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雨日のファンタジー


雨に濡れた緑の瑞々しさが印象的な絵本です。

留守番中の女の子が河童といっしょに雨日のピクニックへ。
灰色の空にアスファルトの道路から一転、緑の森に包まれ
青々とした池の世界へと導かれていきます。そこは雨の日に
しか行くことのできない不思議なところ。ビルのように
巨大な樹木が、湖からそびえ立つ景色に圧倒されました。

複雑に入り組んだ樹木の幹は、まるでエッシャーの絵を
見ているかのようで、奇妙な気分になってきました。
これは森や樹木の写実性に対して、構造物の遠近感や
人物の描写が浮いているせいかもしれません。

人や動物や河童は、緑の世界を散策するための
足がかり的な要素なのだな、と受け止めました。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
週末は雨続き。職場は大きな平屋なので、雨を直に
受け止め、土砂降りのときは室内に轟音が響き渡る。
雨は打楽器だな。
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うまさで気分は天国に

異世界へ転送されてしまった主人公が、得意ワザを
駆使して困難を乗り越え、元の世界へ帰ってくる。
というパターンの話となります。この絵本では、ふいの
トラブルで引きづり込まれてしまった異世界が、なんと地獄。
しかも屈強な鬼たちを屈服させるワザがアイス作りというのが、
なかなか痛快な作品となります。正に芸は身を助くですね。
メニューはシンプルなアイスクリームながら、コーンに
地獄らしさを加えたところに職人的なこだわりが感じられました。

読後にアイス職人をめざす子どもたちが増えること間違いなし。
しかし・・・一番怖い思いをしたのはネコだったかも。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ボクにとってのアイスは、お腹にディナータイムの
終わりを知らせる合図なのだ。最近のお気に入りは
ローソンのあまおういちご。
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頭突き超人あらわる

固い 硬い 堅い 難い・・・レビューで「かたい」と書き始めて
変換したら4つも出てきた。車をもぶっ飛ばしてしまう程の石頭
おじさんが登場するのですが、どれが相応しいのだろう?

とにかく、おじさんの頭突きパワーがものすごいのだ。
物理的な硬度だけでは語れない。だって月もサッカーボールの
ように飛ばしてしまうのですから。せっかく金目の物に出会っても
頭で飛ばすことを優先する堅物だ。化け物にもひるまず
とにかく頭で向かっていく頑固さもある。ん〜選び難い。
しかし、そんな事はどうでもいい。どうでもいいのだ。
どうでもいいったら、どうでもいい〜 銀でも金でもいい。
ダイヤモンドよりアーモンド。あははははははははははは。

すごい頭。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
読者の頭の「かたさ」は解放されていく。
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絵本の境地へと導かれる

見返しのあとがきによると、本作は荒井さんにとっての
「ちへいせんのみえるところ」とのことだ。ちへいせん〜は長新太を
語るときに、というより日本の絵本を語るときに必ず取り上げられる
程の名作で、シンプルな画面に「でました」の一文のみで展開される。

両作で繰り返される文に着目してみると、長さんの「でました」に
対して、荒井さんの場合は「まっている」となるところが興味深い。
ボクは、2つの動詞をクロスオーバーさせてしまった。
なぜなら、ちへいせん〜での「でました」には、同時に「まて」の
意味も含まれていることに気づいたので。逆に言うと、こどもたちは〜
での「まっている」では、同時に「きっとでるよ」とも言っているのだ。

そう思うと、時空を超えて武芸の達人同士が対峙しているかのような
緊張感まで伝わってくる。そして我々が最後に導かれるところは同じ。
舞台の幕が開いて、全てが始まるところなのである。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日はどんな一日になるのか、ドキドキしています。
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屋根裏部屋が魅力的

木炭の味わいを活かした薄暗い屋根裏の描写がいいですね。
石膏像や木馬や古本などなど、探索欲を掻き立てる
アイテムがいっぱい。小さな丸窓が船室や宇宙船のようで、
ここにいると楽しい世界へトリップできそうです。
冒険物やミステリー小説を読むのにもぴったり。
お化けが屋根裏部屋に籠もっていたい気持ちも良く分かる。
いわば自分だけの秘密の世界にしたいんだよな。

でもその世界を誰かと共有できたとしたら、そして別の
世界とも出会えたら、もっと楽しくなるかもしれません。
階下から、ふらりとやってきた女の子をきっかけに、
外の世界へ目を向けるようになった屋根裏部屋のお化けは、
実は私達の心の中にも潜んでいるのでは。

小さな丸窓は心の窓のようにでもあり、暗がりをメインと
した画面の中でアクセントとしても効いてます。
空間構成の妙といいタッチといい、C.V.オールズバーグを
彷彿させますが、内容は子どもにも親しみやすいです。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
最近はIGTVやyoutubeなどを枕元で聞くようになり、
寝る前に、ちょっとした充実感がプラスされてます。
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恋は全てを超えるのか


