悟空、やっぱりきみがすき!
2014/06/29 Sun 06:21
![]() | 悟空、やっぱりきみがすき! (ポプラせかいの絵本) (2014/05/19) 向 華/馬 玉 商品詳細を見る |
学び舎の悟空
学校に通う悟空とは親しみやすいですね。
魔物と戦いながら天竺へ向かうのではなく、
子どもと同じ普段の生活にとけ込んでいる。
とはいっても、悟空の持っている特別な力は
そのまま。なので、他の動物たちにとっては
どこか近寄りがたい存在なのです。
みんなから好かれたい悟空はその力を放棄し
てしまいます。悟空が弱くなったとみるや、
みんなの態度は豹変しますが・・・
大人が読むと、悟空や他の動物たちを中国や
他の国々に置き換えてみたくなるのでは。
国際社会で強大な力を持つ中国、そこの作家
がこのような絵本を作ったところが興味深い。
-------【Review for Review】-------
中国にとっての金の輪ってなんだろ。
ゆみちゃんはねぞうのわるいこです
2014/06/28 Sat 05:58
![]() | ゆみちゃんはねぞうのわるいこです (2013/12) みやざき あけ美 商品詳細を見る |
よいしょ
床でうずくまって寝ている女の子をベッドか
らみつめる大きな熊のぬいぐるみくん。次の
画面で大熊くんがとった行動に唖然!ぶっ飛
んでいる。いやベットにもどしてあげたには
違いないんですけどね。これは大胆。
女の子の寝相の悪さもエスカレートしていき、
その度にベッドへ戻してあげる力持ちの大熊
くん、ご苦労様です。
まさか自分が寝ている間にこんなことが起こ
っているとは夢にも思ってないでしょうね、
ゆみちゃんは。そこがいいんだな。自分の知
らないところで誰かが見守ってくれている。
そんな安心感がフワリと眠りへ誘う絵本。
-------【Review for Review】-------
休みだけど、今日も職場へいくのだ。
にゅーっ するするする
2014/06/25 Wed 05:50
![]() | にゅーっ するするする (幼児絵本シリーズ) (1989/12/05) 長 新太 商品詳細を見る |
底なしの世界へ
怖いという感想も確かにありですね。沼から
巨大な手がにゅーっと出現し、人々をつかん
で引込んでしまうのですから。とくに台所で
料理中だったとおぼしき主婦、沼に残された
スリッパが生々しい・・・
表紙は地平線を描いただけ。同じく長さんの
「ちへいせんのみえるところ」と共通してま
すが、内容はみごとに対照的です。
どちらも宇宙的想像空間の外縁部に連れてい
かれたかのような気持ちになりました。両方
の地平線はぐるりと一周してどこかで繋がっ
ているのではないだろうか?
最後のセリフがにくい。我々も共犯者にした
てられてしまうのだ。
-------【Review for Review】-------
おおおおっ!
モナ・リザはチョコの色
2014/06/22 Sun 07:19
![]() | 美術とあそぼう! チューブくん絵本 モナ・リザはチョコの色 (美術とあそぼう!チューブくん絵本) (2014/05/23) 坂崎千春 商品詳細を見る |
名画をグルメ的に味わうと
色は様々な感覚を想起させる力があります。
暖かさ、寒さ、心地よさ、楽しさ、悲しさ、
などなど、色同士を組み合わせるとさらに
複雑な感覚も伝えられる。もちろん味覚に
も通じるわけで、タイトル名からピンとき
た方は、この絵本も充分味わえるのでは。
モナリザは色彩的にはブラウン系が主体で、
まろかな雰囲気があるので、チョコレート
の味わいと言うのもおおいに共感です。
モナリザだけでなく、他の名画も沢山登場。
刺激的だったり、ひんやりしたり、お腹に
ずっしりきたりと様々な味わいが紹介され
ます。食する度に変わる絵の具のチューブ
君のお腹に注目。各色ごとの比率が棒グラ
フに、なるほどこれは明解ですね。
巻末には、美術史の中で色彩の扱い方が
どのように変化したかの簡潔な解説あり。
ユニークな美術入門書でもあるのだな。
-------【Review for Review】-------
食べ物から連想して絵本にたどり着くこと
はよくあります。
おたすけやたこおばさん
2014/06/21 Sat 07:04
![]() | おたすけやたこおばさん (2014/05/08) 高林 麻里 商品詳細を見る |
ネコの手ならぬタコの手
ザックり言うと異国の者が移住先で受け入れ
らるよう奮闘する話しといえます。なんて書
くと絵本では「アライバル/ショーン・タン」
が有名ですが、それほど重厚でシリアスなも
のではありません。親しみ易いキャラクター
なので自然と絵本の世界へ入っていけます。
とはいえ、最初にタコと人間の間にある距離
感をしっかり描いているところは重要ですね。
人間と友達になりたいと、お助け屋を始めた
タコおばさん。タコならではの能力を発揮し
た活躍ぶりがみものです。数多くの手をフル
活用する様はまるでインドの神様のよう。
-------【Review for Review】-------
昨日のレビューからタコつながり。
ふたごのたこたこウィンナー
2014/06/20 Fri 06:04
![]() | ふたごのたこたこウィンナー (2014/05/09) 林 木林/西村 敏雄 商品詳細を見る |
どこどこウィンナー
「きんぎょが にげた/五味 太郎」を彷彿さ
せるシンプルなかくれんぼ系絵本。隠れてい
るのは箸からするりと抜け出した、真っ赤な
たこウィンナー。お弁当に人気ものですね。
それが双子になると、たこたこウィンナー。
二匹いるので、各画面で二回分絵探しができ
るのがうれしい。隠れた先もとぼけてて微笑
ましいです。後半は食卓を舞台にフィールド
アスレチック的な移動の連続。彼らはとある
場所にたどり着いてホッとしますが、実はう
まく追い込まれたのかもしれません。
かくれんぼ、おにごっこ、言葉遊びなどの
面白さが巧みにミックスされた作品です。
-------【Review for Review】-------
今朝の日本戦、生で応援できない〜
一応録画するので、結末情報が耳に入らな
ければ、帰ってから観るとしよう。
あめのひに
2014/06/15 Sun 04:34
![]() | あめのひに (2014/05/17) チェ ソンオク/キム ヒョウン 商品詳細を見る |
妄想的豪雨
雨の季節におすすめな空想的絵本です。雨と
いってもしとしと系じゃなくてどしゃぶり系。
外はどんどん水かさが増して大変なことに!
