fc2ブログ


文字から物語が見える


本の精霊的な存在の女の子にさそわれ、男の子が物語の
世界を旅する絵本です。ユニークなのはその表現の仕方。
童話、小説、歌詞、みんな文章によって物語を成している
わけですが、その文章を本来あるべき場所から解放して、
絵の一部になるという新たな役割を与えているのです。

ん? 

言葉で説明するのは面倒なので表紙をよく見てください。
本の影になんているのは、よく知られた物語の一文ですよ。
その文章は時に大海原になったり、山脈になったりと
変幻自在に形を変えて、想像の世界の素晴らしさを
伝えてくれます。宝探しの冒険をするシーンでは、
洞窟の暗闇が「宝島」の文章で構築されてたりと、
ちゃんとそれぞれの場面に関連した物語を引用している
ところが心憎い。引用じゃない本来の文章は手書きに
なっているので、それだけ追っても理解できます。

絵本としてはもちろん、タイポグラフィーとしても
楽しめる作品。数多くの物語への入り口が待ってます。

——————【Review for Review】——————
こういった想像力を称える絵本が最近増えているような・・・
「ローラとつくるあなたのせかい」然り。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


混沌とした世界に乗り遅れるな

でんでんむし(かたつむり)がタクシーになったり
家になったりする絵本はありましたが、
巨大な電車にまでなってしまうとは!
電車といっても決まったコースを移動するのではない。
車輪付きで、通った後にレールが敷かれるのだ。
木をつたって天国?にいったかとおもえば、
地中に深く入ったりと豪快に冒険する。谷川さんの
呪文のような文章とスズキコージさんのカオスな
絵がマッチし、心地よい混乱の世界への旅ができます。
分けが判らない感に乗り遅れず付いていけるか?

ちなみにかたつむりの中に入る絵本は
「かたつむりタクシー/たむらしげる」
「ぼくんちはボクンチ/山崎 克己」
こちらは安心して楽しめます。

——————【Review for Review】——————
今週は毎朝レビューできた。久々の快挙だ。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


子ども視点で障害を紹介

発達障害の男の子が主人公ですが、絵本という形式に
ちょっと戸惑いました。アスペルガー症候群について
理解したいのであればその種の解説書を読んだほうが
いいですし、じゃあ子どもに向けた作品かというと
障害児を扱っているだけに変な誤解を生みやすいのでは
と心配になってしまいました。身体的にはっきり目に
見えるのであればいいですが、脳の問題だと障害なのか
本来の個性なのか区別しにくいので。
読後に自分がそうなのでは?と不安になる子もいるの
ではないだろうか・・・

その意味では、アスペルガーの子ども視点で
物事がどう認識されているかを共有したい
大人向けの絵本といえます。

——————【Review for Review】——————
普通に絵本コーナーにあるのはどうだろうか。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


身体全体で味わえ

食べ物をお腹に入れるのではなく、食べ物そのものの
中に入ってまうという発想が絵本的です。
こばんに潜り込んだり、着ぐるみのごとく揚げ物類の
中に入ってみたり、湯船のごとく汁物に浸ったり。
イメージをふくらませれば、身体全体で食べ物を
味わうことができるわけですね。

ところで、これができる動物はそうそうはいない。
柄のある動物だと食べ物の見た目がちょっと・・・
となりそうだし、虫系のように小さいと本当に
居るかもしれないのでシャレにならないし・・・

白飯と同じ白で、日常生活では見かけないけど、
ぬいぐるみなどで親しみやすいクマ、というのは
絶妙なキャスティングではなかろうか。
なんてところにも感心。

——————【Review for Review】——————
暴風の音で目覚めた朝。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


24話が集まって1つの物語に

24もの部屋の断面図が見開きいっぱいに勢揃い。
ページをめくるごとに住人それぞれの生活が並列して
進んでいく様子が細かく描かれています。
住人のウサギたちが個性的で、学者、画家、探偵や
魔法使い?まで様々。部屋ごとに追っていくと
24もの小さな物語があるし、食事時や昼寝時など
それぞれの過ごし方を比較してみることもできる。
ちょっとした事件やトラブルが発生して、住人同士が
関わり合ったりする展開もあり、見ていて飽きません。

