fc2ブログ


映すのではなく見守る

壁の大きな鏡は、部屋の様子を映し出すだけでなく、
チコリの人生を見守る存在でもあります。魔法の鏡と
魔女のように直接会話したりはしないけれど、ここぞと
いう場面では、ぴかぴか光ったりして人情味が感じられます。
また、女の子の守り神的な存在とも受け止められます。
別れの寂しさが入り混じった鏡の最後が切ないですが、
同時に役責を全うした満足感も感じられました。
勝手な想像ですが、前の家族の人生を見ていたときに、
やり残した事があったのかもしれません。

作品としてみると、鏡が直接に手出しをする場面は違和感が
ありました。光るとか曇るとか歪むとか、あくまでも鏡の
能力の中で人と関わりを持つほうが自然だったのでは。
懐かしさの感じられるタッチの絵からは、長く読み継がれた
古典絵本のような風格が伝わってきました。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ふと、物に命を感じることがあります。職場の机に置いてある
時計は数十年使っているけど、数回しか電池交換していない。
かたや自宅の時計は定期的に交換しているにもかかわらずだ。
人生で最も良く目にしている時計であることは確かなので
不思議な愛着を感じています。見ているようで、実は
自分が見守られているのかもしれない。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


物事の裏表を考えるきっかけに

この本には裏表紙がない。片や羊飼いの話で、裏返して
読めば狼の話になる。2つの表紙があるのだ。彼らは対極の
関係なのですが、共通点は同じ山に暮らしているところ。
そして、それぞれが山で生きる事について語るセリフだ。

何が正義で何が悪か。立場が変われば見方も変わる事を、
子どもたちにもシンプルに伝えてくれる絵本です。

双方が最後に語るセリフには考えさせられました。
山は別なものに置き換えてみることもできます。
公園の砂場、あるいは海、空、地球そのものなどへ。
(今ならトイレットペーパーに例えると分かりやすいか)

読む方向によって見方が変わる絵本としては
「さかさま:TERUKO作」もおすすめです。
価値観の異なる赤い星と青い星の物語で、
大人に向けての風刺も効いてます。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
結末の見えてない物語のように足元おぼつかない現実。
決断しないという決断のもどかしさ。
信頼できないことを信頼する虚しさ。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


人生の絵日記

自分が人生を、初めて意識したのは小4の頃。学校のプールで
泳いでいるとき、隣に建っている中学校をみて、ふと思ったのだ。
今は小学校のプールに入ってるけど、いつかは中学校のプールに
入っている時がやってくると。そしてその時はやってきた。

今は1年先に何をしているかを確実に思い描くのは難しい。
1年前から今の自分をみても想像できなかった変化があるし。
しかし未来は分からなくても、過去に起こった事は不変だ。
10年生きれば10年分、100年生きれば100年分の学びがある。

前置きが長くなりましたが、この絵本では0歳から100歳まで、
1見開き1年のペースで、その年にその人が思った事が
短い文章と素朴なイラストで描かれています。
人物は固定されていません。なので性別や国籍や時代に限定
されることなく、将来や過去の自分、あるいは知人や家族の
誰かの思いとして受け止めることもできます。
本書の作成にあたり、作者は小学生から90代の老人まで
インタビューをされたとのこと。どの言葉もすんなりと
心に入ってきましたが、とりわけ印象に残ったのは
31歳のときの、幸せについての一言でした。

1見開きごとに1年の人生が過ぎる絵本としては
「A TRAVERS : TOM HAUGOMAT作」もお勧め。
こらちは宇宙に憧れた一人の男の一生が描かれてます。
3.11テロなどの事件も登場し、リアルに人生を
体感できました。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日は「100日後に死ぬワニ」の最終回でした。
ちょっと視点を変えるだけで、なにげない日常が
愛おしく感じられてくるものですね。

9ヶ月後に捨てられるカレンダー
1時間後に電池が切れる懐中電灯
3分後に忘れられるメッセージ・・・
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


ゾンビ愛の感染源

ウイルスというのは目に見えないから困る。せめて匂いがあればと
思ったけど、それだと自分が気づいたときには手遅れか・・・
その点、ゾンビは見た目に分かり易い。噛みついた(濃厚接触)
相手をゾンビ化してしまうところからも、ウイルスの視覚化キャラ
として受けとめることもできます。

なので、ゾンビタウンからの脱出をゲーム化したこの絵本は、
この時期に自宅待機の友として、うってつけなのでは。
人混み、というかゾンビ混みをさけて進む迷路の数々。
途中でみつけたアイテム類が後半の課題クリアーに
活かせるなど知的な工夫もあり。絵さがしネタも隅々に
散りばめられているので、再読しても楽しめます。

ゾンビといってもリアルな絵ではなく、不気味ファンシー系
なので親しみやすいです。彼らは死体なのに活き活きしているし、
ゾンビになるのも悪くないかな〜なんて、ゾンビ愛に感染しそう。

文響社は、あの「うんこドリル」の出版社。この勢いで
「ゾンビドリル」へと拡散していくかも?

