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保護絵本?

シンプルなタイトルに飼い猫愛を描いた数多くある絵本が
またひとつ増えたんだな、くらいに思ってました、最初は。
逆に絵本の側からみれば、無理に読んでもらわなくてもいいよ、
くらいの素っ気なさも伝わってくるような気もする。

じゃあ何故手に取ったのかというと、絵本のワークショップで、
先生から1人2冊の絵本がプレゼントされたからです。
絵本はいろいろあって、巷でも高評価な作品、絵の美しいもの、
著名な作家の最新作など色々ありました。順番に欲しい作品が
選ばれていくなか、本作は二巡目の自分の番で最後の3冊に
残っていました。どうしようかなと少し迷いつつ表紙の猫と目が
あってしまい、つい手に取った次第。多分本屋や図書館で
みかけたとしたら素通りしていたでしょう。

ひょんなことから自宅に連れ帰った絵本。何気によんでみて
ちょっとびっくり。保護猫を迎えた作者の体験が元になって
いたのですね。失礼を承知で言わせていただくと、本作は
自分にとっての保護絵本。大切に扱わせていただきます。

シンプルなタイトルが読後にじわっと胸に沁みてきました。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ちなみに猫は飼ったことがありませんが、猫の心情を
尊重し時間をかけて信頼関係をつくる姿勢にはおおいに
共感できました。全ての生き物に通じることだと思います。
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怖さと笑いは紙一重

冒頭ページの文章がなかなか味わい深い。非常識な訪問者に
対して常識的な対応をする男の子との掛け合いが漫才のよう。
この非常識なやつが宇宙人や妖怪だったら、もっと真面目に
驚いたのでしょうが、肉まんですからね。

よもや中華街の重鎮と通じていたとは思いもよらなかったので
しょう。男の子の家庭だけでなく、人類の危機にまで
発展しそうな怖い話。肉まんといえども油断してはいけない。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
毎年6月25日に長さんの作品をレビューしています。
この日が命日なので。続けていると何かご利益があるかも
しれないと密かに期待しているのですが、はたして
どうなのだろうか?
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かわいいが暴発

これと同じことをネコでやったら今更何を、となるでしょうし、
赤ちゃんや孫だったら、単なる親バカ爺婆バカと呆れられる
でしょうね。でも何かへの愛情が溢れ出てダダ漏れしっぱなし
になる状態はわかります。その向かう先がウサギというのは
絶妙な着地点だったのでは。世の中には一定数のウサギ派が
いますし、絵本キャラとしても昔からメジャーな存在ですから。

だだし、ファンシーなイラストではなく、ひげの一本一本まで
生々しくリアルに描写しきったところに本気度を感じました。
身体の一つ一つを舐め回すようにアップで描き、”かわいい”と
ストレートに言い切る文章と、その魅力を例えた妄想画面が交互に
展開され、かわいいの深みにハマっていくのはなんとも快感。
もうここまで行っちゃってもいいんですね!
想いの深さ強さの表現としては正常です。
これをよんだ後は、安直にかわいい〜なんて言葉を
使えなくなってしまいますよ。

うさぎ偏愛絵本としてよみつつも、これがきっかけで他の何か
への愛情が覚醒するかもしれません。かわいいだけでなく、
□□□は なんで こんなに かっこいいんだろう。とか
△△△は なんで こんなに おいしいんだろう。とか。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
そういえば7月の朗読会のテーマは「うっとり」で
この絵本はドンピシャ。でもこれは読み手を選ぶなぁ。
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濁点だけに話も転々する

濁点の有無で意味が変化する日本語の特徴を活かした
言葉遊び絵本です。共通したシチュエーションを左右の
ページで対比する構成が分かり易い。右がこんのパートで
左がごんのパート。こんがドアをたたくと”とんとん”
しかし、ごんが同じことをすると”どんどん”になります。
言葉主導で展開されるので、現実にはありえない状況が
次々にイラストで表現され意表をつかれまくりました。
ごんのパートがボケになっているので、ショートコントや
二コマ漫画的に楽しめますよ。

一見するとシンプルな絵柄でしたが、よくよくみると
細かいところにまで神経が行き届いているところもすごい。
例えば、きつねのこん&ごん。ごんの両耳だけ先が黒い。
これは「濁点」のイメージなのですね。
解説によると、フォントの濁点も通常より大きめにデザイン
されているとのこと。文頭では濁点が右上にきて目立つ
ように縦書きにしているところなど、プロの技が出汁の
ように効いています。

きつねうどんが食べたくなりました。
もくもく食べる、もぐもぐ食べる・・・
(ありゃ、変換ぐせがついてしまった)

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
濁点の有無で意味が変化する回文を作るという
ウルトラCな言葉遊び絵本に誰かチャレンジして
くれないだろうか。

  
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獣性を手懐けた?

