ふっと…:内田 麟太郎/松成 真理子:ビーエル出版
2022/09/25 Sun 06:00
ひみつのさくせん:ニコロ カロッツィ:化学同人
2022/09/24 Sat 07:29
ミッション・インポッチュブル
表紙はコーヒカップに入った金魚を神輿のように担ぎ上げるネズミたち。
一瞬、魚で遊んでいるのかと思ってしまい、中身が気になりました。
実は黒猫たちの標的にされた金魚の救出という作戦を通して、
ネズミと金魚の友情を描いた絵本だったのですね。
色合いやデッサンの整った色鉛筆のタッチから、作者の生まれた
イタリア・ヴェローナの陽光が伝わってきました。展開はスリリング
ながら、ゆったりとした時間の流れを感じる独特の雰囲気が生み
出されてます。文章は短めで、じっくりと絵に見入ってしまうせい
もあるからでしょうか。見返しも絵としてしっかり描きこまれ、
前と後で対になっていて、ユーモラスな余韻にひたれます。
今回、金魚は救出される立場でしたが、逆に川に落ちたネズミを
金魚が救出するという話を勝手に想像したりも・・・
↓猫と魚の出会いもありますね
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今年もあと3ヶ月余り。いやまだ3ヶ月ちょっとある。
まだまだ色々とできるはず。
ぼくらのひみつきち:といよしひこ:株式会社出版ワークス
2022/09/19 Mon 07:45
五感で味わう夏休みの原風景
男の子の虫取りを通した夏休みの冒険を描いた絵本では
「なつのいちにち:はたこうしろう作」が定番といえます。
書店や図書館の夏の絵本特集では必ず取り上げられますから。
そこにあえて直球を投げ込んできたところに、作者の
強い思い入れを感じました。「なつのいちにち」では、
男の子の単独行動での成功体験が描かれていました。
それに対して本作では、田舎に越してきたばかりの男の子が
地元の子との友情を深める物語になっています。
印象的だったのはアクションシーン。川を飛び越える場面は
両作にありますが、「ぼくらの〜」ではさらに
服を脱いで素潜りしたり、肌を擦りながら巨木に登ったりと
読むほうも体力を使います。一歩間違ったら・・なんて心配も
しましたが、その先に見えた景色は実に爽快でした。
色鉛筆の触感的タッチや道中に登場する昆虫や生き物たち
の生き生きした描写からも熱気が伝わってきました。
現実的に考えると、自然の豊かな田舎が舞台なのですから、
単にクワガタムシをとるためだけなら、そんな遠出する必要は
ないと思います。そこに男の子らが秘密を共有する
ランドマークが設定されて、行動の必然性が生まれました。
彼らは大人になってから、再びその場所を訪れて少年時代を
懐かしむような気がします。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日は台風の為、職場は臨時休業。
(世の中は最初から祝日ですが)
緊張感を保ちながらゆっくり過ごそう。
ちいさい おふねの ぼうけん:マリナ・アロムシュタム/ヴィクトーリヤ・セムイーキナ:成山堂書店
2022/09/18 Sun 10:35
小さな体に大きな意志
小さな折り紙の船が海をめざす旅を通し、目標に向かって
ひたむきに進む者へのエールとなるような美しい絵本です。
そもそも、みずたまりに放り込まれた折り紙の小船に
何ができるのか? 物を運べるわけでもなし、自由に動き
回ることもできない。それでも、海を目指し本物の船に
なろうと決意をすることはできます。そして、その瞬間
から運命が流れはじめるのです。
絵本として見ると小船が出会う様々な船の描写が魅力的でした。
リアリティーを保ちながらもグラフィカルにデフォルメされて
いるのです。しかも明からさまにキャラクター化するのではなく、
よく見ると目のようなものがあって、なんとなく表情が
伝わってくるというバランスが絶妙。
この手の物語は海にたどり着いたところでゴールとなる
ことが多いですが、ページ数が通常の2冊分となる本書では、
まだまだ先があります。はたして小船はどこへ行き着くのか?
ラストから続いたその後の物語を空想させる裏表紙もいい。
息子はちゃんと船員になれたのですね。
小船が旅する絵本で最近印象に残っているのは
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
始めるのは簡単。やり遂げる(続ける)ことのほうが難しい。
昨日、荒井さんがおっしゃってました。ワークショップを
通して、絵本作りの約束事はあれどテストの答案では
ないのだなと実感。やっぱり受け手の存在は大きい。
はっぴーなっつ:荒井 良二:ブロンズ新社
2022/09/17 Sat 08:27
自由だなぁ
見開きの左側に漫画のようにコマ割りされた線画の絵が
組合されているのが独特な絵本です。
絵本は通常15見開きの完結した画面で構成されるのが基本と
言われますが、そんなものを全く無視しているところが痛快です。
そもそも作者にとっては、コマ割りの絵という意識は
ないのかもしれません。絵という文字で書かれた文章みたい
なもので、絵とか文とかいう境界さえないのでしょう。
それはタイトルを ”なっつ”で区切るのか”ぴーなっつ”で
区切るのか定義しようとするのが無意味であるのと同じ。
”はっぴーなっつ”と言うしかないのである。
文章の中で唯一、漢字がつかわれているのが四季を表す言葉。
ルビさえふられていません。これも春、夏、秋、冬という
形態にすることに強いこだわりがあると受け止めました。
(普通は許されないんでしょうけどね)
なので、あえて抵抗して はぁる、なっつ、あーき、ふゅゆ
と勝手に発してみたりしました。
とりとめのない事を書いてしまいましたが、四季の移ろいを
自然に感じられたのがなんとも心地よかったです。
最近は文化的な慣習や商業的イベントで盛られた季節感に
うんざりしてきているので、女の子の等身大の五感で旅する
四季の時間感覚が新鮮に感じられました。
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
ハロウィンに合わせて、お化けもどきのお菓子が
大量に発生してることが不気味だ。どれもセンスが
似たり寄ったりで食傷ぎみ。
うまにんげん:板尾 創路/倉本 美津留/大串 ゆうじ:岩崎書店
2022/09/10 Sat 05:59
シュールな微笑みをさそう
表紙の異様さが目を引く。上半身が人間で下半身が馬の
男の子が普通に小学校へ通っているのですから。
しかも、ひと昔前の児童書のように丁寧なタッチの絵は
よけいな疑念を跳ね返すオーラーをまとっている。
僕はこれを素直に受け入れてページをめくるしかなかった。
このまま普通の小学生の男の子として、確信犯的に馬人間の
学校や日常の様子が描かれていたら、恐ろしいかもしれない。
などという先走った想像はすぐに崩れました。
それは、ちゃんと馬人間が生まれた経緯を紹介してくれたので。
絵本的にはじゅうぶんあり得るきっかけですね。
衝撃を受けたのは、もう一つの事実が明らかにされたこと。
彼らはいったいどうなるのか。
ほのぼのと終わるかと思ったら・・・
やっぱり恐ろしい絵本でした。男の子がサメから無事に
逃げられることを祈るしかない。
↓合体系の絵本あれこれ
ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
やっと、のんびりした週末を迎えられたはいいものの、
かえって何をしたら良いのか戸惑っている。
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