎなカメラ

2012/12/30 Sun 06:53

ふしぎなカメラ (PHPにこにこえほん)ふしぎなカメラ (PHPにこにこえほん)
(2012/10/16)
辻村 ノリアキ/ゴトウ ノリユキ

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応援したくなるカメラ

箱物機械の中って、どうなってるんだろう?
なんて誰しも子どものころ想像したことでは。
例えば、自動販売機とかテレビとか電話とか
エアコンなどなど。で、本書では古いカメラ。

なぜか撮影したものとはちょっと違った写真
が出てきて、一日に撮れる枚数が限定されて
いたりする。しかし出来た写真は魅力的。と
いう謎多きカメラ。読者のほうは、中にある
驚きの仕掛けを持ち主の家族よりも先に知ら
されることになります。

最近は不審者を追いかける監視カメラも登場
したりして驚きましたが、逆にそこまでしな
いと安全性を確保できないのかと残念にもな
ります。しかし本書のようなカメラがテクノ
ロジーで実現するなら大歓迎ですね。

で、結局カメラの中はどうなってるかって?
それはあなたが確かめてください。

-------【Review for Review】-------
先週から咳が止まらないなあ、ゴホッ。
例えば留守番電話、物まね上手な小鳥が中に
入ってたら ゴホッ、面白いかも ゴホッ。
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いつもちこくのおとこのこ―ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー (あかねせかいの本)いつもちこくのおとこのこ―ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー (あかねせかいの本)
(1988/09)
ジョン・バーニンガム

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それでも彼は学校へ行く

遅刻をあつかった絵本は少なからずあって
最近よんだもので印象にのこっているのは、
「チビウオのウソみたいなホントのはなし」
遅刻の言い訳がウソからマコトに変わります。

約25年も前に登場した「いつもちこくの〜」
でも、男の子が遅刻する度にその理由を先生
に語るシーンが中心となってます。そして、
その前には通学中に出くわしたハプニング、
後には先生から受けた罰則のシーンで構成。

見返しを埋め尽くしている書き取りの繰返し
も罰則の1つだ。(これは何故か英文のまま)

何が起こっても終止、冷静で真面目な男の子
と怒りがどんどんエスカレートしていく先生
との対比が面白い。全てはラストの痛快な
シーンへ導く為といえるでしょう。そして、
皮肉にもそこで彼は初めてウソをつくのだ。

最後に2人の関係がどうなったのかは、残念
ながら描かれていません。ボクは先生による
お詫びの書き取りを期待してたんだけどな。

-------【Review for Review】-------
今日から冬休み。目覚めは朝の7時。
いつもだったら遅刻の時間帯だ。
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こころの家

2012/12/28 Fri 06:01

こころの家こころの家
(2012/03/07)
キム ヒギョン/イヴォナ・フミエレフスカ

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本が演じる例え話

ジャンプしたり、赤ちゃんをあやしたり、
手探りしたり、戸を開いたりと本当に動いて
みえる! 本の喉の部分と絵をリンクさせた
表現がみごと。心というつかみどころのない
ものを考える手だてとして、効果を発揮して
います。ともすれば仕掛けの方へ関心が行き
がちなとこもありますが、渋めの配色で通し
たことにより思索的な雰囲気も出してます。

難しいテーマを簡単に楽しく伝える。
絵本の可能性を感じた一冊でした。

-------【Review for Review】-------
いよいよ今日が仕事納め。
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つぶやき隊

2012/12/27 Thu 05:27

つぶやき隊つぶやき隊
(2012/04/25)
つぶやきシロー/たにぐちたかし

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生の本音が明らかに

これかなり絵本的な絵本ですよ。大人向けの。
そもそも絵本の世界では、身の回りのものが、
キャラクター的に動いたり話したりすること
がよくあるので、発想は常套的です。そして
本書には児童向けの絵本でも扱われてもよさ
そうな動物や物が多数登場しています。

しかし・・・

大人向けといのは、彼らの本音が語られている
ところ。可愛らしいと思われている動物たちが
裏では何を考えているのか。例えば、見られ
続けることにプレッシャーを感じるハムスター、
平和の象徴とされる鳩の愚痴、などなど、あま
りにも生々しい事がこれでもかと暴露されてい
るのです。いやぁこりゃ健全な子どもには見せ
られないでしょ。でも現実の世界を認識したり
他人への共感力をあげる効用はありかも。

