第2380回「コンプレックスはありますか?」
2018/01/28 Sun 07:31
ふるいせんろのかたすみで:チャールズ・キーピング:ロクリン社
2018/01/28 Sun 06:40
長屋は終点かと思いきや
役目を終えた線路のそばに建つ古ぼけたレンガ造りの6棟続きの長屋。
住んでいるのは、貧しい老人たちです。みんな一癖ある人々で、
一匹の金魚を一日中眺めたいたり、わずかなお金を何度も数えていたり・・・
彼らの暮らしぶりは、絵本としてこれでいいの?と読む方も心配に
なってしまう程の人生終わってしまった感がただよってます。
楽しみといえば、わずかなお金を出し合って買うサッカーくじ。
ところが、なんということか、大当たりして大金が舞い込んできた。
その瞬間、彼らの中で何かがガタリと動き出す音が聞こえた気がしました。
終着駅かと思われたそれぞれの人生が再び走りだしたのです。
チャールズ・キーピングのセピア調のぺン画がいい味わい。
一筆一筆から老人たちの積み重ねてきた人生が年輪のごとく伝わってきて、
おとぎ話的な展開にしっかりとリアリティを定着させてますね。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
たまにはこういう本もいいね。
第2379回「普段は絶対に選ばないけど、この冬ちょっと試してみたい色は?」
2018/01/27 Sat 07:46
ブルドッグたんていときえたほし: 谷口 智則:文溪堂
2018/01/27 Sat 07:38
最後のセリフが渋いぜ!
タイトルに探偵とあるので、てっきり犯人(ホシ)探しをするのか
と思いきや、本当に星を探すのですね。しかも1つだけでなく
全て夜空から消えてしまったのですから大事件です。
誘拐されたのか? 逃亡したのか? それともどこかに隠れている?
星の痕跡を実直に追うブルドッグ探偵、ついに辿り着いた
真相と謎の依頼主は? 星々が消えた理由は絵本的にベタかも。
読後は夜空を見上げたくなりました。星と目があったなら
ひとつ願い事でもしてみようかな。
それにしてもブルドッグと探偵ってお似合いですね。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
といっても願いがかなうかどうかは別の話、
なんていったら元も子もないか。
なずず このっぺ? :カーソン エリス/アーサー ビナード (翻訳) :フレーベル館
2018/01/25 Thu 06:18
虫訛り言葉だっぺ?
タイトルの不思議な問いかけ。二匹の虫の一方が
地面から生えてきた芽を指差しながら言ってることから
「これは なんだろう?」的な意味と思われます。
少なくとも「これ 食える?」とか「これは ペンですか?」
のような疑問系ではないような気がします。
声に出してみると、日本のどこかの方言のような響きも
ありますが、書体を良くみると虫の形に訛ってますね。
要するに、虫達の独特の言語でつづられた絵本なのです。
当然ながら人間の辞書には載ってません。でも彼らの
行動や出来事へのリアクション、繰り返される単語などから
感覚的に意味が伝わってきます。まるで異世界に踏み込んだ
ような体験ができますよ。
地面に近い位置にライブカメラのように固定された
画面の中で展開される虫達の世界。成長する植物を通して、
日々の営みや変化、生と死、季節の移り変わりが描かれてます。
虫達の言葉に温もりまでも伝わってくるのは、彼らの生活の中に
本当に活きている言葉だからなのでしょう。
ちなみに原題は「Du Iz Tak?」です。翻訳版とまるで違いますね。
英語圏ならニュアンスが分かるのかな?その意味では日本語にも
通じているビナードさんの訳は絶妙です。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
見慣れた日常へ不意をついて「なずず このっぺ?」 と問い
かけてみたら、意外な反応が返ってくるかもしれません。
第2378回「おすすめの非常食は?」
2018/01/20 Sat 06:51
ななめねこ まちをゆく:ジェイソン・カーター・イートン/ガス・ゴードン:マイクロマガジン社
2018/01/20 Sat 06:34
ななめんなよ
そういえば、なめ猫が流行ったことがありましたが、
その斜め上を行くのが、ななめ猫なのか?
七匹のなめ猫は、なななめ猫になる。だとすると
七匹のななめ猫は、ななななめ猫! 早口言葉になってき
ましたので、この辺で失礼して、ちゃんと紹介文を書こう。
世の中のトレンドになってしまうという点では、ななめ猫は
なめ猫に匹敵する存在であることは確か。ななめに傾いて歩く姿が
とてもチャーミングで、街中の人々を魅了していくのですから。
フォントに斜体をかけるとオシャレに見えるからホントでしょ。
人々が次々にマネをし、頭を傾けたり、行動までもが斜めに
なったりして、新たな気づきを得ていく様子が痛快です。
逆立ち級の逆転発想とまでいかずとも、斜めにするくらいの
発想なら手軽にできそうですね。
手書きの中にコラージュをあしらった画面は、見慣れた世界を
さりげなく崩し、異なる視点を想起させてくれます。
最後に猫がとった行動も、ナメきって、否、ナナメきってる!
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日は福岡までドライブだ。
星につたえて:安東 みきえ/吉田 尚令:アリス館
2018/01/18 Thu 05:47
星空を見上げたくなる
ほうき星とクラゲ、一夜の出会いを楽しみ、再開を約束したのですが、
二人の時間間隔はまるで違っていて、それが切ないドラマを生み出します。
何百年もかけて宇宙を周回する星に、いつか出会えると信じて待ち続ける
小さなクラゲ。クラゲが別れ際に伝えたかった言葉は星へ届けられるのか?
寓話でありながらSF的味わいもあり、宇宙と命の無限性にしみじみと
思いを馳せてしまいました。
共通テーマで対照的な作品として「ヒワとゾウガメ」を思い浮かべた
のですが、同じ作者だったので納得。こちらもおすすめです。
---------【Review for Review】---------
正月は一年前の自分の想いと出会うときでもあります。
第2373回「昨日の夕飯は何でしたか?」
2018/01/14 Sun 06:08
おなかのなかで:島野雫:教育画劇
2018/01/14 Sun 06:02
お腹の中で仲直り?
暗闇の中でお腹を抱えるキツネくんの表紙は、彼が食物連鎖組織の
中間管理職的位置づけになっていることを示している。
つまり捕食者でありながら、捕食されてしまうこともあるのだ。
そいつはワニ?トラ?ライオン?
巨大な胃袋の中に飲み込まれ、為す術なしと悟ったキツネくんの
情けある行動がきっかけとなって、脱出への光明が見えてくる。
生きる為に食べる自然の摂理が逆転して、生きる為に吐き出すと
いう展開がトリッキーな面白さにつながってますね。
ラストは絵本でよくあるオチと言えなくもないですが、
食物連鎖組織の末端者が、重要な役割を果たすところは痛快。
動物たちの描写はリアリティ寄りなので、そこはかとなく
寓話的な味わいもあります。
読み比べとしてお勧めは
「おなかのなかの、なかのなか:あさのますみ/長谷川義史」
マトリョーシカ的展開の中にひねりがあります。
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で、キツネはベジタリアンになってしまったのか?