いったいどうしてそんな状況になっているのか?
リアルな状況、それとも子どもの空想世界?などなど
タイトルから色々と想像が膨らみました。
いずれにせよ非日常的なシチュエーションであるならば、
数ページをつかってそこへ導くもの思っていたら、
冒頭の一文でいきなり独自の世界へ入ってしまいました。
(センダックの「かいじゅうたちのいるところ」のように
徐々に異世界=子どもの内面世界 へ行って帰る話かと
勝手に予想していたので)

既に床下にワニが生息していて、夜になると男の子が
歯磨きの世話をすることが日常となっている世界から
スタートするのですね。理由の説明は一切なしです。
絵として巧妙だなと思ったのは、家を断面図として描いて
いるので、各部屋の様子がコマ割りの役割をはたし
ワニのいる床下へと自然に誘導しているところです。

絵本の展開自体も”夜中に不思議な散歩をする系”を
一捻りしたものなので、すんなりと付いていけました。
ワニに噛まれないかという緊張感を持続させ、
ハプニングも交えつつ最後まで引っ張られていきます。
しかし男の子のなんと用意周到なことか。七つ道具を
使いこなすあたりの手慣れ感がハンパない。

これは獣性をすでに飼い慣らしている躾のよい
男の子と受け止めることもできるでしょう。
他の家族は登場しませんが、それぞれが独自の動物を
密かに飼育しているような気がします。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
引き出しの中とか、押し入れの中とか、
ポケットの中とか、空き箱の中とかね・・・
子どもの頃は物以上の何かを潜ませていました。

 
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生と死の境界線へ

冒頭の一文からショッキングな言葉が出てきます。
しかし、優しく美しいタッチの画面に導かれ
すんなりと「ぼく」の世界に入ってしまいました。

通学シーンからの日常を走馬灯のごとく振り返る
シーンが続きますが、傍目からは何も問題ないよう
にみえるでしょう。
いったいどうして「ぼく」はそうしたのか?
そこに居てよかったのに。生きていてよかったのに。

導かれたところは、生ある世界の極限の端っこ。
その先はいつでも行けるし、いずれば行かなければ
ならないところでもあります。甘美な絵と繰り返され
る言葉の魔力で、あっちの世界に意識が行ったまま
になる危険もはらんでいます。編集部からの
あとがきまでしっかり読まれてください。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
自分は、とある大きな選択をして、今に至っている。
それは正しかったのか?もし別の選択をしていたら?
そして今のままでいいのか?
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はるとスミレ:eto:偕成社

2022/06/05 Sun 06:45



植物たちと友達になれる

読み進めていくうちに、見えないものを視る力、
聞こえない声を聴く力が研ぎ澄まされていく
感じがしました。普段は土の中にある植物や
樹の根っこ。実はそれで会話をしているという
視点によって自然への認知度を深めています。
(作者は足の裏に目や耳があるのでは?)

同じ場所にずっと生えていても楽しめるし、
地中のネットワークを通して色々なことを伝え
合っている様子も丁寧に描写されており、
細部まで目を耳にして楽しめました。

スミレの擬人化が独特。あくまでも植物としての
立ち位置を保っているのですね。目鼻はないけれど
葉っぱや根っこをうまく人体化して、体全体で
感情を表現しています。

不思議な夜の散歩という王道的フォーマットと
黄色と薄紫をメインに色数をおさえた昔ながらの
味わいある絵で、新作にして既に名作の風格が
ただよう絵本です。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今やっていることが、生涯で最後の活動になりうる。
歳を重ねるにつれ、そんな心境が強くなってきます。
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異次元的発想で意識もワープ

絵本ならではの表現の可能性はまだまだあるのですね。
時空を軽やかに飛び越えた展開の妙に驚かされました。
物理的仕掛けはないけれど、仕掛け絵本の一種と言えます。

何が起こるかというと、見開き左右で別々に描かれて
いたものが、右から左へページをめくると、次の画面では
右にあった何かが左に移動しているのです。
ページを重ね合わせることでワープしてしまうのですね。

この独特なアイデアで、単純に色々な組合せを羅列する
だけでも一つの作品として十分に成立したと思います。
この絵本がすごいところは、重ね合わせて生まれたもの、
あるいは何かが移動して無くなってしまった世界が
ページをめくる度に相互に関連し合うことで物語が
生まれ、最後は我々のいる世界へ着地するところです。

ファンタジー、ユーモア、ナンセンス、SF、絵探し、
などなど様々な味付けも楽しめるし、眠る前のひと時に
もおすすめです。透明印刷を活かしたカバーの装丁も含め
完成度が高い。これは今年のベスト10入り確定です。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
約1ヶ月ぶりのレビュー更新。仕事や個人的創作で
バタバタしていましたが、久々に落ち着いた休日を
迎えました。
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