留守番中の女の子の家は、入れてくださいと、
動物たちが次々にやってきて、まるで小さな
ノアの箱舟状態です。雨は一階の床まで浸水、
彼女らは屋根裏へ。はたしてどうなるのか?
画面構成がユニークです。家の中と外の関連
性を四角い絵とその外枠で心象的に図式化。
ちょうど表紙のような感じ。刻々と変化する
状況が整理され分り易くなってます。猫と同
席をさけようとするネズミなど細かい気配り
も行き届いて、画面の隅々まで楽しめますよ。
-------【Review for Review】-------
いよいよ決戦だ。現地の天気はどうかな。
どろんこ どろにゃあ
2014/06/14 Sat 07:34
![]() | どろんこ どろにゃあ (2014/05/08) ささき みお 商品詳細を見る |
さあ、泥に飛び込め!
泥遊びって触感的で、しかも解放感もある。
夢中になって、泥まみれになればなるほど、
俗世間の垢が落ちるような気分になる。
最近は子どもといえど、泥に浸る機会は減っ
てるのでしょうね。公園でのママゴトもどこ
かオシャレな雰囲気なのでは。その意味では、
いきなり泥漬けになっている犬やネコだけで
なく、ちょっと抵抗をみせる小鳥を描いたと
ころがウマい。ま、結局、泥まみれになっち
ゃうんだけどね。ラストページでわかったの
のは、舞台となった雨上がりの公園は人間の
住む町中にあること。泥遊びの悦楽、動物ら
に独占させるのはもったいない。次は君たち
の番だ。と、誘っているようにも見える。
泥遊びの絵本といえば、こちらもおすすめ。
「どろんこ! どろんこ!/村上 康成」
大胆な茶色の色面が想像力をかきたてます。
-------【Review for Review】-------
最近、泥に触れたのはゴールデンウィーク。
実家で田植えの手伝いをしたとき。
いしをつんだおとこ
2014/06/13 Fri 05:51
![]() | いしをつんだおとこ (2014/04) あきやま ただし 商品詳細を見る |
意思も積み重なる
今まで馴染んで来たあきやまさんの絵柄とは
一風変わって重厚さが加わりました。しかし
ながら舞台となる街並、かつて訪れたことが
あるような気がします。リズミカルに連なる
赤い屋根と南欧風の空気感、これはデビュー
作の「ふしぎなカーニバル」に通じると感じ
たのはボクだけではないでしょう。
人それぞれとも言える仕事。それをただひた
すら石を積み上げるという作業に置き換えて
見せることで、絵本的に概念化しています。
何か目標を持って、日々努力されている方は
大いに共感できる内容です。
個人的には街並の印象から、石を積み上げて
塔を築く男と、絵本作家として数多くの作品
を積み上げてきた作者がダブってみえました。
自らの仕事を朴訥に完遂するという絵本では
「アンジェロ/デビッド マコーレイ作」も
感動的、おすすめです。
-------【Review for Review】-------
自分にとっては絵本レビューも石を積んでい
るようなもの。これで1927冊になった。
かないくん
2014/06/11 Wed 05:13
![]() | かないくん (ほぼにちの絵本) (2014/01/24) 谷川俊太郎/松本大洋 商品詳細を見る |
はかないもの
現時点で24件ものレビューがあるとは驚き。
新刊の絵本としてはかなりの反応数なので。
好評価が多いものの、手放しで受け入れるに
はどこか抵抗がありました。少数ながら批判
的なコメントにも共感できる部分があるので。
そんな複雑な読後感は、死というテーマを扱
っているせいもあります。子どもにも死を感
じとりやすく描いた良書は数多く出ているだ
けに、着地点がないとも言える本書は戸惑い
ながら考え込んでしまいました。
注目したいところは絵本ならではのやり方で
死を体現したところ。淡々とした始まりから
すぐに感情移入するのは難しかったものの、
途中で一転!ぐいっと本の中へ引き寄せられ
ました。死がすぐそばにやってきます!
特殊印刷を使った絵としての生々しさが効い
てますね。白い絵の具から命の脈動がじわじ
わと胸に染入ってくる。他にも細部まで気を
配った作り込みで、装丁がテーマと連動する
ことの可能性をみせてくれました。
-------【Review for Review】-------
メールで知らされる死 多くなったなぁ。