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魂の泣き声が見えました

なんて騒がしい絵なんだろう。目に耳栓をしたくなる。
初めて彼の絵を見た時、そんな印象を受けた。シンプルな
色と線で、我々を洗脳するかのごとく量産される同じモチーフ。
それは、まるでスーパーの広告のようで好みではなかった。

しかし、彼自身の制作に向かう姿勢については何も知らず、
勝手に商業主義的な作家と思っていたのは誤解だったようで、
その点については読後に認識を改めることになりました。
落書きを楽しむ子どもの純粋さが画用紙からハミ出て、
ストリートにまで躍り出ていったものだったのですね。
騒音ではなく赤ん坊の泣き声にちかいかもしれない。

世の中に生まれ出ると、ああしろ、こうしろ、何々するべき、
といった干渉の嵐にさらされる。絵を描くことにしぼっても、
他人の評価をうけて、無意識のうちに常識をわきまえた絵を
描かされるようになってはいないか? なんてことを自問。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
個人制作のとき、ひたすら気の向くまま好き勝手に描いていると、
知らないうちに様々な制約を課していたなと自覚できます。
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そば屋へいらしゃい (ΦωΦ)ノ

招き猫は、ただ店にじっと鎮座しているだけでなく、我々の
見えないところで、ちゃんと仕事をしているのですね。
商店街の一番奥にあるそば屋へどうやってお客を
招き入れるかで、招き猫どうしが相談して作戦開始。
みごとなチームワークを見せてくれます。
傍目にはハプニングが重なったようにみえるけど、
実は周到な計算がされているのは見事!

画面の密度も高く、あんなところや、こんなところに!
と、隅々まで見どころいっぱい。江戸時代ならではの
風物も堪能でき、自分も商店街を探索しているような
気持ちになれる作品て🐾す。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今年は台風が多いなぁ。何者かが招いている・・・?
追っ払い猫はいないのか。

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思い出の料理を求めて

カレーライスが登場する絵本はたくさんあって、家族の団らん、
元気の源、作る楽しさとか、色々なテーマで描かれていますね。
しかし、本書のカレーライスはかなり特別な位置づけです。
一代にして欲しい物は全て手に入れ、王様のような暮らしを
していた男が、どうしても食べたいというカレーライスですから。
しかし、腕利きのコックたちが、どんな高級食材を使っても
男の舌を満足させられないのです。男は全財産を投げ売ってまで
して、その味を追い求め、やっと出会えたものの、なんとも
皮肉な内容ですね。

ポイントになっているのは、作る者と食べる者との一期一会の出会い。
これは何にも増して特別な味覚体験なのかもしれない。料理は味だけ
ではなく、食べたときの状況も記憶に残りますから。

料理ではないのですが、かつて旅行中にふと立ち寄った
小さな美術館で、見入ってしまった絵を思い出しました。
その作品が、今、都会の大きな美術館で展示されていたとしても、
おそらく、あの時と同じような感動はもうないんだろうな。

今日という日は遠い未来のあの時になる。
うん、今をしっかりと味わって生きよう。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ごく普通のカップ麺でさえ、長いインド暮らしの
最中に食べると、ご馳走になりましたっけ。こればかりは
マハラジャがどんなに頑張っても味わうことはできない。
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海底探検と電車旅行の両方が楽しめる


初めて新幹線に乗った時の、ワクワク感と併せて、
海の中も探索できてしまうという、お得な作品でした。
電光掲示板やチケットや駅弁など、細部までこだわりが行き届き、
本当に海底特急に乗ったかのような気分になれます。

東京を出発し、駿河湾や瀬戸内海を通って終点の博多まで、
海の風景や魚たちも見ることができ、まるで動く水族館のよう。
実際は走行する際の水の抵抗があったり、海底はもっと
暗かったりするので、こうはいかないでしょうけど、
これを実現させるのが、絵本の世界ならではの
ドリームテクノロジーといえます。

読後はこんな電車があったらいいな、なんて空想も
出発進行。もしも江戸時代に列車が走っていたら
参勤交代も楽だったろうなぁ〜とか。特急殿様号だ!

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
人生は片道切符なんだな。そして持っているのが、
どんな切符かは進まないとわからない。
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秒速片付け劇場

100秒で王様の部屋を片付けるというスリリングな絵本。
初読みではハラハラドキドキ、再読では絵さがししたり、
王の暮らしぶりなどに想像をめぐらせたりして楽しめます。
カウンティング絵本としても秀逸。数字のレイアウトにも
遊び心があって完成度が高いです。

しかし100秒というのは、あまりにも短い!!!!
3人の家来が必死になって、一応それなりに整えましたが、
あちこちがアラだらけじゃないですか。鳥かごの中に
バナナが入ってたり、ギターに花が挿さってたり(笑)
こりゃあ王様にバレますよ。

大人視点としては、家来たちのその後が気になる。
100人いた家来が97人になってたりしたら、ブラックだ。
実は王様の紛失物があって、偶然それを見つけたことで
褒められたりしたならハッピー、なんて勝手に空想したり
もしました。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日は8時にとある事をするという重大なミッションがある。
とりあえず起床することはできた。あと2時間か。
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家に残された記憶をたどる

森の奥にある廃屋をおとずれた子どもが、中に残された備品などを
手がかりに、かつて住んでいた者への想像をめぐらす絵本です。
本や写真や絵の具やレコード、食器や調味料などもあるということは、
住人はここに帰るつもりだったと思える。でも外出先で何かが
あって、戻ってこなく、あるいは戻れなくなった?。
となると、今はどこで何をしているのか?

