【絵本セレクション2018】
2018/12/31 Mon 09:30
今年のレビューを振り返り10冊選んでみました。
①なずず このっぺ? :カーソン エリス/アーサー ビナード→虫語の翻訳が絶妙


②ローラとわたし:パオロ ドメニコーニ/キアラ・ヴァレンティーナ セグレ→少女と犬の目に見えない絆


③きのうをみつけたい!:アリソン ジェイ→お爺ちゃんと孫のSF風人生談義


④おしっこちょっぴりもれたろう:ヨシタケ シンスケ→男の子の真剣な悩みに笑みが漏れた


⑤どしゃぶり:おーなり由子/はたこうしろう→体中に雨をあびる心地よさ


⑥こすずめとゆき:黒井 健/深山さくら→子雀が初めて出会った雪の描写に見とれます


⑦おうさまがかえってくる100びょうまえ!:柏原 佳世子→スリリングなカウントダウン片付け劇場だ


⑧大名行列:シゲリ カツヒコ→時空をまたいだ参勤交代をリアルに描く


⑨星につたえて:安東 みきえ/吉田 尚令→宇宙的スケールの切ないドラマ


⑩フランクリンの空とぶ本やさん:ジェン・キャンベル/ケイティ・ハーネット→女の子が本好きなドラゴンと出会って


総括----------------------------------------------------
ネット社会の反動なのでしょうか、今年はに五感を刺激するもの、
特に触感へとダイレクトに訴えかける作品に魅力を感じました。(④⑤⑥)
加えて、異なる価値観をまたいだ世界の相互理解を面白分かりやすく
表現した作品にも魅力を感じました。(①②⑨)
これもSNSでどこでも繋がれるようになった結果、誤解が暴走する頻度も
高くなり、より関心を引かれたせいかもしれません。
どちらも昔から絵本としては普遍的なテーマではありますが、
大人視点でみても共感できるテーマとして最近は気になってます。
今年は読書会や朗読会によく参加するようになり、
絵本を楽しむ大人もけっこういるんだなと実感できました。
一人でよむだけでなく、声に出してみんなに聴いてもらいたくなる
かどうかという判断基準も、じわじわ高くなってきてます。
①なずず このっぺ? :カーソン エリス/アーサー ビナード→虫語の翻訳が絶妙
②ローラとわたし:パオロ ドメニコーニ/キアラ・ヴァレンティーナ セグレ→少女と犬の目に見えない絆
③きのうをみつけたい!:アリソン ジェイ→お爺ちゃんと孫のSF風人生談義
④おしっこちょっぴりもれたろう:ヨシタケ シンスケ→男の子の真剣な悩みに笑みが漏れた
⑤どしゃぶり:おーなり由子/はたこうしろう→体中に雨をあびる心地よさ
⑥こすずめとゆき:黒井 健/深山さくら→子雀が初めて出会った雪の描写に見とれます
⑦おうさまがかえってくる100びょうまえ!:柏原 佳世子→スリリングなカウントダウン片付け劇場だ
⑧大名行列:シゲリ カツヒコ→時空をまたいだ参勤交代をリアルに描く
⑨星につたえて:安東 みきえ/吉田 尚令→宇宙的スケールの切ないドラマ
⑩フランクリンの空とぶ本やさん:ジェン・キャンベル/ケイティ・ハーネット→女の子が本好きなドラゴンと出会って
総括----------------------------------------------------
ネット社会の反動なのでしょうか、今年はに五感を刺激するもの、
特に触感へとダイレクトに訴えかける作品に魅力を感じました。(④⑤⑥)
加えて、異なる価値観をまたいだ世界の相互理解を面白分かりやすく
表現した作品にも魅力を感じました。(①②⑨)
これもSNSでどこでも繋がれるようになった結果、誤解が暴走する頻度も
高くなり、より関心を引かれたせいかもしれません。
どちらも昔から絵本としては普遍的なテーマではありますが、
大人視点でみても共感できるテーマとして最近は気になってます。
今年は読書会や朗読会によく参加するようになり、
絵本を楽しむ大人もけっこういるんだなと実感できました。
一人でよむだけでなく、声に出してみんなに聴いてもらいたくなる
かどうかという判断基準も、じわじわ高くなってきてます。
