ぼくは犬や:ペク・ヒナ/長谷川義史 (翻訳):ブロンズ新社
2020/05/31 Sun 06:45
全力で犬だ!
犬好きもそうでない人にも、犬の魅力が肉薄する絵本です。
作者の持ち味でもある立体撮影による表現は、本物よりも
生々しいぞ。犬や家族の表情も豊かで、笑いあり、涙あり。
犬の温もりが全身に伝わってきますよ。
というか、この粘土細工の犬は絶対に生きていて、本当に
食事したり、散歩したり、寝たりしてるんだよね? ね。
最近の絵本界では猫がのさばっているけど、犬も捨てたものではない。
特に人との交流という点では、マイペースな猫よりも、犬のほうが
はるかに上手だと思う。忠実さの中に、ポロっとみせる本音も、
たまらなくいいのだ。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
犬と言えば「ジョジョの奇妙な冒険」に登場するイギーが好きだ。
タロットカードでは愚者の暗示というところにも、
個人的に共感している。
とうさんの てじな:ねじめ正一/いぬんこ:鈴木出版
2020/05/30 Sat 06:01
かくれんぼの勝者は
子どもの目の前から、とつぜん父さんが消えてしまった。
これは絵本の世界の出来事だから、魔法的な力を使ったとか、
超常現象か起こったのかも。な〜んて想像をいっさい抱かせない
ところが実は面白みになっている。ちょっとしたサスペンスです。
生活感丸出しの家の中。500円玉という身近な小道具。
そして、いかにも何かやらかしそうな風体の父親。これは
明らかに現実の出来事なのです。イリュージョンやマジックと
いうより、手品です。しかも母親まで企みに乗ってるし。
子どもの注意を、ちょっとそらしたスキの早業は見事ですが、
ネコは気づいていたようですね。
見下ろしたり見上げたり、アップや引いてみたりと、
様々な視点の空間描写から、子どもが探索している気持ちが
伝わってきました。このまま消えおおせるのかと思いきや、
子どものほうが一枚上手だったようで。現金な娘さんですな。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日は「歌え!多摩川高校合唱部」読了。
自分も部活をやってるかのような気分に。
高校時代に部活に打ち込んだ経験がないので、
こんな世界への憧れがあって、それが充分に
満たされました。
もしものせかい:ヨシタケシンスケ:赤ちゃんとママ社
2020/05/24 Sun 07:22
この絵本は幼児の姿をした哲学者
一見すると小さな幼児絵本にみえますが、大人もうなる
究極の真理へとみちびかれる内容です。
特に「いつもの世界」と「もしもの世界」の関係が腑に落ちました。
両世界は自分自身を境界にした、鏡のような存在なのですね。
現実に経験したことが多い分、もしもの世界も豊かになっていく。
一方は後戻りできないけど確かなもの、もう一方は自由に移動できる
けど触れることができない存在。
期待や後悔、何気ない妄想、映画や小説の世界も「もしもの世界」。
もちろん絵本も。時間を経て(いつもの世界が拡張して)から
再読すると受け止める内容が変わるのも、もしもの世界ならでは。
そして、どちらの世界もなくてはならない。
玩具(ロボット?)が語り部としてハマっている。
子どもにとっては、両世界の橋渡し役とも言えるので。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
コロナ禍によって、いつもの世界が変わってしまった分、
もしもの世界も劇的に広がりました。計画していた事、
出会いの機会など、あっちに行ってしまったものが
なんと多いことか。
The Barber's Dilemma: And Other Stories from Manmaru Street:Koki Oguma/Gita Wolf:tarabooks
2020/05/23 Sat 06:50
ちょっと異世界へ
まるで異世界を散策したかのような読後感の絵本でした。
原書は英語ですけど、登場する人々の名前は全て日本人。
Mr.Kenji, Mr.Isoda, Ms.Kiyoko・・・
英語圏からみれば日本人は異国人ではありますが、彼らの奇妙な
行動は、日本人のぼくから見ても異国人のように感じられました。
食べ物やお菓子で衣服や遊具を作ったり、椅子を自分に座らせたり、
階段をひたすら登り続けたり等々。しかも、それが自由気ままなタッチの
イラストによって、あたかも日常的な事のように語られているのです。
ちょっと不思議な異文化体験。1見開きごとのショートストーリー
なので、サクサクと楽しめますよ。
作者のおぐまさんは、2014年より半年間「TARA BOOKS」との
絵本制作活動のため、チェンナイに滞在されたとのこと。
日本人アーティストとインドの出版社とのコラボで生まれた
日印異文化混合絵本とも言えます。決まりきった日常から、
ちょっと逸脱したいときにおすすめです。
ところで、舞台となっている「まんまるストリート」はデリーの
コンノートプレイスがモチーフになっているのでしょうか?
