第2396回「お好みの水はありますか?」
2018/03/31 Sat 07:23
動物たちは、冒険家!:キム・トマス/フリオ・アントニオ ブラスコ:河出書房新社
2018/03/31 Sat 06:31
正に生きることは旅すること
渡り鳥を始めとした定期的に長距離を移動する動物たちを
分かり易く図解した絵本です。見開きごとにグラフィカルな
イラストで各動物の紹介があり、彼らの移動ルートや時期、
その為の特種な能力などを解説。右端の折込を開くと、
手紙や搭乗券風にポイントのまとめがあり、遊び心もあって
楽しく知識が得られました。
例えばキョクアジサシという鳥は夏は北極、冬は南極へと
行ったり来たりするという。(どちらも過酷な環境なのですが・・・)
もはや飛ぶことそのものが目的のように思えてきます。
ツバメ、サケといった馴染みの生き物も登場、他にもカメや蝶や
クジラやトナカイなど、それぞれが大移動に要するルートや期間など
をみると地球スケールで暮らしていることが伝わってきます。
人間なら航空機や客船や電車などを使う所を自力で移動して
しまうのは驚き!それと天敵の項目に人間や環境破壊とある
ものは耳が痛いですね。
姉妹編の、様々な巣作りを紹介した「動物たちは、建築家!」
病気予防法を紹介した「動物たちは、お医者さん!」もおすすめ。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
最近は通勤の途中で小さな神社に寄り道するようになった。
心地よい朝のひとときになる秘密の場所。
ペペットのえかきさん:リンダ・ラヴィン・ロディング/クレア・フレッチャー:絵本塾出版
2018/03/30 Fri 06:14
もしも巨匠がウサギを描いたら
他のレビュアーさんも書かれていたようにタイトルは色々な意味に
受け止められますね。ペペット=地名?女の子?ペットのウサギ?
これはジョゼット(パリに住む女の子)のウサギのぬいぐるみの名前
だったのですね。彼女がモンマルトルの広場へ出かけてペペットの
絵を描いてくれる人をさがすので、このタイトルなのです。
話は色々な受け止め方ができると思いますが絵の価値ってなんだろう
と思いました。大人なら分かる大画家が次々に登場してペペットを
描いてくれます。これ本当だったら作品の資産的価値は高いでしょう!
でも彼女の視点からすると、個性の押し付けや、画家の自己満足に
しか見えなかったのでしょうかね。いずれも求めているものとは
違っていたようで・・・確かに耳が3つもあったり、軟体化して
いたりするのは、ボクもちょっとどうかと思います。
はたして、ジョゼットはペペットの魅力を描いてくれる画家と
出会えるのでしょうか?
絵本そのもののタッチはパリの雰囲気を醸し出す軽妙な水彩画。
変な個性?に走らず、心地よく物語の魅力を伝えてくれてます。
そういえば先日行った、カフェに飾ってある犬の絵もいい感じだった。
一筆描きでカフェのマスコット犬の特徴をつかまえていたので。
シャレたエッセイを目で読んだかのようなニュアンスでした。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
もう3月も終わりか、早いなぁ(なんて去年も同じこと書いてた)
マルラゲットとオオカミ:マリー コルモン/ゲルダ ミューラー:徳間書店
2018/03/25 Sun 05:22
お互いを尊重し合う意味
最近は、昔の童話のように狼を始め怪物=悪者という単純な
図式ではなく、彼らを通して人情味を描いた絵本も多くみられます。
本作も同様ですが、なんと1952年の作品とはおどろき。
出版当時としてはかなり斬新な内容だったのではないでしょうか。
赤いスカートが似合う女の子のマルラゲットと狼の出会いは
赤頭巾ちゃんを彷彿させます。最初は彼女を襲い、自分の洞穴へ
連れ込んだオオカミでしたが、途中で大怪我をしてしまいます。
彼女は逃げ帰るかと思いきや、もどってきてオオカミの看病を
はじめて、さらに他の動物を襲ってはダメとたしなめる。
彼女の好意に応えようと改心し、言いつけを守ろうとする
オオカミのなんと健気なことか。
しかし、本作のすごいところは、そこを着地点としないところ。
一方が一方の為に無理し続けることは本来の姿ではないという
メッセージへと踏み込んでいきます。お互いが生きている世界を
尊重し合うことの意味や、友情、愛のありかたについて考えさせる
作品でした。作中で狼は女の子と直接会話することはないの
ですが、それがかえって心のすれ違いを超えた相互理解の強さを
感じさせてくれました。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
Now I need a plasce to hide away.
