どんどんどんどん:片山 健:文研出版
2020/11/29 Sun 05:52
大地に響く魂動
無性にこの絵本がよみたくなって数十年ぶりに再読しました。
起承転結はいっさい無しで、赤ちゃんがひたすら前に歩くだけの
内容だったと記憶していたのですが、実はそう単純ではなかった。
始まりは無の大地から。しっかりと足跡を残して進んでいくと、
やがて生き物が誕生し、文明が発生して、戦争や環境破壊、
さらには自然災害などが、赤ちゃんの行く手に待ち受ける。
しかし、何者も赤ちゃんの足を止めることはできない。
地球スケールの時間軸の中を貫く赤ちゃんの歩みの力強さよ。
小賢しい駆け引きが魍魎し、複雑怪奇に入り組んだ世の中に
気疲れしたときにおすすめ。原始の力が鼓舞されます。
どんどんどんどん どんどんどんどん。どんどんどんどん。
(太鼓の如くキーボードを叩いて)
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨晩はベッドの中でひらめいた。ついつい調子にのって、
声に出してひとりブレーンストーミング状態に。
枕元のメモ帳も使い切ってしまった。
(傍から見たら、さぞ不気味な状態だったろうな)
ねむねむごろん:たなかしん:KADOKAWA
2020/11/28 Sat 06:01
本を閉じるようにパタンと寝る
表紙に描かれているのは動物と赤ちゃんたち。
ページをめくっていくと、それぞれが眠りにつく
瞬間が擬音で表現されていきます。
大きなゾウさんなら、、、かわいいリスさんなら、、、
タイトルのように「ごろん」と寝た動物もこの中にいます。
絵本の展開としてトリを務めるのは赤ちゃん。
もちろん、みごとな眠りっぷりです。さりげない
種明かし的な最後の見開きもいいですね。
音感的な絵本なので、ベッドタイムの読み聞かせが
そのまま子守唄がわりになりそうです。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
スーパーのレジ待ちが苦手。必ずといっていいほど
遅い列に並んでしまう。あっちのほうが早そうと
並び変えると、そこが遅くなったりする。
なので一度並んだら、もう他の列は気にしない
ことにした。でも、つい確認してしまう・・・
自分の人生の選択はそうなってないことを祈る。
にくのくに:はらぺこめがね:教育画劇
2020/11/22 Sun 06:29
もう、どれでもいいから食べたいぞ!
見開きいっぱいに登場する色々な肉料理に圧倒されます。
ローストビーフ、からあげ、ハンバークなどなど、
肉汁やソースや焦げ目までも、丁寧に描きこまれた
出来たて、あつあつの、肉料理。ジュワジュワした音や
匂いまでただよってきそう。口の中でけでなく、
目から、鼻から、耳からもヨダレが出ちゃいそうです。
絵本の展開としては、それぞれの肉の国の王様たちが、
我こそ一番と競い合うのですが、そんなの決められないよ。
自慢の料理を紹介しながら「ひとくちだってあげないよ」
との一言が、さらに食欲を刺激します。
実はこれが、ラストへの伏線になっていますね。
この絵本がスーパーの肉売り場にあったら、
つい買い物かごに入れてしまうかも。
初版発行日にもこだわりが。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
Go to meat. そういえば来年は肉年だっけ?
ヘリオさんとふしぎななべ:市居 みか:アリス館
2020/11/21 Sat 06:18
絵筆の先に異世界が
絵の世界と現実の世界が交差する絵本は色々とありますが、
本作は「世にも奇妙な物語」の元ネタになりそうですね。
貧乏絵描きが骨董屋で手に入れたのは、穴の空いた鍋の絵。
ちょっとした気持ちから絵に加筆したことで、異世界への扉を
開けてしまいます。画家の欲望に入り込み罠へと誘う展開が
サスペンスフルで惹き込まれてしまいました。
怪談絵本風に読者を恐怖のドン底へ突き落とすのかと
思いきや、ちゃんと画家のその後まで描かれてあったので
一安心。それにしても、あの鍋はいったい何だったのだ?
