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自分の絵を描きたくなります

元々は独立した一編の詩だったのですが、あたかも
最初から絵本化を前提としていたかのような、
言葉と絵の融合が見事です。

谷川さんの言葉によって、一本の線から始まった
絵を描くという行為が次々に進行していく様子が描かれ、
それを長さんが色や形をもった言葉として見せてくれる。

詩は画面に左から右へ一列でつづられ、それに寄り添う
絵も横へと展開。ページをめくるごとに流れていく世界は
言葉と絵による音楽のようでもありました。

これは神による天地創造を表現したのか? それとも人類の
歴史を俯瞰したようにも受け止められるし、一人の人生を
追っているかのようにも感じられる。色々な解釈を内包
させながらも、最後は絵を描く個人の視点に着地させ、
読者いる世界へと、しっかりつなげられました。

その証拠もちゃんとあります。
本書は図書館で借りたのですが、ページを開いた
ときクレヨンの残り香がしたのです。この絵本に誘発されて、
思わず画用紙に向かった子どもの姿が見えました。
一本の線は画面の外にも伸びていったのですね。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
今日は長さんの命日。今年も無事レビューできました。
昨日は佐賀の音楽と絵本の読み語りグループSORAさんの
イベントに参加し、夜は近所の書店で開催された読書会で
本書を紹介。今日は福岡で開催中の警固塾展の最終日に
向かう予定。絵本濃度の高い週末を楽しんでます。
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悲しみを抱きとめてくれる絵本 

ママを失った男の子がゴリラとの出会いを通して
自分の気持ちと向き合う、情感あふれる作品です。

青い大きな腕が印象的なゴリラ。家に居るときも
学校へ行くときもいっしょに寄り添ってくれます。

「みんな しぬの?」「ママは どこにいったの?」
男の子の問いかけに、真摯に答えてくれるゴリラ。
ふたりの会話が中心ですが、間接的に
パパの心情も伝わってきました。パパはパパなりに
心の空白を受け止めようとしていたのですね。
男の子とパパがお互いを通してママの存在を感じ
取るシーンに胸がじわりと暖かくなりました。

さりげないですが、画面の隅に現れる赤い小鳥。
二人を気に掛けるママの姿なのかな?
画面全体から心情が伝わってくる水彩画も
素敵です。あふれる涙で描かれかのようで。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
最近は以前のように絵本のレビューを書いてませんが、
6月11日は個人的に特別な想いがあり、あえて
この作品をとりあげさせていただきました。
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