レストランだから、ウサギがフォークとナイフを使って
肉?魚?を食べるのはいいとしても、ウサギを捕食するワシが
共存している世界観は、けっこうスレスレな感じがする。
猛禽類とは明らかに一線が引かれているので、イタチ自身の
牙への後ろめたさも、そこに起因しているのだろうか?
とは言ってもフクロウがお店に来るくらいだから、
鳥類だってお客さんになりうるわけだが・・・ 

さらには、河の向こうにウサギのお嬢様や王子様のいる
世界が存在している。身分違いの者が出会うような設定が
あり、ワシは単なる伏線役らしい。全ては恋物語という
糸に操られているのだ。

ひねくれたレビューを書いてしまいましたが、もっと
素直な性格だったらと、つくづく思います。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
動物の擬人化問題。
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文字のマジック

半裁されたページをめくると、見開きの2文字が変身!
食器が食べ物になったり、動物が別の動物になったり、
食べ物が動物になったりと、不思議なことが起こります。
文字の形を活かした「言葉遊び ✕ 仕掛け」絵本です。
小さく添えられたイラストも、文字に合わせて変身
したり、帯のデザインや案内役の女の子と花にも
遊び心があり、装丁も含めて楽しめました。

作者はタイポグラファーの大日本タイポ組合さん。
さすがに文字の扱い方が熟れてます。
このアイデアは様々な文字に応用できますね。
カタカナ編、数字編、英語編なども期待してます。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
アイデア次第で何でも絵本にできるのだな。
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想いを込めて送り出す 

案内役の死神を出したり、天国や地獄といったお馴染みの
舞台をストレートに描くわけでもない。子どもにも身近な日常世界
の行為だけで死後の世界を暗示させたところが見事な絵本です。

登場するのは年老いた象と幼いネズミ。一見すると寓話的にも
みえますが、二匹は血の繋がった家族のようでもあります。
そして両者の関係には、別れが内包されています。
次第に近づいてくるその時に、それぞれ、どう向かい合うのか?

象の為にと、橋を修復するネズミの覚悟に胸を打たれました。
「こわくなんかないよ、大丈夫だよ」と象に向けた励ましの
言葉は、同時にネズミ自身への言葉だったのかもしれません。

いつかは分からないけど、誰にでもやってくる別れの時。
我々は象でもありネズミでもあるのだな。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
絵本の力ってすごい。あらためて感じました。
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友情は食欲に勝る?

モンスターがニコニコしてやってきたのは男の子を食べるためだった。
しかし、そうとは知らず、男の子は遊び相手として部屋に入れてしまう。
モンスターは目的を悟られないよう、男の子の遊びに付き合うのですが・・・

無邪気な男の子に迫る危険にハラハラします。いつモンスターが
豹変するのかと。まだか、まだか、あああああ、ついに!!!
ショートコント風のコミカルな展開でしたが、実は深いかも。
たとえ人とモンスターという程、かけ離れた存在同士であっても、
最低限のコミュニケーションが成り立つならば、良好な関係を
築く事はできるのだと信じたくなります。
その意味で言うなら、楽しく遊ぶ事は最高の武器なのかも。

「となりのせきの ますだくん:武田 美穂」を思い出しました。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
つまり、モンスターは実際に人を食って生きていて
モンスターたちの生存圏がいるとリアルに想定したら、
この話は成り立たなくなるわけで、あくまでも
異なるキャラクター同士の出会いの話なのである。
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こっち側とあっち側の対比が面白い

本の構造をうまく利用した表現が秀逸な絵本です。
どの見開きにも、のどの部分に厚いレンガの壁が描かれ、
左右の世界を分断している。甲冑を身に着けた者が言うには、
左側が安全で右側は人食い鬼のいる危険な世界らしいですが・・・

本の世界の人や動物たちは、それぞれ壁の向こう側が見えないけれど、
読者は両方で何が起こっているかを同時に見ることが出来ます。
なので、迫りくる危険にドキドキしながらページをめくることに。

この壁というのは、先入観や思い込みを象徴しているのかもしれない。
一度それが出来てしまうと、その向こうに行くのは難しいもの。
当初は、それが役に立っていたかもしれないが、時が立つに
つれて状況が変化している事に気づかないのは悲劇だ。
なんて事がコミカルなイラストから伝わってきました。

読書にからめていえば、扉を開けば、楽しい世界が広がって
いるのに、読まず嫌いで損をしているなんて事かもね。

英語はシンプルなので、絵だけでも充分に理解できますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
コロナ禍で沢山の壁ができました。今は必要かもしれません。
しかし、護るための壁が、いつの間にか逃げ道を塞ぐ壁に
ならないよう、心に留めておかねばと思います。
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