はくちょう
2007/06/03 Sun 11:20
![]() | はくちょう (講談社の創作絵本) (2003/07) 内田 麟太郎 商品詳細を見る |
伊勢さんの絵が内田さんの文に翼をあたえた
言葉には翼があるんだ!
読後にふと思ったことだ。口から発せられた言葉は、耳へ届くまでに宙を飛んで
いくわけだから、視覚化したら翼があってもおかしくはない。
さらにいうと、言葉に込められた想いによって、見える形も変わってくるはずだ。
例えば、邪な言葉は悪魔の翼のように、軽やかにささやくなら蝶のように、
応援する言葉は逞しい鷲というように。
そして、純粋な愛が込められていれば、白鳥のような白い翼がふさわしい。
本書は白鳥に想いをよせる、ちいさな池が登場する。
ー 水とそこに佇む鳥 ー 物理的には接点があるものの、コミュニケーションは
成立しない関係として描かれている。水面に眼や口が付いて突然話しだす なんて
安直な描写は全くない。そのせいか、水と鳥 の他に第三者の気配がどことなく
感じられた。それは文を書いた内田さんの想いかもしれないし、読んでいる
ボクの想いが水面に映し出されているようにも感じられた。
奇跡が起る。ちいさな池の想いは白い翼を持ち、白鳥へと届くのだ。
実際にはありえないことだが、絵本的には非常にリアリティがある。
これは絵を描いた伊勢さんの力による所が大きいのは、いまさら言うまでもない。
あたかも、その瞬間に立ち会ったかのごとく 真に迫る描写は誰もが圧倒されるだろう。
「はくちょう」と言い切ったタイトルからも、作り手の自信が伝わってくる力作。
もしあなたが、誰かに想いを伝えらずに悩んでいるなら、本書は第一歩を踏み出す
勇気と翼をあたえてくれることでしょう。
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