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不思議な懐かしさ

仮名遣いや文字のレイアウトなど、現代の感覚からすると
違和感がありますが、グラフィカルな絵柄による
4コマ漫画的な構成は、今みてもモダンさが感じられるので、
当時はかなり斬新だったのではないでしょうか。

タイトルのごとく、ブタのトンちゃんの食欲が軽やか暴走し、
コミカルな中にもシュールな要素がちりばめられた絵本です。
果物やお菓子(おくゎし)だけにとどまらず、庭のゴミや石炭や
ガソリンまでも口にするトンちゃんの食べっぷりは、さりげなく痛快。
しかしながら、出版されたのは昭和12年(1937年)で、これから
日本が大戦へ突入していくと思うと、ラストシーンが切なかった。

冒頭のカラーイラストは、目隠しされたトンちゃんが、
スカート姿のお菓子たちと戯れるというメルヘンちっくぶりで、
童画家としての初山さんの本領が伺いしれます。

当時を知る手がかりにならないかと、同じ年に生まれた有名な
絵本を調べてみたら、バージニア・リー・バートンの
「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」がありました。
こちらも暴走系ですね。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
これが平成最後の絵本レビューだ(←ついに言ってしまった)
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心の大地に花が咲く

時は1921年、姉の結婚式のためにプエルトリコからアメリカへ
旅立ち、そのままニューヨークの図書館司書として働き始め、
故郷の民話を初めて英語圏へ紹介したプーラ・ベルプレの伝記絵本。

タイトルにもあるように、プエルトリコの民話が国境や時代を越えて
伝承されていく様子を、植物の種が各地に広まって花を咲かせて
いく姿に例えているのが美しいです。画面の中にも、ところどころに
花のモチーフが登場し眼を楽しませてくれます。

当時の図書館にはスペイン語の物語がないと知り、自分で執筆して
出版社に送りつけて、出版までこぎつけるという彼女の行動力や熱意に
感銘しました。これが最初の一粒だったのですね。

その本は「Perez and Martina」。ネズミのペレスと
ゴキブリのマルティーナの恋を描いた絵本なのです。
けっこうモテモテのゴキブリ娘らしいのですが、目の付け所が
なんとも異国の民話らしい。本書の中でもそのキュートな
姿が描かれてますが、オリジナルの絵本はもうちょっとリアルな
顔立ちです。パオラの熱意を直接感じたいと、思わずネットで
絵本を発注(^_^;) ボクの心の中にも種がまかれたのでした。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
余談ですが、ペレスとマルティーナのオリジナルの絵を見たくて
ネットで検索し、その関連した本として紹介されている他の作品を
興味本位にたどっていったら、タコの生態を紹介をした本に
行き着いてしまった。意外と賢い生き物らしく火星人のモデルに
なったのは的を得ていたのかも。
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風刺の効いた世界観

表紙はショッピングカートの中に入った男の子。
けっしてスーパーで悪ふざけして遊んでいるのではなく、
ちゃんと正しい事をしているのである。彼はこどもストアーで
売られている商品だったのだ。しかも完璧なのである!

こどもを家につれて帰った夫婦も大満足。手はかからないし、
ダダをこねたりしないし、成績も抜群だし。ところが・・・

こどもを売買するという世界観に最初は驚きましたが、
ペットショップでは普通に行われていることなので、
絵本の展開としては、すんなり受け入れることができました。
軽妙なタッチの絵のおかげもあり、さくさく読み進められますが、
ラストのセリフがグサリと心に突き刺さった〜。

こどもにとっては、よくぞ言ったという痛快な一言! 
でも親にとっては耳が痛いですぞ。
(ついでにペットの気持ちまで代弁されてます)

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
スポーツのように技を競うならば完璧さは感動ものですが、
日常生活においては、適度ないい加減さが、居心地の良さや
親しみにつながるんですよね。
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子どもの寝床へやってくる楽しい誘惑

小さめの本ながら、描き込みの密度が高く、画面の隅々まで
じっくりと大串ワールドを堪能できる絵本です。
なんと言っても凄いのは、寝るまいと抵抗する男の子の空想!
もしも自分が寝た後で、何か楽しいことがやってきたら、
損してしまうというのが、寝ない理由なのですが、彼の妄想する
世界のぶっ飛び具合がハンパない。それは布団やベットに
寝たままベルトコンベアーで移動できて、様々なアトラクション
を楽しめる夜の遊園地なのである。そんなバカなと思うなかれ。

