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犬として海と出会う

世間では概念としての「海の味」は広く出回っていて、
魚貝類の料理や、食塩など海を由来とする食材の味の例えとして
キャッチコピー的に使われていたりしますね。
ところで、本当の海水はどんな味だったかなぁ? 塩っぱくて、
生臭い感じだったか。色々なものが入り混じっていて、
一言では言い表せない。ちょうど、この絵本のタッチのように。

犬の毛並みや波や雲が木版かと思えば、筆書きになったりと、
作中での揺らぎがある。色使いも含めて洗練されてはいない
ところが、独特の生っぽい味わいになっています。

それはスマホの四角いスクリーンで切り取られた海や、
皿の上に整然と盛り付けられた海ではなく、犬の五感を
ダイレクトに通した海の味わいを表現しているからと
受け止めました。さらに言うと、作品全体の読後感と
しても、生塩っぱい味わいが残ります。

父と娘が海に持っていったお弁当のウィンナーのタコと、
犬の顔に絡みついた生のタコの関連も隠し味的に効いてる。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
スーパーのお菓子類がオレンジや紫のハロウィンカラー
に染まって人工的な季節感を感じるこの頃。
最近は回転寿司のメニューまで不気味化していてビックリ!
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モノクロテクノの動物たち

モノクロの荒い網点で描かれた電化動物の絵が印象的な絵本です。
この絵に初めて出会ったのは、2017年のボローニャ国際絵本原画展。
懐かしくもモダンで、過去と未来が交錯したような不思議なタッチに
思わず心が感電してしまいました。絵本化されて、じっくりと
見れるのは嬉しいかぎりです。しかも日本語が併記されているので、
スペイン語がわからなくても大丈夫。

原画展の電化動物たちを、それぞれ紹介するような構成で、
ストーリー物というより、画集や詩集のような絵本になってます。
ボール紙の裏側を使った表紙の素朴な手触りも、モダンな絵を
際立たせてますね。

網点フェチ(←そんなものがあるのか分からないですが)
にもおすすめ。ロボットがよみきかせをしたら、ドット
受けるのでは、網点だけに・・・

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨晩は「男はつらいよ」シリーズ第一作を初めて観た。
ああ、昭和だなぁ。当時は香具師が粋な仕事だったの
だろうか?言葉づかいは今でいうところのラッパーだし。
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別れたイルカは今どこに?

乱暴者で孤独なクロコダイルと、アヤカというイルカの女の子の
出会いと約束の物語で、元ネタは映画「じんじん」で登場した
手作り絵本になります。実はもう会えないと分かっていても、
相手を想い続ける年老いたワニの胸の内が切ないです。

映画では、離婚して娘と長年別れ別れになっていた旅芸人である
父の内面が、二匹に投影されていましたが、映画の前に絵本を先に
手にすると、読者の立場によって受け取り方が変わるでしょうね。
映画の後であれば、父の気持ちになったり、娘になったつもりで、
この絵本をよんでみるのも一興ですよ。

ちなみに映画の舞台は、絵本の里として知られる北海道の剣淵に
なります。美しい景色と図書館でよみきかせする絵本愛にあふれた
人々の姿が印象的でした。いつか行ってみたいです。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
さらに言うと、絵本作家として行ってみたい。
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日常に突如降ってきたハプニング

面白ポイントが沢山盛り込まれた絵本ですね。個人的に気になったのは、
鉄筋コンクリートの団地で、外からみると同じ部屋が並んでいるように
見えるけど、中の住人らは多様多彩というところ。

巨大なヒョウ柄パンツの落とし主を探す男の子が、次々に出会う
住人らの、なんとユニークなことか。壁が絵の具まみれだったり、
部屋の中に○○がいたり、人ではなかったりと、階を登るごとに
どんどん異世界へと踏み込んでいく。現実は、ここまで極端で
ないにせよ、普段みられない他人の部屋を覗き見したら、
同じ間取りであっても、こんなにも違うのかと驚くのでは。
かう言う自分の部屋も、本で溢れた作業場状態で、廊下にまで
本棚が進出し、人がやっと通れるかという始末。
しかし先日、エアコンの修理にきた業者は、何も突っ込まなかった
ので他の住人の部屋も似たようなものなのかもしれない・・・

などという余談はさておき、リアルな描写力と空間的な臨場感が
相まって、気づいたらとんでもない世界へ連れて行かれるという、
シゲリ絵本ならでは味わいを、今回も堪能できました。
正にイマジネーションのジェットコースターですね!

