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昔話ながら新鮮な味わい

昔話で三人の兄弟や姉妹がいると、末っ子が幸せになるのは
どうしてだろうと、ふと考えてみた。物語として起承転結の
パターンへ当てはめると、起:長女で課題が何かを紹介し、
承:次女で繰り返しの型を作り、転:三女で変化をつける、
といった構成にしやすい、というのはあるだろう。

さらには試行の繰返しから学びを得て、成功へ至るという
PDCA的なフォーマットへ3兄弟という役を当てはめている
とも言えそうだ。これは一人であっても三回目には成功する
というパターンがある。今という時は、時間の流れからすると、
常に末っ子なので、無意識的に共感しやすい、なんて事も
考えてみたりする。

ちょっと前置きが長くなりましたが、本作品も三姉妹が登場し、
主役は末っ子で、魔女の呪いや危機を救うアイテムの入手、
三度目の正直的展開など、昔話ならではの要素が色々と
含まれています。中でも異色を放っているのは巨大な黒牛で、
なんと三女の結婚相手なのです。旅路で明かされる牛の秘密、
巨大なガラスの丘なども想像力を掻き立ててくれました。

あとがきにある、ノロウェイ=ノルウェー説、
ガラスの丘=フィヨルド という見方も納得です。
丹念に描かれた画面も見応えがあり、大人でも童心にかえって
異国ならではの昔話の世界に浸ることができますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
GWは読書に集中したい。読みたい本が増え続けているので。
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カッコいいぞ!!

工事用車両と恐竜が合体したクルマザウルスの造形が見事な絵本。
建設現場などで作業中のブルドーザーやシャベルカーなどは、
確かにメカニカルな恐竜のようにも見えますね。シャベルが牙に、
尻尾がドリルやハンマーにと、それぞれの特徴を活かして恐竜化、
総勢12体も登場します! 彼らは仕事を終えた後に宝探しへと
でかけます。どんな障害物があろうとなんのそので、力を合わせ
パワフルに進んでいくのだ。

立体的な作り込みはCGならでは、このままフィギュアーにも
出来そう。アニメ化しても受けそうです。

よく見るとちっちゃなトラックに乗った子供がクルマザウルス達
に便乗し、宝探しをしているなど、絵探し遊びも楽しめますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ウルトラセブンに登場した恐竜戦車なる怪獣を思い出しました。
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新たな魔女像に共感

魔女の存在が身近に感じられる作品でした。魔女といっても、
いわゆる昔話に出てくるような毒薬を作ったり呪いをかけたり
するような恐ろしい存在ではありません。森や動物など自然界と
心が繋がっていて慕われるような存在として描かれています。

病気になった黒い森を救うべく北へ飛んでいく二人の魔女。
森の奥の小屋で薬を作る母と娘の様子は、魔法の力をつかえど、
まるで手料理を作っているかのごとく家庭的な雰囲気が
感じられました。かまどが自ら火を灯したりと、アニミズム的な
描写も彼女らの前では、いかにも自然な事に見えます。

魔女であっても母と娘という関係が、我々となんら変わりない
ところは共感しやすかった。そして魔法の薬を作るときの肝に
なるのが自然を想う心。母から娘へ、魔法技術の伝承を通し、
その背景にある自然や物を敬う心までもが、次世代へと
引き継がれていく様子に胸が熱くなりました。
この絵本をよんだ子供は、母から料理を教えてもらうとき、
ちいさな魔女の気持ちになることでしょうね♡

まもなく元号が変わることもあり、未来の活躍を予感させる
ちいさな魔女が、令和とダブって感じられました。
色味を抑えながらも、小さな虫に至るまで丁寧に描写された
画面からは、優しさに秘められた静かな意志も伝わってきます。


ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
例話・・・一発変換できない平成生まれのボクのMac。
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想像力は時空を越える

ニューヨーク近代美術館(MoMA)を訪れた作者が展示作から
インスピレーションを得て生まれた絵本とのこと。
その作品というのは、マティス「イカロス」、パブロ・ピカソ
「三人の音楽家」、アンリ・ルソー「眠るジブシー女」。

作者(Raúl Colón)の心は遥か昔にトリップし、いかにも
NYっ子といったスケボー少年となりMoMAに足を踏み入れます。
展示作を眺めているうちに、現実と絵画の世界とが交錯。
イカロスや音楽家や犬やジプシー女やライオンたちと
NYの街中へ繰り出してしまうのです。

想像力が時空を越えて自由に羽ばたく様が痛快です。
スクラッチの軌跡が独特な絵も見応えがあり。文章はないので
原書でも十分にその魅力が堪能できますよ。

MoMAがいかに刺激的かを紹介した絵本もあります。
「あぁとくんをみかけませんでしたか?:ジョン シェスカ/レイン スミス」
こちらも男の子の視点でユーモラスに美術館ツアーを楽しめます。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日は熊本ミステリー読書会へ。一年ぶりの参加です。
課題書は「ひらいたトランプ」。A.クリスティとしては
けっしてメジャー作ではありませんが、参加者それぞれが多様な
切り口で作品を語られ中身の濃い会となりました。
例えば、原書と日本語訳の比較、殺人方法の真実味、
作者の嗜好性、他の作品との関連性、などなど。
おかげで、読みたい作品がまたまた増えてしまった・・・
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つかみどころのないヤツ

