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心まで浄化されます

詩人:長田さんと絵本画家:荒井さんの関係が、まるで作詞家と作曲家の
関係のように感じられる作品でした。形もなく透明でありながら命の源に
もなっている存在を、これほど的確に書き記した詩があろうか。
その詩に沿って、色と形を優しく注ぎ込んだことで生まれた清涼感。
そんな世界を心地よく漂える作品です。

絵本としては、父と息子がボートでキャンプに出かけるという一日が
俯瞰的に描かれています。彼らの体験を通して、浮かんだり、触れたり、
口にしたりといった、水とのコミュニケーションも実感できました。
ページをめくる度に心の中も浄化されていきますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
曜日の並びでは、水は火と木をつなぐ位置にある。
ヤバい・・・絵本のネタを思いついてしまった!
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全ての地球の子どもたちへ

クリスマスに孫娘がもらった、おじいちゃんからの手紙を通し、
平和で美しい世界の実現を真摯に伝えてくれる絵本です。

おじいちゃんは、野菜畑での仕事を手伝いながらミミズをみつけては
喜んでいる幼い娘のミアに、メッセージを残しました。
地球で人類が手にしている巨大な力についての話なのですが、
それを、畑でミアの小さな手で触れているものから始めて、
分かり易く語っているのが見事です。おじいちゃんの、ミアを見つめる
優しいまなざしが、この世界全てにまで降り注がれています。

誰にだって父と母がいますよね。その父と母にも、両親がいる。さらに・・・
と遡っていくとどうなるか? 太古の時代へ、生命が生まれた時代へ。
なんて考えたら、我々は全て地球の子と言えるのではないでしょうか。
人類に限らず動物や植物もそうです。地球を親とする家族なのです。

おじいちゃんからの、地球を大切にする心を受取り、それを次の世代へ贈る。
我々一人一人が、そんなサンタクロースになれるのですね。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今は常に過去と未来と関わっているし、関われる。
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探しものは何ですか?


コレットが、引っ越し先で出会ったマイルエンド通りの子どもたちの
なんと優しいことか。コレットのために、逃げたインコを見つけようと、
一人一人と捜索隊に加わっていきます。手がかりは色や名前や鳴き声など
色々あるのですが、そう簡単には見つかりません。コレットが、決定的
とも言える特徴を語った瞬間に見せた子どもたちの表情が印象的でした。

インコ探しを通して、楽しみを共有し合える仲間と出会えた喜びを
微笑ましく描いた作品です。黄色とライトブルーを活かした軽やかな
タッチの絵も素敵ですよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今年の絵本ベスト10に入れたいほど好きな作品です。
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【悪魔の誘惑】

2019/11/17 Sun 17:04

10月末まで店頭のお菓子コーナーを我が物顔で占拠していた
ハロウィンの魔女やお化けたちも、月が変わると、あっと言う間に
どこかへ消えてしまいました。ところがどっこい、未だに生息して
いる魔物がいるのです。彼らにとってはクリスマスもお構いなし。
冷凍庫の中から、惣菜の棚から、スイーツコーナーから
「さあ仲良くしようぜ」と誘いかけているのです。
時には甘〜く、時には刺激的に。これがその悪魔たちの姿だ!

悪魔

かれらは我々の心のスキマにささやきかけます。

♥3種類もの濃厚なキャラメルをたっぷりと味わい給え、
カロリーコントロールなんてくだないものは忘れちまいな。
♥さあ、このカップの封印を解いて、ぎっしりと詰め込まれた
生チョコを、おまえの胃袋へ開放するのだ。
♥たぬきに騙されたと思って食ってみなよ。やめられなくなるから。

実はこの季節替わりの出来事を予言したのではないかと思われる
絵本が存在しているのをご存知ですか? 悪魔が登場して
魔女を撃退し、しかも友達になろうと誘ってくるのです。


『あくま:和田 誠/谷川 俊太郎:教育画劇』

絵本としてみると実に奇妙で不自然な内容です。これは悪魔が
大御所の二人を、そそのかして作らせたに違いありません。
・・・あくまでも私の推測ですが。
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食卓に人生の縮図あり

お皿やお椀、大きなものから小さなものまで、食器それぞれが特徴を
生かして活躍するという道具キャラ系絵本なのかと、最初は思いましたが
さらなる深みがありました。(皿だけに・・・)
彼らが盛られた料理をこっそり味わえるというところがポイントです。
だったら美味しいものを乗せて欲しいですよね。

そんな気持ちを、よりいっそう盛り上げてくれるのが、本当にうまそうな
料理の描写。ラーメン、シチュー、ナポリタン、お寿司・・もう
グググっと食器側の気持ちに引き寄せられてしまいました。

それだけに、常に主菜を引き立てる側になってしまう豆皿ちゃん
の辛さも良くわかります。いつも醤油ばかり飲まされたら
たまらないですものね。そんな彼女への、人生経験の長いお椀様の
慰めの一言が、じんわりと胸に染みてきました。
うんうん、確かにそうです。分かります。で、本当にそうなるのです。