-------【Review for Review】-------
広い講堂に立ってて脚が固まりそうになる。
熊本ってこんなに寒かったのか。
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しずかな、クリスマスのほんしずかな、クリスマスのほん
(2012/11)
デボラ アンダーウッド/レナータ リウスカ

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しずけさという贈り物

同作者コンビで「しんとしずかな、ほん」
のクリスマスバージョンです。聖なる日なら
ではの、しずかなシーンが可愛い動物たちに
よってしずかに紹介されていきます。
始まりはイブの朝。そして雪、厚着、ココア、
ツリー、食事、などなど しずけさに浸りな
がら、心地よい落ち着きで満たされました。
特に年末のこの時期、どちらかというと賑や
かなシーンも多いだけにね。

白いページにみえて実は淡いグレーといった
色のこだわりも、しずかに効いてます。

-------【Review for Review】-------
雨だと音がするけど、雪だと無音。同じ空か
ら降ってくるものでも、この違いは大きい。
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【誉の陣太鼓/香梅】

2012/12/23 Sun 21:11

戦国時代の合戦をモチーフにした熊本銘菓
といえばこれ。その名のごとく太鼓を彷彿
させる丸型に黄金色の包み。空港や駅の
土産物屋でも眩しく輝いてその存在を主張
しています。手にしたときのちょっとした
重量感で、食べる前から身体に力が鼓舞さ
れてくるような気になってきます。

陣太鼓

しっかりとした包みを開くと表れるは大納
言餡、そして餡の中には柔らかい餅(求肥)
が。包みの黄金色、餡の濃紫色、餅の白と
いった色の対比が絶妙だ。羊羹状の餡から
ねっとりした餅へと至る食感の変化もいい。
餡と餅の関係が通常と逆転しているせいか。

さて、戦国時代の合戦で思いつく絵本といえ
ば、今年名乗りをあげたこの作品でしょう。

決戦! どうぶつ関ヶ原 (講談社の創作絵本)決戦! どうぶつ関ヶ原 (講談社の創作絵本)
(2012/11/16)
コマヤスカン

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各武将を動物にみたてているところが秀逸。
戦いの終盤ではタヌキ家康組が陣太鼓を鳴
らしまくってますぞ。その効果?もあって
か、みごと手にした天下もち。きっと格別
の味だったでしょう。この銘菓のごとく。
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ゆめたまご

2012/12/23 Sun 07:12

ゆめたまごゆめたまご
(2012/11)
たかの もも

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夢を育てる

作者が日本人というところにビックリです。
国内デビュー作にして既に東欧の巨匠のごと
き風格をそなえているので。

心象的で不思議な絵をみていると、こちらも
夢見る少女の世界へ引き込まれていきます。
さあ、常識という制約の殻をやぶって自由な
空想の世界へ羽ばたいていきましょう。

素敵な日の締めくくりに、寝る前におすすめ。
あなたの夢卵もいつか孵ることを願って。

-------【Review for Review】-------
昨日は長島美術館で8年ぶりの再会。
特別展示の「鉛の兵隊」が心に引っ掛かる。
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ダース・ヴェイダーとルーク(4才)ダース・ヴェイダーとルーク(4才)
(2012/05/28)
ジェフリー・ブラウン

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全宇宙の父へ

おおっ、もうすでにamazonで42ものレビュー
がある!しかも好評価。これだけでもただの
絵本でないことが分かるのではないでしょう
か。今年でた絵本の中でも異常な注目度です。

だって、これ映画を見てないと面白さが味わ
え尽くせない類の本だし。(といっても見て
ない人の方がすくないか・・・)

父と幼い息子の関係を描いた絵本は数多く
あれど、同じことを暗黒卿とルークで表現し
たことで、より劇的なものになってます。

子育て中の父子間で日常的にみられる会話も
彼ら二人が交わすと、映画中のエピソードや
その後の運命がスパイスとなって深みが激増。
ワンシーン、ワンシーンが超ドラマチックに
なっています。ほのぼのとした絵が笑いをさ
そいますが、読み進めていくうちに、しんみ
りとなってきました。まるで昔撮ったビデオ
を見返しているかのようで。

まあ、その辺のことはもう十分書きつくされ
てるでしょうから、ここまでにしますが、
父の日を狙った出版もニクイですね。

-------【Review for Review】-------
今日は長島美術館のボローニャ絵本原画展
へ行くのだ。

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