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【絵本セレクション2021】

2021/12/31 Fri 14:16

今年の絵本レビューを振り返り10冊を選んでみました。

①たまごのはなし:しおたにまみこ→大人の上質なユーモアに思わずニヤける


②どんめくり:やぎたみこ→上下めくりの組合せと左右の対比が絶妙


③旅する小舟:ペーター・ヴァン・デン・エンデ→ひとくせある世界観の大海原を航海


④ライオンごうのたび:もりおかよしゆき/やまぐちようすけ→自由な発想と絵が旅心をくすぐる


⑤うちゅうひゃっかてん:黒岩まゆ→宇宙スケールの豪華絢爛さに圧倒される


⑥怪物園:junaida→コロナ禍で空想世界に現実味が加わった


⑦こたつ:麻生 知子→お茶の間定点観測の視点が秀逸


⑧もしかしたら maybe:コビ・ヤマダ/ガブリエラ・バロウチ→ポジティブに思索を深められる


⑨うしとざん:高畠 那生→ありがとう!真剣にふざけてくれて


⑩キオスク:アネテ・メレツェ→お籠りする幸せが伝わってきます


総括----------------------------------------------------
年々レビュー数が減ってきて今年はたった84冊だった。多い年の三分の一程度。
本来ならば未読の作品の中にベスト10に入れるであろうものが潜んでいるはず
なので読み切った感に欠け、明解にこれだ!と思う作品を選びにくかった。
物語を楽しんだり、発想のユニークさに驚いたり、心をゆさぶる感動
を与えてくれる作品に出会えたとは思いますが・・・
しかし自分の嗜好にこだわるならば、絵本を通して空想世界の旅をしたいという
願望を満たしたいのです。絵にデザイン性や芸術性が加わるとなお良い。
さらにはSF的な要素もあれば文句なし。(あくまで私の好みです)
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紙の小舟で大航海

ペーター・ヴァン・デン・エンデの描く世界観が独特です。
まるで大航海時代に中世の人々が夢見た未知の世界の不思議さが
宝箱のように詰まっているかのようです。読み始めは海を舞台に
大自然の美しさや厳しさ紹介していくのかなと思っていました。
ところが・・緻密に描きこまれたモノクロ画面をよく見ると、
魚たちの容姿が何か変。しかも道具を使うやつもいる、
と次々に驚きの波がおしよせ、いつの間にか絵の中に
引き込まれていってしまいました。

そんな奇妙な世界に身を委ね、折り紙の小舟と共に航海する
絵本と言えます。文字のないモノクロの画面で展開していく
ところは「アライバル:ショーン・タン」を彷彿させます。
奇妙さの度合いは確かにエドワード・ゴーリー的かもしれません。
通常の絵本の3冊分はあるので、画集としても見応えありますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
朝活のスイッチの入れ方が新たに加わったのですが、
つい夢中になって他の事がおろそかになる危険も。
切り替えスイッチの設定も必要だな。

  
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あくびをめぐる冒険

絵本を読み慣れた方は最初の数ページから、その後の展開を
推測できるのではないでしょうか。おやすみ絵本としては
わかり易い構成です。ユニークなのは、女の子が眠りに
つくために自分のあくびを探しにでかけるという発想。
何を寝ぼけたことを言ってんだ、という気もしますが
本当にあちこちを探索しはじめるのです。自分の家だけ
にとどまらず、あんなとこやこんなとこなど冒険の旅に
まで発展してしまうのが絵本の世界ならでは。

同じ発想で落語もつくれそうですね。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日は色々と個人的な事務処理系のタスクを
こなしていこう。チェックリストは準備済み。
どこまで行けるか。

 
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よあけ:あべ弘士:偕成社

2021/12/19 Sun 09:38



明けない夜はない

コロナ禍によって、我々の生活習慣といった身近なものから、
国家レベルの関係まで、様々な価値観や繋がりが見直される
ようになった。それを一言でくくるなら「リセット」という
言葉がピンとくる。だとすればコロナ明けは「リスタート」
「再起動」ということになるのだろうが、機械のオンオフ
のように単純ではなかった。グラデーションのように少し
ずつ光が指して、いつの間にか新たな日常が照らし出される
というのが実情だと分かってきた。

自然の営みに例えれば「夜明け」という言葉がしっくりくる。
その意味で、シュルビッツが描いた「よあけ(DAWN)」から
約半世紀を経て同名の絵本が生まれたことは、感慨深い。
ついでに言うと、日出ずる国の絵本作家からですよ。
作品の構成はおおむね共通してますが、あべさんならでは
の言葉や絵で展開されているのが特徴で、色彩豊かにして
野性味や生命感にあふれたものになっています。

