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【絵本セレクション2013】

2013/12/31 Tue 12:32

例年思う事ですが、あえて10冊選ぶというの
はなかなか大変です。それは個人的な視点と
客観的な視点のせめぎ合いを通して自分の絵
本観と向きあう作業でもありますから。

年々多様化する作品群。あえて今年の総括を
するならば、従来からあるテーマを描きなが
らも、ちょっと視点をズラして新しさを出し
たり、量的描き込みによって、より世界観を
深めた作品などが印象に残りました。
個人的には、言葉で分析的に表現しきれない
くらい感性を横殴りされる作品に憧れます。

というわけで今年も自分のレビューした作品
しばりで10冊を選ばせていただきました。
詳細はamazonのサイトでどうぞ。


01 チェロと自然と人との関係に耳を澄ます 
チェロの木チェロの木
(2013/03/06)
いせ ひでこ

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02 赤いマーカーで空想の扉を開け
ジャーニー 女の子とまほうのマーカー (講談社の翻訳絵本)ジャーニー 女の子とまほうのマーカー (講談社の翻訳絵本)
(2013/11/29)
アーロン・ベッカー

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03 神妙さと美さの同居したチェリーレッドが印象的
マールとおばあちゃんマールとおばあちゃん
(2013/04/17)
ティヌ モルティール/カーティエ ヴェルメール

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04 心暖まるチンドン屋ワールド
ちんどんや ちんたろうちんどんや ちんたろう
(2013/03)
チャンキー松本/いぬんこ

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05 青い鳥と男の子の交流を都会的なタッチで
BLUEBIRD: ぼくとことりBLUEBIRD: ぼくとことり
(2013/09/18)
ボブ スタック

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06 言葉遊びに加えて絵も遊びまくってる!
あいうえおんせんあいうえおんせん
(2013/11/22)
林 木林/高畠 那生

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07 野性的人魚の生々しさに衝撃
人魚のうたがきこえる (こどもプレス)人魚のうたがきこえる (こどもプレス)
(2013/05/17)
五十嵐大介

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08 カエル的世界観がしっかり構築されてます
バスガエルバスガエル
(2013/06/12)
戸田 和代/シゲリ カツヒコ

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09 縦開き系リバーシブル絵本で知的冒険へ
そらのうえ うみのそこそらのうえ うみのそこ
(2013/03/25)
長沼毅/大橋慶子

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10 小さな箱に詰まったお爺ちゃんの思い出
マッチ箱日記マッチ箱日記
(2013/08)
ポール フライシュマン/バグラム イバトゥーリン

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絵本10冊年間セレクト | コメント(0) | トラックバック(0)
ワタノハスマイル-笑顔になったガレキたち-ワタノハスマイル-笑顔になったガレキたち-
(2013/10/11)
ワタノハスマイル+犬飼とも

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カケラとなっても生き続ける

「グルーガンで町のカケラをくっつけながら、
 人々をくっつけ、笑顔をくれた」
犬飼さんのあとがきにあった一文が心にひっ
かかりました。子どもたちがオブジェ作りを
通して何かと繋がろうとしている心底からの
願いを表していると感じたので。

出来上がった微笑ましい作品の数々。それら
は成績とか評価を得ようなんて計算は皆無だ。
純粋に創作を楽しんだ結果として、完成度な
んて尺度では測れない魅力に満ちている。

でも作品ごとに添えられた小さなストーリー
をかみしめると見えてきます。一度価値を失
った物たちに、いっしょけんめい生を与えよ
うとしていることが。家族構成とか性格とか
特技とか将来の目標とかを持たせて、もう何
ものにも流されない居場所を町のカケラたち
に与えているんですね。

生まれ変わった町のカケラは、人と人がつな
がった未来への希望を笑顔で語ってくれます。

-------【Review for Review】-------
今日は一年を振り返る日。
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かいぞく ゴックン

2013/12/30 Mon 07:16

かいぞく ゴックン (ポプラせかいの絵本)かいぞく ゴックン (ポプラせかいの絵本)
(2013/10/16)
ジョニー・ダドル

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見事に操られた

怪物が潜んでいるのは、なにも絵本の中とは
限らないなぁ、なんてことを読後に思った。
海賊を我々自身に、宝の地図やバイオリン弾
きを大袈裟な宣伝や公約、海を世の中などに
置き換えてみると怪物が見えてきませんか?
裏で糸を引いて罠にかけようとしている奴が。