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
熊本市内の図書館がついに再開。ありがたいことです。
【チョコまみれ/FUJIYA】
2020/05/17 Sun 16:57

チョコでコーティングされたクッキー生地には、しっとりとチョコが染みわたる。
さらに大きめのチョコチップが入り、絶妙な噛みごたえになっている。
これはチョコレートの三重奏、一口かじったら最後、二口目三口目とやめられなく
なってしまいますよ。ちなみに一袋で248kcal、板チョコを丸々食った分に近いです。
ダイエット中の方は要注意ですね。
ぬぅ〜〜〜〜〜ん とチョコを染み渡らせている、クッキーのイラストを
見ているだけでも体重が増えていくような気がする〜〜〜ん。
完食してなお、チョコにまみれたい気持ちを抑えきれなくなってしまったら、
こんな絵本はいかがでしょうか?
『チョコレートパン:長新太』
なんと舞台になっているのが巨大なチョコの池。
そこに様々な奴らがやってきて、温泉のごとくチョコに浸かっていくのです。
ただし注意してください。タイトルにもある通り、本来はパンの為の池ですから、
見つかったらお叱りを受けてしまいますよ。
とはいえ、カントリーマアムたちは、ちゃっかりとこの池に浸って
いたようです。絵本に決定的な証拠が描かれていたのを発見しました。
裏表紙に注目!この丸い形はパンというよりクッキーに
みえませんか。しかも一袋分の5個が勢揃いだ。チョコだけでなく
どさくさにもまみれていた!?


しあわせの島へ:マリット・テルンクヴィスト:徳間書店
2020/05/17 Sun 07:42
幸せへの旅
幸せとは? 誰にもわかるようで、誰にもわからないものかも。
幸せそうな人をみて、同じことをやってみても幸せになれるとは限らない。
人生を振り返って、実はあのとき幸せだったとのだと気づくこともある。
今歩んでいる道が、幸せにたどり着くのかどうか確信を持つのはむずかしい。
不測の事態も十分にありうるから。
今いま幸せを感じてるとしても永遠に続くとはかぎらないし、
もっと上の幸せがあるかも、なんて求め始めたらきりがない。
幸せを探すことそのものに、幸せが内在しているのかもしれない。
何だろうね? 幸せって。
答えめいたことは安易に言えないけれど、
きっとそこには、たどり着けると信じています。
しあわせの島をめざして、手作りの筏で航海を続けた女の子のように。
縦長の画面に描かれる島々の様子は旅先からの絵葉書のように美しいです。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ジョジョの奇妙な冒険:スターダストクルセーダーズを
DVDで一気観中。コミック以来、約20年ぶりだけど
アニメもいい感じですね。荒木ワールド全開だし、
エンディング曲の「Last Train Home」が最高。
あおいくも:トミー ウンゲラー:ブロンズ新社
2020/05/16 Sat 07:59
災禍の恵み
コロナ禍を経たことで、どんな絵本が生まれてくるか想像してみました。
家庭や学校でのエピソードを元にした作品や、生活習慣に関連した作品などは、
わかり易いかもしれません。ではコロナをキャラクター化や象徴化するとどうなる?