絵の細部には、次の展開を暗示する要素が隠されているので、
再読しても楽しめますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日は人間ドックへ。朝食を抜いたこともあり、
検査終了後の昼食が美味いのなんの。ついご飯を
おかわりしてしまった。
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思わぬ出会いが入っているかも

ガチャガチャ、懐かしいなぁ。いわゆるカプセルトイ自販機ですけど、
ガチャガチャという言葉の響きに、古き良き昭和を感じます。
ポチれば簡単に欲しいものが届く今どきでも、ガチャガチャは健在。
おみくじ的な偶然性とハンドルを手回しして出すというアナログ感は
普遍的な魅力があると思えます。それは鬼の子でも同じなんですね。
ただしタイトルのごとく、中身の玩具は巨大なものです!

そのスケールは地球的で、走った跡にミステリーサークルが作れる
ほどの車とか、夜空に星を並べるパズルとか!
鬼たちにとっては子どもの遊びレベルなのですが、我々にとっては
天変地異レベルの玩具が、次々に出てきて圧倒されました。

人間の力を超えた自然現象との出会いは、ガチャガチャのような
ものなのかもしれない。さらには思いがけない出来事への遭遇とかも。
日々の暮らしの中に、ガチャガチャ的なものを感じとれたら、
毎日が楽しくなるかなぁ。なんてことを読後に思いました。


ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
そう考えると、一昨日に天候不良で予約していたフライトが
欠航になったのもガチャガチャみたいなものか・・・
翌日に自宅からバスで熊本空港へ向かい、駐車場から再び自宅へ
早朝ドライブというのも、なかなか新鮮な体験でした。
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読後は野菜料理が食べたくなる

レース物の絵本としては、11見開きという限られたページ数の
中で、よくぞここまで盛り込めたなと感嘆しました。

まず最初の見返しから期待感が高まりました。6台の出走者を紹介
しつつ、野菜引換券やフライヤーでほのぼのとした世界観が伝わってきます。
出走する動物たちは、ウサギとカメ、カエルとヘビ、モグラ、ネズミと
何か絡み合いがありそうなメンバー(^_^;)

コースの設定は野菜畑ならではの特徴が活かされてますね。
葉の形など地上に見えている部分に加え、ときには地中の断面で
根菜の生育している姿を見せるなど、なにげに見識も深まります

中身の展開にしても、最後まで勝負の行方がわからないし、
それぞれのレースカーの持ち味も発揮させつつ、ドキっとする
ハプニングなどもあって、純粋にレースを楽しめました。

種や皮まで含めた全ての部位が無駄なく活かされた、ヘルシーな
野菜料理のごとき味わいの絵本。気づいたら食欲までゴールして
いました(^_^)v

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨晩は出張からの帰りで、羽田から熊本へのフライトが
軒並み欠航になってて、えっ〜???っと焦りました。
台風と火山灰の合せ技に見舞われるとは初めて。
福岡便への変更がギリギリ間に合って、福岡からは
満員の高速バスでなんとか帰宅。しかしまだ出張は
終わっていない。これから熊本空港の駐車場へ車を
取りに行かねばならないので。
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テーマの普遍性は時代や国境を超える

酒井さんによる新版に行く前に、元となった福音館版を読みました。
実は初読です。本作はゾロトウの原書まで遡ると(1966年)、半世紀近くも
前の作品ですが、繊細にして骨太なテーマが描かれ、古典作品ならではの
魅力をじんわりと味わいました。

幼い妹が成長する過程で遭遇する、しっかり者の姉との関係の変化。
人生の中では、一瞬の通過点としてのエピソードかもしれませんが、
そこに普遍的なテーマを見出し、作品に定着させたゾロトウは見事。
最近の絵本でもテーマの元をたどると、この作品に行き着く作品も
数多くあるのではないでしょうか。