海賊達の中にも途中でバイオリン弾きの言動
に疑問や不安を抱く者もいますが、船長はあ
くまでも強気。たしかに難しいんですよね、
一度信じ込むと引き返す勇気を持つことが。

ヤバそうと判ってても好奇心や欲望が勝って
しまうときもあります。そんな仕掛け満載で
スリリングな航海に誘ってくれる作品です。

冒険の臨場感を高めてくれるのは、細部まで
描き込まれた絵。一度ページを開いたら最後、
もう後戻りは出来ないゾ。

-------【Review for Review】-------
昨日は半日かけて熊本市内の本屋めぐり。
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あいうえおんせん

2013/12/29 Sun 06:41

あいうえおんせんあいうえおんせん
(2013/11/22)
林 木林/高畠 那生

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五十音成分がたっぷりです

絵本には〔あいうえお物〕というカテゴリー
がいつの間にか確立されているようだ。五十
音順に様々な物事を紹介していくのですが、
作る側はネタを揃えるのが大変でしょうね。

本書では架空の温泉が次々に登場。しかも、
濁音半濁音まで網羅した充実ぶりがすごい!
あ行、か行、他、各行ごとに一見開きを使い、
共通のテーマが設定されているという構成。
例えば、あ行は童話がテーマで、あかずきん、
いっすんぼうし、うらしまたろう、えほん、
おやゆびひめの湯が登場するといったかんじ。
よく見ると、あ行で始まる名前のものがそこ
かしこに描かれているので絵探しも楽しめる。
ヘンなお客もけっこう混じってます。

そんなあいうえおんせんワールドにどっぷり
浸れば、きっと頭の血行も良くなる!? 

-------【Review for Review】-------
温泉に入りながらプロジェクターに大写しで
見てみたいなあ。
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ティニー ふうせんいぬ の ものがたりティニー ふうせんいぬ の ものがたり
(2013/11/01)
かわむら げんき/さの けんじろう

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心の中にフワリと存在するもの

バルン王国はまるで天国のよう。ストレート
には語ってないけど、天にのぼる風船が魂と
オーバーラップしてみえるので。もちろん、
皆が風船をつけた楽しい国と素直に受け取る
のもありですが・・・

そんな視点でみると、現世での足場を失って
しまった者たちの世界がバルン王国なのか?
そこへ導かれた犬も、きっかけは男の子との
心のすれちがいだったし。しかし完全に、そ
この住人に成りきれなかったのは、男の子と
犬のティニーのそれぞれがお互いを想う気持
ちがしっかり繋がってたからなのでしょう。

カラフルでグラフィカルな絵の裏から、何か
を失うことの切なさがそっと伝わってきます。
風船だからという訳ではないが、展開が風ま
かせな感はちょっと気になりました。

-------【Review for Review】-------
今日から冬休み。1年を静かに振り返ろう。
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ともだちはすんごくすんごくおっきなきょうりゅうくんともだちはすんごくすんごくおっきなきょうりゅうくん
(2013/10/11)
リチャード・バーン

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たしかに大きい!

おそらく見える人には途中で見えるのでは。
大きなものの存在について。でも後々起こる
ことに気づいたとしても、それがかえって、
ドキドキ感を高めることになります。作者も
それを狙っているのでしょう。人を食った、
と言うより恐竜を食った話し。ドキっとなる
シーンもありますが、ラストはニッコリです。

平等にシェアするとは何かを、体の大きさと
の対比で考えさせる作品でもあります。

-------【Review for Review】-------
今週仕事は年末モード。できれば軽く流して
いきたい、何もないことを祈りつつ。
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肉球

見ての通り肉球をイメージしたお菓子です(笑)
ネーミングもシャレてますね。このケーキ店で
は阿蘇の自社農園で取れた無農薬フルーツを使
用しているとのこと。こだわりと遊び心あふれ
るお店は大人気で、ネコの手も借りたいほど忙
しいからこれが生み出された?といわれても信
じてしまいそう。