実はもうひとつ、読者を食器側の気持ちに引き寄せる仕掛けが
巧みに盛り込まれているのですが、それは本で味わってください。

でも、豆皿ちゃんは、まだ恵まれているほうだと思う。
ペットフードの器だったらどうなる? コーヒー皿は?
使い捨ての紙皿は? なんて余計な心配か。

食器キャラの絵本では「おちゃわんかぞく:林 木林/いぬんこ」
もお勧め。使い手側の家族の様子まで間接的に伝わってきます。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日の山鹿での植田真さん×スズキコージさんのライブペイントは
ついつい最後まで見入ってしまいました。トークショーで
スズキさんが強烈な体験談を語り、「マコちゃんはそんな事ないの?」
という突然のフリで、植田さんがとまどうという繰り返しに笑って
しまいましたが、キャンパスの上では対等に語り合ってましたね。
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線彩なる夢の世界へ

シムレールの高解像感のある線画があいかわらず美しい。
それは動物たちの体毛だったり、静かに流れる空気だったり、
水辺や大地や樹木の広がりだったりする。その一本一本が
月明かりを丁寧にとらえて輝き、夢の世界のようです。

動物たちの姿や生きる場所はそれぞれなれど、眠るということでは
みんな一緒。そして、それぞれの夢を見る。どんな夢かは具体的に
描かれていませんが、閉じた瞳がわかるまでにクローズアップされた
画面からは、夢の世界に浸っている満足感が伝わってきました。

一日の終わりのゆったりした時間によむことをお勧めします。
朝だと夜が待ち遠しくなってしまうので。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
眠りの絵本と言えば「おやすみのあお:植田 真」もいいですよ。
抽象画のような青の水杉が瞑想世界へと誘ってくれます。
今日は山鹿で、植田さんとスズキコージさんのライブペインティングが
始まります。いわば静と動の世界の融合、いったいどうなるんだろう?
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大人的毒書体験 弐

白黒の絵と漢字(ふりがな無し)が良い子の侵入を拒み、
図書館では、児童書ではなく一般書のコーナーに置かれているという、
取扱い注意の絵本を、再び楽しめるのは大人の特権というものですね。

「ウサギとカメ」「アリとキリギリス」などの、お馴染みの昔話の御教訓が、
ブラックな五味さんの餌食となり、ハラスメントレベルで弄ばれています。
根底に見え隠れするのは、現代社会の大人の事情。現実は昔話の
ように都合良く進まないのだった・・・

それと、北風よ! もうちょっと頑張って欲しかったぞ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
「運転者:喜多川泰」。ちょっとだけのつもりが、
ついついハマってしまい、一気に半分まで読んでしまった。
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猫合わせ絵本


見開きごとに猫と猫が登場し、二匹の共通点を探さがすというシンプルな
展開の絵本です。まるでババ抜きのごとく、配られたトランプの中から同じ数の
カードを探すかのような感覚を、ふと感じましたが、同時に奥深さを
感じたのは、描かれた猫の存在感が半端ないからでしょうね。

微妙に違う表情や仕草から、それぞれの猫の生活感までも生々しく伝わってきます。
ふてぶてしさ、自由気ままさ、全てひっくるめた猫の魅力に
目が釘付けになってしまいますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
職場へ向かう道中に、猫のたまり場になっている神社があって、
たまに寄り道するのですが、彼らを見ているだけで、朝から
気持ちがホッコリしてきます。
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速読絵本

ただただチーターがタタタタと駆け抜ける作品で、よみ始めたら
一気に最後まで行ってしまうスピード感あふれる絵本です。
疾走するチーターの姿は、後ろから横から前から、近寄ったり離れたりと
あらゆる角度から描かれていて、自分も広大なサバンナを走っているか
のような爽快感を味わいました。横長の画面も活きてます。

これを見ているだけでも楽しいのですが、最後に見事なオチも
待ち受けてました。意表をついたり、ドキッとしたりさせる
演出もみごとな作品ですよ。

先月の絵本朗読イベントでは、リズミカルな打楽器の演奏と共に
読まれたのですが、音楽との相性もいいですね。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
「ただただ」と打ち込むと変換される「只只」という
漢字の形が、まるで走る四足動物に見えるのはボクだけか。
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図書館という知的ジャングルへ

実在の図書館が舞台となっているだけに、館内に潜むライオン探しも臨場感が
ありますね。そのライオンを探すのが、これまたライオンというのが見もの。
しかも、その2頭のライオンは、普段は図書館の入り口を守る彫像だったのです。

容姿は似ているものの、かたや夜中に留守になった図書館の中をうろつき、
かたや持ち場を離れたことがないと対照的。任務に忠実なほうの
ライオンは、開館時間が迫っても戻ってこない相棒が心配になって、
図書館へ踏み込みます。彼が初めて目にする館内の様子や、捜索中に出会う
彫刻や肖像画とのやり取りが、実は図書館案内にもなっているという展開がみごと。
まるで自分も無人の図書館へ忍び込んだ気分になりました。

考えてみると図書館というのは、好奇心の遊び場とも言えます。
ライオン探しを通し、本棚から本棚へと自由に散策する楽しさが
伝わってくるので、本好き、図書館好きの心をくすぐる作品でした。
さらには、本を通した様々な出会いの可能性までも伝わってきます。

さあ、図書館へ行ってみよう。あなたとの出会いを求めている者が
本棚で待ってますよ。その本は生涯の相棒になるかもしれません。

そう言えば、舞台となった図書館は最近映画にもなっていたんですね。
「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」。機会があったら
観てみたいです。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日「トークショー&絵本読み聞かせ」イベントにて
翻訳された金柿さんの朗読で本書と出会いました。
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