Le ruban:Adrien Parlange:Michel albin SA
2018/12/31 Mon 05:58
アイデア一本勝ち
なんともオシャレな仕掛け絵本です。仕掛けといっても
開くと立体的になったりとか、ページに穴を開けたり
切込みをしたりといった加工は一切ありません。
あるのは黄色いリボン(ブックマーク)のみですが、
装丁の一部とみれば、特別な要素ではありません。
ところが、このリボンを本から引き出すと、あら不思議!
絵柄の一部となってしまうのです。何が描かれているかに
よってリボンは様々なものに変化していきます。
その変幻ぶりに、クスッとなったり、ドキッとしたり、
ホゥーっとうなったりしますよ。
アイデアを最大限に活かすグラフィカルなイラストと
配色にもセンスが行き届いてます。それぞれフランス語の
一文が添えられてますが、読めなくても充分に楽しめます。
むしろ日本語に訳すよりも、原文のままのほうが
大人の贈り物としていいかも。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
そういえば去年の今頃はインドの絵本をレビューしてたっけ。
大晦日に一年の読書記録を振り返ると、色々な想いが
溢れてきます。早いように感じても一年はちゃんと
365日分あるんですね。
でんせつのじゃんけんバトル:ドリュー・デイウォルト/アダム・レックス:河出書房新社
2018/12/30 Sun 06:10
熱くなればなるほど可笑しい戦い
石と紙とハサミの戦士キャラでジャンケンの発祥を
描いた絵本なんですが、ここまでやるか、というくらい
力が込めれれています。単純な内容ながら、本格タッチの
作画と大げさな演出で、徹底的に盛って盛って盛りまくってる!
各キャラの強みをサブキャラとの戦いでアピールした後で、
いよいよ3キャラが対決するという、バトル物の王道的展開
も大いに熱いぜ! 結果は分かっていても楽しめます。
中には、えっ、これで勝負がついたの? という試合も
ありますが、絵の勢いで押し切られてしまいました。
ふと、思ったのですが、こいつら誰にでも勝てるキャラとして
粘土を思いついた。ハサミで切られても合体して元に戻れるし、
薄く伸びて石を包むこともできるし、紙をべっとり汚して
しまうこともできるからだ。問題はこれを片手でどう表すか
だが。そんな事でついつい真剣に悩んでしまう自分は、
作者の仕掛けに、まんまとハマっているのかもしれない。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
子どもの頃に、指を三本出すという、ハサミと紙と石を
全て備えた最強の手を編み出した奴がいたけど、
これって今思うと最弱の手でもあるよなぁ。
ひだまり:岡田 千晶/林 木林:光村教育図書
2018/12/29 Sat 07:37
お気に入りの場所
ちょっとした広さの日溜まりも猫にとっては、特別な
場所になり得るんですね。一匹のトラ猫が、初めは独占していた
日溜まりを、分かち合ったり、奪われたり、譲ったり、といった
エピソードを積み重ねることで、大切な者の存在を意識して
いくことを静かなトーンで描いた絵本です。
語りは猫がひげで風の動きを察知するがごとく繊細です。
読んでいるうちに感覚が研ぎ澄まされていき、いつの間にか、
自分の心の中に吹く微かな風までも意識が向いていました。
ゆったりと時間が取れるときに、日溜まりのような
温かい場所でじっくり味わって欲しい作品です。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
自分にとっての特別な場所といえば、かつて住んでいた
家の近くにある小金井公園の中にありました。
そこは奥のほうにある大きな花水月の樹の根本で、腰掛けて
背もたれにするのに、ちょうどいい形をしていたのです。
秋晴れの日などに、そこで読書をすると心地よかった。
もしもそこで同じ事をしている人に出会ったら、