肉球の部分はそれぞれストロベリーとホワイト
チョコがコーティングされてて、パリッとした
食感が口に楽しい。忙しい人への差し入れや、
動物好きな人への手土産(←手に掛けました)
にもなりますね。

そんな猫の手が主人公になった絵本(童話)もあ
りまして、その名もズバリ「ねこの手かします」

ねこの手かします (わくわくえどうわ)ねこの手かします (わくわくえどうわ)
(2008/06)
内田 麟太郎/川端理絵

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表紙には猫の手が勢揃い。ピンクの肉球が愛ら
しいです。それぞれ得意技があり、仕事の依頼
を受けると、手は猫の体から分離します。小さ
な体を活かして銀行強盗をやっつけたり、怪我
した手品師を手伝ったりと大活躍しますよ。

絵本の舌心 | コメント(2) | トラックバック(0)
はやくちまちしょうてんがい はやくちはやあるきたいかいはやくちまちしょうてんがい はやくちはやあるきたいかい
(2013/11/02)
林 木林/内田 かずひろ

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読むと言うは大違い

早口言葉がぞろぞろと出てくるので、ついつ
い声に出してしまいます。一度やりだすと、
つっかえずに言えるまでムキになる方も多い
のではないでしょうか。

なんといっても、早口と早歩き競争を結びつ
けたところが絵本的に秀逸です。言葉遊びの
中でもスポーティでスピード感がありますか
らね、早口言葉は。さらに競技者が動物たち
で、商店街を舞台にしたことで、各ステージ
ごとに特徴が出て娯楽性も高くなっています。
お店の名前や広告のコピー、沿道の声援まで
早口言葉という徹底ぶり。

言葉の運動神経が鍛えられますよ。

-------【Review for Review】-------
かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこあわせて
ぴょこぴょこむぴょこぴょこ。

これはキーボードでも、つっかえずに入力す
るのがむずかしかった。
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ぼくのへやのりすくん

2013/12/21 Sat 08:02

ぼくのへやのりすくんぼくのへやのりすくん
(2013/10)
とりごえ まり

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絵と親しくなる

絵にかいたものが具体化してしてしまう。誰
もが思うことですが、空想と現実の境界線を
乗り越えるにあたって絵本は手軽な方法です。
「はろるどのむらさきのくれよん」を始め、
同じテーマで様々な作品があり、作家ごとに
特色があって興味深いです。

本書の場合は、描き手の欲望が派手に叶えら
れるという方向ではない。男の子がすでに描
いた世界の中に意識を向け、より良いものに
してあげようと心遣いをするところが特徴的
といえます。日常世界側のママとのコミュニ
ーションを通して、男の子の空想世界がより
満たされるものになっていくところも大きな
意味があるのではないでしょうか。

それは小さな手に入るほどの、ささやかな幸
せかもしれませんが、これからも少しづつ成
長する可能性の種でもある。

そんなことを考えてみました。

-------【Review for Review】-------
読み終えた直後はいまひとつかなと思っても
レビューを書いているうちに、作品の良さが
わかってくることもある。本書もそう。

昨日は忘年会。飲んだ後に足がつりやすいの
はなんでだろう。
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いくらなんでもいくらくん

2013/12/17 Tue 22:09

いくらなんでもいくらくん (こどもプレス)いくらなんでもいくらくん (こどもプレス)
(2013/11/17)
シゲタサヤカ

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赤いツブの妄想が増殖●●

イクラワールドが大爆増! この勢いは誰に
も止められない。もうイっちゃってますね。

宝石のごとく色鮮やかでお寿司の中でもお上
品なイクラ。しかし本書のいくらくんは違う。
とぼけた話しぶりながら、とてつもない力を
宿してるのです。小さな赤いツブツブを増殖
させ、積み木のごとく変形させて何でもかん
でも作ってしまえるのである。

タイトルのごとく、いくらなんでもそりゃね
えだろうってとこまで見せつけてくれますよ。

いくらというネタで空想力の羽をのばすには
もってこいの絵本。寝る前によむと夢にまで
イクラが出るかも。

-------【Review for Review】-------
ロシアのSF小説「永久パン」を思い出した。
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