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心が見た世界

タイトルの理由は冒頭で語られます。どんなにすごい画家でも
描けないほと醜い獣が登場するというのがひとつ。さらに読み進めると、
盲目の少女の世界を伝えるというのがもうひとつの理由であることが
分かります。つまり絵を描かないことに意味がある絵本なのです。

醜いと忌み嫌われ続けた獣は、いつしか心の中まで歪んでしまい、
ひと目を避けて生きるようになった。しかし盲目の少女に出会って
心を開くようになるのです。彼女は自分の手や耳で感じ取った獣を
ありのままに受け入れてくれたから。

ところが物語は獣の心が試される展開になり、胸が痛む結末へ。
淡い水彩で描かれた花の表紙からは想像もつかないくらい、
辛く激しい内容の作品でした。差別やいじめの問題を考える
方もいるでしょうが、ボクは素直に自分の想いを貫いた
獣の物語として受け入れたい。

絵は全くないわけではなく、ところどころに象徴的な描写があり、
読み手の想像を喚起させてくれます。獣と少女、それぞれの観点が
重なり合う仕掛けもさりげなく効果的でした。

ーーーーーー【Review for Review】ーーーーーー
昔の特撮物「怪傑ライオン丸」でも似たような話が
あったことを思い出しました。盲目の娘が、トビムサシを
怪人とは知らずに立派な侍として慕うという内容で、
かなり好きなエピソード。
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