昔なら、あっ先に取られた、と思ったでしょうが、
今なら、心と心が触れ合えたような気持ちになるだろうな。
サーベルふじん:網代 幸介:小学館
2018/12/28 Fri 05:23
Mrs.サーベルヘッド
頭がサーベルになっている婦人????????
表紙に不意打ちを食らわされてしまい、無防備状態の
心がずんずん切り込まれてくる絵本です。
彼女が妖怪だったり呪いを受けてそんな姿にされていた
まだしも、当然のごとくサーベルの頭をしていて、
街の人々もそれを受け入れているという奇妙な世界観に
ページをめくる度にハマり込んでいきました。
パーティでは、ごくごく自然に頭でピザを切り分けたり
するし、切りもの関連の仕事で腕(頭)をふるったりして
街の人々から頼りにされる存在のサーベル婦人。
武器として使うのではないところに、彼女の人徳を
みてとることができる。その意味では同じように
体の一部が刃物になっている、映画「シザーハンズ」
の人造人間エドワードに近いと言えます。
凶器にもなり得る体を持ちながら理性的に振る舞える
婦人に感銘してしまうのは、世の中が世知辛いからか。
中世ヨーロッパ風の舞台がいい雰囲気を出しているし、
人間に混じって登場するちょっと魔物めいた住人たちも
気になる存在です。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日から熊本で6回目の冬休みだ。今年は人生の中で
大きな転換期にいるような気がしてならない。
ぼくのたび:みやこし あきこ:ブロンズ新社
2018/12/23 Sun 07:49
どこかへ行きたくなる
旅のプランを立てるうえで、どんなホテルに泊まるかは重要だ。
ホテルは移動の終着点でもあり起点でもあり英気を養うところでもあるから。
読書することも、ある意味、旅に出るようなところがある。イメージの
世界への旅だ。たった数時間で何年分もの体験が得られることもあれば、
時空を超えて移動することだってできる。なのでボクの場合、
読書に没頭するためにホテルに滞在することもある。現実の旅と
イメージの旅の両方を楽しもうとするわけだ。
ホテルマンの旅を描いたこの絵本は、よむ場所によって様々な
旅情が掻き立てられるだろう。自宅ならば旅に出かけたくなる。
移動中ならば旅先で出会うことへの期待が高まる。宿泊先ならば
十分な心の休息がとれるでしょう。もしも小さい版があれば
カバンに携帯して旅行中にふと開きたくなる作品ですね
リトグラフによる画面の深みある黒と重層的な色彩は、
人生の様々なシーンが愛おしい思い出として定着されて
いるかのようです。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
12月の射手座は旅の星座。
ねむりどり: イザベル シムレール:フレーベル館
2018/12/22 Sat 06:04
静かなる冒険へ
眠りにつくということを、旅に出かけることになぞらえて、
詩的な絵で語りかける絵本です。お気に入りのパジャマや
パイロット帽!を身に着け、猫のぬいぐるみをつれて出発する
女の子。向かう先はベッドや布団ではなく、眠り鳥としたところが
静かな冒険心をかきたててくれます。大きくて柔らかな羽毛に
つつまれた眠り鳥。いいなぁ、ぜひとも出会いたいものです。
ちなみにボクの場合、寒い時期に欠かせないのが、手触りのいい毛布。
体は温もりで包まれつつ、手にはヒンヤリとしているのが最高なのだ。
その毛布に触れたいがために眠るといっても過言ではない。
ベッドまでは魚が迎えにきてくれます。眠り鯛という魚が(失礼しました)
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
冬休みの日程を立てるのがけっこう楽しい。
年明けは、とある事を画策しているのだ。
いのちをいただく:内田 美智子/諸江 和美/佐藤 剛史:西日本新聞社
2018/12/16 Sun 08:09
お腹に入るのは肉ではなく命
死ぬのではなく、お肉として生まれ変わるのだな。そんなことを