男の子の感じている夜の楽しい世界は確かにあるのだから。
実は、息子が寝たことを確認しているママから、そこはかとなく
感じられる色気が気になってしまった。きっと夫婦で楽しい世界へ
向かうのではないだろうか。大人ならではのムフフな世界へと。
子も子なら、親も親というわけで・・・
(スミマセン勝手な妄想です、ここでは書けません)

大串ワールドをもっと堪能したい方は「しょうてんがいくん」
がおすすめ。より画面も大きく、お使いを通して、昭和の香りが
ただよう巨大な商店街を散策できますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
さあ今日も制作の続きだ。調子がいいときは旅をしているかの
ような気分になれて心地よい。来月は一段落するので、
アレしたりコレしたりしよう。
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こんとんの胸の内は誰にも分からないのか


正直に打明けると、作品の由来となった中国の神話を知らなかったのです。

もちろん「混沌・渾沌」と掛け合わせているのだろうなとは推測しました。
「こんとん」とひらがなで記すことで生まれる、音感的な心地よさや
子狐や子豚を彷彿させる愛らしさ、思わせぶりな表紙から、怖そうに
見えて実は親しみやすい妖怪的キャラの話かなとも想像しました。

この予想は、半分は当たってましたね。自分の尻尾をくわえてグルグル
回っているなんて、魑魅魍魎とした容貌のくせして、けっこう可愛い
じゃないですか。ところが、中国の帝が登場したあたりから雲行きが
変化して、意外な結末にあぜんとしました。

白いこんとんの描写は、筆を入れられる前の無垢な半紙を彷彿させます。
良かれと思って人が手を加えたが為に、漠然としていた存在に、
死という具体性を与えてしまったのは皮肉でしたね。

進化しつづけるAI化への批判的な受け止め方もできます。
なんて、作品に意味づけをしようとすることじたいが、
目口を描く行為に通じているのかもしれない、なんて思ったりも。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
モノに目口を描いてみると、なんでも親しみやすくなる。
あれやこれやと勝手に語りかけてくるように思えるから不思議だ。
顔は最高のコミュニケーションツールなのだなあ。
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シュールながらも実用的

シュールな展開が続く絵本ですが、「サラリーマン山崎シゲル」の作者に
よるものとなれば納得です。コミックは読んでなくても、リッピングが
違法行為だと知らなくても、映画の予告編で登場して温和な部長に
非常識な行動を自然にかます山崎くんはご存知でしょう。

そんな山崎君レベルのセンスが、人の姿を成した存在がぱんつさん
だと言える。全く異次元の存在ではなく、最低限の衣服であるパンツを
はいていることで、我々と同じ常識らしきものは見い出せました。
パンツの柄は、スマホのケースのごとく色々あって、そこに彼らの
個性がにじみでているのも微笑ましい。

ぱんつさんは意外と実用的で、それぞれ上位レベルのぱんつさんの
役にたっていることは分かりやすかった。階層社会の中で
けなげに自分の役割を全うしようとする彼らには、我々自身の
姿が投影されているかのようでもある。が、実はそんなに
深い意味はないのかもしれない。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
え〜と、今日は日曜日なので赤ぱんつにしようかな。
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アイデアは面白い

1冊の中で2通りの読み方ができる、しかけ絵本です。
そのまま読めば、おなじみの3匹の子豚の話ですが、
折返しのページを開きながら読むと、4匹目の子豚も
加わって、話に深みもトッピングされます。

料理でもありますよね。最初はそのまま召し上がりください。
次に○○を加えてお食べください。といった趣向が。

しかしながら、4匹目の子豚はレンガで家を建てた子豚の
さらに上を行くのかな、なんて期待すると、ちょっと
物足りなさを感じます。1を聞いて10を知る、ではなく
1のまんまだったので・・・

空腹感を満たすために、2匹めのオオカミが加わった
ブラックなオチのバージョンを裏メニューとして
勝手に想像してしまいました。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
3びきの子豚の絵本は色々なバージョンがあるので、
これだけでコースメニューが組めそう。

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お尻の下の温もり

茶の間の座布団たちをキャラクター化したユニークな視点の絵本です。
と言っても、自分から動くわけでもなく、人間と直接に話をするわけでも
ありません。普段は家族のお尻をささえながら、時には子供の遊び道具に
なったり、布団やまくら代わりにもなったりと、あくまでも座布団なのです。