ボサノバ調のビートルズは軽く聞きやすい。
第2395回「好きな牛肉の部位は?」
2018/03/24 Sat 08:17
かぶきやパン:かねまつ すみれ/長野 ヒデ子:童心社
2018/03/24 Sat 08:09
役者ぞろいのパン屋です
かぶきやとは新規開店のパン屋の名前。店主が歌舞伎好きで
名付けたのですが、パンまでが隈取されたりという凝りよう。
しかもそのパンたちが堂々と歌舞伎を演じちゃてます。
絵本ならではの食べ物キャラといえますね。メロンパンや
クロワッサンやアンパンやカレーパンなどなど、様々な
パンが次々に舞台へ登場して、食欲も盛上がってきます。
これは人間の役者がパンに仮装すれば実際に出来るかも。
こんなパン屋が本当にあったら面白いなと思って調べてみたら
なんと歌舞伎顔のメロンパンが実在してるんですと!
ドミニクアンセル銀座店のMr. Kabuki Melon Pan
http://dominiqueanseljapan.com/food/ginza
他のパンも変わってて、パンのサーカスができそう。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
銀座に行ったら立ち寄らねば。
第2394回「イライラした時の対処法は?」
2018/03/18 Sun 07:19
フランクリンの空とぶ本やさん:ジェン・キャンベル/ケイティ・ハーネット:ビーエル出版
2018/03/18 Sun 06:50
羽ばたけ本の魅力よ
お互いの心の中って目にみえるものではないけれど、共通の本が
好きって分かると心の奥で手と手が繋がった感じになれるものです。
例え見知らぬ者同士だったとしても。
でもそれが大人たちから恐れられているドラゴンだったとしたら?
ドラゴンのフランクリンは読書好き、なので、彼と同じく読書好きな
赤毛の女の子にとっては当然のごとく何の垣根もなかったのですね。
二人は意気投合して本屋まで作ってしまうのですが、そのなんと
魅力的なことか。音楽やお菓子もあり、ドラゴンが朗読してくれるなんて。
まるで空を飛んでいるような夢見心地になれる絵本です。
ドラゴンのおおらかさが感じ取れる大きめの画面もいいですね。
本好きなコウモリやネズミやホタルたちもいい仕事してますよ。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日は古い雑誌をよみたくて熊本大学の図書館の地下にある書庫へ。
ここは自分の生まれる前の雑誌まで整然と揃っていて過去に
タイムスリップしたかのような気分になりました。
逆に上に登って行くと未来の本がある図書館もあったら・・・
なんて勝手に空想したりも。
すてきなロウソク:長田 真作:共和国
2018/03/17 Sat 07:13
これは未来の寓話か警告か
一番気になったのは、パロム(ロボット?)がロウソクを手にし、
火をながめているうちに外の世界へ踏み出したくなったこと。
パロムはロウソクの火から何を感じとったのだろう?
パロムというのは製造現場で物を作り続ける多くの仲間たちとは違い、
唯一、壊れたものを直していた。なので外の世界で失われたものを
修繕しようとしたのかもしれない。。
外の世界ではその火を欲する者たちがパロムの元へ寄ってくる。
火は彼らの束の間の欲望を満たしてくれるようだ。
しかし権力者の手に渡るとそれは恐ろしいものへと変貌する。
人類に火を与えたプロメテウスの神話を彷彿させる内容ですが、
モノクロの画面とシンプルなイラストが詩的な世界をつくり
だしています。角度を変えると浮かび上がる透明インクの
幾何学パターンとの合せ技が独特。まるでパロムの心情を
暗示しているかのようでもありました。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
すき焼きヌードルが気になっている。温玉をいれる
ことで絶品になるらしいのだが。
まいごのてがみ:石井 睦美/平岡 瞳:世界文化社
2018/03/16 Fri 05:46
手紙がむすぶ縁
迷子になってしまったのは雨に濡れたハガキ。宛名が水に滲んで
読めなくなってしまい熊の郵便屋さんは、届け先がわからない。
わずかに残った文面をヒントに心当たりを尋ねていきます。
なんとかハガキに込められた想いを届けようと、郵便屋さん
に動物たちも協力し、捜索隊はどんどん増えていって・・・
実はさりげない仕掛けがあって、そのハガキそのものが本に
とじられているのです。読むほうも表裏を確認しながら、
動物たちといっしょに考えることができるし、さらに嬉しいのは
手から手へと届けられるメッセージの温もりが、読者の手に
も伝わってくるところですね。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
せっかくなら切手もイラストでなく実際に貼ってあったら
もっと臨場感がでたかもしれない。