読後にふと思いました。人間と動物の関係は多面性があって、
猫や犬などが家族同様の扱いを受ける一方で、牛(豚、鳥、魚)など
人間に食される動物もいる。狩猟時代のように、自分で苦労して捕まえ、
殺したのなら、それを食べるという行為にも意味があるだろう。
しかし、加工され、缶詰になったり、ハムやハンバークになって
お店に並んだ状態で出会うと、そこに命の存在を感じること
はむずかしい。もしも食肉がスーパーなどではなく、神社のような
場所で厳かに売られ、食べる前にも何らかの儀式が執り行われたら、
失われた命を強く意識できるかもしれませんが。
本書は食肉加工センターへ務める坂本さんが、父として、
人間として抱いた葛藤と決意が元になって生まれた作品です。
生々しい事実を直視し、深く考えようとすればするほど、
辛い内容であります。でも・・もう牛を食べない!と宣言して、
サプリメントや点滴だけで生きるわけにもいかないので、
結局は何らかの命を食することになるので、どこかで
自分なりに折り合いをつけなければならない。
最終的には、感謝の気持ちを忘れず、しっかりと自分を生き
通すことが、食べた者の責任なのだと思います
たどたどしさのある線画のイラストからは、不器用ながら実直さの
ある坂本さんの気持ちや、子ども視点での牛への想いまでもが
伝わってきました。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
本書は、牛の立場へ感情移入して聞いてくださいと、朗読会で
紹介されました。自分が食べられる運命だとしたら、どう扱われて
欲しいかを、考えてみようってことなのですね。
ぼくのばしょなのに:刀根 里衣:NHK出版
2018/12/02 Sun 07:38
ペンギン家族が微笑ましい
卵からかえったあとも、いまだにパパとママのおなかの下は
ペンギンのククーのお気に入りの場所。だけど新しい卵に
取られてしまいます。ふてくされたククーがとった行動が
絵本的ですね。大好きな場所を失うことで両親の愛情までもが
失われたのではないかという不安が絵として伝わってきます。
もちろんそんなことはありません。それをククーにクイズ遊び
で伝えるパパとママという展開もウィットが効いて楽しい。
兄または姉になる前の子どもの気持ちを描いた絵本は
いろいろありますが、刀根さんならではの優しさと温もりが
絵のタッチから感じられる作品です。
ペンギン&居場所探しという関連では同作者の
「ペンギンかぞくのおひっこし」もありますね。
こちらはもっとスケールが大きい話。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
確かに年上と年下の子どもがいたら、年下のほうが
甘くされがちかもしれない。そこで年上の子は自分の
立場をなにげに自覚しはじめる。
カ どこいった? :鈴木 のりたけ:小学館
2018/12/01 Sat 04:52
渾身の一発を
これはスリリングな絵本です。一匹の蚊が手にとまって
いるのを見つけ、もう一方の手でパチンと仕留めた!
かと思いきやスルリと逃げられ、あんなところ、
こんなところ、えっ、そんなところまで、と、
どんどん追撃がエスカレートしていきます。
ページをめくる仕掛けを活かしたアイデアが秀逸で
厚手の紙を使っているところもポイントですね。
めくる手に思わず力がこもりました。
深読みすれば、増大しまくる人間の破壊本能を
風刺したようにも受け止められそう。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
蚊との攻防戦を優位にすすめるなら、自分と白い壁との
あいだに追い込むことだ。蚊の動きが追いやすくなるし
壁にとまれば、そのままパチンとたたける。
インド駐在中には、何もないけど、ただ広い部屋に
住んでいて、そんなことにも楽しみを見出してた(^_^;)
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