マールとおばあちゃん
2013/08/10 Sat 06:35
![]() | マールとおばあちゃん (2013/04/17) ティヌ モルティール/カーティエ ヴェルメール 商品詳細を見る |
さくらんぼ色の心象表現
まいったなぁ、こんな絵を見せられたらどん
な内容でも傑作になってしまうのではないか。
というくらいひとつひとつの場面に魅入って
しまいました。
老い、別れ、といった人生で直面する厳しい
現実を描きながらも、美味しいスイーツを味
わったがごとく優しい気持ちで満たされると
いう不思議さ。これはヴェルメールによる天
才的画面作りの妙ですね。コラージュやスタ
ンプなど多様な技法を駆使しながらも、全部
ピントが合ってるんですよね。
重要なモチーフになっている桜をイメージし
たチェリーレッドが印象的です。赤を活かす
渋めの色とのバランスも、これまた実に絶妙。
お婆ちゃんと赤い服が似合う孫娘の関係は、
樹齢の高い桜の幹とサクランボにオーバーラ
ップしてくる。画面の隅に登場するリスや小
鳥のさりげない芸達者ぶりが共感度を高める
のに一役かってるし、ここで語りつくせない。
これはぜひ原画をみてみたいなあ。
-------【Review for Review】-------
今日から熊本での初夏休み♫
ことりのギリ
2013/08/09 Fri 05:54
![]() | ことりのギリ (2013/07) マリオ ラモ 商品詳細を見る |
我が国ではシャレにならんなぁ
小さな冠が権力の象徴として解り易く扱われ
てますね。それをかぶることで一国の王とな
ることができる。ライオンから始まり、色々
な動物たちの頭を転々とするんだけど、みな
王冠をかぶったとたんに、自分に都合のいい
事を命令しはじめる。豚党、ワニ党、ロバ党、
狐党、etc. 動物達の政権利権争いですね。
そんな感じで、権力に潜む魔物がユーモラス
かつ皮肉たっぷりに伝わってきます。
自分はそんなことないぞ!と思ったあなた、
はたして本当にそうでしょうか?
そんな問題提起もつきつけられます。
ライオンと王冠といえば同作者の絵本で
「小さな王さまヌーノ」があります。
対照的な内容なので、ぜひ読み比べを。
-------【Review for Review】-------
明日から夏休み。宿題をかたづけるぞ。
ゆうだち
2013/08/07 Wed 05:18
![]() | ゆうだち (2012/06/05) あき びんご 商品詳細を見る |
家の中も怪しい雲行きに
急な夕立で困っていたヤギを親切にも家の中
へ招き入れてくれたのは・・・オオカミ。
まるで「あらしのよるに」を彷彿させる状況
ですね。本作では、オオカミの腹黒さをヤギ
がちゃんと感じ取っているので、冒頭から、
キリリとした緊張感が張りつめています。
しかし、追いつめられていくのはオオカミの
側というのが、この作品の味わいどころ。
いったいどうして?それは激しい夕立によっ
て発生したお互いの異常な精神状態のせいと
でも言っておきましょう。
元はトリニダード・トバゴの民話とのこと。
平常時と異常時の対比は、天候が激しく変り
やすい南国ならではか。
-------【Review for Review】-------
突然の雨の後、嘘のように晴れ渡る。職場の
ある阿蘇の麓も今はそんな感じです。
ぼくのふとんはうみでできている
2013/08/04 Sun 13:33
![]() | ぼくのふとんはうみでできている (2013/07) ミロコ マチコ 商品詳細を見る |
寝床のイリュージョン
ふとんをかけた瞬間、目覚めるのは男の子の
空想世界だ。ふとんは始め海だったのが猫に、
パンに、と眠る度に何かに変わっていきます。
でもそれは脈絡のないナンセンスな展開とは
違う。目覚めたときの出来事とどこかで関連
しているから空想に説得力があるのだ。
ふとんに包まれるという身体感覚が男の子の
イマジネーションで増幅され、我々の五感を
も心地よく包み込んでくれる。うたた寝のご
とき読後感を味わえました。
-------【Review for Review】-------
昨日は全国高等学校総合文化祭の作品を見に
長崎県美術館へ。いいね、若きエネルギー。
ぼくのなまえはダメ!
2013/08/03 Sat 06:03
![]() | ぼくのなまえはダメ! (2013/06/01) マルタ・アルテス 商品詳細を見る |
小さな犬の大きな勘違い
いったいいつになったら真実に気づくのだろ
うか、この犬君。というより犬君のほうでも、
いつになったら飼い主が間違いに気づくのだ
ろうか、と思いつづけるんだろうな。
名前をめぐる勘違いは延々と平行線のままか。
でも第三者的にはそこが面白い。まあ人でな
く犬だから笑ってみれるんでしょうけど。
言葉の違う者通しでも似たようなことがあり
ますね。日本語の「〜〜みたいな。」という、
ぼかした語尾の言い回し。これを敬語だと思
い続けて、公の場で「〜み・た・い・な!」
とハッキリした口調で発したインド人通訳を
思い出してしまいました(笑)
-------【Review for Review】-------
週末予約いっぱいのホテルが多い。さすが
夏休み。こちらからするとご近所エリアも、
はたから見ると観光地だし・・・
ちいさな はくさい
2013/08/02 Fri 13:29
![]() | ちいさな はくさい (にじいろえほん) (2013/04/22) くどう なおこ/ほてはま たかし 商品詳細を見る |
それぞれに春は来る
畑から一人はみだして芽をだした小さな白菜。
その成長を見守る優しい眼差しがいいですね。
白菜の相談相手になるのは畑のそばの柿の木。
何度も年を越している柿の木は、白菜の不安
な気持ちや初めて体験することへの疑問など
を丁寧に汲み取って応えてくれます。
読者の立場や状況によって、白菜にも柿の木
にもどちらにも感情移入できる内容の深みが
あります。ボク的には小さな白菜の側ですね、
共感したのは。新天地の熊本に移って、まだ
一年を越えていないせいでしょうか。柿の木
の温かな言葉がひとつひとつ胸に響きました。
いっち・に・さん・し で始まるリズミカル
なかけ声が印象的。大きくなろうとする白菜
の健気な元気が伝わってくる。素朴ながらも
力強い筆致もいい。
-------【Review for Review】-------
週末は全国高等学校総合文化祭へ行く予定。
今年は長崎で開催されるので。