王さまのおうごんのひげ:クラース フェルプランケ:化学同人
2022/08/20 Sat 06:23
のばした末にちぢまった命
風刺の効いたコミカルなストーリーがグラフィカルな絵で
味わえる絵本です。お城の中から始まって、町や森を越え、
宇宙的視点にまで広がる壮大な展開もみどころ。
全ての発端は自分の髭を偏愛する王様のわがままぶり。
のばし放題の自分の髭を守るために、国の法律まで
変えてしまい、それを動物にまで適用する始末。
(髭禁止令のビフォーアフターは笑えましたが)
しかし、権力の行使も度を過ぎると、回り回って自分の
身に降りかかる、なんてことは歴史をみれば明らか。
現代のわがままな王様たちにも読んで欲しい絵本です。
本作と対になる絵本としておすすめなのは、
「ながいながいかみのおひめさま」
自分の髪を切りてたくても切らせてもらえない
お姫様が登場。彼女のとった行動が賞賛ものです。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今年の夏季休暇もあとわずか。普段できないことに
集中できたのは良かった。後は結果だけなんだけど
そればかりはコントロールしきれない。
ドーナツペンタくん:柴田 ケイコ:白泉社
2022/08/14 Sun 21:03
最後は丸くおさまる(ドーナツだけに)
昔から食べ物と動物を組合わせた絵本は人気ですね。
売れ線としての方程式なのかもしれませんが、
これでもかこれでもかと次々に登場してきます。
といってもそこは作り手のセンスが問われるところで、
なんでもかんでも組合わせればよいというものではない。
はたして「ペンギン×ドーナツ」はどうなのだろうか?
表紙からは全く展開が予想できませんでしたが、
夏に活躍する移動販売店ということで納得できました。
ペンタくんは手作りのドーナツ屋でありながら実は不器用。
ライオン? ネコ? ヘビ? お客のリクエストに
応えたドーナツの出来栄えには笑ってしまいました。
もちろんちゃんと活躍の舞台が用意されているのは、
期待した通り。ちゃんと表紙にもヒントがありました。
見返し1&2には32種類ものカラフルなドーナツと
ペンタくん直伝の丁寧なレシピ付き。
協力元のハグジードーナツも行ってみたくなりました。
https://www.hugsycafe.com/
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
いつもは早朝にしている絵本レビューを昨日に
続いて夜にしてみた。ついついボーっとして
しまいがちな夕食後が引き締まった感じに。
くみたて:田中 達也:福音館書店
2022/08/13 Sat 18:56
よみたて
すでに何冊か出ている田中さんの作品集では、見立ての世界が
一枚の写真で完結していました。この絵本では完成する前の
物の状態が提示され、これがいったい何になるのかと想像する
楽しみが加わりました。洗濯バサミが組立てられ、それが
ブランコになるように、どれも意外な変貌をみせてくれます。
オレンジの服を着た作業員が大活躍。元ネタはだんだん高度に
なっていき重機まで登場します。彼らは作家である田中さんの
分身なのだなと思っていたら、本当に現場で指揮をとっていた
のですね。最後に組み立てたものが意外、そうきましたか!
すべての物には多くの作り手がかかわっていることを
楽しく伝えてくれる絵本です。
表紙を見返して思いましたが、これはアルファベットの”A”
にも見立てているのでは。最初の絵本としての意味も込めて。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
「古本と新刊 scene」にて購入。最近近所にできた書店です。
初めて入った書店では絵本をチェックし、挨拶がわりに
気になったものを購入してレビューするというのが基本スタンス
なのです。旅の楽しみのひとつでもあるのですが、ここ数年
遠出してないなぁ。
2ひきのカエル そのぼうきれ、どうすんだ?:クリス・ウォーメル:徳間書店
2022/08/07 Sun 06:00
命を張ったコント?
2匹のカエルが登場するといえば、あの有名な絵本を思い浮かべる
方が多いのでは。こころ温まる友情物語の定番でもあります。
しかし、本作のカエル組もなかなかのもの。彼らには
ぜひともキングオブコントにエントリーしてほしいですね。
ぼうきれをネタに、よくぞここまで話を膨らませたものです。
などと、読む方は気楽ですが、ハリウッドのアクション映画ばりに
体を張ったシーンもあり最後まで目を離せませんでした。
テンポよい会話、アクション、オチと三拍子そろった絵本。
大きな横長の画面とリアルな描写も効いてます。はす沼の広さや
臨場感が伝わり、実際にカエルが演じているかのようでした。
原題はシンプルに「TWO FROGS」ですが、日本語版では
”そのぼうきれ、どうすんだ?”とのサブタイトルがあり、
すんなりと物語へ入っていくことができました。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
部屋にはマンションの窓から下へおりる折りたたみ式の梯子、
外出時のカバンには緊急時にならせる笛を携帯し、車の中には
非常用グッズを常備。幸いにもまだ使っていませんが、
カエル君の心配には共感できます。
ようかいのもり たぬきクリニック:長谷川あかり:大日本図書
2022/08/06 Sat 06:28
妖怪たちも健康でいたい
妖怪世界の医療状況はこのようになっていたのか!
と思わず納得してしまった絵本。人間離れした能力をもつ妖怪たち
といえども、ときには身体が不調になることがあるのですね。
ろくろ首、カッパ、一つ目小僧などなど、それぞれのかかえる
体の悩みがいかにもありそうです。一口に妖怪といっても、
おしゃれ好きや、海外に旅行したり、体の成長を気にしたりと
個性があって親しみが感じられました。
それはそうと、なぜタヌキのクリニックなのかと思いきや
緊急手術の場面でビックリ。こんな技はタヌキならではです。
読後はこちらも癒された気分になりました。
余談ですが、誰もマスクはしていないので、妖怪たちの世界では
コロナが蔓延していないみたいです。アマビエ様のおかげか。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
妖怪たちの生活感が味わえる絵本も充実しつつあります。
| HOME |