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デザインが武器へと変わった時代

もしも過去にタイムスリップしたとして、自分の力がどれだけ通用
するだろうか? そんなドラマや漫画じみた空想を時々しますが、
デザイナーならば東京五輪開催へと向かう90年代中期へ行ってみ
たいと思う方も少なくないのでは。そうなれば好むと好まざるとに
関わらず、亀倉さんを始め当時頭角を表わしてきたデザイナーらと
の競い合いに巻き込まれるわけだ。

現実にそんな空想は叶わないが、デザイナー亀倉雄策の生涯を克明
に綴った本書では、彼の傍らに居合わせたかと錯覚する程、当時の
空気が生々しく伝わってきました。そして彼と同じ課題に直面した
ならどうするか、無意識にシュミレーションする自分がいました。
内容としては断片的に知っているエピソードもありますが、時系列
に並べ各々が有機的に関連付けされているので、伝記物語としては
もちろん、日本におけるグラフィックデザインの歴史と位置付けを
理解する上でも充分に読み応えがあります。

読後に振り返ってみると、東京五輪の日の丸エンブレムの素晴らし
さを改めて実感します。ライバルらが己の技巧を示そうとした表現
に駆られる中、大胆に核心を撃ち抜いた氏の提案は正に金メダル級。
恐れ多くも、今の自分が当時のコンペで戦ったとしても絶対に勝て
なかったと確信しました。同じものを2020大会に再登場させた
いとの声が少なからずあるのも納得できます。しかしながら、絶対
そんなことはして欲しくない。いくら優れたデザインでも、それは
当時の話。老いた金メダリストを引っ張りだして無理矢理100m
を走らせるような暴挙をさせてはならない。

2回目となる東京大会は、1964の閉会式で未来へ向けて発信さ
れたメッセージを、時空を超えて受止める大会でもある。同じ事は
デザインの在り方についても言える。年頭にはエンブレム公募案も
数点に絞り込まれますが、どうか50年後のデザイナーが見ても、
敵わないなと唸るようなものが登場することを切に願います。

取り消された当初の五輪エンブレムを彷彿させる配色の表紙には、
先を見つめる亀倉氏が。現在の状況を眼にしたらどう思うだろう?

-------【Review for Review】------- 
連休も最終日。今年の計画をたてよう。
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