という視点で考えたときに、ボクのイメージに最も近いのが本書です。
自由きままに空を漂う青い雲は、拡散するウイルスとかぶって見えます。
また国や文化や地位に関係なく、等しく人類に影響を及ぼすところも、
雨を降らせる雲と共通しています。とりわけ印象的だったのは、全人類を
等しく青に染めてしまったシーン。
新コロナは、長い年月をかけて積もりに積もった垢で見えなくなっていた
我々の深層的な問題にスポットを当てました。そんな風刺的なところも
ウンゲラーの作風にも通じています。
青い雲の雨でリセットされた後、どんな色の世界があらわれてくるの
でしょうか。希望や可能性という絵の具はみんなが持っているはずです。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
いつの間にか当たり前になっていた物事の無理や無駄や
無意味さを、徹底的に見直すいい機会でもある。
GW中は自粛のおかげで適正体重になったぞ。
Mou:Naffy:学研プラス
2020/05/10 Sun 08:26
女の子が物語を妊む
最後のページに至って思いました。この本の中そのものが
物語が受胎される世界なのではと。卵のように白い流れ星と、
その殻を破って外に出る獣人たち、生命力を満たすスープなども、
何か暗示的です。家の中のさりげない装飾模様からも神話的な
空気感が伝わってきました。
寝たきりの祖父と女の子が暮らす家の中が現実だとすれば、
扉を開けた外は異世界へ通じている。それは絵本を手にする
我々の現実と本を開いて入って行く空想世界と相似形を
成しています。それらの相関する異世界同士の結界が、透かしを
活かしたタイトルページによって自然に接続されているのが見事!
色味を抑えた画面に女の子の赤い帽子が効いていますね。
寝たきりの老人や森の獣人との遭遇と重ね合わせると
赤ずきんの世界が再構成されたかのようにも思えましたが、
絵のタッチは安心感に包まれています。白い毛布のような
雪景色にも癒やされました。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
GW最終日。熊本から県外どころか市内へも出なかった
のは初めてです。もちろん早く収束するに越したことは
ないのですが、我々の過去の日常を反省し見直す貴重な
時間が与えられたとも思っているので、今の気持ちを
簡単に失いたくない。
そうたいせいりろん:クリス・フェリー:サンマーク出版
2020/05/09 Sat 07:48
科学理論の幼訳
子どもの頃に「そうたいせいりろん」と、初めて耳にしたとき、
総体・整理・論? 全ての物事が整理される法則なのか。
と思った程度の私ですが、この絵本の言わんとする事は伝わりました。
重力の概念がかなり視覚的に単純化してあるからです。物には重さが
あって下に落ちる。そんな当たり前の出来事が理屈ではなく、
感覚的に理解できました。終りのほうのブラックホールの回転と
重力波になると、ついていくのは無理でしたが・・・・
さまざまな物理学的発見も初めは直感ありきで、後から数式や実験で
証明された例が多いように思います。幼児にとっては、月まで散歩したり、
お星様と会話するレベルで親しめるかどうかは分かりません。
相対性理論以前に、もっと不思議な事が身の回りに溢れているので。
しかしながら絵本としては興味深い試みです。少なくとも大人に
とっては、右脳的科学絵本といえます。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
逆例として、ピカソの絵を数式で説明しようとすると
余計解りにくくなる。
パンどうぶつえん:COPPE:教育画劇
2020/05/08 Fri 07:25
おもわず捕食者目線
動物の擬人化は絵本でよくありますが、これは擬パン化ですね。
角や耳や羽など、特徴的な部位がみごとにパンになってます。
お馴染みのクリームパン、メロンパンを始め、クロワッサン、
デニッシュ、バゲットなどお洒落系も登場。パンの形をヒントに
次のページの動物を想像する構成で、動物園めぐりも楽しめました。
読後は、もうひたすらパンが食べたくなってきます。
この作品はパン屋にも置くべきです!
パン水族館とかパンお化け屋敷も希望。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
福岡にあるブックスキューブリック箱崎店は
ベーカリーやギャラリーが併設され、絵本も充実して
いる本屋さん。しばらくぶりに行ってみたくなりました。