穴の空いた鍋の絵にも前日譚がありそう。
さらに言うなら、骨董屋でマフラーと梯子の絵を
見つけたら迷わず買おうと思う。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
古本でも似たような物語が作れるかも。
文字の印刷が消えている文章があって、勝手に
文を書き加えると何か起こるとか。
りすとかえるとかぜのうた:うえだ まこと:ビーエル出版
2020/11/15 Sun 05:35
風と共に
山、川、空、大地、が描かれている風景画。ふと思ったのですが、
なぜ風の景色と書くのだろう。風は直接みることはできない。
しかし感じることはできる。ものの動きや音や皮膚感覚で。
樹々のざわめき、川面のきらめき、空をただよう雲、揺らぐ草木。
自然を描写するとき、そこに風を感じられるかどうかが、
実はとても重要なのではないか。
同様に光景という言葉もあって、風と光を併せた風光明媚なんて
褒め言葉もあります。風や光は演劇でいうところの音響や照明係の
ように、自然の舞台映えに不可欠なものなのである。
そして植田さんの描く白い空間には風と光が共演している。
風の音に耳をすまし、川の流れにゆったりと身を委ねる
ように味わいたい絵本。力んでばかりじゃ遠くへ行けない。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
未来派の絵画やアニメーションは、さしずめ
時景画といえるかも。
ボール、みいつけた!:宮野 聡子:ハッピーオウル社
2020/11/08 Sun 05:59
みんなが、まるくおさまった(ボールだけに)
赤いボールが登場する絵本は、けっこうあります。
まるで同じボールが、時空を跨いであちこちの世界に旅
しているかのように。それぞれの絵本の中でも、ひとところに
留まることなく、自由に転々するのが好きなようで、
本作でも子狸の手から転げ落ちて、公園の中へと消えて
しまいました。いったいどこへ?
公園の中を探索する子狸に、アヒルやウサギやゴリラも
加わっていきます。しかし、ボールの行き先は・・・
恥ずかしがり屋の子狸くんが、見つけたのは
赤いボールだけじゃなかったようですね。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
読書メーターの本棚【赤いボールを追跡中】に本作も追加しました。
https://bookmeter.com/users/741110/bookcases/11101149?sort=display_priority&order=desc
ネズネズのおえかき:ナカバン:学研プラス
2020/11/07 Sat 05:19
散歩するように描く
真っ白だったネズネズのキャンバス。まずは緑色の線をウネウネと。
何を描こうか、なんてことは決めてないようですね。
周りの音からインスピレーションを得たり、自分のそのとき
の気持ちに寄り添いながら、画面は埋められていきます。
まるで現実の世界と絵の中の世界が優しく手をつなぐように。
キャンバスの中は気ままに散歩する空間でもあるのだな。
絵本の中での現実は落書き風で、ネズネズの絵の方が
しっとりと描きこまれているというタッチの違いも面白い。
ナカバンさんの制作スタイルもこんな感じなのでしょうか。
ボクもこんな風に絵を描いてみたい。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ボクはゴールの見えないマラソンをしている気分になると
きがあるけど、創作にはそんな一面もある。
ちなみにこの絵本をよんだのは、雑誌:イラストレーションの最新号で
nakabanさんと植田真さんの特集に紹介されてたのがきっかけです。
かわにくまがおっこちた:リチャード・T・モリス/レウィン・ファム:岩崎書店
2020/11/01 Sun 05:20
落ちた先に出会いと冒険あり
仲間といっしょに冒険する楽しさを、一本の川を舞台に描いた
ユーモラスな絵本です。川に落ちたクマを起点にして次々と
動物たちが合流してくるという意外性とやんちゃな展開に
引き込まれました。どう転ぶか先読みできない子どもの
遊びに近いものがありますね。
しかし、大人的には別の解釈もしてみたくなります。
世の中の大勢に安易に乗っかってしまう危うさを
流れる川の中にふと感じました。人類の歴史においても、
後戻りできない状況に陥って、そのまま流れ続け、
悲劇へと落下した例は数多くありますから。
この作品にはブラックな結末も内包されてると思ってます。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
かく言う私も今、とある川の流れに乗っています。
と言うより、もはや川そのものに近いかもしれません。
この先に何が待ち構えているのか分かりませんが、
自分を信じて進むだけです。
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