ヨシタケシンスケさんの初翻訳、しかも日本語タイトル文字まで。
よんでみて、なるほどと合点がいきました。ユーモラスな展開の
の中に哲学的な味わいをこめた作風はヨシタケさんに通じるものが
ありますね。もくもくは一見すると雲にみえますが、掴みどころの
ない何かを象徴しているようです。つかまえたと思っても、
思い通りにはできない。それは友達や恋人やペットの心のような
ものかもしれません。あるいは自分の本当の気持ちとか。

男の子に寄り添う犬や小鳥たちの仕草や表情が、さりげなく、
もくもくの気持ちを代弁しているかのようにも見えました。

ちなみにフランス語の原題は「Si tu trouves un nuage」
直訳すると「雲を見つけた場合」的な意味なので、
もくもくは絶妙な置き換えですね。

ヨシタケさんの絵本で本書に近い作品では「こねてのばして」
があります。こちらも不定形の物体が登場して、男の子との
関わりが描かれてますが、かなり触感的です。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
すぐに絵本のレビューを書ければいいのだが、ネットで色々と
本が紹介され、気になるものをチェックし、そこからまた別の
本へと導かれ、図書館に予約を入れたりなんかを繰り返し、
机に向かってから、書き始めるまでに、けっこうな
寄り道をしてしまうのだ。
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推進力は好奇心

火星探査車のキュリオシティの開発から、実際に火星に着陸して
活動をするまでをグラフィカルなイラストで伝えてくれる絵本です。
名前の通りに科学的好奇心を刺激してくれる作品で、宇宙好き、
ロボット好き、SF好きにはたまらない内容ですね。

CGによるクールなタッチの風景は火星への知的な旅情に満ちてます。
自分の心もキュリオシティといっしょに火星へ飛んでいるかのような
気持ちになれました。地球的視野でみれば、火星の生命探査という
夢ある壮大なプロジェクト。でも、やってることは、目的を決め、
計画を立てて、テストや練習をこなし、実行に移すという、もので、
我々も普段あたりまえにやってることです。例えばダイエットとか
試験勉強とか、競技会の参加とか、商品開発などなど。

火星の地表ではなく、身近な床を這い回るお掃除ロボットだって、
同じようなプロセスを経て生まれているはずなので、かっこよく
絵本化できるかもしれない。宇宙開発のノリで床掃除の歴史を
描いたらそれはそれで面白いのではないだろうか。

ちなみにキュリオシティの名付け親は小学6年生の女の子とのこと。
いつだって、どこだって、好奇心のパワーは活用できるし、
好奇心があるかぎり、どんな事でも楽しい冒険になりうるのですね。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日はクリスティーの「ひらいたトランプ」を久々に読みました。
高校以来なので、犯人もすっかり忘れていて、再びダマされて
しまった。トホホ でも楽しめました。
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何をたのんでも返事は「iNo!」

いきなりマストドンだ! 犬や猫と暮らすのではなくマストドンだ!
名前からして迫力がある。足音が家じゅうにドシンドシンと響きわたり、
壁や家財にドーンとぶつかりまくる様子を想像してしまいました。
せめて象だったら、もっと行儀がいいかもしれないのに・・・なわけないか。

絵本ではマストドンと暮らす男の子の奮闘ぶりが描かれているわけですが、
苦労が絶えないようです。マストドンに何を言っても返事は「やだ!」の一点張り。
かと言って、マストドンが何かしようとすれば、それはそれでトラブルになるし。

視点を変えれば、やんちゃな子に手を焼く親の気持ちも見えてくるかも。
風呂をいやがったり、部屋を片付けなかったり、宿題をしなかったり
しているマストドンは、男の子の分身といえるかもしれない。そう考えると、
マストドンに手を焼く男の子を通した、逆説的な躾絵本とも言えます。

といっても説教くささはなく、コントの舞台をみているかのような
ユーモラスな雰囲気で、洒落たタッチの絵も味わいがあります。
例えばマストドンは木目を活かしたコラージュで、部屋の備品やポスター
など細々したところまで、楽しめました。

読み併せにおすすめの絵本としては、
「マンモスとくらすには:カンタン グレバン」
こちらは女の子の奮闘ぶりが描かれています。

「ぞうがいるってすてき:二宮 由紀子/高畠 純」
こちらはお腹の中でゾウを飼ってしまう太っ腹お婆さんが登場。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
特殊な状況設定をすることで、普段みえない何かが明らかになる事は
絵本の中だけでなく、日常生活でもあるものですね。

(そういえば4月いっぱいは平成だった)
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