彼らの心情は「わしらは〜じゃのう」といった老人言葉による文章から
伝わってきます。そして、物でありながらも、あたかも家族の一員で
あるかのごとく、生活の中に溶け込んでいる自然さに親しみを感じました。
まるで座布団の中に、その家族のご先祖様たちが宿っているようですね。

ふと思ったのですが、座布団は平べったい形をしたぬいぐるみとも
受け止められるのではないだろうか。体に直接触れ合うし、備品というより、
ぬいぐるみの仲間とみなしたほうが、しっくりくる。
手入れするときに、日干しする様子は、お爺ちゃんお婆ちゃんが、
縁側で日向ぼっこしているようにもみえるし。

こんど座布団にふれるときは、いつも支えてくれてありがとう!
と心の中で言いたくなる作品でした。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
お尻の下で支えるといえば椅子もそう。椅子の絵本は色々ありますが、
脚があるせいか、座布団より行動的なものが多いですね。

キャスターがあったり、ベンチのように長かったり、
高さが変えられたり、折り畳めたり、大きさ、形も多様なので、
絵本のキャラクターとしては、まだまだ展開の余地があるかも。
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自分にとっての世界一は?

このタイトルでこの作者コンビ、さら動物が何かを持っている
表紙の構図から「二番目の悪者」を思い浮かべました。
期待通りに大人向けの寓話風な内容でしたが、イチゴという身近な
食べ物を持ち出しているので、子どもにも分かりやすいです。

帯やカバーに書かれている[増えると減る]という言葉が
意味深で、読書中にも、頭の中で問い続けられました。
最後に解答ともとれる一文があるのですが、これに共感できる
かどうかは、人それぞれかもしれません。

読後は思索モードに入ってしまいました。
自分なら、どんな状況で口にしたか、なんて事も重要だし。
あるいは歳を重ねて新たな気づきがあるかもしれないし、
さらには送り主が誰なのかも影響してきますね。

いずれにしても、豊かさが当たり前になってくると、ついつい
忘れがちな大切なことを思い出させてくれる絵本でした。

シリーズとして三作目も期待しています。
おそらく「最後の〜」とか「ビリから二番めの〜」みたいな
タイトルになると思うのですが・・・

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日から、とある一文を壁に貼って、モチベーションを
高めている。今の自分にとっては世界一の言葉で読む度に
気が引き締まるのですが、堂々と公開できるほど
高貴なものではない。
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間違いは成功の種

ペンで文字を書いている途中で、間違いに気づいたとき!
修正液もないし、別の紙に書き直すのももったいない。
なんとかできないだろうか・・・

そんなときは、書きかけの文字の形を、あたかも崩し字のごとく
フニャフニャと仕上げてしまい、なんとなく読めるようにする。
さらに他の文字も似たような崩し具合にしてしまうのだ。
ちょっとクセがあるけど、これが自分の筆跡なんだもんね〜。
と思わせればOKだ。なんて誤魔化しをしたことがある方は、
この絵本にも多いに共感できますよ。

顔の絵を描き始めたものの、片方の眼だけ大きくなってしまい、
じゃあと、もう一方の眼を大きくしようとしたら、これもまた大きく
なりすぎてしまい、どう収集をつけようかと悩んだあげく、
すばらしい解決法をひらめくのです。続いて体を描き足していったら、
今度は首や手足が長すぎてしまい、頭とのバランスがくずれた・・・
でも、とあるものを描けば大丈夫! なんてことを繰り返しながら
どんどん制作が進んでいきます。

失敗だと思うから失敗であって、新しいやり方を試すきっかけ
だと思えば良い。そんなメッセージを実際に絵で示してくれる
作品です。最後はとんでもないところへ連れて行かれますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
2つのうちのどちらかを選ぶとき、どうも間違った方を
選んでしまうクセがある。じゃあ、間違っていると思うほうを
選ばばいいのだ。と考えるのだが、待て待て、以前それを
やって失敗したはず。じゃあ、素直に選んでみようと、
決断して、またしても間違った・・・という繰り返し
から抜け出したい。

特に多いのが、パソコンで図形の向きを変える際の、
[垂直に反転 or 水平に反転]の選択だ。
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