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
五輪はどうなるかわからないけど、
菌メダルだけは避けたい。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


あっ、いっちゃった・・・

久々に再読したら、ハッ!となってしまいました。
これ実は、かなり過激な絵本だったのですね。さらっと読むと
日常アルアルの失敗を発端としたナンセス系の絵本なのですが、
深読みすると、よく出版できたな、という内容だからです。

つまり描かれていることが、男の子ならば一度は通る道だから。
牛乳瓶を倒すことではありません。ズバリ言うと初めての精通です。
セクシャルなメタファー表現として受け止めれば、倒したものが
コーラでもジュースでもなくて、白い牛乳というもの頷けます。
しかも四角い紙パックではなく、片手でつかめる円筒形の瓶・・・
もちろん男の子は自分に何が起こったのか分かりません。
一見ナンセスにみえる展開は、男の子の混乱や罪悪感をかきたてる
必然的な表現として理解できます。さらに白い液体をどくどく流す
瓶は巨大化しちゃってて、ちょっと焦ります。それをちゃんと
捕まえて鎮める役が、成熟した大人の男性というもの納得。

しかし、この内容は作家や編集者の確信犯的なものなのだろうか。
娘が喜んで何度も読んでますとか、我が家では日常茶飯事です、
なんて読者の素直な感想を裏読みしてムフフとなるのも一興か。
ちなみに、第13回日本絵本賞大賞を取ってるんですね。
日本の絵本界も素晴らしいです。 

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
偶然にもホワイトデーに白にちなんだ絵本の紹介。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


幻が都内を駆け抜ける

コマヤスカンさんの絵本と言えば2011年に刊行された
「新幹線のたび」が今だに印象に残っています。この作品は3月の
東北新幹線はやぶさ始動、そして、九州新幹線全線開通に合わせ満を持しての
出版でした。しかしながら東日本大地震とタイミングが重なり、描かれている
日本の景色を痛々しいものとして受け止めた方も多いと思います。

今回のマラソンオリンピック絵本の舞台は東京の街ですが、北海道に変更され
たので、図らずも幻のコースとなってしまった・・・なんという巡り合わせか!
おとぎ話となってしまったマラソンコースを桃太郎やメロスなど民話や童話の
主人公らが駆け抜けるというのも、何だか因縁めいてます。

と言っても、舞台そのものは健在なので、コースの紹介を通した東京の名所案内
として充分に楽しむことはできました。普段は地下鉄などの公共交通を使った
点と点の移動が多いので、上空から俯瞰した景色の中の名所を、線でたどって
行けるのは実に新鮮。選手たちといっしょに都内を走っている気分になれますよ。

マラソン絵本といえば、先日「オニガシマラソン:トロル」も出たばかり。
こちらは古今東西の妖怪たちが、難所だらけのコースを舞台に、特殊能力を
発揮して派手なバトルや駆け引きを繰り広げてます。
トーキョードリームマラソンに登場した○○○も出てるぞ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
オリンピックが中止でなく延期となれば、この絵本は幻で
なくなるかもしれない。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


パグが犬健闘

普通に絵本かと油断していたら、コマ割りによる漫画的構成で、
しかも丁寧に描きこまれたフルカラーに打ちのめされました。

なんといっても印象的だったのはイヌタウロスというキャラ。
半人半馬のケンタウロス自体が空想上の怪物である上に、
さらにそれが犬化されるという複雑で異色な掛け合わせ。
奇抜さが先立って感じられるかもしれませんが、ストーリーは
少年漫画風のバトル系成長物語なので安心して楽しめますよ。
中世ヨーロッパ風のファンタジックな舞台設定もいいですね。
イヌタウロスらの魔獣が、あたかも自然に存在してみえます。

しかし、いったいどこから、こんな発想が出てくるのか?
普通に犬を擬人化しても成り立つ内容ですが、それでは既存の
あの漫画とかぶってしまうから? ここまでしないと成熟した
日本の絵本やコミックの世界では、新しさを出せないのかも。
あるいは単純に、ケンタウロス→犬タウロス からきている?

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日、出張から無事に帰還。驚いたのは行きの飛行機で
早朝の熊本空港はガラガラ、機内もチャーター機かというくらい
空き空きで、かえって安全な環境となっていました。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)


感染したら下車できない

満員電車に乗るのは極力避けたいところ。それと比良坂駅に発着する
電車も要注意! 間違って、その電車に乗ってしまったりすると、
恐怖に感染してしまうからだ。下校途中の男の子が、ちょっとした
寄り道をして森で迷い、町に帰ろうとして電車に乗ってしまうのだが、
周りの乗客をみてビックリ。彼らは人間社会に紛れ込んでいた○○○
だったのだ。男の子はマスク姿の車掌さんに注意されて往路の電車に
乗り換えたのですが・・・ 

この時期に読むと、余計な外出は避けようという意識が高まる
絵本かもしれない。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
日に日に状況は変化していく。来週は出張が控えて
いるのですが、無事に戻れるよう気をつけねば。
絵本レビュー | コメント(0) | トラックバック(0)
 | HOME |