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中身を知るのは勇気が入ります

大きなスーツケースが描かれた表紙。中には何が入っているのか。
あるいは、これから何を入れるのか。そしてどこへ旅をするのか。
などと色々と想像が膨らみますが、中身はこれを書いている今に
して思うとかなりシリアスなものでした。

シリアスというのは、どうしてもウクライナ情勢と被るので。
本来は、過去の困難を乗り越え新たなスタートをする者への
応援歌的な内容をユーモラスに描かれた作品だと思います。
しかし、スーツケースの中に入っていた物は解釈のしかたに
よってはかなり生々しく受け止られます。読み手によっては
胸が締め付けられるかもしれません。中身は片手で持てる
程度の物。だが、その意味するところは重い。とても重い。
じわじわと心にのしかかってくる。

救いは絵のタッチがコミカルなこと。そして出会いや未来を
信じるに値すると描いているところで、現実もそうであって
欲しいと願います。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
熊本に来てから今年で10年を迎えようとしています。
様々な出会いによって成長や達成できた満足感と
まだまだ志半ばと思う気持ちが同居している状態です。
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事実を知って想像力に深みを増す

表紙とタイトルから絵を描く楽しさテーマにした絵本かと
期待しました。男の子が地下鉄に乗って、気になった乗客を
スケッチブックに描く。見たままではなく、その人の生活や
これからの物語まで発展させて描くのです。なんと想像力
豊かなのでしょう。絵本の見開きとスケッチブックの見開き
をリンクさせたページや、切り紙のコラージュを使って紙の
味わいを伝える表現などうまいなぁ、などと読み進めて
いたら途中から雲行きが変化して、最後にガツンと頭を
叩かれました。そうだったのか・・・

例えば、見知らぬ人の後ろ姿から想像した顔と実際の顔が
けっこう違っててショックを受けた感じとでもいいま
しょうか。読後に色々と考え込んでしまいました。
訳者あとがきにもあるように、いったいどうしてそこに?
という疑問を抱きました。再読すると男の子が楽しそう
に描いた絵から別の意味が伝わってきます。

我々は意外と自分の思い込みの世界を生きている
のかもしれません。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昨年末に退社された方からのメッセージを聞いたとき、
色々な苦難やトラブルを乗り越えて今に至っているの
だなと理解した。今まで見えていたものは氷山の一角に
すぎない。笑顔の奥にある背景を想像できるかどうかで、
受け取る言葉ひとつひとつの重みが変わる。

 
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風景もおかずのひとつ

弁当に入っている魚の形をした醤油差し。名前はランチャーム
で、ランチをチャーミングにという意味が込められているの
だそうだ。このランチャームくんが旅の案内役となり、
電車の窓から見える風景と共に、乗客がそれぞれに食べる
駅弁を紹介していく絵本です。東京タワーの見える駅を
出発して西へ西へと走っていきます。見開きいっぱいに
描かれた風景と駅弁が交互に登場。電車の旅では風景も
食べ物のひとつ、あるいは駅弁も風景のひとつ。そんな
気分になってくる作品でした。

裏の見返しには、登場した駅弁や風景が地図付きで
紹介されています。これを見たら鉄道マニアでなくとも
実際に乗って確かめてみたくなる方も多いのでは。
食欲と旅心をさそうチャーミングな絵本です。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ランチャームには魚型の他に豚型もありますよね。
今度は豚くんと違う路線での旅に出かけてみたい。

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幼い頃の記憶がよみがえりました

東さんの詩と町田さんの絵の関係が絵本的ですね。
両者が補完し合って、ひとつの世界が完成している。
さらにその距離感がつかず離れずの絶妙さを保っている。

詩はタイトルが含まれた一文で始まるものの、
マントの色や形などはいっさい書かれていません。
なので、赤くて金色のふさがあって、ぼうしは耳付き、
しかも持ち主は熊の女の子というのは町田さんの
解釈によるものと思われます。さらに3匹の仲間まで
登場。シンプルな詩を元にしながら、どうしたら
ここまでイメージを膨らませらるのでしょうか。
かといって説明しすぎることはなく、抽象と具象の間を
ゆれうごく背景がよみ手の想像を働かせる余地を
残しているので、音楽を聴いているかのように
自然と絵本の流れに入っていけました。

最後のページには、ハッとさせられます。そうか、
そういうことだったのか!と気付かされるので。
勝手な想像ですが、町田さんの幼少時代とリンク
しているのでは。そして自分の幼少時代のお気に入り
に思いを馳せてしまいました。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
身に着けるもので言うと、自分のお気に入りはどてらです。
幼い頃にテレビを見るときは、いつも身体にかけてました。
ベロア調の縁を爪の先で撫でると落ち着いたものです。

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