これは世界各地での夜明けが始まる兆しと受け止めたい。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨晩は久々に熊本市内での飲み会。帰り際、両手に
たっぷり消毒液がふるまわれた。

 
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ロボット家族の喜怒哀楽

赤ちゃんが新たな家族として加わった喜びを、ロボットの
世界観で描いたユニークなSFコメディ風の絵本です。
人間のように病院で産まれるのではなく、部品が宅配で
届けられ家族で組立てるところが、ロボットならでは。
説明書を読みながら簡単に出来たかと思いきや・・・
おっちょこちょいなママや姉となるしっかり者のキャシー
などロボットながらも、みんな人間味にあふれています。
見た目はちょっとアレだけどペットのスプロケットも
いい仕事をしました。つまり描かれているのは我々と
同じ血のかよった感情なのです。読後は逆にリアルな
人間社会のほうが無機的に感じたりもしました。

料理やゆりかごや玩具など、小物類もロボット仕様に
アレンジされていて画面の隅々まで楽しめますよ。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
赤ちゃんをテーマにした絵本は正統的なものから
ユーモラスなものまで幅広い。

  
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木版画料理人の新作

前作「どうぶつクッキー」の乗り物編ができたのですね。
木目を活かした版画によるクッキーの質感は相変わらず。
シンプルな形ながら茶色と小麦色の配色が乗り物の特徴を
とらえていて、擬音も声にだしたくなりますよ。
ここまでくるとクッキーは食べ物であると同時に画材でも
あるのではないかと思えてきます。
見たり読んだりするだけでなく食べたい!と思ってたら、
あっ! それはボクが目をつけていたのに・・・

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨日は「クリスマスに絵本を贈る会」にて本の発送準備
に参加させていただきました。中高生向けの本まであって
中身が気になり、ついつい手が止まってしまいましたが、
楽しかったです。

 
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こんな幼稚園あったら行きたい

動物たちと本当に遊べる幼稚園。という設定が見事に具現化
された絵本です。ポイントになっているのは成長して園長と
なった金太郎の存在で現実から空想へとしっかり橋渡しして
くれます。後はもう安心して絵本の世界を楽しむだけ。
通園、遊び、給食、お昼寝などなど、幼稚園でお馴染みの
体験を動物の先生や友達と心ゆくまで堪能できますよ。

創り手目線で、うまいなと思ったのは、ただ単に出来事を
並べるだけでなく、各イベントにさりげなく関連性を持たせ
たり、事件とその解決を盛り込むことで、さらに世界観に
深みを加えているところです。動物たちやクラスを超えた
園児どうしの一体感へとつなげ、しかも全てを気負う
ことなく自然体でやってのけている!

気になったのは金太郎園長の過去や大きな木造の校舎の中。
そして運動会、お泊り会、ピクニック、雪遊びなど特別な
イベントへの空想も膨らみ続けた。続編もあるはず。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日は特別な日なのだ。色々な意味で。

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失敗作の反乱

ペットショップの売り物にふさわしくないと地下に閉じ込め
られていた動物たちが、自由な世界を求め、仲間と協力しながら
脱出を図る。と言えばいい話のように聞こえますが、
本当にそうなのか??? といくつも疑問符が残る絵本でした。
なぜならばこの話の動物たちは遺伝子組み換えで人工的に作られ、
人間にとっては防護服な必要な場所に隔離されていたからだ。

『時節柄、どうしても某ウィルス君たちを連想してしまう』

さらに動物たちはペットとしては出来損ないというレッテルを
貼られたものの、共感できない人も多いのではないか。
ゾウとネズミが合体したバーナバスはかわいいと思うけど?

そんな訳で、この絵本で描かれている世界観や価値観に
ついていくのは困難でした。設定を現実寄りにして丁寧に
ディティールを描きすぎたせいかもしれない。

好意的に解釈すれば・・・これは作家の頭の中の世界を
視覚化したものであり、商品として世の中では受入れられ
なかったアイデアの数々がたまりにたまって、作者の中から
噴出した創造パワーに満ちた話と受け止めようとしましたが、
裏の見開きを見せられてそれも崩れました。

同じ事を描くなら動物では生々しすぎるので、玩具にする
とか、コミカルなタッチの絵にするとか、もっと適切な
表現があったように思うのです。モンスターズインクのノリで
そのまま映画化したら大炎上です。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
先日、某絵本店で絵本の事を話していたら、店番中に
そんな難しい話はやめてくれと咎められてしまった。
単純に絵本を楽しめた頃が懐かしい。

 
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