ここのところ自然災害が頻発しているせいか、悲しい末路を思い描いて
しまう方もいるかもしれません。子どもたちの思い描いた住人たちの
その後の生活ぶりは楽しそうにみえますが、それでもやはり・・・・

レイン・スミスの錆跡を彷彿させる独特のタッチは、朽ち果てた
家と周囲の自然との一体感を醸し出し、時空をまたいだ異世界へと
いざなってくれます。空想を過去へ巻き戻すだけではなく、
現在からの時間もちゃんとスタートさせているので、過度な感傷に
陥ることなく、前向きな気持ちで読み終えられるのもいい。

ふと軍艦島のことを思い出しました。海上の人工都市で、学校まであり
かつては炭鉱で栄えたものですが、今は朽ち果てるまま。
船で近くまで行ったことはありますが、もしそこに上陸したならば、
かつての住民たちの暮らしぶりに想像をめぐらし、いつまでも
ボーッと佇んでしまうにちがいない。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
また今日も絵本の奥深さに出会えた。
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自分の名前は好きですか?

平太郎という名前を、いやがる男の子を起点にして
名前についての様々な考察が繰り広げられる絵本です。
友達からの意見や親の視点、改名や芸名について、
さらには、子どもを魔物から守る為にあえて
変な名前をつけるというアイヌやタイの慣習などまで。
名前という誰もが持っている身近な話題を通して、
人間についての考察や知識まで深められますよ。

名前に関連して、おすすめの絵本といえば
・女の子が名前をつける側になったときの心境を描いた
「ねこのなまえ:いとう ひろし」
・男の子のようだと自分の名前を嫌っていたけど、
それを受け入れるようになるまでを描いた
「しげちゃん:室井滋/長谷川義史」
ぜひ本書と併せてよんでみてください。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
自分の名前で検索すると同姓同名のマジシャンが出てくる。
いつかそれを越えてやると密かに野望を燃やしてます。
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さわやかな達成感

セットプレーが主体の野球には、絵になるシーンが多いですね。
そのひとつでもあるフライをキャッチする瞬間にフォーカスした作品です。

文章はなく、男の子が飛んできたボールにグローブをのばすシーンが
くりかえし描かれています。外から見れば単に捕球するだけですが、
当事者である男の子の内側には様々な思いが駆け抜けていきます。
草野球の仲間に加わって初めての守備。チームへ貢献したい。
先の失敗を取り返したい。自分にも出来るところを見せたい。
手を伸ばした先にあるものは、もはやボールだけではないのだ。
重圧や孤独を乗り越えて掴み取った瞬間へ、劇的な心理描写は
ウィーズナーならでは。読後は青空の下で飲むサイダーのような
清涼感を味わえました。

打撃編ではこちらの絵本もお勧め、けっこう熱いですよ。
「ホームランを打ったことのない君に:長谷川 集平」

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日は警固塾の三回目。捕りに行くぞ!
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自分と出会う航海

光の描写が印象にのこった作品でした。
特に好きなのは、夜中に出港した小さな船が、最初に迎える
朝のシーン。白い河の上に霞む船。逆光の中に濃紺のシルエットを
みせる山並みが、これから出会う未来を予感させますね。
画面に見入りながら、シュルヴィッツの名作絵本を思い出しました。
「よあけ」では日の出の瞬間がラストになっていたのに対して、
「たいようのふね」では通過点になっています。次項に続く
朝日を体いっぱいに浴びる船と、その後の航海まで描かれ
ています。悪天候の日もありますが、それも人生。
そして船に乗った男の子が行き着いたことろは?
これは心の奥へ航海でもあったのか。瞑想的な世界へ
通じているので眠る前にもおすすめです。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
眠りは無意識への旅でもある。
今日は昨日の明日。
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吐息までむんむん伝わってくる

地中で雪解けを待っているのはてっきり植物なのか
と思って読み進めたら[わたし]の語りの中で、ネズミを
食べたいとあり、ヘビそれもマムシだと判明して、ちょっと
ドッキリしました。絵本の主役としては珍しいですが、
奇抜な展開を意図しているわけではなく、野山に生息する
命のひとつとして描写されています。

田島さんの伸びやかな筆勢、ビナードさんの感覚的言葉使い、
蛇っぽいフォントまで含めて、生命感に溢れる絵本です。

読後に調べてみたら、マムシの生態をさりげなく描写して
いることが分かりました。例えば卵ではなく直接子どもを
産むこと。妊娠中のマムシは神経質になって噛みつきやす
かったり、カルシウムを合成する為に日光浴をする等など。
表紙を再確認したら、ちゃんと[わたし]も描かれて
いましたね。しっかり自然の一部になっています。

本作は「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」
から生まれたとのこと。会期はなんと9月17日まで!
行ってみたいけど、ちょっと無理かな。
タイミングよく、今朝の「日曜美術館」で芸術祭のことが
放映されるので、とりあえずそれをチェックしよう。
それにしても次回は2021年か・・・

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
新潟県十日町市鉢集落にある、廃校をもとにした
「絵本と木の実の美術館」もいつか行ってみたい。
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