ウサギたちがどんな会話をしているのか想像を
働かせたり、失くしたり、消えたものがどこに行った
かを絵さがし的に楽しむこともできますよ。

読後は25番目の住人になった気分に。

——————【Review for Review】——————
パラレルワールドだ。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


話の世界に入り込める

この寓話は数行で内容が語れてしまうだけに
一冊の絵本として完成度をあげるのはハードルが
高かったのではと推察します。
当然ながら場面数も絵本のページ分だけ噛み砕いて
設定されることになります。アリ一匹だけ、ハトが一羽だけ
といった見開きもありますが、余白に頼ることなく
細部までちゃんと描ききっているのは見事。
画集的にも鑑賞できる絵本です。

——————【Review for Review】——————
暖かくなってきた。インフルエンザも下火に。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


魔法のマーカーは誰にでもある

「ジャーニ」「クエスト」と続いた3部作の完結編。
一見すると、描いた物が現実化する魔法のマーカーに
注目してしまいますが「リターン」に至り、壮大にして
普遍的なテーマが明確に感じられました。

鍵をにぎっているのは冒険の入り口となる扉。
非日常的世界の冒険を共有することで心がつながる。
それは映画や小説なども同じで、世代さえも超えて感動を
共有し合える作品への扉とも受け止められる。

文章はなく絵のみで展開されることからも、作者が
言語の違いを超えた普遍的なメッセージを託している
ことが伝わってきました。そういえばピンチを脱する
ヒントも絵文字だったし。

——————【Review for Review】——————
明日から崇城大学の卒制展。週末にいってみようかな。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)

ちかしつのなかで

2017/02/19 Sun 06:40



形のない者との出会い

身近にありながらも普段踏み入らない空間は想像力を
働かせる何かがある。特に子どもにとっては。
作中に登場するような広い地下室のある家はそうそうない
と思いますが、これは屋根裏でもいいし、ボクにとっては
物置小屋がそうだったので、おおいに共感できました。

男の子が単に空想を働かせるのではなく、外の世界を
知らない地下室と対話しながら、イメージを膨らませて
いく展開が絵本的です。

空間の存在をしっかりと意識させる画力と透明感ある
水彩の美しさもみどころ。自分もその場にいて
男の子と秘密を共有したような気持ちになりました。

——————【Review for Review】——————
ようやく寒さのピークは過ぎたか。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


えっ、折り返し点?

前回のレビューでも書きましたが、作品の時間感覚が独特。
これから初めてシリーズを読まれる方や今の子どもは羨ましい。
17年も前の1作目から最新の10作目まで一気読みできて
しまいますから。

でも、本来の受け止め方としては何年も時間をかけ、
行間ならぬ作品と作品の間を、じっくりと味わうのものかも。
なんてことを考えたのは、単なる悪人退治の対決物ではなく、
あさたろうの心境変化まで踏み込んで描かれているので。
人生という時間の旅を経ることで、作品への共感度も
高まっていく不思議なシリーズと言えます。

そして・・・京都へ向かう長き東海道の旅もついに終わりへ。
色々な意味で、次回作がどこへ向かうのか気になります。

——————【Review for Review】——————
長期シリーズといえばミッフィーちゃん。
幼児物でありながら、死や罪の意識などまで描いた名作。
ブルーナーさんのご冥福をお祈りいたします。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


最強の建築猫

これは動物の巣なんてものじゃない。本格的な家を建てようと
するのですから。彼女のもとへ集まってくるのは、町中だと
人目について生活しづらい動物たち。ハクビシンを始め、
めずらしい鳥や亀や蛇までも。それぞれの身体能力を活かして
家造りに加わる様子は、けっこうリアリティがありますよ。

しかし完成に近づくにつれ、なんだかヘンな姿に。
動物はたちはマダムミャーゴの我儘に付き合わされて
いただけなのか、と思ったら・・・

さすが設計事務所で飼われていた猫だけありますね。
住人の事を想って、先々までちゃんと考慮されてる!

——————【Review for Review】——————
職場でもインフルエンザが蔓延。
定例の全体昼礼が大事をとって中止になる程。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)
 | HOME | Next »