これを酒井さんが描くのですから、傑作にならないわけがない。
読まなくても表紙をみるだけでわかります。原典の味わいを
継承しつつ芸術的に深化している。中身も期待以上でした。
文章はよりシンプルになり、その分、二人の女の子の表情や仕草から
多くのことが伝わってきました。絵本としての完成度でいえば
明らかにこちらのほうが高いです。先に酒井さんの絵本をみてしまったら、
元の作品が色あせてしまうのではと余計な心配までしてしまうくらいに。

しかし冷静に考えてみると、これはすごい事です。
例えばですよ、日本の名作「ぐりとぐら」を欧米の絵本作家の
手で再制作する、なんてことといっしょですよね!
個人的には「トゥートとパドル」のホリー・ホビーが
描くとどうなるかみてみたいです。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
古典絵本の酒井さん版では「ビロードのうさぎ」もありました。
もはや映画化、小説化、に並んで絵本の〔酒井化〕と
呼びたいくらい魅力的です。
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ブラックホールは□□の□だったんだ!

どうして、うみって あおいの?
どうして、はっぱは いろがかわるの?
つぎつぎを繰り出される女の子の質問に対するパパの解答が実に
素晴らしい。いわゆる黒板にチョークで書かれた答えではなく、
キャンパスの上に絵の具で描かれた答えとでも言いましょうか、
理性ではなく情感に溢れたものになっているのです。でも、
かえってそれが子どもの想像力を刺激し、新たな質問が生まれ・・・

好奇心旺盛な子なのかと思いきや、単に眠りにつくのがいやで
パパにかまって欲しいのだと分かる。さてこのQ&A合戦は
いつまで続くのか。ラストの核心的な質問への解答がお見事です。
これを言われたら眠らざるをえないですね。
これは使える。親にとっては実用的な絵本かも。

子どもからの質問とシャレた解答の絵本では
「ねぇ、パパ、どうしてシマウマはローラースケートをはかないの?」
もおすすめです。子どもの視点に寄り添った名答ぶりに納得!?


ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日からサクラマチクマモトがオープン。最近知ったんですけどね(^_^;)
熊本もどんどん変わってるんだな。
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いました!

台所、食器棚、リビング、庭、子供部屋、納屋、トイレ、洗面所、玄関、
一見するとなにげない日常空間の写真なのですが、何か変。よく見ると、いるいる。
けっこういる。いる、いる、いる、いる、いる、いないようにみえて、じつはいる、
あんなところにも、こんなところにも、そんなところにも。それがモノノケたち。

でもね、怖くはないです。目鼻口の付いた日用品は、不思議と愛嬌がある。
じゃばら状の装丁の反対側には、モノノケたちがずらりと勢揃い。
名前や性格などが紹介されているんだけど、どこかひねくれて、ゆがんだ一面に、
共感してしまいました。あちこちに、へこみや傷があって、
そこに彼らのたどってきた人生が感じられるからでしょう。

さらに一歩ふみ込むと、モノノケを通して、住人の暮らしぶりも間接的に
伝わってくるところが面白い。もうくたくたの生活感満載ですね!

モノノケたちは、実は使う者の心が物に投影された姿なのかもしれない。
なんて考えながら、身の回りを見渡してみると・・・あっ、居た!

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日、福岡への道中で、久留米市美術館のtupera tupera展に
立ち寄り購入。作中のモノノケたちの造形から
伝わってくる手作り工作感がいいですね。展覧会場内には
銭湯があったり、コラボスイーツがあったり、トイレのマークに
手が加わったりと遊び心で充満され、隅々まで楽しめました。
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小さくても大迫力

蟻が
蝶の羽をひいて行く
ああ
ヨットのやうだ

国語の教科書にのっていた三好達治の詩を思い出しました。

この絵本になぞらえれば、

蟻たちが
蝶の羽をかついで行く
ああ
神輿のようだ

となるのでしょうね。視点は地面の上の小さな世界へ。
羽だけでなく大きな昆虫の頭部や、お菓子や花の種など、色々なものが
神輿になって、楽しさと迫力もあります。神輿に加えて、
色々な屋台や小道具のひとつひとつに至るまで、作り込みが
徹底していて、自分も蟻たちの祭りに参加しているようでした。

ありんこたちと一緒に夏気分をわっしょいできる絵本です。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日は警固塾の日。前回のラフをちょっとブラシュアップ。
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